高齢の一人暮らしはどこで増えているのか 都道府県データで見る地域差と住まいの課題
結論から言うと、65歳以上の単独世帯は全国で増えています。 国勢調査ベースでは、65歳以上人口のうち一人暮らしの人は2020年に約671.7万人、65歳以上人口に占める割合は19.0%で、2010年の16.4%、2015年の17.7%から上昇しました。
しかも増え方は全国一律ではありません。東京都のように高齢者全体の割合は低めでも、一人暮らしの高齢者の比率は高い地域があり、逆に高齢化率が高くても同居が比較的多い県もあります。高齢化と「高齢の一人暮らし」は、同じ地図にはなりません。
- 2020年の65歳以上単独世帯は約671.7万人
- 65歳以上人口に占める割合は19.0%で、約5人に1人
- 都道府県差は大きく、2020年は東京都26.1%に対し山形県12.1%
- 将来推計では、65歳以上の単独世帯は2050年にさらに比重が高まる
ここがポイント: 問題は「高齢者が多い地域」だけではありません。高齢者の中で一人暮らしがどれだけ多いかを見ると、都市部と地方で別の課題が見えてきます。
使ったデータと比較条件
今回の基礎データは、主に次の3つです。
- 総務省統計局「令和2年国勢調査」
- 総務省統計局「令和2年国勢調査 最終報告書 日本の人口・世帯」
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計・都道府県別推計)令和6年推計」
比較条件も先にそろえておきます。
- 実績の地域比較: 2020年国勢調査ベース
- 将来見通し: 2020年国勢調査を基にした2050年までの推計
- 地域単位: 主に都道府県別
- ここでいう「65歳以上の単独世帯」: 65歳以上の人が1人だけで暮らす一般世帯
注意したいのは、国勢調査の「一般世帯」は老人ホームなどの施設世帯を別に扱う点です。つまり、この記事の数字は「地域で自宅や賃貸住宅などに暮らす高齢単身」を中心に見ています。
まず全国ではどこまで増えたのか
全国の長期推移を見ると、増加はかなりはっきりしています。
65歳以上単独世帯の推移
- 2005年: 386.5万
- 2010年: 479.1万
- 2015年: 592.8万
- 2020年: 671.7万
この15年で、65歳以上の単独世帯は約1.7倍になりました。
2020年時点で、65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は19.0%です。男女別では、男性15.0%、女性22.1%で、女性のほうが一人暮らし比率が高い状態が続いています。
ここで大事なのは、単に高齢者人口が増えたから件数が増えた、という話だけではないことです。65歳以上人口の中で一人暮らしが占める割合自体も、2010年16.4%から2020年19.0%へ上がっています。
地域差を見ると、都市部と地方で違う姿が出る
都道府県別に見ると、差はかなり大きいです。
高齢者のうち一人暮らしが多い県・少ない県
2020年に、65歳以上人口に占める単独世帯の割合が高かったのは次の県です。
- 東京都: 26.1%
- 大阪府: 24.0%
- 鹿児島県: 23.5%
低かったのは次の県です。
- 山形県: 12.1%
- 福井県: 13.5%
- 新潟県: 13.8%
同じ「高齢化」でも、暮らし方はかなり違うことが分かります。
高齢化率の高い県と、一人暮らし率の高い県は一致しない
2020年の65歳以上人口割合は、秋田県37.5%が最も高く、沖縄県22.6%が最も低くなっています。東京都も22.7%で低い側です。
それでも東京都は、高齢者のうち一人暮らしの割合では全国トップでした。
この差が意味するのは単純です。
- 高齢化率が高い県では、地域全体として介護、交通、医療の需要が重くなりやすい
- 一人暮らし率が高い県では、見守り、住まい確保、孤立対策の比重が大きくなりやすい
つまり、必要な対策は同じではありません。高齢者が多いだけでなく、その人たちが「誰と暮らしているか」を見ないと、地域課題を読み違えます。
住まいの数字を見ると、生活課題が少し具体的になる
2020年国勢調査の住宅データでは、65歳以上の単独世帯の住まい方にも特徴があります。
- 持ち家: 66.3%
- 民営借家: 20.4%
- 公営借家: 8.8%
- 都市再生機構・公社の借家: 2.6%
持ち家が3分の2を占めますが、裏返すと3割超は持ち家ではありません。
ここから読み取れる生活課題は、少なくとも2つあります。
持ち家中心の地域で起きやすいこと
持ち家の比率が高いと、住み慣れた地域で暮らし続けやすい半面、次の問題が出やすくなります。
- 古い住宅でのバリアフリー未対応
- 車が前提の立地で、免許返納後の移動が難しくなる
- 修繕費や固定資産税の負担が単身で重くなる
賃貸中心の地域で起きやすいこと
一方、民営借家や公営借家の比率が高い地域では、別の論点が前に出ます。
- 家賃負担の継続
- 入居継続や住み替えの不安
- 身元保証や見守り体制の不足
高齢の一人暮らしは、全国で同じ問題を抱えるわけではありません。同じ単身でも、持ち家か賃貸かで困りごとの形が変わるという点は見落としにくいところです。
将来は「75歳以上の単身」がさらに重くなる
将来推計では、増えるのは65歳以上の単身だけではありません。より高年齢の単身世帯の比重が強まります。
全国推計では、一般世帯総数に占める65歳以上単独世帯の割合は、2020年の13.2%から2050年には20.6%へ上昇する見通しです。
さらに、世帯主75歳以上の単独世帯は2020年比で1.69倍、85歳以上の単独世帯は1.88倍と見込まれています。
この変化が重いのは、75歳以上になると次の支援需要が一段と増えやすいからです。
- 通院や買い物の移動支援
- フレイルや要介護リスクへの早めの対応
- 緊急連絡、見守り、在宅サービスの確保
「単身世帯が増える」という話だけで止めるとぼやけます。実際には、後期高齢者の単身が厚くなることが、自治体や地域包括ケアにとってより大きな論点です。
都道府県別の将来差も広がる
都道府県別推計でも、上昇はほぼ全国的です。
- 2050年には、65歳以上単独世帯が一般世帯総数の20%を超える道府県が32
- 65歳以上人口に占める単身の割合は全都道府県で上昇
- 2050年でも20%未満にとどまるのは山形県のみ
- 75歳以上の単独世帯数は全都道府県で2020年より多い
- 沖縄、滋賀、埼玉、茨城では、2050年の75歳以上単独世帯数が2020年の2倍以上
ここで目を引くのは、伸びが大きい地域が必ずしも「いま最も高齢化している地域」とは限らないことです。大都市圏周辺や人口流入県でも、親世代の高齢化が進む局面に入ると、単身高齢世帯が急増します。
何が言えて、何が言えないのか
数字から言えることと、言い切れないことは分けておく必要があります。
データから言えること
- 高齢の一人暮らしは全国で増えている
- 地域差は大きい
- 高齢化率の高低と、一人暮らし率の高低は一致しない
- 将来は75歳以上、85歳以上の単身がより重くなる
このデータだけでは言い切れないこと
- 一人暮らしの増加が、そのまま孤立や困窮の増加率と一致するか
- 地域差の主因が住宅事情なのか、未婚化なのか、死別なのか
- 介護需要や医療費がどの程度増えるか
因果関係を詰めるには、所得、住宅、介護認定、交通、家族構成の追加データが必要です。今回はあくまで、世帯構成の地図から生活課題の入口を確認した段階と考えるのが妥当です。
読むときの注意点
最後に、統計の読み方として注意しておきたい点をまとめます。
- 国勢調査の地域比較は2020年時点の実績で、毎年更新ではない
- 将来推計は2020年国勢調査を基にした推計であり、実績ではない
- 「65歳以上単独世帯」と「65歳以上人口に占める単身割合」は分母が違う
- 老人ホームなどの施設居住者は、一般世帯ベースの数字とは切り分けて見る必要がある
- 長期系列では定義や不詳補完の扱いに注意がいる
次に見るべきポイント
高齢の一人暮らしを地域で考えるなら、次はこの3点を重ねて見ると実態に近づきます。
- 都道府県別の家賃、水道光熱費、持ち家率
- バス・鉄道・病院までのアクセス
- 要介護認定率や75歳以上人口の増え方
高齢者が多い県と、高齢者の一人暮らしが多い県は同じではありません。自治体の見守り、住まい支援、移動支援を考えるときは、まずこの違いを押さえるところから始まります。
