美容室は増え、理容店は減る 店舗数と家計支出で読む身だしなみ習慣の変化
結論から言うと、身だしなみの支出先は同じではなくなっています。 店舗数では美容所が増え続ける一方、理容所は減少が続いています。家計支出でも、昔からある「理髪料」や「パーマネント代」だけを見ると伸びは弱く、広い美容サービスを含む支出の比重が高まっています。
とくに目立つのは、理容と美容で供給の方向が逆になっていることです。2024年3月末時点で、美容所は27万4,070施設、理容所は11万297施設でした。家計調査の2025年平均では、二人以上の世帯の年間支出は理髪料5,111円、カット代7,133円、パーマネント代2,231円、他の理美容代2万5,613円となっており、いまの支出の中心は「カットやパーマだけ」ではないことが見えてきます。
- 店舗数の最新公表値では、美容所は前年比1.5%増、理容所は1.9%減
- 家計支出では、2025年に理髪料は前年比4.2%増、カット代は2.0%増、パーマネント代は8.2%減
- 「他の理美容代」は2025年に2万5,613円で前年比6.0%増
- 地域差も大きく、2024年の主要52都市では理髪料もカット代も上位都市と下位都市で2倍超の差がある
使ったデータと比較条件
今回見たのは、主に次の3系統です。
- 厚生労働省「理容業概要」「美容業概要」
- 2024年3月末時点の理容所数・美容所数
- 総務省統計局「家計調査」
- 2025年平均の二人以上の世帯における年間支出
- 総務省統計局「全国家計構造調査」
- 2024年調査の総世帯ベースで、理美容サービスの内訳を確認
ここで注意したいのは、店舗数は年度末時点、家計支出は暦年平均だという点です。両者は同じ日付の統計ではありません。今回は「直近で公表されている最新値」を並べて、方向感を読み取っています。
まず店舗数はどう動いたのか
供給側の変化はかなりはっきりしています。
- 美容所: 27万4,070施設
- 理容所: 11万297施設
- 基準日: いずれも2024年3月31日現在
厚生労働省によると、美容所は前年度比1.5%増でした。反対に理容所は1.9%減です。件数の差だけでなく、増えている業態と減っている業態が分かれているのが重要です。
なぜこの差が重いのか
理容所と美容所は、どちらも髪を整える場所ですが、統計上は別の施設です。店舗数の動きが逆ということは、単に「髪にお金をかけなくなった」とは言えません。むしろ、利用の受け皿が美容側へ寄っている可能性を示します。
美容所が増えている背景としては、カットだけでなく、カラー、トリートメント、まつげ、着付けなど周辺サービスまで含めた需要の受け皿になりやすいことが考えられます。ただし、これは店舗数と支出項目の並びから読める範囲の話で、因果関係を統計だけで断定はできません。
ここがポイント: 店舗数の最新値だけを見ると、「身だしなみ需要が消えた」のではなく、理容から美容へ、さらに広い美容サービスへ重心が移っていると読む方が実態に近いです。
家計支出では何が増え、何が減ったのか
2025年の家計調査で、二人以上の世帯の年間支出を見ると次の通りです。
- 理髪料: 5,111円(前年比4.2%増)
- パーマネント代: 2,231円(前年比8.2%減)
- カット代: 7,133円(前年比2.0%増)
- 他の理美容代: 25,613円(前年比6.0%増)
この並びで最も大きいのは「他の理美容代」です。金額は理髪料とカット代を大きく上回ります。
「他の理美容代」が大きい理由
この項目には、ヘアカラーだけでなく、エステ、ネイル、アイビューティなども含まれます。つまり、家計の中で伸びているのは、昔ながらの理容・美容の定番メニューだけではありません。
2024年の全国家計構造調査を基にした整理でも、総世帯の1世帯当たり1か月支出は次のようになっていました。
- 理髪料: 359円
- パーマネント代: 153円
- カット代: 359円
- 他の理美容代: 2,003円
この時点でも、広い美容サービスを含む支出が中心でした。利用の主戦場が「髪を切る」「パーマをかける」だけではなくなっていることが、別の統計でも確かめられます。
物価上昇の中でも、理美容の動きは一様ではない
2024年平均の消費者物価指数では、理美容サービスは前年比1.5%上昇でした。
ただ、支出の動きは価格上昇だけでは説明しきれません。2025年は理髪料とカット代が増えた一方で、パーマネント代は減りました。同じ「理美容サービス」でも、メニューごとに動きが分かれています。
読み取りやすい点を整理すると、次のようになります。
- 理髪料: 金額は持ち直し
- カット代: 増加基調
- パーマネント代: 弱い
- 他の理美容代: 伸びが目立つ
このため、「美容室・理容室の利用は増えたのか減ったのか」という問いに一言で答えるのは乱暴です。定番メニューの中でも差があり、さらに成長しているのは周辺美容サービスを含む領域です。
地域差はどこに出ているか
家計調査の主要52都市ランキングを見ると、地域差もかなり大きいです。
2024年の年間支出額では、理髪料はさいたま市が7,168円で1位、那覇市が2,610円で最下位でした。約2.7倍の差があります。
カット代は高知市が1万4,067円で1位、甲府市が4,283円で最下位でした。こちらは約3.3倍です。
この差をどう見るべきか
地域差があるからといって、ただちに「その街の人が身だしなみに熱心」とは言えません。支出額には次の要素が混ざります。
- 価格水準の違い
- 利用回数の違い
- 世帯構成の違い
- 理容と美容、どちらを使うかの違い
- 県庁所在市・政令指定都市という集計対象の偏り
つまり、都市別ランキングは面白いですが、そのまま住民の価値観ランキングではありません。 何にいくら払っているかの差として読むのが安全です。
データから読み取れること
ここまでの数字を合わせると、見えてくるのは次の3点です。
1. 供給は美容側に寄っている
美容所は増え、理容所は減っています。店舗の受け皿そのものが変わっています。
2. 支出の中心は広い美容サービスへ移っている
理髪料、パーマネント代、カット代よりも、「他の理美容代」の方が大きい状態です。ヘアカラーやネイル、エステなどを含む支出が家計の中で存在感を増しています。
3. 価格だけではなく、利用の中身も変わっている
理美容サービスの物価は上がっていますが、すべての項目が同じように伸びているわけではありません。パーマネント代が弱く、カットや他の理美容代が相対的に強いという違いがあります。
誤読しやすい点
このテーマは、数字をそのまま並べると誤解しやすい部分があります。
- 家計調査の支出額は「1世帯当たり」で、個人1人当たりではない
- 理美容サービスには入浴料など周辺項目も含まれる分類がある
- 「他の理美容代」は範囲が広く、ヘアカラー以外も入る
- 店舗数の統計と家計支出の統計は、時点も集計方法も違う
- 都市ランキングはサンプル数に限界があり、年ごとのぶれもある
とくに、理容所数が減っているから理容需要がそのまま消えた、とまでは言えません。低価格店への集約、1店舗当たり利用者数の変化、家族構成の変化など、別の要因もありえます。
これから見るべきポイント
次に確認したいのは、店舗数の差がさらに広がるのか、それとも支出の伸びが止まるのかです。
- 2025年度末時点の理容所・美容所数がどう出るか
- 2026年の家計調査で、理髪料とカット代の持ち直しが続くか
- 「他の理美容代」がヘア関連より周辺美容で伸びているのか
- 地方都市で理容・美容の価格差と利用回数差が広がるか
身だしなみ習慣は消えたのではなく、行き先と中身が変わった。この見方で次の統計を追うと、理容と美容の違いだけでなく、家計がどこに「見た目の支出」を振り向けているかが、もう少し具体的に見えてきます。
参照リンク
- 厚生労働省 理容業概要
- 厚生労働省 美容業概要
- 厚生労働省 令和5年度衛生行政報告例の概況
- 政府統計の総合窓口 e-Stat 衛生行政報告例 理容−美容所の施設数
- 総務省統計局 家計調査
- 総務省統計局 家計調査報告 2025年平均結果の概要
- 総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2024年
- 総務省統計局 全国家計構造調査 2024年
- 総務省統計局 家計調査 都道府県庁所在市・政令指定都市ランキング
- e-Stat 家計調査収支項目分類 理髪料
- e-Stat 家計調査収支項目分類 パーマネント代
- e-Stat 2024年平均消費者物価指数の動向
- 理美容ニュース 2025年理美容支出で読む理美容消費
- 理美容ニュース 2024年の理髪料支出額ランキング
- 理美容ニュース 2024年のカット代支出額ランキング
- GD Freak 理美容サービスの家計消費支出 年間推移
- 理美容ニュース 2024年の市場規模は理髪料2304億円、パーマネント代984億円、カット代2304億円
