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電車の混雑率は改善されたのか?コロナ前後の通勤データ比較

電車の混雑率は改善されたのか?コロナ前後の通勤データ比較

朝の電車は、コロナ前よりはまだ空いています。ですが、「混雑はもうかなり改善した」と言い切れる段階でもありません。国土交通省の混雑率調査では、2024年度の平均混雑率は東京圏139%、大阪圏116%、名古屋圏126%まで戻り、2020年度の落ち込みからははっきり反発しています。

特に東京圏では、輸送人員が2019年度をまだ下回る一方で、混雑率は上昇が続いています。乗る人が完全には戻っていなくても、出社回帰と運行本数・輸送力の縮小が重なると、ラッシュ時の体感は再び厳しくなる。その構図が数字に出ています。

  • 2024年度の平均混雑率は、東京圏139%、大阪圏116%、名古屋圏126%
  • 2020年度の底からは大きく反発したが、2019年度にはまだ届いていない
  • 東京圏の輸送人員は2019年度の162.6万人に対し、2024年度は131.3万人
  • それでも混雑率が上がるのは、出社頻度の回復と輸送力の縮小が同時に進んでいるため
目次

使用データと比較条件

今回見たのは、主に次の公的データです。

  • 国土交通省「都市鉄道の混雑率調査結果」
  • 国土交通省「都市鉄道の混雑に関する利用者意識調査」
  • 国土交通省「テレワーク人口実態調査」

比較の軸は次の通りです。

  • コロナ前: 2019年度の三大都市圏の平均混雑率
  • コロナ直後の落ち込み: 2020年度
  • 足元: 2024年度の混雑率と、2024年10月時点の通勤行動アンケート

混雑率は、最混雑時間帯1時間の平均です。国土交通省の目安では、100%は「吊革やドア付近の柱につかまれる」状態、150%は「肩が触れ合わない程度」、180%になると「肩が触れ合い、やや圧迫感がある」水準です。

三大都市圏の混雑率はどこまで戻ったか

まず結論を数字で並べると、戻り方には差があります。

都市圏 2019年度 2020年度 2024年度 2019年度との差
東京圏 163% 107% 139% -24ポイント
大阪圏 126% 103% 116% -10ポイント
名古屋圏 132% 104% 126% -6ポイント

2020年度には三大都市圏とも急低下しましたが、その後は上昇が続きました。2024年度時点で見ると、名古屋圏は2019年度との差が6ポイントまで縮小し、大阪圏も10ポイント差です。東京圏はまだ24ポイント低いものの、2020年度の107%から見ると32ポイント上がっています。

ここで重要なのは、2019年度に戻っていないからといって、通勤が楽になったとは限らないことです。混雑率は、乗客数だけでなく輸送力でも変わるからです。

乗客数は戻り切っていないのに、なぜ混むのか

国土交通省の同じ資料には、主要区間の輸送人員と輸送力も載っています。東京圏で比べると、こうなります。

  • 2019年度の輸送人員: 162.6万人
  • 2024年度の輸送人員: 131.3万人
  • 2019年度比: 約19.2%減
  • 2019年度の輸送力: 99.5万人
  • 2024年度の輸送力: 94.5万人
  • 2019年度比: 約5.0%減

大阪圏でも、輸送人員は53.1万人から46.6万人へ減っています。名古屋圏も17.6万人から16.0万人です。つまり、利用者数はコロナ前未満のままです。

それでも混雑率が上がるのは、次の2点が重なっているためです。

  • 乗客が戻るのが、朝のピーク1時間に集中しやすい
  • 運行本数や車両数を含む輸送力が、コロナ前よりやや低い

ここがポイント: 混雑率は「乗る人が増えたか」だけでは決まりません。ピーク時間帯への集中と輸送力の変化まで見ないと、体感とのずれが生まれます。

通勤行動はどう変わったのか

国土交通省の2024年度「都市鉄道の混雑に関する利用者意識調査」は、首都圏と近畿圏で月1回以上、通勤・通学で鉄道を使う人を対象にしています。この調査では、通勤の戻り方がかなりはっきり出ています。

  • 通勤で鉄道を「週4日以上」使う人の割合は、2022年10月の48%から2024年10月は60%に上昇
  • 「テレワークのみ」または「必要な場合のみ出勤」は、2022年の20%から2024年は11%に低下
  • 「出勤のみで、テレワークは不可」は55%から63%へ上昇

この数字が示すのは、全面的な在宅勤務の時期は後退し、出社中心の働き方に戻りつつあるということです。

一方で、テレワークがゼロに戻ったわけでもありません。国土交通省の2025年度テレワーク人口実態調査では、直近1年間のテレワーク実施率は全国16.8%でした。2020年度の緊急事態宣言期には全国20.4%、首都圏31.4%まで上がっていたため、ピーク時ほどではないにせよ、コロナ前より高い水準の働き方が一部に残っていると見てよさそうです。

路線別に見ると「改善した」とは言いにくい区間も多い

平均値だけだと実感とずれるので、2024年度の主な最混雑区間も見ておきます。

  • 西鉄貝塚線 名島→貝塚: 164%
  • 東京メトロ日比谷線 三ノ輪→入谷: 163%
  • JR中央快速線 中野→新宿: 161%
  • JR京浜東北線 川口→赤羽: 156%
  • JR東海道線 川崎→品川: 154%
  • JR総武快速線 新小岩→錦糸町: 153%
  • 都営新宿線 西大島→住吉: 150%
  • 東京メトロ東西線 木場→門前仲町: 150%

150%前後でも、ラッシュ時の利用者には十分に混んでいる水準です。平均では2019年度未満でも、区間ごとには高い混雑が続いていることが分かります。

データから読み取れること

ここまでの数字を整理すると、言えることは絞られます。

事実として言えること

  • 三大都市圏の平均混雑率は、2020年度の急低下から2024年度まで上昇した
  • ただし、2024年度でも2019年度の水準には戻っていない
  • 通勤で鉄道を高頻度利用する人は、2022年より2024年の方が増えている
  • テレワークは縮小したが、完全には消えていない
  • 一部路線では150%超の混雑が続いている

解釈として妥当なこと

  • 「コロナで通勤混雑が恒久的に大幅改善した」という見方は、足元の数字とは合いにくい
  • 乗客数がコロナ前未満でも、ピーク集中と輸送力次第で混雑は戻る
  • 今後の混雑緩和は、単純な需要減待ちではなく、時差出勤やオフピーク施策、輸送力の組み方が効いてくる

読むときの注意点

このテーマは、数字の定義を混ぜると誤読しやすいです。

  • 混雑率は「最混雑1時間」の平均で、1日全体の平均ではない
  • 三大都市圏の平均混雑率は、主要区間ベースであり、すべての駅・すべての路線を均等に代表する数字ではない
  • 利用者意識調査は、首都圏・近畿圏の鉄道利用者へのWebアンケートで、国勢調査のような全数調査ではない
  • テレワーク実施率と鉄道混雑率は別統計で、対象者や調査時期も異なる

それでも、複数の公的データを重ねると、方向はかなり一致しています。コロナ直後のような大幅な緩和は終わり、通勤は戻り、混雑も再び強まっている。これが現在地です。

今後の注目点

最後に、次に見るべき点を短く整理します。

  • 2025年度以降の混雑率が、2019年度にさらに近づくのか
  • テレワーク実施率の下げ止まりが続くのか
  • 企業の時差出勤やオフピーク通勤が、実際のピーク分散につながるのか
  • 路線別の150%超区間が減るのか、それとも固定化するのか

通勤電車の混雑は、もう「コロナで解決した問題」ではありません。次に見るべきなのは、乗客数が戻るかどうかだけではなく、どの時間帯に、どの区間へ、どれだけ集中するかです。

参照リンク

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