服への支出は増えたのか減ったのか 家計調査で見る衣料費とネット購入の変化
衣料品への支出は、名目では少し持ち直しても、実質ではまだ弱いというのが直近の答えです。総務省の家計調査によると、2025年の二人以上の世帯の「被服及び履物」は1か月平均1万63円でした。2024年より金額は増えましたが、物価をならした実質では1.8%減です。
しかも増えているのは一様ではありません。2025年は「洋服」が実質4.1%減る一方、「下着類」は2.3%増、「履物類」は1.8%増でした。家計全体の中で見ると、服は広く買い戻されているというより、必要な物は買うが、後回しにできる物は抑える動きが読み取れます。
- 2025年の「被服及び履物」は1か月平均1万63円、実質1.8%減
- 2023年から2025年にかけて月額は9,644円→9,985円→1万63円と増えたが、実質では強い回復ではない
- 2025年は「洋服」が弱く、「下着類」「履物類」が比較的堅調
- ネットショッピングの「衣類・履物」は2025年に月平均2,649円で、前年より4.5%増
使ったデータと見方
今回見たのは、全国の二人以上の世帯を対象にした公的統計です。まず結論を出すために、年平均の家計調査を軸にしました。
- 総務省統計局「家計調査報告」2023年、2024年、2025年平均結果
- 補足として、総務省統計局「家計消費状況調査」の2025年平均結果
- 長期トレンドの参考として、統計局のミニトピックス「衣料品への支出」および「和服に関する支出」
比較の単位は、特記しない限り二人以上の世帯の1世帯当たり1か月平均額です。2025年の「被服及び履物」は月平均なので、年間換算すると12万756円になります。
まず最新値を見る
2025年の二人以上の世帯の消費支出は月平均31万4,001円でした。このうち「被服及び履物」は1万63円で、家計全体の約3.2%です。
2023年からの流れを並べると、金額はじわりと戻っています。
- 2023年: 9,644円、名目1.6%増、実質1.9%減
- 2024年: 9,985円、名目3.5%増、実質1.1%増
- 2025年: 1万63円、名目0.8%増、実質1.8%減
2024年だけ実質でプラスでしたが、2025年は再びマイナスに戻りました。金額だけを見ると回復しているようでも、物価の上昇分を除くと、服への支出はまだ力強い増加とは言いにくい状況です。
何にお金が向いたのか
同じ「被服及び履物」でも、中身はかなり違います。2025年の内訳は次の通りでした。
- 洋服: 3,868円、実質4.1%減
- シャツ・セーター類: 2,089円、実質0.9%増
- 下着類: 1,003円、実質2.3%増
- 履物類: 1,497円、実質1.8%増
- 被服関連サービス: 582円、実質6.1%減
ここで目立つのは、外出着や買い足しを急がない服が弱く、消耗しやすい物や日常品は残っていることです。洋服全体が落ちる一方で、下着や履物は増えています。被服関連サービスも弱く、衣類にまつわる周辺支出まで広く伸びているわけではありません。
ここがポイント: 服の支出は「全面回復」ではなく、必要度の高い品目に寄った回復になっています。
季節の影響はかなり大きい
衣料費は、景気や物価だけでなく、気温にも強く左右されます。家計調査の年報でも、その影響がはっきり書かれています。
2023年は秋冬物が弱かった
2023年は、9月に「秋物衣料が低調」で洋服が減少。10月も「冬物衣料が低調」で洋服が減りました。年平均でも「被服及び履物」は実質1.9%減です。
2024年は夏物が動いたが、秋冬は鈍かった
2024年は4月に「夏物衣料が好調」で洋服が増えました。一方で、10月と11月は気温が高く、秋冬物衣料の需要が伸びず、洋服が減っています。年平均では「被服及び履物」は実質1.1%増でしたが、年の後半まで一貫して強かったわけではありません。
この点は大事です。服の支出が減った年でも、必ずしも「家計が服を嫌った」とは限りません。暑さ寒さのずれで、買う月がずれたり、そもそも買わずに済んだりするためです。
買い方の変化として見逃せないネット購入
服の買い方の変化を見るなら、家計消費状況調査のネットショッピングも外せません。2025年の二人以上の世帯では、ネットショッピング利用世帯の割合が56.9%で、前年の55.3%から上がりました。
「衣類・履物」のネットショッピング支出額は、2025年に月平均2,649円です。2024年の2,536円から増え、名目では4.5%増でした。
この数字は、店頭での支出を含む家計調査本体とは調査が違うため、厳密にそのまま足し合わせることはできません。ただ、ネットで服や靴を買う支出が増えている一方、家計全体の服飾費は実質で伸びきっていないという並びは、「支出総額の拡大」よりも「購入チャネルの移動」を示す材料としては十分に意味があります。
単純比較では、ネットの「衣類・履物」2,649円は、家計調査の「被服及び履物」1万63円の約4分の1です。調査の違いを踏まえても、オンライン購入は家計の衣料支出の中で無視できない大きさになっています。
長い目で見ると、服の比重は下がってきた
衣料費の変化は、この2年や3年だけの話でもありません。統計局の過去資料では、二人以上の世帯の「被服及び履物」の年間支出額は、2002年の19万5,110円から2018年の13万7,451円へ減っていました。
さらに、統計局の別資料では、消費支出に占める「被服及び履物」の割合は2009年に4.4%とされています。2025年は先ほど見た通り約3.2%です。計算方法や時点の違いに注意は必要ですが、家計の中で服が占める位置が長く縮んできたという方向は変わっていません。
背景として考えられることはありますが、ここは分けて見るべきです。
データから確認できる事実
- 服全体の実質支出は2023年と2025年に減った
- 2025年は洋服が弱く、下着類と履物類が相対的に強かった
- ネットショッピングの衣類・履物支出は増えた
- 家計に占める服の比重は長期で低下している
そこから考えられること
- 物価上昇局面では、家計は服の中でも優先順位を付けやすい
- 気温の変化が大きい年は、季節物の購入がぶれやすい
- 購入そのものが消えたというより、店頭からネットへ一部が移った可能性が高い
読むときの注意点
このテーマは、時系列比較で見落としやすい注意点があります。
- 2025年1月から家計調査の収支項目分類が改定されており、細かな品目では前後比較に注意が必要です
- 家計調査は2018年に家計簿改正があり、長期比較ではその影響も確認したいところです
- 服は天候要因を強く受けるため、単年の増減を景気や節約だけで説明し切れません
- 「家計調査」と「家計消費状況調査」は調査方法が異なるので、ネット購入額を総支出と厳密に一致させて読むことはできません
次に見るべきポイント
2026年以降も見る価値があるのは、次の3点です。
- 秋冬物の需要が平年並みに戻ったとき、洋服支出が反発するか
- ネットショッピングの「衣類・履物」が、総衣料費の弱さを上回って伸び続けるか
- 服の中で「外出着」と「日用品」の差がさらに広がるか
衣料費は、家計の中では食費や光熱費ほど大きくありません。だからこそ、節約のしわ寄せ、気温の影響、買い方の変化が先に表れやすい費目です。2025年の数字は、服を買わなくなったというより、買う物と買う場所が変わったことを示しています。
