新築住宅の広さはどう変わった?神戸市の10年比較で見る戸建てと共同住宅
神戸市で着工した住宅の平均床面積は、2013年から2023年にかけて、一戸建てが115.1㎡から111.1㎡へ、共同住宅が65.9㎡から54.9㎡へ下がった。どちらも小さくなったが、減少率は一戸建ての3.4%に対し、共同住宅は16.7%と大きい。
ただし、共同住宅は毎年縮小したわけではない。賃貸と分譲を含む平均なので、どの種類の住宅が多く建てられたかによっても数字は動く。「新築が狭くなった」を読むには、建て方別の広さと、供給される住宅の内訳を分ける必要がある。
この記事で分かることは、次の3点だ。
- 一戸建てと共同住宅で、平均床面積の変化はどれほど違うか
- 共同住宅が増えると、住宅全体の平均はどう動くか
- 着工統計の平均と、物件広告の面積を比べる際の注意点
比較するのは、神戸市で2013〜2023年に着工した住宅
使用するのは、新たに供給される住宅の広さを捉える着工データであり、既存住宅を含む市内すべての住宅の平均ではない。
数値は、神戸市統計書・令和6年度版「12住宅・建築」の第12-9表から取得した。元資料は国土交通省の建築着工統計調査で、各年の床面積の合計を戸数で割り、1戸当たりの平均を計算している。神戸市統計書「12住宅・建築」
比較条件は以下のとおりだ。
- 対象地域:神戸市。全国平均ではない
- 対象期間:2013〜2023年の暦年。各年1〜12月
- 対象住宅:着工した新設住宅。完成・入居・売買した住宅の集計ではない
- 分類:一戸建てと共同住宅。長屋建てはそれぞれの平均に含めない
- 単位:㎡/戸。平均は小数第1位に丸め、増減率は丸める前の値から算出
建て方別の一戸建て・共同住宅には、持家、貸家、給与住宅、分譲住宅が含まれる。「一戸建て=注文住宅」「共同住宅=分譲マンション」という読み替えはできない。
公表年とデータの対象年は違う
2026年10月8日時点で確認した神戸市の「最新の統計書を見る」ページは、第12-9表のExcelを2025年7月更新と案内している。一方、同ページからリンクされる住宅・建築の一括PDFは令和6年度版で、この記事に使う年次系列は2023年までだ。神戸市「最新の統計書を見る」
国の住宅着工統計では、2025年の年次結果が2026年1月30日に公表済みである。したがって、以下の比較は最新の2025年までを示すものではなく、2013〜2023年の10年間を同じ公表表で検証する分析として読む必要がある。e-Stat・住宅着工統計2025年、第39表
一戸建ては約4㎡、共同住宅は約11㎡小さくなった
10年間の両端を比べると、共同住宅の平均床面積の減少が、一戸建てより明確に大きい。
| 年 | 一戸建て ㎡/戸 | 共同住宅 ㎡/戸 | 住宅全体 ㎡/戸 |
|---|---|---|---|
| 2013 | 115.1 | 65.9 | 83.1 |
| 2015 | 114.5 | 58.6 | 76.5 |
| 2016 | 113.8 | 47.5 | 73.7 |
| 2018 | 113.0 | 51.8 | 77.7 |
| 2020 | 113.0 | 50.8 | 71.6 |
| 2022 | 113.6 | 49.4 | 71.4 |
| 2023 | 111.1 | 54.9 | 71.7 |
出典:神戸市統計書第12-9表から算出。住宅全体には長屋建てを含む。表は期間内の抜粋であり、掲載した年だけの平均ではない。
平均の計算に使った両端の値も確認しておこう。
- 一戸建て・2013年:床面積422,922㎡ ÷ 3,675戸
- 一戸建て・2023年:床面積292,807㎡ ÷ 2,635戸
- 共同住宅・2013年:床面積396,960㎡ ÷ 6,027戸
- 共同住宅・2023年:床面積325,672㎡ ÷ 5,937戸
一戸建ては約4.0㎡減、共同住宅は約11.0㎡減となる。ただし、これは各年に着工した別々の住宅群を比べた差だ。同じ住宅が改修で小さくなったわけではない。
一戸建ては緩やかな変化、共同住宅は年ごとの振れが大きい
一戸建ては、表の掲載年ではおおむね111〜115㎡の範囲に収まる。2022年には113.6㎡と2020年を上回っており、ここでも毎年の縮小とは言えない。
共同住宅の動きは、さらに複雑だ。2016年の47.5㎡に対して2023年は54.9㎡。2013年より小さい一方、2016年よりは大きい。
つまり、「10年前との比較では縮小」と「直近の一部期間では拡大」は両立する。比較の起点を変えれば、変化の方向まで変わる点が重要だ。
住宅全体の平均低下には、共同住宅の比率も関わる
全体の平均は、それぞれの住宅の広さだけでなく、広さの異なる住宅が何戸ずつ供給されたかでも変わる。
神戸市の住宅全体の平均は83.1㎡から71.7㎡へ、約11.4㎡、13.7%低下した。同じ期間に、着工戸数に占める共同住宅の割合は59.4%から67.9%へ上がっている。
これは、一戸建て・共同住宅それぞれの平均低下に加えて、平均床面積が小さい共同住宅の比重が高まったことも、全体平均を押し下げる方向に働いたことを意味する。ただし、各要因が低下幅の何割を占めるかは、別途分解計算が必要だ。
仕組みは、仮の数字で考えると分かりやすい。
一戸建てが120㎡、共同住宅が50㎡で、それぞれ50戸なら全体平均は85㎡。一戸建てが30戸、共同住宅が70戸になると、各タイプの広さが変わらなくても全体平均は71㎡になる。これは説明用の例で、神戸市の実測値ではない。
全体平均の低下を、そのまま「どの住宅も同じ割合で狭くなった」と読むことはできない。
共同住宅の中でも、賃貸と分譲を分ける必要がある
建て方を分けても、まだ比較条件は完全にはそろわない。
共同住宅の平均には、小規模な賃貸住戸も、家族向けの分譲住戸も含まれる。平均が下がる経路としては、少なくとも次の2つがある。
- 賃貸・分譲それぞれの区分内で、平均床面積が下がる
- 区分内の面積が変わらなくても、面積の小さい住宅の供給割合が増える
今回の建て方別集計だけでは、この2つを区別できない。共同住宅の約11㎡の減少を「分譲マンションが約11㎡狭くなった」と言い換えるのは誤りだ。
面積の縮小だけでは、暮らしの窮屈さは測れない
1戸の面積が小さくなっても、住む人数や間取りが違えば、暮らしへの意味は変わる。
例えば、同じ60㎡でも1人暮らしと4人暮らしでは、必要な寝室数、収納、仕事や学習の場所が違う。住宅の広さを生活に結び付けるには、1戸当たり面積だけでなく、世帯人員や居住室の広さも確かめる必要がある。
ここでは、新設住宅と既存住宅を含む調査の役割を分けたい。
- 建築着工統計:その年に供給される住宅の規模を見る
- 住宅・土地統計調査:すでに人が暮らす住宅と世帯の状況を見る
両者の平均が違っても矛盾ではない。新たに着工する住宅が小さくなっていても、既存の大きな住宅が残れば、居住住宅全体の平均はすぐには同じように動かない。
全国についても、環境省が住宅・土地統計調査と建築着工統計を整理した資料は、新設住宅の1住宅当たり延べ面積が2010年代前半に減少し、2010年代後半以降は横ばい〜微減で推移したと説明している。ただし、この全国の総平均から、神戸市と同じ建て方別の変化が全国で起きたとは断定できない。環境省資料「住宅戸数、1住宅当たり延べ面積の推移」掲載ページ
「建築費が上がったから」と結論づける前に
床面積の時系列は変化を示すが、その原因までは単独で証明しない。
建築費や土地代の上昇を受けて面積を抑える、少人数世帯向けの住戸が増える、供給地点が郊外から中心部へ移る。いずれも平均が下がり得る経路だが、今回の表には価格、入居世帯の人数、立地の詳しい内訳がない。
原因を確かめるなら、次のように比較を絞る必要がある。
- 同じ地域・利用関係の住宅でも面積が下がっているか
- 小さい住戸の戸数割合が増えているか
- 工事費や土地価格の変化と、面積の変化がどの時期に重なるか
仮に同じ時期に建築費が上がっていても、それだけで面積縮小の原因とは言い切れない。住宅の供給内訳や地域の違いを取り除いた比較が必要になる。
物件探しでは、平均より比較条件をそろえる
統計の平均は市場の変化を知る入口になるが、個別物件の広さを評価する基準としては条件の確認が先だ。
特に注意したいのは次の4点である。
- 平均と中央値:今回示したのは平均。住宅を面積順に並べた中央の値ではないため、「最も普通の広さ」とは限らない
- 延べ床面積と専有面積:着工統計の床面積と物件広告の専有面積は、対象部分や算定方法を確認せず直接比較しない
- 市平均と地区の違い:神戸市全体の数字は、希望する駅や区の新築物件の平均を示すものではない
- 着工と入居の時期:着工年の変化が、その年に入居できる住宅の変化と一致するとは限らない
神戸市の2013〜2023年では、一戸建ても共同住宅も平均床面積が下がった。とりわけ共同住宅の下げ幅が大きい。ただし、そこから個々の分譲住宅の縮小や、住み心地の悪化まで一足飛びには言えない。
次に確かめたいのは、共同住宅の賃貸・分譲別の面積と、規模別の戸数割合だ。物件を比べるときも、同じ地域、同じ建て方、同じ面積表示にそろえる。そのうえで、寝室、収納、仕事や学習の場所が実際に確保できるかを見ると、平均の数字を暮らしの判断につなげられる。
