海外の美容・パーソナルケア支出は増えているのか EU統計と公的データで見る国別の違い
結論から言うと、海外の美容・パーソナルケア支出は長期では増えてきた国が多いものの、直近は一律に強く伸びているわけではありません。
最新の公的統計で追いやすいのはEU統計です。Eurostatによると、個人ケアを含む広い支出区分である「個人ケア・社会的保護・その他の財・サービス」のEU家計消費は、2024年に実質で前年比0.4%増でした。2023年は0.5%減だったため、足元は急増というより小幅な持ち直しに近い動きです。
- 直近のEU全体では、個人ケアを含む広義の支出は2024年に実質
+0.4% - EUの家計支出構成では、2020年に「雑貨・サービス(個人ケアを含む)」が平均
8.9% - 国別比較では、名目額よりも「家計のどれだけを割いているか」を見た方が読み違えにくい
- ただし公的統計の国際比較では、個人ケア単独の最新値がそろわない国もあり、分類の違いに注意が必要
ここがポイント: 「美容支出が世界で一斉に増えている」とまでは、公的データだけでは言い切れません。確認できるのは、広い関連支出は戻りつつあること、そして国ごとに家計の配分がかなり違うことです。
使ったデータと比較条件
今回の確認に使ったのは、主に次の公的データです。
- Eurostatの家計最終消費支出(目的別消費、COICOP 2018)
- EurostatのHousehold Budget Survey 2020
- OECDの家計最終消費支出データベース(COICOP 2018)
比較条件は次の通りです。
- 対象地域: 主にEU各国とEU全体
- 対象年: 直近の動きは2024年、家計の配分比較は2020年
- 対象区分: 個人ケアを含む関連支出区分
- 見方: 総額ではなく、実質増減と家計支出に占める割合を重視
ここで重要なのは、国際比較で使える最新の公的統計が、いつも「美容」「化粧品」「サロン代」だけを同じ粒度で切り出しているわけではないことです。EurostatやOECDではCOICOP分類で比較できますが、国や年によっては、個人ケアがより広い区分に含まれて公表されます。
まず最新の動き EU全体では急増ではなく小幅増
Eurostatの2024年データでは、EUの家計最終消費支出のうち、個人ケアを含む「Personal care, social protection and miscellaneous goods and services」は実質0.4%増でした。
前年の2023年は0.5%減だったため、2024年は減少から増加に戻った年です。ただし伸び幅は大きくありません。少なくともEU全体で見る限り、直近の公的統計は「美容・パーソナルケア関連支出が急拡大している」という絵ではありません。
なぜこの見方が大事か
名目額だけを見ると、物価上昇で支出が増えたように見えやすくなります。ですが、2024年のEurostatの数字は実質ベースです。つまり、価格だけでなく、買われた量やサービス利用の実態に近い動きを見ています。
その実質で+0.4%ということは、生活必需品のように強い伸びを示したというより、家計の中で優先度を維持しつつ、少し戻した程度と読むのが自然です。
国別比較では「いくら使ったか」より「何%回したか」を見たい
国ごとの家計規模は大きく違います。米国、ドイツ、チェコでは可処分所得も物価も違うため、総額の単純比較は意味が薄くなります。
そこで役に立つのが、家計支出の構成比です。EurostatのHousehold Budget Survey 2020では、EU平均で「Miscellaneous goods and services」が8.9%でした。この区分には個人ケアのほか、身の回り品、保険、金融サービスなどが含まれます。
この数字が意味するのは、個人ケア関連の消費は家計の中心ではないものの、食費や住居費の陰に隠れるほど小さい項目でもないということです。景気や物価の圧力が強まると真っ先に消える支出ではなく、かといって無制限に伸びる項目でもありません。
生活意識の変化をどう読むか
この分野の支出増を、そのまま「美容意識の高まり」と結論づけるのは早計です。実際には複数の要因が混ざります。
- 物価上昇で単価が上がった
- 外出や対面機会の回復で利用頻度が戻った
- 高齢化で衛生・身だしなみ関連の需要が底堅い
- 他の支出を抑えつつ、自己管理系の支出を残した
公的統計で言えるのはここまでです。何のために使ったかまでは、家計調査だけでは断定できません。
歴史的には増えてきた国もある
OECDの家計最終消費支出データでは、COICOP 2018分類で個人ケアを追える国があります。公表粒度がそろう国は限られますが、長期の方向感を見る材料にはなります。
たとえば検索可能なOECD公表資料では、フランスの「47 Personal care」は2010年の6,614(2015年連鎖価格、10億ユーロ)から2019年の7,639へ増えています。チェコでも、同じく「47 Personal care」が2012年の11,318から2019年の15,643(百万コルナ)へ伸びています。
ここで読み取れるのは、少なくとも2010年代には、いくつかの欧州諸国で個人ケア支出が拡大していたことです。ただし、
- 単位が国ごとに異なる
- 連鎖価格と名目額が混在しうる
- パンデミック後まで一気通貫で並べられない国がある
という制約があります。したがって、「どの国が今いちばん伸びているか」をこの数字だけで決めるのは無理があります。
何が言えて、何が言えないか
言えること
- EU全体では、個人ケアを含む関連支出は2024年に実質で小幅増へ戻った
- 2010年代の一部欧州諸国では、個人ケア支出は増加基調だった
- 家計に占めるこの分野の比重は小さすぎず、生活防衛局面でも完全には消えにくい
言い切れないこと
- 世界全体で美容支出が一斉に拡大しているか
- 直近の支出増が、そのまま美容意識の上昇を意味するか
- 国別ランキングを同じ定義で最新年まで並べられるか
特に最後の点は重要です。OECDのCOICOP 2018データは2024年まで使える国がありますが、検索結果でも示されている通り、COICOP 2018でまだ利用できない国は旧分類データを見る必要があります。 ここが国際比較を難しくしています。
読むときの注意点
このテーマは、数字があるようでいて、実は誤読しやすい分野です。
- 「美容」と「個人ケア」と「雑貨・サービス」は同じではない
- 化粧品、整髪、理美容サービス、衛生用品が別計上のことがある
- 名目増は、利用量ではなく値上がりの影響かもしれない
- 国によって家計調査と国民経済計算の集計方法が違う
特に、サロン代まで含めた「身だしなみ」全体を見たいのか、化粧品などのモノ支出を見たいのかで、使うべき統計は変わります。
今後見るべきポイント
次に確認したいのは、総額よりも次の3点です。
- 2025年以降にCOICOP 2018の国別詳細がどこまでそろうか
- 物価上昇を除いた実質ベースで、個人ケアがどこまで増えているか
- 高齢化や都市化が強い国ほど、この分野の支出比率が高いのか
美容・パーソナルケア支出は、景気の勢いだけでなく、対面機会、年齢構成、物価、働き方の変化に左右されます。次に見るべきなのは「今いくら使ったか」より、家計の中でこの支出を残している国はどこかです。
参照リンク
- Eurostat: Household consumption by purpose
- Eurostat: Household budget survey – statistics on consumption expenditure
- Eurostat metadata: Final consumption aggregates
- OECD Data Explorer: Annual household final consumption expenditure by purpose (COICOP 2018)
- OECD publication snippet indexed in search: National Accounts of OECD Countries, Detailed Tables, Volume 2020 Issue 2
