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本を読む人は本当に減ったのか 読書行動と出版データで見える日本の変化

本を読む人は本当に減ったのか 読書行動と出版データで見える日本の変化

結論から言うと、日本では「紙の本を習慣的に読む人」は減っていると見てよさそうです。 ただし、それだけで「文字を読む時間そのものが消えた」とまでは言えません。公的調査を見ると、本を読む人の割合や冊数は弱くなっている一方で、電子書籍やSNS、ネット記事を含む文字情報への接触は別の形で残っています。

まず押さえたい要点は次の3つです。

  • 総務省の社会生活基本調査では、2021年に「趣味としての読書(マンガを除く)」をした人の割合は 31.6% でした
  • 文化庁の2023年度調査では、1か月に本を 1冊も読まない人が62.6%、1冊以上読む人は 36.9% でした
  • 出版市場は2024年も縮小しましたが、紙の落ち込みが大きく、電子を含めると減少幅はかなり小さい という構図です

ここがポイント: 減っているのは「読むこと」全体というより、まずは紙の本を定期的に買って読む行動です。読書習慣の弱まりと、文字接触のデジタル移動を分けて見る必要があります。

目次

使用データと比較条件

今回使うのは、次の4系統の公開データです。

  • 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」
  • 対象: 10歳以上
  • 見る指標: 過去1年間に「趣味としての読書」をした人の割合(行動者率)
  • 注意点: 2021年は「趣味としての読書」からマンガを除外し、別項目で「マンガを読む」を追加しています
  • 文化庁「令和5年度 国語に関する世論調査」
  • 対象: 全国16歳以上、2024年3月調査
  • 見る指標: 1か月に読む本の冊数、読書量の増減、電子書籍利用
  • 注意点: 令和元年度以前は面接聴取法、令和5年度は郵送法で、単純比較に注意が必要です
  • 全国出版協会・出版科学研究所の2024年出版市場推計
  • 見る指標: 紙と電子を合算した出版市場規模、紙の書籍販売額
  • 総務省統計局「家計消費状況調査」2024年
  • 対象: 二人以上の世帯
  • 見る指標: ネットショッピング経由の電子書籍、書籍支出

読む人は減っているのか

公的調査では「本を読まない人」がかなり多い

文化庁の2023年度調査では、1か月に読む本の冊数について次の結果でした。

  • 読まない: 62.6%
  • 1,2冊: 27.6%
  • 3,4冊: 6.0%
  • 5,6冊: 1.5%
  • 7冊以上: 1.8%
  • 1冊以上の合計: 36.9%

この数字が重いのは、雑誌や漫画を除き、電子書籍を含めてもなお「読まない」が6割を超えたことです。紙から電子へ移った人を一定程度含めても、本という単位で見た読書習慣は細くなっています。

さらに、自分の読書量について尋ねた設問では、69.1%が「以前より減っている」と答えました。増えているは5.5%にとどまります。

社会生活基本調査でも読書行動は弱い

総務省の社会生活基本調査では、2021年に「趣味としての読書(マンガを除く)」をした人の割合は 31.6% でした。2016年の 38.7% から 7.1ポイント低下 しています。

ここで重要なのは、この低下をそのまま「読書離れの確定値」とは言い切れないことです。

  • 2021年から「マンガを読む」が独立項目になった
  • つまり2016年の「趣味としての読書」には、マンガ読者が含まれていた
  • そのため、2016年と2021年の差には定義変更の影響が混ざる

それでも、2021年時点で「趣味として本を読む人」が3人に1人を切っている事実自体は重いです。少なくとも、余暇の中心として読書が広く残っているとは言いにくい状況です。

では、文字を読む時間まで減ったのか

ここは少し分けて考えた方が実態に近づきます。

文化庁調査では、本を1か月に1冊も読まない人のうち、75.3%がSNSやインターネット記事など本以外の文字・活字情報を「ほぼ毎日」読むと答えました。さらに、文字・活字による情報に触れる時間全体については、35.3%が「増えている」、37.3%が「それほど変わっていない」と回答しています。

つまり、こう整理できます。

  • 本を読む人は減っている
  • ただし、文字を読む行為そのものが消えたわけではない
  • 読み先が、本からスマートフォン上の短い情報へ移っている可能性が高い

読書量が減った理由として最も多かったのも、この変化を裏づけます。

  • 情報機器で時間が取られる: 43.6%
  • 仕事や勉強が忙しくて読む時間がない: 38.9%
  • 視力など健康上の理由: 31.2%
  • テレビの方が魅力的である: 19.8%

若い層ほど「情報機器で時間が取られる」が高く、16~19歳では 70.9% でした。読書の競合相手は、以前のようなテレビだけではなく、常時接続のスマホ画面になっています。

書籍販売データでは何が起きているか

市場全体は縮小、ただし紙と電子で動きが違う

全国出版協会の2024年推計では、紙と電子を合算した出版市場規模は 1兆5,716億円 で、前年比 1.5%減 でした。3年連続の前年割れですが、減少幅は比較的小さくなっています。

一方、紙の出版物販売金額は 1兆56億円 で、前年比 5.2%減。このうち紙の書籍は 5,937億円 で、前年比 4.2%減 でした。

ここから読めるのは、出版市場が一様に崩れているのではなく、紙の縮小を電子が一部埋めているという形です。

家計のネット支出では電子が伸びている

総務省の家計消費状況調査では、2024年の二人以上世帯のネットショッピングによる月平均支出は次の通りでした。

  • 教養関係費全体: 2,417円(前年比 9.9%増
  • 電子書籍: 256円(前年比 21.9%増
  • 書籍: 432円(前年比 4.6%増

金額自体は大きくありませんが、ネット経由では電子書籍の伸びがかなり強いことが分かります。紙の本が完全に消える流れではなく、買い方と読む場が変わっているという見方が自然です。

データを並べると、何が言えるか

言えること

  • 本を月1冊以上読む人は、2023年度調査で 36.9% にとどまる
  • 自分の読書量が減ったと感じている人は 69.1% と多い
  • 紙の書籍販売額は2024年も減少した
  • その一方で、電子書籍の利用やネット経由の支出は伸びている

言い切れないこと

  • 「日本人が文字を読まなくなった」とまでは言えない
  • 「2016年から2021年で読書が7.1ポイント減った」と単純には言いにくい
  • 理由: 社会生活基本調査でマンガの扱いが変わったため
  • 文化庁調査の2018年以前との比較も慎重さが要る
  • 理由: 調査方法が変わっているため

生活の中で見ると、何が変わったのか

本が減ったというより、長い文章を読むためにまとまった時間を切り出す習慣が弱くなったと見る方が実態に近いです。

紙の本は、買う場所、保管する場所、読む時間をまとめて確保しやすい人に向いています。逆にスマホ上の文字情報は、通勤中や待ち時間、寝る前の数分でも消費できます。読書が他のメディアに負けているというより、時間の取り方そのものが短時間・断片型に変わっているということです。

出版市場でもその変化は見えます。紙の売上は厳しい一方で、電子を含めると市場全体の落ち込みは小さい。読まれる単位が「本一冊」から「画面の中の連続した情報接触」へずれている可能性があります。

誤読しやすい点

  • 「本を読まない」には、雑誌や漫画を除くという条件がある
  • 電子書籍の利用率上昇は、紙の読書減を完全に相殺していない
  • 出版市場の売上減は、読者数だけでなく価格改定、流通、書店数減少の影響も受ける
  • 全国出版協会の資料では、2024年度の総店舗数は 10,417店 と前年より 501店減 で、売上だけでなく販売インフラの縮小も進んでいる
  • 家計消費状況調査のネット支出は二人以上世帯ベースで、単身世帯や実店舗購入を含まない

今後の注目点

次に見るべきなのは、単純な「読書離れ」論ではなく、次の3点です。

  • 紙の本の販売減を、電子書籍がどこまで補えるか
  • 若年層で「本を読まない」が固定化するのか、それとも形式を変えて戻るのか
  • 書店数の減少が、地方での本との接点をさらに弱めるのか

本を読む人は減っているのか。答えは、おおむね「はい」です。 ただし同時に、読む行為そのものはスマホと電子に流れ込み、別の形で残っています。次の焦点は「読まなくなったか」ではなく、どこで、何を、どの長さで読む社会に変わったのかです。

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