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フィットネスクラブ会員は戻ったのか 公的データで見る回復ペースと健康志向の広がり

フィットネスクラブ会員は戻ったのか 公的データで見る回復ペースと健康志向の広がり

結論から言うと、フィットネスクラブ利用は回復しているものの、2019年の水準まではまだ戻っていません。一方で、運動や健康への関心そのものは広く残っており、クラブ会員の増加よりも大きい裾野で広がっています。

つまり、健康志向が弱まったのではなく、運動の受け皿がフィットネスクラブだけではなくなっている、という見方が数字に合います。2024年のクラブ売上と会員数は回復基調を維持しましたが、スポーツ庁や厚生労働省の調査を見ると、運動習慣の実態はもっと広く、しかも働き盛り世代や女性ではなお弱い部分が残っています。

  • 2024年12月のフィットネスクラブ会員数は前年同月比1.2%増の288.7万人
  • 2024年12月のフィットネスクラブ売上高は前年同月比1.8%増で37か月連続の増加
  • 2025年度の20歳以上の週1回以上のスポーツ実施率は51.7%
  • 2024年の20歳以上の運動習慣者割合は年齢調整値で31.3%
目次

使用データと比較条件

今回使うのは、次の3系統の公開データです。まず前提をそろえておくと、同じ「運動」でも何を数えているかが違います。

  • 経済産業省・e-Stat「特定サービス産業動態統計調査」
  • スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」
  • 厚生労働省「国民健康・栄養調査」

それぞれの見ている対象は次の通りです。

  • フィットネスクラブ統計: クラブ事業の売上高、利用者数、会員数
  • スポーツ庁調査: 20歳以上が週1回以上スポーツをしたか、どれだけ時間を使ったか
  • 国民健康・栄養調査: 20歳以上が「1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続」しているか

この違いが大事です。スポーツ庁の「スポーツ実施率」には、クラブ通いだけでなく、ウォーキングや自宅運動も含まれます。逆に、フィットネスクラブ統計の会員数はクラブ利用の広がりを直接見られますが、健康行動全体の広がりまでは拾いません。

会員数は増えているが、まだ完全回復ではない

まず、フィットネスクラブそのものの数字を見ます。2024年12月の月次データでは、売上高は247.86億円で前年同月比1.8%増、利用者数は2.1%増、会員数は1.2%増でした。売上高の前年比プラスは37か月連続です。

月次の会員数推移を見ると、回復の流れはかなりはっきりしています。

  • 2021年12月: 272万人
  • 2022年12月: 279万人
  • 2023年12月: 285万人
  • 2024年12月: 289万人

コロナ後に止まっていた会員数が少しずつ戻ってきたことは、この並びだけでも分かります。ただし、戻り方は急ではありません。2024年12月時点でも300万人には届いていません。

年計で見ても、2019年との差は残る

年計ベースの公表値でも、同じ結論になります。

  • 2019年の売上高: 3,370.5億円
  • 2020年の売上高: 2,161.0億円
  • 2022年の売上高: 2,689.2億円
  • 2024年の売上高: 2,916.6億円

2020年の急落からはかなり戻しましたが、2024年でも2019年より約454億円少なく、売上高はなおコロナ前の約86%水準です。

会員数も同じです。2019年の年計公表値は336.3万人でした。2024年12月の月次会員数288.7万人と単純比較すると、まだ約47.6万人の差があります。比率にすると、おおむね2019年の86%前後です。

ここがポイント: フィットネスクラブは「回復中」ではあるが、「完全復元」ではない。健康志向の強まりが、そのままクラブ会員の急増にはつながっていない。

健康志向はクラブ会員数より広く残っている

ここで、健康志向の広がりを別の統計で見ます。スポーツ庁が2026年3月11日に公表した2025年度調査では、20歳以上の週1回以上のスポーツ実施率は51.7%でした。男性55.0%、女性48.8%です。

フィットネスクラブ会員数の規模感と比べると、この数字はかなり大きい。つまり、運動する人の裾野は広い一方で、その全員がクラブ利用に向かっているわけではありません。

さらに、スポーツ庁の2023年度調査では、週1回以上運動した理由のトップは「健康のため」78.7%でした。運動の動機として健康が主役であることは、かなり明確です。

それでもクラブ会員が爆発的に増えない理由

数字から読めるのは、健康志向が弱いからではなく、運動のやり方が分散していることです。

  • 自宅トレーニングや動画利用でも運動はできる
  • ウォーキングのように会費不要の運動が広い
  • 20代から50代の働き盛りは時間制約が強い
  • 女性の実施率と実施時間は男性より低い

2025年度のスポーツ庁調査では、20代から50代は実施率が低い傾向で、特に20代から50代女性の1週間あたり運動・スポーツ実施時間は30分から40分程度にとどまり、同世代男性の半分程度でした。

これは、クラブへの関心の有無よりも、通う時間、生活導線、料金、子育てや仕事との両立が効いている可能性を示します。フィットネスクラブの回復が緩やかなのは、需要不足だけでは説明しにくい部分があります。

運動習慣データで見ると、日常の定着はまだ強くない

厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、20歳以上の運動習慣者割合は年齢調整値で31.3%でした。ここでいう運動習慣者は、1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けている人です。

この定義はかなり厳しめです。そのため、スポーツ庁の「週1回以上実施率」51.7%より低く出ます。逆に言えば、たまに運動する人はそれなりにいても、継続的な習慣として定着している人は3割強にとどまる、ということです。

同じ調査では、20歳以上の歩数平均値も長期では減少傾向が示されています。健康への関心はあっても、日常行動として安定して続ける段階にはまだ届いていない人が多いと考えたほうが自然です。

データから読み取れること

ここまでの数字をまとめると、重要なのは次の3点です。

  • クラブ市場は回復している
  • ただし回復速度は緩やかで、2019年の規模には未達
  • 健康志向の広がりは、クラブ外の運動も含めた形で進んでいる

フィットネスクラブの利用は確実に戻っています。売上高の前年比プラスが長く続いていることも、その裏づけです。

ただ、健康志向そのものの広がりと比べると、クラブ会員の増え方は控えめです。運動したい人が増えても、全員が月会費型クラブへ向かうわけではない。これは、フィットネスクラブが不要になったという話ではなく、運動の受け皿が多様化したという変化として見るほうが正確です。

誤読しやすい点と限界

このテーマは、数字の読み方を間違えやすいので注意点も整理しておきます。

  • フィットネスクラブの会員数はクラブ統計の会員系列で、法人会員は口数で集計される
  • スポーツ庁の実施率はクラブ利用者だけでなく、広い運動・スポーツ行動を含む
  • 国民健康・栄養調査の「運動習慣」は継続条件が厳しく、気軽な運動実施者は含みきれない
  • スポーツ庁調査は2016年度以降Web調査で、古い面接調査と単純連結できない
  • 経済産業省の特定サービス産業動態統計調査は2024年12月調査で終了している

特に最後は重要です。今後、同じ月次系列で2025年以降をそのまま追えないため、次に回復度合いを見るときは別統計や民間調査との接続が必要になります。

これから見るべきポイント

フィットネスクラブ利用がさらに広がるかを見るなら、次は次の点が焦点になります。

  • 働き盛り世代、とくに20代から50代女性の実施時間が伸びるか
  • 会員数よりも利用頻度や継続率が改善するか
  • クラブ外の運動需要を施設型サービスが取り込めるか
  • 2024年で終了した経産省月次統計の代わりに、何で継続観測するか

健康志向は残っています。問題は、その需要がどこに流れているかです。次に見るべきなのは「運動したい人が増えたか」だけではなく、その人たちがクラブに通う形を選ぶのか、それとも別の運動手段に流れるのかという分岐です。

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