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日本人の睡眠時間は本当に短くなったのか 公的統計で読む年代差と生活リズム

日本人の睡眠時間は本当に短くなったのか 公的統計で読む年代差と生活リズム

結論からいうと、日本人の睡眠時間が直近まで一貫して短くなり続けているとは言い切れません。 総務省の最新の社会生活基本調査では、2021年の睡眠時間は2016年より伸びています。

ただし、年代別に見ると話は別です。厚生労働省の2023年調査では、40代と50代で「6時間未満」が特に多く、30代から50代で睡眠の休養感も弱い ことがはっきり出ています。全体平均だけでは見えにくい差です。

  • 総務省「社会生活基本調査」では、2021年の睡眠時間は週全体平均で 7時間54分、2016年より 14分増
  • 一方、厚労省「国民健康・栄養調査」では、2023年の20歳以上で 6時間未満が41.2%
  • 年代別では 50代の6時間未満が55.8% で最も高い
  • 睡眠で休養が「あまりとれていない・まったくとれていない」は 30代34.0%、40代34.7%、50代35.4%
目次

使用データと見方

まず、今回使う公的データは2種類です。ここを分けておかないと、同じ「睡眠」でも意味がずれます。

  • 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」
  • 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」
  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」

比較条件は次の通りです。

  • 社会生活基本調査: 2021年10月実施、対象は10歳以上、全国。1日の生活時間配分を集計。睡眠には夜間の睡眠、昼寝、仮眠を含む
  • 国民健康・栄養調査: 2023年、対象は20歳以上、全国。ここ1か月の1日の平均睡眠時間と、睡眠で休養がとれているかを自己申告で集計
  • 睡眠ガイド2023: 統計そのものではなく、既存研究と公的調査を踏まえた国の整理

同じ睡眠でも、片方は「時間の使い方」、もう片方は「平均睡眠時間と休養感」です。数値をそのまま横並びにせず、傾向を読み分けるのがポイントです。

まず全国の推移を見ると「ずっと短くなっている」ではない

全国の大きな流れを先に押さえます。

総務省の2021年調査では、10歳以上の睡眠時間は週全体平均で7時間54分でした。2016年は7時間40分なので、5年で14分増えています。統計局の結果概要でも、睡眠時間は減少傾向で推移していたが、2021年は増加に転じたと明記されています。

男女別でも同じ方向です。

  • 男性: 2016年 7時間45分 → 2021年 7時間58分
  • 女性: 2016年 7時間35分 → 2021年 7時間49分

つまり、最新の時間配分統計だけを見るなら、「日本人の睡眠時間は今も縮み続けている」とは言えません。

ここがポイント: 全体平均では2021年に睡眠時間は増えたが、2023年の年代別データでは働く世代ほど短時間睡眠が多い。平均の反転と、年代差の深さは同時に成り立つ。

年代別に見ると、短いのは40代と50代

ここからが本題です。厚労省の2023年調査では、20歳以上の平均睡眠時間を時間帯別に集計しています。

6時間未満の割合

20歳以上全体では、5時間未満9.5%5時間以上6時間未満31.7% を合わせて、6時間未満は41.2% でした。

年代別に並べると差がかなりあります。

年代 6時間未満の割合 睡眠で休養が十分でない割合
20〜29歳37.8%26.3%
30〜39歳40.4%34.0%
40〜49歳47.4%34.7%
50〜59歳55.8%35.4%
60〜69歳43.5%22.2%
70歳以上29.1%12.6%

数字が示すのは明快です。最も短いのは50代、次いで40代です。30代も低くありません。

7時間以上は高齢層で増える

逆に、7時間以上の割合は70歳以上で目立って高くなります。2023年調査では70歳以上のうち、7時間以上8時間未満が23.3%、8時間以上9時間未満が11.4%、9時間以上が4.8% でした。

年齢が上がるほど睡眠時間が一律に短くなる、という単純な形ではありません。公的データでは、働く世代の短時間睡眠と、高齢層の長めの睡眠が同時に見えます。

時間だけでなく、30代から50代は「休めていない」

睡眠は時間だけでは足りません。厚労省の2023年調査では、「睡眠で休養が充分とれているか」も聞いています。

「あまりとれていない」と「まったくとれていない」を合わせると、次の通りです。

  • 30〜39歳: 34.0%
  • 40〜49歳: 34.7%
  • 50〜59歳: 35.4%
  • 70歳以上: 12.6%

この差は大きいです。単に就寝時間が短いだけでなく、働く世代ほど、寝ても回復しきれていない人が多い ことを示します。

総務省の時間配分統計で2021年の睡眠時間が増えていても、厚労省調査で休養感の弱さが残っている以上、生活の実感としては「眠れていない」と感じやすい層が厚いまま、と読むのが自然です。

では、なぜ全体平均は増えたのか

ここは断定しすぎない方がいい部分です。

総務省の2021年調査は、2021年10月16日から24日の生活時間を集計しています。結果概要では、新型コロナ対応の行動制限が解除された直後で、2016年と比べて生活時間の配分が変化したと説明しています。実際、2021年は休養・くつろぎ時間が増え、仕事時間は減っています。

つまり、2021年の睡眠時間増加は、

  • 通勤や移動の減少
  • 仕事時間の減少
  • 在宅時間の増加

といった生活時間全体の組み替えの中で起きた可能性があります。

ただし、これは因果関係を直接証明する統計ではありません。 睡眠時間が増えた事実は確認できますが、その理由を1つに決め打ちすることはできません。

読み違えやすい点

このテーマは、数字だけをつまむと誤解しやすいです。注意点を整理しておきます。

  • 2021年の社会生活基本調査と2023年の国民健康・栄養調査は、調査方法も定義も違う
  • 社会生活基本調査の睡眠には、夜間睡眠だけでなく昼寝・仮眠も含まれる
  • 国民健康・栄養調査は自己申告の平均睡眠時間で、生活時間を日記式に記録したものではない
  • 2021年の時間増加は、コロナ禍を経た特殊な生活環境の影響を受けている可能性がある
  • 「長く寝ている=必ず健康」「短い=全員が不健康」とまでは言えず、個人差も大きい

厚労省の睡眠ガイド2023でも、成人は6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する としつつ、適正時間には個人差があるとしています。記事内の数字は、あくまで全国傾向を見るためのものです。

生活リズムを見るうえでの注目点

このテーマで次に見るべき点は、平均睡眠時間そのものより、どの世代で6時間未満が多いか休養感が落ちているか です。

特に注目したいのは次の3点です。

  • 50代は6時間未満が55.8%で、半数を大きく超えている
  • 40代も47.4%が6時間未満で、短時間睡眠が広く分布している
  • 30代から50代は、休養が十分でない人が3人に1人前後いる

全国平均だけを見ると、2021年の睡眠時間はむしろ持ち直しています。ですが、生活リズムの厳しさが濃いのは、家事、育児、仕事、介護前後の負担が重なりやすい30代から50代です。

次に追うべきなのは、2026年実施予定の次回社会生活基本調査でこの反転が続くのか、それとも2021年が特殊要因を含む一時的な増加だったのかという点です。全体平均の回復と、働く世代の睡眠不足の残存。この2つを分けて見ることが、このテーマのいちばん実用的な読み方です。

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