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冷凍食品市場を押し広げる土台は何か 共働き・単身世帯・食費データで読む

冷凍食品市場を押し広げる土台は何か 共働き・単身世帯・食費データで読む

冷凍食品市場の拡大を一本の理由で説明するのは無理があります。ただ、日本の公的統計を並べると、需要の土台が広がっていることはかなりはっきり見えます。共働き世帯が増え、単身世帯が増え、家計は物価高の中で食費と手間の両方を調整する局面に入っています。

つまり、冷凍食品が選ばれやすい背景は「忙しい世帯が増えたこと」と「少人数世帯が増えたこと」、そして「食費全体を見直す必要が強まったこと」の重なりです。市場拡大そのものは民間統計も必要ですが、少なくともその前提条件は公的データで確認できます。

  • 2024年の共働き世帯は1,300万世帯で、前年より22万世帯増
  • 2020年国勢調査では単独世帯の割合が38.1%。2024年推計では39.7%まで上昇
  • 2024年の全国家計構造調査では、2019年比で食料(外食除く)のCPI変化率が22.9%、外食は13.2%
  • 家計は「安さ」だけでなく、調理時間、買い置きしやすさ、食べ切りやすさでも食品を選びやすくなっている
目次

使用データと比較条件

今回使ったのは、総務省統計局の国勢調査、全国家計構造調査、労働力調査の整理資料、そして国立社会保障・人口問題研究所の世帯推計です。

比較条件は次の通りです。

  • 共働き世帯: 2024年平均。夫婦ともに非農林業雇用者の世帯
  • 単身世帯: 2020年国勢調査の実績値と、2024年の全国推計・都道府県別推計
  • 物価と支出: 2019年と2024年の全国家計構造調査による比較

調査の年次が完全にそろっているわけではありません。市場規模そのものではなく、冷凍食品が広がりやすい生活条件の変化を見る記事だと考えると読みやすいです。

まず大きいのは、共働き世帯の増加

2024年の共働き世帯は1,300万世帯でした。専業主婦世帯は508万世帯で、差はさらに広がっています。

重要なのは、共働きが増えただけではない点です。JILPTが総務省「労働力調査(詳細集計)」を基に整理したデータでは、夫婦ともに週35時間以上働く共働き世帯は、2014年の392万世帯から2024年の496万世帯へ増えました。

これは、夕食や弁当づくりを毎日ゼロから組み立てにくい世帯が増えていることを意味します。冷凍食品が伸びるなら、その背景にあるのは単なる嗜好の変化だけではなく、平日の調理時間を圧縮したい世帯の増加です。

子どものいる共働きが中心

2024年の共働き世帯1,300万のうち、最も多いのは「夫婦と子供から成る世帯」で796万世帯、全体の約6割でした。

ここが大事です。需要の中心は単なる一人暮らし向けだけではありません。家族世帯でも、平日の食事準備を短くしたい需要が厚くなっているということです。

ここがポイント: 冷凍食品の拡大は「忙しい独身向け」だけでは説明しきれません。子どものいる共働き世帯の大きさが、需要の裾野を広げています。

単身世帯の増加は、少量・保存型の食品と相性がいい

2020年国勢調査では、一般世帯に占める単独世帯の割合は38.1%でした。2005年の29.5%からかなり上がっています。さらに国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計では、2024年時点で39.7%、2050年には44.3%に達する見通しです。

少人数世帯が増えると、食品は「たくさん作る」より「必要な分だけ使う」方向に動きやすくなります。冷凍食品はその条件に合いやすい商品群です。

地域差も大きい

都道府県別推計を見ると、単独世帯比率にはかなり差があります。

  • 東京都: 2020年 50.2% → 2050年 54.1%
  • 大阪府: 2020年 41.8% → 2050年 47.4%
  • 福岡県: 2020年 40.7% → 2050年 46.4%
  • 愛知県: 2020年 36.3% → 2050年 42.0%
  • 山形県: 2020年 28.4% → 2050年 34.5%

大都市圏ほど単独世帯の比率が高く、将来も高止まりしやすい構図です。冷凍食品や簡便食品の売れ方を地域で見るとき、人口規模だけでなく、世帯の大きさの違いを見ないと読み違えます。

物価高で、家計は「食費」と「手間」を同時に見直している

2024年の全国家計構造調査では、2019年比で平均世帯人員が2.28人から2.15人に減りました。同じ5年間で、食料(外食を除く)の月平均支出は5万763円から5万7046円へ名目では増えていますが、実質ではマイナス8.5%です。外食も実質マイナス1.9%でした。

価格面を見ると、同調査に付されたCPI変化率は次の通りです。

  • 食料(外食除く): 22.9%上昇
  • 外食: 13.2%上昇
  • 総消費支出全体: 実質 4.4%減

この数字が示すのは、家計が食費全体を楽に増やせる環境ではないということです。冷凍食品市場が広がるとしても、「何でも売れる」わけではありません。値上がり局面では、買い置きしやすさ、食べ切りやすさ、1食あたりの手間の少なさまで含めて選ばれる商品が強くなります。

データから言えること、言えないこと

ここまでの統計から言えるのは、冷凍食品に追い風となる生活条件が広がっていることです。

  • 共働き世帯は増えている
  • 単身世帯は増えている
  • 平均世帯人員は減っている
  • 物価高で、家計は食事の作り方を見直しやすい

一方で、これだけで「共働きが増えたから冷凍食品市場が何%伸びた」とまでは言えません。市場規模、商品単価、流通、設備投資、海外展開、家庭用と業務用の内訳などは、別の統計や民間調査が必要です。

特に注意したいのは、国勢調査は2020年、共働き世帯は2024年、世帯推計は将来見通し、全国家計構造調査は2019年との比較というように、年次と定義が少しずつ違うことです。数字をつなぐときは、そのずれを前提に読む必要があります。

これから見るべき点

冷凍食品市場の拡大を今後も追うなら、次は次の3点を合わせて見ると実態に近づきます。

  • 単身世帯比率の高い都市部で、家計支出や小売販売額がどう動くか
  • 共働きのうち、夫婦ともフルタイムに近い世帯がさらに増えるか
  • 物価上昇の中でも、外食、中食、冷凍食品のどこに支出が残るか

市場の伸びを支えているのは流行語ではなく、世帯構造の変化です。人数が少なく、時間が足りず、食費は重い。 この3条件が続く限り、冷凍食品を含む簡便食品の需要基盤は簡単には細りません。

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