男性育休は「2人に1人」へ 取得率50.9%と休業期間の変化を読む
男性の育児休業取得率は、2025年度調査で50.9%に達しました。2019年度の7.48%から6年間で約6.8倍となり、「取得する男性が少数」という段階は抜けつつあります。
ただし、取得した男性の49.0%は1か月未満です。普及の焦点は、取得者を増やすことから、必要な時期に十分な期間を確保できるかへ移り始めています。
この記事で分かることは次の4点です。
- 男性育休取得率は2019年度の7.48%から2025年度の50.9%へ上昇
- 取得期間は「1か月~3か月未満」が30.3%で最多
- 取得率には産業別で30ポイントを超える差がある
- 都道府県別や年代別の比較には、現在の全国調査だけでは限界がある
使用データと比較条件
中心に使うのは、厚生労働省が2026年7月31日に公表した「令和7年度雇用均等基本調査」です。
調査対象は全国の民営事業所で、常用労働者5人以上の事業所から抽出されています。事業所調査は6,300事業所に配布され、有効回答は3,291事業所、有効回答率は52.2%でした。
取得率の分母と分子は、次のように定められています。
- 分母:2023年10月1日から2024年9月30日までに配偶者が出産した男性
- 分子:そのうち2025年10月1日までに育児休業または産後パパ育休を開始した人
- 分子には、取得予定を事業所へ申し出ている人も含む
- 対象地域:全国
- 対象産業:日本標準産業分類に基づく16大産業
したがって、「2025年度の50.9%」は、2025年に生まれた子の父親だけを集計した値ではありません。調査年度、出産期間、取得確認時点が異なることを押さえておく必要があります。
取得期間の集計対象も別です。こちらは、2024年4月1日から2025年3月31日までに育休を終えて復職した人を対象としています。
取得率は6年間で7.48%から50.9%へ
男性育休の普及は、特に2022年度以降に加速しました。
| 調査年度 | 男性の育休取得率 | 前回からの増減 |
|---|---|---|
| 2015年度 | 2.65% | ― |
| 2019年度 | 7.48% | ― |
| 2020年度 | 12.65% | +5.17ポイント |
| 2021年度 | 13.97% | +1.32ポイント |
| 2022年度 | 17.13% | +3.16ポイント |
| 2023年度 | 30.1% | +12.97ポイント |
| 2024年度 | 40.5% | +10.4ポイント |
| 2025年度 | 50.9% | +10.4ポイント |
2019年度から2025年度までの上昇幅は43.42ポイントです。取得率は約6.8倍になりました。
直近の動きはさらに大きく、2022年度の17.13%から3年間で33.77ポイント上昇しています。2022年10月に始まった産後パパ育休に加え、企業による制度の個別周知や取得意向の確認など、制度面の変更と重なる時期です。
ただし、この統計だけから「制度改正が上昇分のすべてを生んだ」とは断定できません。企業の人員配置、職場の理解、育休を申し出る人の意識なども同時に変化しているためです。
政府の2025年目標をわずかに上回る
政府が掲げていた男性育休取得率の目標は、2025年に50%、2030年に85%です。最新値の50.9%は、前者を0.9ポイント上回りました。
一方、2030年目標までは34.1ポイントあります。2025年度の水準から85%へ到達するには、取得が比較的進んでいない産業や小規模事業所にも広がる必要があります。
ここがポイント: 男性育休は「取る人が珍しい制度」から「対象者の半数が使う制度」へ変わった。ただし、取得期間と職場間格差を見ると、普及が完了したとはまだ言えない。
取得期間は「1か月~3か月未満」が最多
取得期間には、率の上昇だけでは見えない変化があります。
2025年度調査で、育休を終えて復職した男性の取得期間は次のとおりでした。
| 取得期間 | 男性の割合 |
|---|---|
| 5日未満 | 6.8% |
| 5日~2週間未満 | 14.1% |
| 2週間~1か月未満 | 28.0% |
| 1か月~3か月未満 | 30.3% |
| 3か月~6か月未満 | 10.1% |
| 6か月~8か月未満 | 5.2% |
| 8か月以上 | 合計5.7% |
最も多いのは「1か月~3か月未満」の30.3%です。「2週間~1か月未満」も28.0%を占め、この2区分だけで58.3%になります。
期間をまとめると、分布がより分かりやすくなります。
- 2週間未満:20.9%
- 1か月未満:49.0%
- 1か月以上:50.9%
- 3か月以上:21.0%
取得者の半数強が1か月以上休んでいる一方、ほぼ半数は1か月未満です。取得率50.9%と組み合わせると、対象となる男性全体のうち「1か月以上取得した人」が約4人に1人という概算になります。
この概算は、取得率と期間分布という対象期間の異なる集計を単純に掛けた参考値です。厳密な実人数比ではありません。
短期取得は減ったが、過去との単純比較はできない
2021年度調査では、男性取得者のうち2週間未満が51.5%でした。2023年度は37.7%、最新の2025年度は20.9%です。
同時に「1か月~3か月未満」は、2021年度の24.5%、2023年度の28.0%、2025年度の30.3%と増えています。分布だけを見れば、数日から数週間の休業に集中していた状態から、1か月以上へ重心が動いています。
ただし、厚生労働省は2021年度と2023年度について延べ人数で集計しており、2025年度とは単純比較できないと注記しています。同じ人が育休を分割して取得した場合、過去調査では複数人として数えられることがあるためです。
そのため、「2週間未満が何ポイント減った」と厳密に評価するより、短期取得への偏りが弱まる方向が見えると捉えるのが妥当です。
産業別では取得率に39.2ポイントの差
全国平均が50%を超えても、どの職場でも同じように取得できるわけではありません。
2025年度の男性育休取得率を産業別に見ると、最高は複合サービス事業の70.1%、最低は不動産業・物品賃貸業の30.9%でした。差は39.2ポイントです。
取得率が高い産業
- 複合サービス事業:70.1%
- 学術研究、専門・技術サービス業:66.9%
- 金融業、保険業:62.3%
- 鉱業、採石業、砂利採取業:59.4%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:58.2%
取得率が低い産業
- 不動産業、物品賃貸業:30.9%
- 生活関連サービス業、娯楽業:37.5%
- 5~29人規模の事業所:42.9%
- 卸売業、小売業:44.9%
- 建設業、宿泊業・飲食サービス業:各45.0%
産業別の数値には標本誤差があり、回答事業所の構成にも左右されます。特に対象数が少ない産業の順位を固定的な優劣として読むべきではありません。
それでも、対面サービス、現場作業、交代勤務などが多い職場では、休業中の代替要員を確保しにくい可能性があります。統計が示すのは取得率の差までであり、それぞれの差が人手不足や職場文化のどちらによって生じたかは、この調査だけでは分かりません。
事業所規模でも17.8ポイントの開き
規模別では、大規模な事業所ほど取得率が高い傾向が見えます。
- 500人以上:60.7%
- 100~499人:54.6%
- 30~99人:49.9%
- 5~29人:42.9%
500人以上と5~29人の差は17.8ポイントです。
大規模事業所は、代替要員の調整や業務の引き継ぎに使える人員が比較的多く、制度を運用する担当部署も置きやすいと考えられます。ただし、これはデータと整合する仮説であって、調査が直接確認した原因ではありません。
最新調査では、育児休業制度の個別周知と取得意向の確認を行っている事業所は76.9%でした。一方、取得しやすい雇用環境の整備について「いずれも行っていない」と答えた事業所も36.9%あります。
対象者へ制度を知らせることと、実際に数週間から数か月休める人員体制をつくることは別の課題です。小規模事業所の42.9%という値は、その違いを見るうえで重要です。
国際比較では「制度の長さ」と「実際の利用」を分ける
日本の制度は国際的に見て短いわけではありません。むしろ、利用できる期間は長い部類です。
OECDが2025年に公表した比較では、2024年4月時点で、父親向けに確保された有給休暇を給付率100%相当に換算した期間は、日本が31.1週で加盟国中最長でした。この換算値は、休める週数だけでなく給付率も反映した「フルレート換算」です。
一方、OECDの2026年対日経済審査は、2024年度時点の日本について次の課題を挙げています。
- 男性取得率は40.5%まで上昇
- 取得者の37.7%が2週間未満
- 58.1%が1か月未満
今回公表された2025年度調査では、取得率が50.9%へ上がり、1か月未満の割合は49.0%でした。最新値を見る限り、日本は「制度は長いが利用が少なく短い」という状態から少し前進しています。
ただし、各国で休暇の名称、取得資格、父親専用枠、給付率、集計単位が異なります。日本の取得率50.9%を、別の国の「父親が取得した割合」や「全育休日数に占める男性の割合」とそのまま比べることはできません。
国際比較で見るべきなのは、単純な順位よりも次の組み合わせです。
- 制度上、何週間取得できるか
- 休業中に所得の何割が補われるか
- 実際に何割の父親が利用したか
- 取得者が平均的にどれほど休んだか
日本では制度上の期間に対して、実際の取得期間がなお短い。この差が次の政策課題です。
都道府県別・年代別ランキングを作れない理由
このテーマでは地域差や年代差も気になりますが、雇用均等基本調査の公表値は全国集計が中心です。
産業別、事業所規模別の結果は示される一方、男性育休取得率を47都道府県で同じ条件にそろえた表や、父親の年代別に分けた全国値は公表されていません。そのため、この調査から「男性育休取得率が最も高い県」や「30代と40代の取得率の差」を作ることはできません。
育児休業給付の支給件数を都道府県別に比べる方法もありますが、件数は出生数や雇用者数が多い地域ほど大きくなります。給付件数をそのまま取得率ランキングとして扱うと、人口規模の違いを取得しやすさの差と誤認してしまいます。
地域差を正確に測るには、少なくとも次のデータが必要です。
- 配偶者が出産した男性雇用者数
- そのうち育休を取得した人数
- 雇用形態と事業所規模
- 産業構成
- 同じ取得確認期間と制度定義
現時点では、地域ランキングを無理に作るより、全国統計で確認できる産業差と規模差を追う方が確実です。
数字を読むときの注意点
取得率50.9%には、いくつかの見落としやすい制約があります。
「休んだ日数の平均」ではない
期間データは区分別の割合です。平均取得日数は示していないため、30.3%という最多区分から「平均1~3か月」と結論づけることはできません。
取得予定者を含む
取得率には、調査時点までに開始した人だけでなく、開始予定を申し出た人も含まれます。実際の取得完了者だけの割合ではありません。
自営業者や公務部門を一括した全国民の値ではない
調査対象は、指定された16大産業に属する常用労働者5人以上の民営事業所です。自営業者を含むすべての父親の割合ではなく、公務員の統計とも別です。
年度ごとに同じ人を追った調査ではない
毎年同じ父親を追跡するパネル調査ではありません。各年度の回答事業所や対象となる出産者が異なるため、個人の行動変化を示すものではありません。
取得期間は過去調査と集計方法が違う
2021年度と2023年度は延べ人数、2025年度は分割取得を考慮した集計になっています。長期推移は方向を見る材料にはなりますが、小数点単位の増減を厳密に比較する用途には向きません。
次に見るべきは「1か月以上」と職場間格差
男性育休は、取得率だけなら明確な節目を越えました。50.9%という最新値は、対象となる男性の2人に1人が利用する水準です。
次の焦点は、率の上昇が取得期間の確保につながるかです。今後の公表値では、特に次の3点が重要になります。
- 1か月以上取得する男性が50.9%からさらに増えるか
- 5~29人事業所の取得率42.9%が全国平均へ近づくか
- 取得率の低い産業と高い産業の39.2ポイント差が縮むか
2030年の85%目標へ向かうには、制度を知らせるだけでは足りません。出産直後の数日だけでなく、その後の生活を支えられる期間を確保できるか。次の統計で見るべき数字は、取得率の更新記録よりも、「どれだけ長く休めたか」と「どの職場でも使えたか」です。
