出生率はなぜ下がり続けているのか?長期データから要因を読み解く
日本の合計特殊出生率は、2024年に1.15まで下がりました。下落が続く理由は一つではありませんが、長期データを並べると、中心にあるのは「結婚する人の減少」「出産時期の後ろ倒し」「希望する子どもの数の低下」が重なっていることです。
しかも、単に30代後半の出産が増えたから全体が変わった、という話では済みません。25〜29歳の出生減を、30代の増加では埋め切れず、そこへ未婚化と子育て費用の重さが重なっている。これがいまの少子化の骨格です。
- 2024年の出生数は 68万6,173人、合計特殊出生率は 1.15 で過去最低
- 婚姻件数は2000年の 79万8,138組 から、2024年は 48万5,092組 まで縮小
- 2024年の出生は 30〜34歳が25万3,444人で最多 だが、25〜29歳の落ち込みを補えていない
- 2021年の出生動向基本調査では、未婚者の平均希望子ども数も前回より低下した
使用データと見方
今回使うのは、主に次の公的データです。
- 厚生労働省「人口動態統計」
- 総務省統計局「人口推計」
- 国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」「人口統計資料集」
対象地域は全国です。中心となる最新年は2024年ですが、比較のために1995年、2000年、2015年、2020年、2021年、2023年のデータも使います。
ここでいう合計特殊出生率は、その年の年齢別出生率が一生続いたと仮定した指標です。実際に一人の女性が生涯に産む子どもの実績そのものではない点には注意が必要です。
まず、何がどこまで下がったのか
厚生労働省の2024年人口動態統計では、出生数は68万6,173人でした。前年より4万人あまり減り、過去最少です。合計特殊出生率も1.15で、こちらも過去最低になりました。
この数字が重いのは、短期の振れではなく、下落が長く続いているからです。2024年だけを切り取ると見誤りますが、結婚、出産年齢、家族形成の希望の3本が同じ方向に動いています。
要因1 結婚する人が減っている
日本では、出生の大半が婚姻の中で起きています。国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集によると、2023年の婚外子割合は2.46%です。つまり、出生数の動きを見るとき、婚姻の動向を外しにくい構造です。
その婚姻件数は大きく減りました。
- 2000年: 79万8,138組
- 2024年: 48万5,092組
4割近い減少です。2024年は前年比でやや持ち直しましたが、水準は低いままです。
未婚化も進んでいます。2020年の「50歳時の未婚割合」は、男性28.25%、女性17.81%でした。2000年は男性12.57%、女性5.82%なので、20年でかなり上がりました。
30代の未婚率も高いままです。2020年国勢調査ベースでは、女性の未婚率は25〜29歳で65.8%、30〜34歳で38.5%、35〜39歳で26.2%でした。子どもを持つ時期と重なりやすい年齢帯で、未婚の割合が高まっていることが分かります。
要因2 出産の中心が後ろにずれたが、減少分を埋められていない
次に大きいのが、晩婚化と晩産化です。ただし、ここで重要なのは「30代出産が増えた」こと自体ではなく、若い年齢層の減少を補い切れていないことです。
母の年齢別出生数を見ると、こう動いています。
- 1995年の25〜29歳出生数: 49万2,714人
- 2024年の25〜29歳出生数: 17万7,838人
- 1995年の30〜34歳出生数: 37万1,773人
- 2024年の30〜34歳出生数: 25万3,444人
- 1995年の35〜39歳出生数: 10万53人
- 2024年の35〜39歳出生数: 16万2,659人
30代後半の出生は増えました。ですが、25〜29歳の落ち込み幅があまりに大きく、全体の穴を埋めていません。いまの出生の中心は30〜34歳ですが、その山自体も縮んでいます。
総務省の人口推計でみると、2024年9月時点の日本人女性25〜39歳人口は約907.7万人です。出生の中心年齢にいる女性の人口が細っているので、同じ年齢別出生率でも出生数は下がりやすくなります。
ここがポイント: 少子化は「若い世代が産まなくなった」だけではありません。結婚の減少でスタート地点が小さくなり、出産年齢の後ろ倒しで時間的な余裕が狭まり、その上で出産の中心年齢人口も減っています。
要因3 産みたい人数も少しずつ下がっている
「本当は2人ほしいが、まだ実現していない」だけなら、一時的な遅れの説明で済みます。ですが、最新の出生動向基本調査は、希望そのものも少し下がっていることを示しています。
2021年調査では、18〜34歳未婚者の平均希望子ども数は、男性1.82人、女性1.79人でした。前回2015年調査では男性1.91人、女性2.02人なので、どちらも下がっています。
一方で、夫婦の平均予定子ども数は2.01人で前回と同水準でした。ただ、理想の数の子どもを持たない理由では、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が依然として最多です。
ここから読めるのは、問題が二層になっていることです。
- 未婚層では、結婚や出産の希望そのものがやや縮小している
- 既婚層では、希望は残っていても費用や働き方の制約で実現しにくい
この二つが同時進行しているため、単に「結婚すれば戻る」「支援を少し増やせば戻る」とは言いにくい状況です。
地域差を見ると、大都市圏の低さが目立つ
都道府県別の合計特殊出生率は、地域差も大きいです。2024年は東京都が0.96で全国平均の1.15を下回りました。
大都市圏で低くなりやすい傾向自体は新しくありません。厚生労働省の都道府県別データでも、東京や大都市を含む地域で低率になりやすい傾向は長く確認されています。
これは「都会の価値観」だけで説明できません。住宅費、通勤時間、保育利用の競争、仕事の拘束度、晩婚化の強さが同時に効きやすいからです。地域差は、出生率の議論を抽象論で終わらせないための重要な手がかりです。
データを読むときの注意点
少子化をめぐる数字は、強い言い切りがしやすい一方で、誤読も起きやすい分野です。押さえておきたいのは次の点です。
- 合計特殊出生率は「その年の出生行動」を要約した期間指標で、個人の生涯実績ではない
- 出生数は、出生率の変化だけでなく、出産年齢人口の増減にも強く左右される
- 2024年の人口動態統計には概数と確定数があり、数値がわずかに異なる項目がある
- 国勢調査、人口推計、出生動向基本調査は、対象年や集計方法が同じではない
つまり、出生率の低下は価値観だけでも、景気だけでも説明し切れないということです。結婚、年齢構成、費用、働き方、希望子ども数の変化を、別々に見てから重ねる必要があります。
これから見るべきポイント
今後を考えるうえで、次に見るべき数字は絞れます。
- 婚姻件数が48万組台から持ち直すのか
- 30〜34歳の出生数の減少が止まるのか
- 25〜39歳女性人口の縮小がどこまで続くのか
- 未婚者の希望子ども数と、夫婦が理想の子ども数を持てない理由がどう変わるのか
2024年の1.15は、単年のショックではありません。家族形成の入口が細くなり、出産のタイミングが後ろへずれ、希望人数まで少し縮んでいる。その重なりが、いまの出生率を押し下げています。次に見るべきなのは、どれか一つの対策ではなく、この3つの流れのどこが実際に反転するかです。
参照リンク
- 厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況
- 厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況
- 厚生労働省 人口動態統計年報 主要統計表(婚姻件数の年次推移)
- 厚生労働省 人口動態統計年報 主要統計表(母の年齢別出生数の年次推移)
- 総務省統計局 人口推計(2024年10月1日現在)
- 総務省統計局 人口推計 2024年9月報
- 国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)
- 国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集2025 表4-18 嫡出でない子の出生数および割合
- 国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集2025 表6-1 初婚・再婚別婚姻数および婚姻率
- 国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集2022 表6-23 性別・50歳時の未婚割合
- 総務省統計局 国勢調査 都道府県・市区町村別特性図 未婚率(平成17年〜令和2年)
- 東京都 令和6年東京都人口動態統計年報(確定数)
- 生命保険文化センター 少子化が進んでいるのはなぜ?
- 生命保険文化センター 「50歳時の未婚率」とは?
