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5G人口カバー率98.6%の意味――基地局の増加と、全国平均に隠れる地域差

都市から山間部へ広がる携帯電話の基地局と通信エリアを表したイメージ。

5G人口カバー率98.6%の意味――基地局の増加と、全国平均に隠れる地域差

日本の5G人口カバー率は、2025年度末に98.6%へ達した。居住人口を基準にすると全国の大部分をカバーしているが、これは携帯電話事業者4社のエリアを重ね合わせた数字であり、契約中の1社がどこでも使えることや、通信速度を保証する数字ではない。

基地局も導入初期から大きく増えた。一方、都道府県別の人口カバー率には89.2%〜99.9%の差が残る。今の5Gを理解するには、人口をどこまでカバーしたかと、どのような設備を増やしたかを分けて読む必要がある。

この記事で分かることは、次の3点だ。

  • 人口カバー率は2021年度末の93.2%から、2025年度末の98.6%へ上昇した。
  • 基地局数の増加と、カバー率の上昇は同じ速さでは進まない。
  • 全国平均だけでは、県内の未整備地域や、利用者が体感する通信品質を判断できない。
目次

使用データは「年度末」と「集計範囲」をそろえて読む

人口カバー率の最新値と基地局数の資料は、公表時期も対象時点も異なる。

本記事は2026年10月8日時点で確認できた資料を用い、全国の携帯電話事業者による5G整備を対象とする。工場などが独自に構築するローカル5Gの局数は、ここで扱う全国携帯網の基地局数に足していない。

主な資料は次のとおり。

  • 人口カバー率の最新値:総務省が2026年7月27日に公表した2025年度末、すなわち2026年3月末の整備状況。全国値と県別の主要数値は、発表内容を掲載したBUSINESS NETWORKの記事で確認した。
  • 導入初期の基地局数・人口カバー率:内閣府の2024年2月20日の会議に提出された総務省資料。2020〜2022年度末の実績を使う。
  • 2023年度末の整備状況:消防庁が掲載する総務省公表資料の転載と、2025年10月15日の総務省講演資料。
  • 直近の基地局数の補足:令和8年版情報通信白書。2025年3月時点のNSA方式とSA方式を合わせた局数を確認する。

「2025年度末」は2026年3月末を指す。以下では暦年と年度を混同しないよう、時点を併記する。また、基地局数は異なる資料の数値を無条件につないで増加率を計算せず、丸め方や集計範囲が分かる形で示す。

人口カバー率は93.2%から98.6%へ、上昇幅は縮小

全国値は高い水準に達し、直近の伸びは年0.2ポイントになった。

携帯電話事業者4社のエリアを重ね合わせた人口カバー率は、次のように推移している。2021・2022年度末は総務省の会議資料、2023年度末は消防庁掲載資料、2024・2025年度末は最新公表を伝える記事に基づく。

対象年度末実際の時点全国人口カバー率前年度との差
2021年度末2022年3月末93.2%比較対象を掲載せず
2022年度末2023年3月末96.6%+3.4ポイント
2023年度末2024年3月末98.1%+1.5ポイント
2024年度末2025年3月末98.4%+0.3ポイント
2025年度末2026年3月末98.6%+0.2ポイント

4年間の上昇は5.4ポイントだ。「5.4%増」ではなく、割合の差を表す「5.4ポイント上昇」と読む。

上昇幅が小さくなった理由の一つは、指標の上限が100%だからだ。93.2%の時点で未カバー部分は6.8%あったが、98.6%では1.4%に縮まる。

ただし、伸びの鈍化だけで設備投資が止まったとは判断できない。すでにカバーしている地域に基地局を追加しても、その地域の人口は二重には数えない。混雑する場所の容量を増やす整備は、人口カバー率をほとんど動かさない場合がある。

逆に、人口カバー率が上がっても、以前から使えていた地域の通信速度が上がったとは限らない。この指標が測るのはエリアの広がりであり、速度の改善ではない。

基地局は数万局から数十万局へ、ただし局数の定義に注意

基地局整備は大きく進んだが、資料間の数値差まで設備の増減と解釈してはいけない。

導入初期の総務省資料と、その後の公表資料には次の実績が示されている。

  • 2020年度末:約2.1万局。
  • 2021年度末:約8.8万局。
  • 2022年度末:約17.0万局。
  • 2023年度末:約26万局。2025年10月の総務省講演資料に掲載された実績値。
  • 2025年3月時点:約30.7万局。令和8年版情報通信白書に掲載された、NSA方式とSA方式を合わせた基地局数。

最初の3年を見るだけでも、約2.1万局から約17.0万局へ増えたことが分かる。その後も数十万局規模へ整備が進んでいる。

一方、最後の30.7万局は白書の集計値である。年度末整備計画の局数と、電波利用状況調査に基づく局数を比較する際は、対象設備や調査時点の注記を確認する必要がある。ここでは一続きの厳密な系列として、全期間の倍率や年間増加数を算出していない。

基地局数はアンテナ塔の本数ではない

局数から、そのまま街に立つ鉄塔の本数を想像するのは適切ではない。

一つの設置場所に複数の事業者や周波数帯の設備が置かれることもある。加えて、屋内小型基地局や中継局をどこまで含むかによって集計結果は変わる。比較する資料の注記を読まず、局数だけで事業者の通信品質を順位付けすることはできない。

人口カバー率との関係も単純ではない。人口が多い未整備地域を新たにカバーする1局と、すでにカバー済みの地域で通信容量を増やす1局では、全国のカバー率に与える変化が違う。

SA対応局の増加は別の変化を示す

白書では、2025年3月時点の約30.7万局のうち、SA方式の通信が可能な基地局を15.6万局としている。前年より5.1万局増えた。

NSAは4Gの設備と組み合わせて5Gを提供する方式、SAは5Gの中核設備を使う方式だ。SA対応局の増加は、エリアを広げるだけでなく、ネットワークの機能を更新する動きとして読むことができる。

ただし、SA対応基地局があることと、利用者がSAのサービスを使えることは別だ。端末や契約、提供エリアなどの条件も関わるため、15.6万局をそのまま利用者の割合に置き換えることはできない。

都道府県別では最大10.7ポイントの差が残る

全国98.6%でも、すべての県が同じ水準に達しているわけではない。

2025年度末の県別人口カバー率は89.2%〜99.9%だった。以下は最新公表を伝えるBUSINESS NETWORKと電波タイムズの記事で確認できる主要県の抜粋であり、全47都道府県のランキングではない。

地域5G人口カバー率全国値との差
神奈川県・大阪府・沖縄県各99.9%各+1.3ポイント
全国98.6%基準
岩手県93.3%−5.3ポイント
高知県92.5%−6.1ポイント
島根県89.2%−9.4ポイント

最高値と最低値の差は10.7ポイント。全国値だけを見ていると、この幅は見えない。

全国の人口カバー率は、県別割合を単純平均した数字でもない。各地域の人口を踏まえて集計するため、人口の多い地域の整備は全国値に大きく反映される。人口の少ない県に未整備地域が残っていても、全国値は高くなり得る。

ただし、県全体の89.2%という数値から「島根県ではどこでも5Gが使いにくい」と結論付けることもできない。県内の市街地と山間部、居住地と移動経路では条件が違う。県別値は地域差を見つける入口であり、住所や道路単位のエリア確認を代わりに行うものではない。

98.6%は「全国土の98.6%でつながる」という意味ではない

人口カバー率には、契約先・位置・通信性能という三つの読み違いが起こりやすい。

4社合算は、自分の契約先のエリアと違う

全国値は4社のカバーエリアを重ね合わせ、重複を除いた値だ。ある地域を1社だけがカバーしていても、全国の整備状況には反映される。

その地域で別の会社を契約している人が、同じように5Gを使えるとは限らない。全国値は国全体の整備を評価するのに適しているが、乗り換え先を選ぶには各社のエリア情報が必要になる。

500m区画の判定は、区画内の全地点を保証しない

人口カバー率は、全国を約500m四方の区画に分け、5G通信が可能な区画の人口を合計して算出する。

内閣府の会議資料は、区画内の50%以上で通信可能なら整備済みと判定する方法の限界を指摘している。同じ区画の中にも通信できない場所が残り得るためだ。

また、人口を基準にする指標では、人が住んでいない山間部や道路の通信環境を十分に表せない。居住地の整備が進んでも、旅行先や通勤途中の経路で同じ条件が続くとは限らない。

ここがポイント: 人口カバー率98.6%は、4社合算で居住人口をどこまでカバーしたかを示す。契約中の1社、区画内の全地点、移動経路の全区間で5Gが使えることを保証する数字ではない。

5G対応エリアと、高速通信ができるエリアは一致しない

人口カバー率には、もともと4G向けに割り当てられた周波数を使う5Gも含まれる。したがって、高いカバー率だけで、5G向けの高周波数帯が全国に同じ密度で整備されたとは判断できない。

総務省の講演資料は、低い周波数帯は広域をカバーしやすく、高い周波数帯は大量の情報を伝送できる一方、カバー範囲が小さいという違いを示している。

これは設備整備の目的の違いでもある。広い地域で接続できることを優先する整備と、人が集まる場所で多くの通信を処理する整備では、使う周波数や配置が変わる。どちらが進んだかを、人口カバー率一つで測ることはできない。

2030年の目標は、全国平均と各県の底上げを分けて見る

今後は全国値の小さな上昇より、各県の未整備部分と通信品質の改善が重要になる。

2025年6月策定のデジタルインフラ整備計画2030は、2030年度末に全国・各都道府県の5G人口カバー率99%、基地局数60万局を目標としている。いずれも実績ではなく、今後の整備目標だ。

全国値98.6%から99%までの差は0.4ポイント。一方、2025年度末の島根県89.2%から99%までの差は9.8ポイントになる。全国目標への接近と、各県の目標達成は難しさが異なる。

人口が少ない未整備地域を整備しても全国値の変化は小さい。だからこそ、全国値が99%に達した後も、県別の達成状況を確認する必要がある。

今後の公表では、次の変化を分けて見ると進捗を読みやすい。

  • 県別カバー率が上がる:これまでカバーされていなかった居住地域への広がりを確認する。
  • 基地局やSA対応局が増える:エリア拡大に加え、容量や機能の更新を確認する。ただし速度改善は別途検証する。
  • カバー率の変化が小さい:整備停滞と決め付けず、既存エリアの設備追加や高周波数帯の展開を見る。

生活者が携帯回線を選ぶ際の確認点も具体的だ。全国98.6%という数字に加え、自宅、職場、通勤経路、よく訪れる場所について、契約候補の会社がどこまでカバーしているかを確かめる。国全体の整備が進んだ今も、最後に必要なのは、自分が使う場所と契約先を合わせた確認である。

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