副業する人は増えているのか 2022年公的統計で見る全国推移と都道府県差
副業する人は、公的統計で見る限り増えています。総務省の2022年就業構造基本調査では、非農林業従事者のうち副業がある人は304.9万人で、2017年より59.8万人増えました。
ただし、増えていると言っても、比率は4.8%です。働く人の大半が副業をしているわけではなく、まずは「広がってはいるが、まだ少数派」という位置づけで見るのが妥当です。
- 2022年の副業者数は304.9万人、2017年比で59.8万人増
- 副業者比率は4.8%で、2017年の3.9%から0.9ポイント上昇
- 都道府県別では京都府7.5%、東京都6.5%、和歌山県5.6%が高水準
- 「今の仕事に加えてもっと働きたい」追加就業希望者は493.4万人で、副業実施者よりかなり多い
使ったデータと比較条件
今回の中心データは、総務省統計局の2022年就業構造基本調査です。調査時点は2022年10月1日、公表日は2023年7月21日。全国約54万世帯、15歳以上の約108万人を対象にした5年ごとの基幹統計です。
この記事でいう副業者は、同調査の要約で使われている非農林業従事者ベースの数値です。つまり、本業が「農業、林業」や「分類不能の産業」の人は、この比較の母数に入っていません。
また、執筆時点の2026年5月7日で、全国と都道府県を同じ定義で比較できる最新の副業統計はこの2022年調査です。毎月公表される労働力調査は就業者数の把握には向いていますが、副業の都道府県比較をそのまま置き換える統計ではありません。
まず結論 副業は増えた
2022年の副業者数は304.9万人でした。推移を見ると、こう動いています。
- 2007年: 241.5万人
- 2012年: 214.6万人
- 2017年: 245.1万人
- 2022年: 304.9万人
2012年にいったん落ち込んだ後、2017年に持ち直し、2022年に大きく増えました。2017年から2022年の5年間だけを見ると、増加幅は約60万人です。
比率でも上昇しています。
- 総数: 3.9% → 4.8%
- 正規の職員・従業員: 1.9% → 2.5%
- 非正規の職員・従業員: 5.8% → 7.2%
ここで目立つのは、非正規だけでなく正規雇用でも副業比率が上がっていることです。副業が一部の働き方に限られた動きではなく、雇用形態をまたいで広がっていることが分かります。
ここがポイント: 副業は増えた。ただし2022年時点でも比率は4.8%で、多数派になったわけではない。
都道府県差はあるのか
あります。2022年の副業者比率は全国4.8%ですが、地域差は無視できません。
比率が高い県
- 京都府: 7.5%
- 東京都: 6.5%
- 和歌山県: 5.6%
- 鳥取県: 5.5%
- 長野県・島根県: 5.3%
京都府は2017年の4.9%から2022年に7.5%へ上がり、上昇幅は2.5ポイントでした。東京都も5.0%から6.5%へ伸び、実数では52.4万人と全国で最も多くなっています。
東京都の高さは、就業者数そのものが多いことに加え、専門職やサービス業、プロジェクト単位の仕事に接しやすい労働市場の厚みを反映している可能性があります。ただし、ここは統計だけで因果までは断定できません。
比率が低い県
- 宮崎県: 3.3%
- 大分県: 3.5%
- 静岡県: 3.6%
- 青森県: 3.7%
全国平均との差は大きくは見えなくても、7.5%の京都府と3.3%の宮崎県では2倍超の開きがあります。副業の広がり方が全国一律ではないことは、はっきり確認できます。
実際に副業している人より、「もっと働きたい」人の方が多い
副業の広がりを見るなら、今すでに副業している人だけでは不十分です。就業構造基本調査には、追加就業希望者、つまり今の仕事に加えて別の仕事もしたい人の統計があります。
2022年の追加就業希望者は493.4万人でした。2017年の399.9万人から93.5万人増え、比率は6.4%から7.8%へ上昇しています。
- 副業がある者: 304.9万人
- 追加就業希望者: 493.4万人
- 差: 188.5万人
この差は大きいです。副業を実際にしている人より、したいが実現していない人の方が多いからです。
都道府県別の追加就業希望者比率では、東京都と沖縄県が10.2%で最も高く、神奈川県と京都府が8.8%で続きました。副業の実施率が高い地域は、追加就業ニーズも強い傾向があります。
データから何が読めるか
まず言えるのは、働き方の多様化が数字に表れていることです。正規雇用でも副業比率が上がり、追加就業希望者も増えています。収入源を一つに限らない働き方への関心は、2022年時点で確かに広がっています。
次に重要なのは、実行より希望の方が先に増えていることです。副業実施者304.9万人に対し、追加就業希望者は493.4万人でした。制度、勤務先ルール、時間制約、地域の仕事量などが壁になり、希望がそのまま実行に移っていない可能性があります。
一方で、「副業が普通になった」とまで言い切るのは早いです。比率4.8%は上昇していても、まだ20人に1人弱です。広がりは確認できるが、主流化したとまでは言えません。
読むときの注意点
このテーマは、数字の見方を間違えやすいです。特に次の点は押さえておきたいところです。
- 副業者数の比較は、要約資料では非農林業従事者ベースで示されている
- 就業構造基本調査は5年ごとの調査なので、2023年以降の変化はまだ反映していない
- 都道府県別の小さい差は、標本調査のぶれもありうる
- 副業が増えた事実と、賃金事情や物価上昇が原因だという話は別で、統計だけでは因果を断定できない
補足すると、総務省の労働力調査では2025年の就業者数は6828万人で前年より47万人増えています。雇用環境の全体像は更新されていますが、これをそのまま副業増加の最新値と読み替えることはできません。副業を直接見るには、次回の就業構造基本調査を待つ必要があります。
次に見るべきポイント
副業は増えています。これは数字ではっきりしています。
ただ、次に注目すべきなのは「どれだけ増えたか」より、希望者493.4万人のうち、どこで実行に移せていないのかです。
- 勤務先の兼業ルールが壁なのか
- 地方で副業案件そのものが少ないのか
- 本業と両立できる短時間の仕事が足りないのか
次回の公的統計では、この「実施率」と「希望率」の差が縮むのか広がるのかが大きな見どころになります。
