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クリーニング店は本当に減ったのか 店舗数と衣生活の変化を公的データで読む

クリーニング店は本当に減ったのか 店舗数と衣生活の変化を公的データで読む

結論から言うと、クリーニング店は全国でかなり減っています。厚生労働省によると、クリーニング業の営業許可施設数は2024年3月末時点で7万2,936施設。前年度より1,147施設減り、2011年度末の12万3,845施設と比べると約4割減りました。

ただし、これをそのまま「衣類の手入れ需要が消えた」と読むのは早計です。総務省の家計調査では、2024年の二人以上世帯の被服関連サービス支出は月平均593円で、前年より名目5.6%、実質2.3%増えています。店は減っている一方で、衣類のメンテナンス支出が直近で弱っているわけではありません。

  • 2024年3月末のクリーニング業施設数は 72,936施設
  • 2011年度末の 123,845施設 からみると 50,909施設減
  • 2024年の被服関連サービス支出は 月平均593円、年換算で約7,100円
  • 2022年度時点では、無店舗取次店だけは増加基調で、店頭以外の受け渡しが少し広がっている
目次

使用データとこの記事の見方

まず、今回使う数字をそろえておきます。

  • 店舗数は厚生労働省「衛生行政報告例」と「クリーニング業概要」
  • 家計支出は総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2024年」
  • 「洗濯代」の中身は e-Stat の家計調査収支項目分類

この記事でいう「クリーニング業施設数」には、次の3つが含まれます。

  • クリーニング所(取次所を除く)
  • 取次所
  • 無店舗取次店

一方、家計調査の「被服関連サービス」は、洗濯代だけではありません。洗濯代のほか、被服賃借料、他の衣服関連サービス、履物関連サービスを含みます。つまり、家計支出の数字はクリーニング専用の統計ではないという前提で読む必要があります。

店舗数はどこまで減ったのか

数字ははっきりしています。全国のクリーニング業施設数は長期で減少傾向です。

ここがポイント: クリーニング店の減少は一時的な落ち込みではなく、10年以上続く構造的な縮小として確認できます。

2024年3月末時点の最新値は、厚生労働省の公表で次のとおりです。

  • クリーニング業の営業許可施設数: 72,936施設
  • 前年度比: 1,147施設減

さらに、年次推移を追うと減り方の大きさが見えます。

時点 クリーニング業計 クリーニング所 取次所 無店舗取次店
2011年度末(2012年3月末) 123,845 34,767 87,386 1,692
2022年度末(2023年3月末) 76,300 21,299 52,784 2,217
2023年度末(2024年3月末) 72,936 公表ページは総数のみ 公表ページは総数のみ 公表ページは総数のみ

2011年度末から2023年度末までの変化を整理すると、こうなります。

  • クリーニング業計: 50,909施設減、減少率は 41.1%
  • 2022年度までの内訳比較では、クリーニング所も取次所もともに約4割減
  • 無店舗取次店は 1,692 から 2,217 へ増えたが、全体減少を埋める規模ではない

ここで重要なのは、減っているのが昔ながらの店だけではないことです。取次所も大きく減っており、業態全体が縮んでいます。

衣生活の支出はどう変わっているか

次に、家計側の数字を見ます。2024年の二人以上世帯では、被服やその関連サービスへの支出は次の水準でした。

  • 被服及び履物: 月平均9,985円
  • 前年比: 名目 3.5%増、実質 1.1%増
  • 被服関連サービス: 月平均593円
  • 前年比: 名目 5.6%増、実質 2.3%増

年換算すると、おおよそ次の金額です。

  • 被服及び履物: 約11万9,800円
  • 被服関連サービス: 約7,100円

この2つを並べると、被服関連サービスは被服及び履物全体の約6%です。つまり、家計の衣生活支出の中心はあくまで衣類や履物そのもので、メンテナンス支出は小さい。店舗数が減りやすい土台は、家計構造の側にもあります。

「洗濯代」に何が入るのか

e-Stat の収支項目分類では、「洗濯代」には次が含まれます。

  • クリーニング代
  • 洗い張り
  • 湯のし
  • 折目加工代
  • 染み抜き
  • 防水代
  • 染色代
  • コインランドリーの料金(乾燥代を含む)

逆に、布団や毛布、じゅうたんの洗濯・乾燥、衣類保管料は別分類です。ここを混同すると、店の減少と家計支出の変化を読み違えます。

データから何が読めるのか

ここまでの数字を合わせると、見えてくるのは「需要ゼロ」ではなく「店舗網の縮小と使い方の選別」です。

まず言える事実は次のとおりです。

  • 施設数は長期で大きく減っている
  • 直近でも減少は止まっていない
  • それでも被服関連サービス支出は2024年に前年超えだった
  • 無店舗取次店は小さいながら増えている

この並びから考えやすいのは、利用のされ方が変わっていることです。

1. 日常使いの裾野が細くなっている可能性

被服関連サービスの支出額そのものが家計全体で小さいため、店側は利用頻度が少し落ちるだけで影響を受けやすい業種です。衣類の洗濯が家庭内で済みやすくなれば、近所に多くの店舗を維持する余地は小さくなります。

2. ただし「必要なときだけ使う」需要は残っている

2024年の被服関連サービス支出が増えていることは、少なくとも直近でメンテナンス需要が消えていないことを示します。普段着を毎回出すのではなく、スーツ、コート、礼服、手入れが難しい衣類に用途が寄っている可能性があります。

3. 店頭型から受け渡し方法が少しずつ変わっている

2022年度までの内訳では、無店舗取次店だけは増えています。数はまだ小さいものの、集配やロッカー受け渡しのような形が一部で浸透していると読む余地があります。

注意したい限界

このテーマは、数字の見た目だけで断定しないほうがいい点もあります。

  • 厚労省の施設数は年度末時点、家計調査は暦年平均で、時点が一致しない
  • 家計調査の「被服関連サービス」は洗濯代だけでなく賃借料や履物関連サービスも含む
  • 家計調査の本文で使った支出は二人以上の世帯で、単身世帯の行動は直接は表していない
  • 家計調査は2018年に調査票変更があり、長期の細かい比較では連続性に注意がいる
  • 施設数は全国総数で、人口減少や世帯構成の変化を補正した指標ではない

特に、「店が減った=クリーニング需要が同じ割合で減った」とは言えません。店舗の集約、受付方法の変更、工場集約、価格改定でも同じ現象は起こりえます。

これから見るべきポイント

今後の変化を見るなら、次の3点が実用的です。

  • 厚労省の次回公表で、2024年度末の施設数減少が続くか
  • 家計調査で、被服関連サービス支出が2025年も前年超えを保つか
  • 無店舗取次店の増加が、通常店舗の減少をどこまで補えるか

クリーニング店は確かに減っています。ただ、数字が示しているのは「衣類の手入れが不要になった社会」ではなく、衣類の手入れが日常の大量需要から、必要な場面に絞られた需要へ移っている可能性です。次に見るべきなのは、店の数そのものより、少ない拠点でその需要をどう受け止める形に変わるかです。

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