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家庭での料理時間は本当に減ったのか 社会生活基本調査で見る食事準備の変化

家庭での料理時間は本当に減ったのか 生活時間調査で見る食事準備の変化

家庭での料理時間が一様に減っている、とまでは言えません。総務省の社会生活基本調査で、食事準備に最も近い指標である「食事の管理」をみると、女性の時間は2011年から2021年にかけて減少しましたが、男性の時間は増加しています。

つまり、変化の中心は「みんなが同じように料理しなくなった」ではなく、女性の負担がやや縮み、男性の関与が少し増えたという形です。ただし、なお時間の水準そのものは女性の方がかなり長く、役割分担の差は残っています。

  • 結論は単純な「増えた・減った」ではなく、女性は減少、男性は増加
  • 使うデータは総務省「社会生活基本調査」2011年、2016年、2021年の全国結果
  • 本稿の「料理時間」は、厳密には料理だけでなく食器洗いなどを含む「食事の管理」を指す
  • 子どもが小さい世帯では、父親の時間増加が目立つ一方、母親の負担はなお長い

ここがポイント: 公的統計でみる限り、家庭での食事準備は「全体が一方向に減った」のではなく、男女で逆方向に動いています。

目次

使ったデータと、この記事で見る指標

今回使うのは、総務省統計局の「社会生活基本調査」です。調査は5年ごとで、ここでは2011年、2016年、2021年を比べます。2021年調査の生活時間は、2021年10月16日から24日までのうち指定された連続2日間をもとに集計されています。

見る指標は、調査票Bの詳細行動分類にある「食事の管理」です。2021年の結果資料では、これは料理、食器洗い等を含む行動として説明されています。したがって、純粋な「コンロの前に立っていた時間」だけではありません。

整理すると、この記事の比較条件は次の通りです。

  • 出典: 総務省統計局「社会生活基本調査」
  • 対象年: 2011年、2016年、2021年
  • 対象地域: 全国
  • 対象者: 10歳以上
  • 比較指標: 週全体の総平均時間
  • 注意点: 「総平均時間」は、その行動をしなかった人も含む全員平均

まず主要な数値を見る

全国平均の「食事の管理」時間を男女別に並べると、流れはかなりはっきりしています。

男性 女性 読み取れること
2011年 10分 1時間31分 女性の時間が大きく長い
2016年 12分 1時間28分 男性は微増、女性は微減
2021年 14分 1時間18分 差は縮小したが水準差は大きい

2011年から2021年までの10年でみると、

  • 男性は10分から14分へ、4分増
  • 女性は1時間31分から1時間18分へ、13分減

となります。2021年時点でも女性の時間は男性の約5.6倍です。差は縮みましたが、逆転にはほど遠い水準です。

家事全体の中でも「食事の管理」は中心にある

2021年の詳細行動分類結果では、家事時間の内訳で「食事の管理」が最も大きい項目です。

  • 男性の家事時間に占める割合は32.6%
  • 女性の家事時間に占める割合は46.2%

ここが重要です。食事準備は家事の中の一部ではあるものの、特に女性側では家事時間の中心に位置しています。料理や後片付けの変化を見ることは、そのまま家事負担の変化を見ることにも近いわけです。

子どもが小さい世帯では何が起きたか

変化がより見えやすいのが、6歳未満の子どもがいる夫婦です。2021年結果では、夫と妻で次の差が出ています。

  • 夫の「食事の管理」: 2016年8分 → 2021年14分
  • 妻の「食事の管理」: 2016年1時間57分 → 2021年1時間25分

この層では、父親の時間が6分増え、母親の時間は32分減りました。父親の関与が増えたことは数字では確認できます。

ただし、ここでも水準差は残ります。2021年でも、6歳未満の子どもがいる世帯での妻の食事関連時間は1時間25分あり、夫の14分を大きく上回ります。

読み違えたくない点

この数字から言えるのは、父親が以前より関わるようになった可能性が高い、ということです。

一方で、次のような断定はできません。

  • 共働き化だけが原因だと言い切ること
  • 冷凍食品や中食の利用増だけで説明すること
  • 男女分担の差が解消に向かったと結論づけること

公的統計が示しているのは、あくまで時間配分の変化です。背景要因の切り分けには、就業構造や家計調査など別の資料が必要です。

このデータから何が言えるか

ここまでの数字をそのまま受け取るなら、言えることは3つです。

1. 女性の食事準備負担は10年で軽くなった

女性の「食事の管理」は2011年の1時間31分から2021年の1時間18分へ下がりました。減少幅は13分で、家事全体でも2021年は2016年より8分短くなっています。

長時間化の流れではなく、少なくとも女性側では縮小です。

2. ただし「家庭で作ること」が消えたわけではない

男性の時間は増えていますし、女性でも1日1時間超を保っています。家事の中で占める比率も高いままです。家庭内の食事準備が急に周辺化した、とは読めません。

減ったのは「存在」ではなく、主に女性が担う時間の長さです。

3. 役割分担は緩んだが、まだ対等ではない

2021年でも、全国平均で女性1時間18分に対し男性14分です。6歳未満の子どもがいる夫婦でも、妻1時間25分、夫14分でした。

差は縮んでも、日常の台所仕事の重心はなお女性側にあります。ここを見落とすと、「最近はみんなで分担している」という印象だけが先に立ってしまいます。

注意したい限界

このテーマは、数字だけ見て早合点しやすいので、いくつか留意点があります。

  • 指標は「食事の管理」であり、料理だけでなく食器洗い等を含む
  • 「総平均時間」なので、料理をしない人も含めた平均になっている
  • 2021年調査は2021年10月実施で、コロナ禍の生活様式を含む時期の結果でもある
  • 2011年、2016年、2021年は比較できるが、背景要因まではこの統計単独では分からない
  • 全国結果なので、地域差や世帯年収差まではこの記事の範囲では見ていない

特に大事なのは最初の2点です。この記事は「料理が好きか嫌いか」を測っているのでも、「一回あたりの調理時間」だけを測っているのでもありません。

では、生活の変化として何を見るべきか

このデータを生活実感に引きつけるなら、見るべきは「料理時間がゼロになったか」ではなく、誰の時間が減り、誰の時間が増えたかです。

今回の結果から確認できるのは、

  • 女性に集中していた食事準備の負担が、やや縮んでいること
  • 男性の関与は増えているが、まだ短時間にとどまること
  • 子育て世帯でも差は縮小したが、負担の中心はなお妻側にあること

次に注目したいのは、2026年調査でこの流れが続くかどうかです。2021年は特殊な時期でもありました。コロナ禍後の働き方や家事分担が定着したのか、それとも一時的な変化だったのかは、次回調査でかなり見えやすくなります。

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