フリマアプリ利用はどこまで広がったのか 中古流通の拡大と家計行動の変化を数字で読む
フリマアプリは、もう一部の新しいサービスではありません。経済産業省の推計では、日本のCtoC電子商取引市場は2024年に2兆5,269億円まで拡大しました。
ただし、ここで見落としやすいのは、市場が大きくなったことと、利用者の裾野が広く均等に広がったことは同じではないという点です。環境省の2024年ベース調査では、フリマアプリ経由の中古品購入額は増えた一方で、「過去1年は中古品を買っていない」という人の割合も上がっていました。
- CtoC電子商取引市場は2024年に2兆5,269億円
- フリマアプリ経由の中古品購入額は2024年に1,765億円で、2021年比41.5%増
- ただし中古品購入を「過去1年は利用していない」人は71.2%
- フリマアプリ購入経験は若年層で濃く、環境省調査では10・20代20.8%、60代以上8.0%
使用データと見方
今回使うのは、いずれも執筆時点で確認できる最新の公表資料です。
- 経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査報告書」(2025年8月公表、対象は2024年)
- 環境省「令和6年度 リユース市場規模調査報告書」(2025年6月公表、対象は2024年)
- 消費者庁「令和6年版 消費者白書」(2024年公表、主に2023年度調査を使用)
- 総務省統計局「家計消費状況調査年報(令和6年)」
見るポイントは3つです。
- 市場全体がどこまで大きくなったか
- 実際に誰が使っているのか
- 家計の買い方、売り方がどう変わったか
まず結論 「広がった」が、全員に広がったわけではない
フリマアプリの存在感は、数字ではっきり大きくなっています。
環境省の調査では、自動車とバイクを除く中古品リユース市場は2024年に1兆2,813億円でした。このうちフリマアプリ経由の購入は1,765億円で、構成比は13.8%です。2015年の214億円からみると、規模は大きく伸びています。
一方で、同じ報告書は少し違う景色も示しています。中古品・リユース品について「過去1年では利用したことはない」と答えた人は、2012年の63.3%から2024年は71.2%へ上昇しました。報告書自体も、購入者の裾野が広がっていることは確認できないと整理しています。
つまり、起きている変化はこうです。
- 利用者1人当たりの取引額や、特定カテゴリーでの利用は伸びている
- ただし、全国民がまんべんなく中古購入に参加しているわけではない
- 市場拡大は「広く浅く」より、「使う人がしっかり使う」形に近い
ここがポイント: フリマアプリは確かに生活に入り込んだが、2024年時点でも日本の家計全体で見ると「誰もが日常的に使う標準インフラ」まで一気に進んだとは言い切れない。
どの世代で広がったのか
利用の濃さは世代でかなり違います。
環境省調査では、過去1年間に「フリマアプリで中古品を購入」した人の割合は、10・20代が20.8%、60代以上が8.0%でした。若い世代で利用が目立ちます。
売る側でも差があります。使わなくなった製品を過去1年間に「フリマアプリで売却」した割合は、2024年に9.9%。2015年の2.0%、2021年の11.0%と比べると、長期では増えたものの、直近では少し下がりました。
世代別では、フリマアプリでの売却経験は10・20代が60代以上より14ポイント高いとされます。中古流通のデジタル化は進んでいますが、年齢による差はまだ大きいままです。
消費者庁の2023年度調査でも傾向は近く、デジタルプラットフォーム利用経験者のうち、フリマサイト・オークションサイトを使ったことがある人は59.3%、出品経験まである人は36.7%でした。20代と30代では利用経験が約7割、出品経験が約5割で、他の年代より高くなっています。
何が売買されているのか
フリマアプリの広がりを考えるときは、何でも均等に動いていると見ない方が正確です。
環境省調査では、不要品の引き渡し先としてフリマアプリの比率が高い品目がはっきり出ています。特に比率が高かったのは次のような分野です。
- ゲーム機器
- 書籍
- ソフト・メディア類
- 衣類・服飾品
- ベビー・子供用品
この顔ぶれには共通点があります。比較的発送しやすく、状態の説明をしやすく、価格帯も極端に大きすぎないことです。逆に、エアコンや大型家電のように設置や性能確認が重い品目は、中古購入の意向自体が低めでした。
ここから分かるのは、フリマアプリの普及は「中古市場全体の完全な置き換え」ではなく、相性の良い品目から家計の選択肢を変えてきたということです。
家計の買い方はどう変わったか
フリマアプリ単独の家計統計は限られますが、周辺の行動変化はかなりはっきりしています。
総務省統計局の家計消費状況調査年報では、2024年の二人以上世帯のネットショッピング利用世帯割合は55.3%で過去最高でした。ネットショッピング支出も月平均24,928円で過去最多です。
この数字だけで「その増加分がフリマアプリだ」とは言えません。ただ、少なくとも次の変化は確認できます。
- 家計の購入行動そのものが、ネット経由へさらに寄っている
- スマホやオンライン決済を前提にした売買への心理的なハードルは下がっている
- 新品購入だけでなく、中古購入や個人間売買が入り込みやすい土台が広がっている
経済産業省のCtoC市場が2024年に2兆5,269億円へ拡大したことは、この土台の上で個人間取引が定着してきたことを示します。
データから読めること、読めないこと
ここは切り分けて見た方がいい部分です。
読めること
- フリマアプリ経由の中古購入額は2024年も増えた
- CtoC電子商取引市場は2024年も拡大した
- 若年層ほど購入・売却の経験率が高い
- 中古流通は、衣類、書籍、ゲーム、子ども用品などで特に使われやすい
まだ断定できないこと
- 物価高だけが利用拡大の主因かどうか
- 全国民ベースで中古購入が一般化したかどうか
- 地域差がどこまであるか
特に最後の地域差は重要です。今回の主要資料は全国集計が中心で、都道府県別・市区町村別の公表値は十分ではありません。この記事は「全国で何が起きているか」を読むには向いていますが、「どの地域で特に浸透したか」までは詰め切れません。
また、環境省の市場規模推計には、ネット取引の購入金額に送料が含まれている可能性があるという注記があります。金額を読むときは、この点も頭に置く必要があります。
これから見るべき変化
フリマアプリは、2024年時点で「新しい習慣」ではなく、すでに大きな市場です。ですが、次に見るべきなのは市場の大きさだけではありません。
- 若年層中心の利用が、40代以上へどこまで広がるか
- 売却より購入が伸びるのか、逆に出品の停滞が出るのか
- 大型家電や高額品など、相性が弱かった分野に広がるのか
- 地域別データや自治体のリユース施策と接続して読める資料が増えるか
数字が示しているのは、フリマアプリが家計防衛の道具であるだけでなく、家の中のモノの出口と入口を変える仕組みになったことです。次の論点は、その変化が一部の使い手にとどまるのか、それとも世代差を越えて日常の標準になるのかです。
