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水道使用量は本当に減っているのか 公的データで見る家庭の節水傾向

水道使用量は本当に減っているのか 公的データで見る家庭の節水傾向

家庭の水道使用量は、長い目で見ると減っています。日本全体では、1人1日平均給水量が1990年の394リットルから2021年は330リットルまで下がりました。

ただし、「毎年ずっと同じペースで減っている」とまでは言えません。全国値はピーク後に緩やかに下がってきた一方、都市ごとに水の使い方や集計年は違い、家庭用だけをきれいに横並びで比べられる統一データは限られます。

  • 全国の生活用水は、国土交通省資料で1998年ごろがピークと整理されている
  • 厚生労働白書掲載データでは、1人1日平均給水量は1990年394L→2021年330L
  • 都市の家庭用では、福岡市約200L、東京都221L、仙台市約220L、大阪市249Lという差が見える
  • 節水機器の普及や人口構成の変化は背景として考えられるが、データだけで原因を1つに断定はできない
目次

まず、どのデータで見るべきか

水道使用量の話は、似た数字が多く、指標を混ぜると読み違えやすいテーマです。今回は次の公的資料を軸に見ます。

  • 全国の長期推移: 厚生労働白書資料編に掲載された「上水道における給水量の推移」
  • 全国の大きな流れ: 国土交通省「水資源の利用状況」
  • 直近の全国総量: 日本水道協会「日本の水道の現状」
  • 都市の家庭用の目安: 東京都水道局、大阪市水道局、仙台市水道局、福岡市水道局の公開資料

ここでいう「給水量」は、水道事業者が供給した水量ベースです。各家庭で実際にどう使われたかを完全に表す数字ではありませんが、長期の傾向を見るには最も使いやすい統計です。

全国ではどれだけ減ったのか

結論を先に言うと、全国ではピーク後の減少傾向がはっきり出ています。

厚生労働白書資料編の「上水道における給水量の推移」によると、全国の1人1日平均給水量は次のように動いています。

  • 1990年: 394リットル
  • 2000年: 381リットル
  • 2010年: 346リットル
  • 2015年: 330リットル
  • 2021年: 330リットル

同じ資料では、1日平均給水量そのものも1990年の4,334.8万立方メートルから、2021年は3,996.2万立方メートルへ下がっています。給水人口は1990年の1億888万5千人から2021年は1億2,290万3千人へ増えているので、水道を使う人が増えても、1人あたりでは減っている形です。

さらに、日本水道協会の公開資料では、年間給水量のピークは1997年度の170.62億立方メートルで、2022年度は約147億立方メートルでした。国土交通省も、生活用水の使用量は1998年ごろがピークで、以後は緩やかな減少傾向と整理しています。

ここがポイント: 全国データで見る限り、「家庭や都市の水の使い方はピーク時より小さくなっている」と言ってよい。ただし、それは急減ではなく、20年以上かけた緩やかな変化です。

都市ごとに見ると差はある

全国の傾向だけでは、家庭の実感に結びつきにくいので、自治体の公開資料で家庭用の目安も見ます。

家庭で1人が1日に使う水の目安

  • 福岡市: 約200リットル(2023年度の福岡市水道局統計ベース)
  • 仙台市: 約220リットル(2022年度)
  • 東京都: 221リットル(2021年度)
  • 大阪市: 249リットル(2021年度)

この並びだけでも、家庭用の水使用は「全国どこでも同じ」ではありません。200リットル前後の都市もあれば、250リットル近い都市もあるということです。

東京都水道局は、2020年度の生活用水実態調査として、1か月あたりの平均使用水量も示しています。

  • 1人世帯: 8.1立方メートル
  • 2人世帯: 14.9立方メートル
  • 3人世帯: 19.9立方メートル
  • 4人世帯: 23.1立方メートル

1人暮らしでも固定的に必要な炊事、洗面、トイレの水はあるため、人数が半分になっても使用量が単純に半分にはなりません。近年は世帯人数の縮小が進んでいるので、人口だけでなく世帯構成の変化も、水使用の見え方を変える要因になります。

福岡市の内訳は「家庭が中心」

福岡市の2023年度資料では、1日平均給水量は約42万1,990立方メートルで、このうち家庭が31万8,573立方メートルでした。家庭向けが全体の大きな部分を占めています。

同市は節水意識の調査も公表しており、2026年4月公表ページでは「節水派」が91.3%でした。意識調査だけで使用量の増減を決めつけることはできませんが、節水が市民向けの継続的な政策テーマになっていることは読み取れます。

では、なぜ減ってきたのか

全国統計から確実に言えるのは「減った」という事実までです。原因は複数あります。

考えられる背景としては、次の要素が重なっているはずです。

  • 節水型トイレ、洗濯機、シャワー、水栓の普及
  • 事業所を含む都市活動用水の効率化
  • 人口減少や高齢化、世帯人数の縮小
  • 料金意識の高まり
  • 渇水経験のある地域での節水啓発の定着

ただし、全国の給水量データだけで「どれが何割効いた」とまでは分かりません。たとえば、節水機器が普及しても、在宅時間の増減で一時的に水使用が上ぶれる年はありえます。節水機器の効果と暮らし方の変化は、同じ統計の中で混ざって出てくるからです。

読み解くときの注意点

このテーマは、数字の見た目ほど単純ではありません。見るときの注意点を分けておきます。

1. 「家庭用水」と「1人1日平均給水量」は同じではない

全国の1人1日平均給水量には、家庭以外の用途も含まれます。家庭の節水傾向を考える材料にはなりますが、家庭だけの純粋な使用量ではありません。

2. 年度と年が混ざる

水道統計は年度ベース、白書や自治体資料は年ベースの説明が混ざることがあります。1997年度のピーク、1998年ごろのピークという表現差は、資料の切り方の違いによる部分があります。

3. 都市比較は定義差に注意

東京は「家庭で一人が1日に使う水の量」、大阪は「家庭用1人1日平均使用水量」、福岡は家庭向け使用量を人口で割った説明資料です。近い数字ですが、完全に同一条件の比較ではありません。

4. 料金は使用量ほど単純に下がらない

一般家庭の水道料金は、基本料金と従量料金の組み合わせです。使用量が少し減っても、請求額が同じような幅で下がるとは限りません。家計への影響を見るなら、使用量データだけでなく料金表も別に確認する必要があります。

家庭の節水傾向をどう受け止めるべきか

ここまでのデータから、次の整理が妥当です。

  • 全国では、水道使用量はピーク時より減っている
  • 家庭でも節水方向の変化は起きているとみてよい
  • ただし、その背景は節水意識だけではなく、機器の変化や世帯構成、都市活動の変化も大きい
  • 地域差は残っており、同じ「家庭用」でも都市によって1人1日あたり50リットル近い開きがある

水道使用量の減少は、家計の節約だけの話ではありません。水源開発、配水施設の更新、渇水対策、料金設計にもつながる数字です。今後は、人口減少で需要が細る一方、老朽管の更新費は重くなるという逆方向の圧力も強まります。

次に見るべきなのは、「どれだけ使ったか」だけではなく、使用量が減る時代に水道料金とインフラ維持をどう両立させるかです。節水が進むほど、水道事業の経営はむしろ難しくなる地域も出てきます。

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