光回線は4000万契約を超えた――20年の普及と県別の差をどう読むか
日本の光回線は、2005年末の464万契約から、2025年3月末には約4099万契約へ増えた。約20年で8.8倍になり、固定ブロードバンドの中心を占めるようになった。
ただし、光回線の契約数が多いことと、すべての家庭が光回線を使っていることは別だ。 2025年3月末の「契約数÷世帯数」で見ると、全国は66.9%、滋賀県は79.5%。普及を読むには、契約の総数、世帯数に対する割合、利用可能な地域の広さを分ける必要がある。
この記事では、全国の長期推移と県別の比較から、次の点を確かめる。
- 光回線は増え続けているが、直近の増加率は小さくなっている。
- 固定回線全体の変化には、新規利用だけでなくDSLから光への移行も含まれる。
- 世帯数に対する契約数の割合は、家庭の実際の利用率と一致しない。
- 引っ越しや回線選びでは、県の平均より建物ごとの設備確認が重要になる。
使用データ――長期推移と地域差は、比較する時点をそろえる
全国の推移は2005年末から2025年3月末、県別の割合は2025年3月末で比較する。
全国の主な資料は、経済産業省の公開報告書、総務省統計局の『日本統計年鑑』と『日本の統計2026』だ。地域差には、総務省の数値を掲載した滋賀県の公開資料を使う。
- 全国の長期推移: FTTH、DSL、CATVの契約数。2005年・2008年は暦年末、その後の比較点は年度末。
- 県別の比較: FTTH契約数を住民基本台帳の世帯数で割った「世帯普及率」。2025年3月末の全国値と上位3県を比較する。
- 最新動向: 2026年6月末の公表値を補足する。長期比較の表とは分けて扱う。
FTTHは、光ファイバーでネットワークに接続するサービスを指す。統計上は、集合住宅内の一部に電話線を使うVDSL方式なども含む。したがって、FTTH契約数は「各部屋まで光ファイバーが届く住宅の数」ではない。
『日本の統計2026』は2026年2月刊行で、原則として2025年11月30日までに入手した資料を収録している。書名の「2026」と、契約数の対象時点である「2025年3月末」を混同しないことが大切だ。総務省統計局『日本の統計2026』
約20年で8.8倍――光回線の増加には、回線方式の交代も含まれる
光回線は大きく増えたが、そのすべてが固定インターネットを新しく使い始めた契約ではない。
以下は全国の契約数を万契約に換算したものだ。固定回線の方式がどう変わったかを見るため、FTTH、DSL、CATVを並べた。
| 時点 | FTTH | DSL | CATV |
|---|---|---|---|
| 2005年12月末 | 464万 | 1448万 | 324万 |
| 2008年12月末 | 1442万 | 1159万 | 408万 |
| 2015年3月末 | 2667.6万 | 375.3万 | 642.8万 |
| 2019年3月末 | 3166.0万 | 173.0万 | 685.5万 |
| 2023年3月末 | 3951.8万 | 35.7万 | 627.1万 |
| 2024年3月末 | 4034.2万 | 22.8万 | 612.7万 |
| 2025年3月末 | 4099.1万 | 3.6万 | 600.9万 |
出典:2005年・2008年は経済産業省の公開報告書、2015年・2019年は第70回日本統計年鑑、2023~2025年は『日本の統計2026』。単位は万契約。FWAなどの無線方式はこの表に含めていない。
DSL中心から、光中心へ
2005年末には、DSLが1448万契約あり、光回線の約3.1倍だった。ところが2008年末には、光が1442万契約、DSLが1159万契約となり、両者の大小関係は逆転している。
2025年3月末の光回線は4099.1万契約。2005年末からの増加は3635.1万契約で、倍率は約8.8倍だ。一方、DSLは同じ比較で1448万から3.6万へ減った。
この動きは、固定インターネットの拡大とともに、接続方式の中心が電話線から光へ移ったことを示している。ただし、この集計は同じ契約者を追跡していない。DSLの解約者が全員FTTHへ移った、とまでは言えない。
光だけを見ると、固定回線全体の伸びを大きく感じやすい
2015年3月末から2025年3月末までに、FTTHは1431.5万契約増えた。増加率は約53.7%になる。
同じ期間のFTTH・DSL・CATVの合計は、3685.7万から4703.6万へ増加した。こちらの増加率は約27.6%だ。
光回線の伸びは、3方式合計の伸びより大きい。 DSLの減少を伴うため、光だけの増加率を「固定インターネットを使う家庭の増加率」と読み替えると、変化を過大に捉えてしまう。
2025年3月末には、この3方式の合計に占めるFTTHの割合が約87.1%になった。これは回線方式の構成比であり、日本の世帯の87.1%が光を使っているという意味ではない。
直近は増加率が縮小――4000万契約を超えてからの動き
光回線の契約数は増加しているが、直近の年度末比較では増えるペースが落ちている。
『日本の統計2026』に掲載された値で計算すると、変化は次のとおりだ。
- 2023年3月末→2024年3月末: 82.4万契約増、約2.1%増。
- 2024年3月末→2025年3月末: 64.9万契約増、約1.6%増。
契約の増加が止まったわけではない。1年間で約65万契約増えている。ただ、増加幅は前年より17.5万契約小さかった。
最新の補足では、総務省の2026年6月末の数値を紹介するビズリサーチの集計記事が、FTTHを4167万契約、前年同期比1.3%増としている。全国の公表系列は、2026年度第1四半期分まで更新されている。総務省の四半期データ公表ページ
ただし、2026年6月末の値と、表に使った統計年報の2025年3月末の値を接続して増加率を計算することは避けた。公表時点の違いや過去値の改訂を確認する必要があるためだ。最新値は規模を把握する補足、年度末の表は推移を見る材料として読む。
増加率の縮小だけから、料金が原因なのか、無線回線への代替が進んだのかを決めることもできない。契約数の統計が直接示すのは、一定時点の契約の残高だ。契約・解約の理由は別の調査で確かめる必要がある。
県別では滋賀79.5%、全国66.9%――人口の多さとは違う差が見える
世帯数で割ると、光回線の普及は大都市の契約総数とは別の見え方になる。
滋賀県が公開する資料では、2025年3月末のFTTH世帯普及率の上位3県は、滋賀、愛知、静岡だった。この資料は全国47都道府県の比較結果から上位を掲載しているため、ここでは下位県や全国の中央値は示さない。滋賀県「滋賀県なんでも一番について」
| 地域 | 世帯普及率 | 全国との差 |
|---|---|---|
| 滋賀県・全国1位 | 79.5% | +12.6ポイント |
| 愛知県・全国2位 | 79.3% | +12.4ポイント |
| 静岡県・全国3位 | 77.9% | +11.0ポイント |
| 全国 | 66.9% | 基準 |
対象は2025年3月末。世帯普及率はFTTH契約数を住民基本台帳の世帯数で除した値。全国との差は掲載値から計算した。
滋賀県と愛知県の差は0.2ポイントと小さい。一方、滋賀県と全国の差は12.6ポイントある。順位だけを見るより、差の幅を確かめた方が地域の位置づけをつかみやすい。
「100世帯に約80契約」と「80世帯が利用」は同じではない
この指標の分子は契約数、分母は世帯数である。滋賀県の79.5%は、100世帯当たり約79.5契約に相当する。
しかし、契約数には法人契約や同一世帯の複数契約が含まれ得る。一方、集合住宅で共有する回線では、居住世帯数と統計上の契約数が一致しない場合もある。
したがって、全国66.9%の残り33.1%を、そのまま「光を使っていない家庭」とすることはできない。まして「インターネットを使えない家庭」の割合でもない。CATVや携帯電話回線など、別の接続手段があるためだ。
普及率の高さを、地域の豊かさや通信品質に読み替えない
世帯当たりの契約数が高い地域でも、その理由は一つに決まらない。
確認すべき候補には、法人契約の数、世帯構成、住宅の種類、CATVなど他方式の利用状況がある。これらをそろえずに、県民の所得やデジタル活用の程度が原因だと断定することはできない。
また、FTTHの契約数は速度を測った統計ではない。県別の順位から、自宅での夜間の通信速度や、オンライン会議の安定性を判断することもできない。
「契約している」と「契約できる」を分ける――整備率は別の指標
利用できるエリアの広さを知りたい場合は、契約数ではなくFTTH世帯カバー率を見る。
総務省のブロードバンド基盤整備率調査は、事業者の提供エリア情報などから推計した「利用可能世帯数」を総世帯数で割る。2025年3月31日を基準とする調査結果は、2026年8月28日に公表された。総務省「令和6年度末ブロードバンド基盤整備率調査」
指標の用途は、次のように分かれる。
- 契約総数: 回線の市場規模や接続方式の交代を見る。
- 契約数÷世帯数: 地域の規模を調整して、契約の多さを比べる。
- 世帯カバー率: 光回線を利用できると推計される世帯の広がりを見る。
- 家庭の利用率: 世帯を対象とした調査で、実際の利用状況を見る。
ここがポイント: 光回線を「使える地域」に住んでいても、光を契約しているとは限らない。逆に、県全体の契約率が高くても、特定の住宅に引き込めることは保証されない。
世帯カバー率は事業者情報などから一定の仮定で推計するため、誤差がある。総務省も、地理的条件や建物の設備状況によって実際の提供状況が異なる場合があると説明している。
地域の未整備を考えるなら、このカバー率と市区町村別の資料が必要だ。契約率の低い県だけを見て、回線整備が遅れていると結論づけることはできない。
固定ブロードバンドの合計は、含める方式によって変わる
「固定ブロードバンドは何万契約か」を比較するときは、合計の定義を先に確認する必要がある。
本記事の長期比較は、FTTH・DSL・CATVの3方式でそろえた。これは光への移行を見やすくするための集計であり、すべての固定利用向けサービスを足した数ではない。
例えば、携帯電話網などを使うホームルーターを合計に含める資料と、含めない資料では、同じ時期でも総数やFTTHの構成比が異なる。『日本の統計2026』にもBWAなどの契約数が掲載されているが、その全数を家庭の固定回線契約として足すことはできない。
記事や資料の数字が食い違って見えた場合、まず確認したいのは次の4点だ。
- 対象日は3月末、6月末、12月末のどれか。
- CATVはどの回線方式を対象としているか。
- FWAやホームルーターを含めているか。
- 過去値が改訂され、異なる版の資料を比べていないか。
同じ名称の合計でも、中身がそろっていなければ増減を比較できない。長期推移では特に、最新の数字を一つ足す前に、過去の系列と定義がつながるかを確かめたい。
暮らしで見るべき差は、県の順位より建物の接続条件
全国の普及が進んでも、自宅で使える回線は住所と建物によって決まる。
FTTHが4000万契約を超えたことは、光回線が広く使われる接続手段になったことを示す。一方、契約数の伸びが小さくなっても、それだけで通信への需要が弱くなったとは言えない。既存の1契約で使うデータ量が増えても、契約総数は変わらないからだ。
地域を見る際にも、今後の変化は一方向ではない。
- 契約数が増え、世帯当たりの割合が下がる場合: 世帯数がそれ以上に増えていないか確認する。
- FTTHが増え、固定回線の合計が横ばいの場合: 他方式からの移行が進んでいないか確認する。
- カバー率が高く、契約率が低い場合: 料金、住宅設備、他方式の利用などを別の資料で確かめる。
引っ越し先や自宅の通信環境を判断するときは、県別の普及率を入口にしつつ、最後は次の条件を確認する必要がある。
- 番地・部屋番号まで含めて、回線を提供できるか。
- 建物内が光配線方式、VDSL方式などのどれに当たるか。
- 新たな引き込み工事や管理者の承諾が必要か。
- 既設のインターネット設備と、希望する契約の関係はどうなっているか。
光回線の普及は、契約総数だけなら約20年で8.8倍に進んだ。これから確かめるべきなのは、総数の増加に加えて、必要な住宅に接続できるか、その建物でどの方式が使えるかという差だ。
