有休はどこまで取りやすくなったのか 取得率の上昇と業種差を最新データで読む
有給休暇は、全体としては取りやすくなっています。厚生労働省の最新公表では、2025年12月公表の「令和7年就労条件総合調査」で、2024年の年次有給休暇取得率は66.9%と過去最高でした。
ただし、どの職場でも同じように取りやすくなったわけではありません。業種差はなお大きく、宿泊業・飲食サービス業のように低水準が続く分野もあります。
- 最新の取得率は66.9%。2024年に実際に取られた日数は1人平均12.1日
- 2019年の状況を調べた2020年調査の52.4%から、2024年の状況を調べた2025年調査の66.9%まで上昇
- ただし産業別では、2023年時点でも高い業種と低い業種の差が25ポイント超あった
- 「率」だけでなく、実際に何日休めたか、どの業種に差が残るかを見る必要がある
まず結論をつかむためのデータ条件
この記事で使う中心データは、厚生労働省「就労条件総合調査」と、労働政策研究・研修機構(JILPT)が整理した長期時系列です。
対象は全国の主要16産業に属する、常用労働者30人以上の民営法人です。年次有給休暇の取得状況は、JILPTの整理では、期間の定めなく雇われている労働者のうちパートタイム労働者を除いた結果として扱われています。
ここで注意したいのは、調査年と実際の対象年がずれることです。たとえば「令和7年就労条件総合調査」は2025年に公表されていますが、年次有給休暇の実績は2024年分を見ています。
ここがポイント: 「2025年調査で66.9%」は、2025年の取得率ではなく、2024年の取得率です。
取得率はどこまで上がったのか
数字だけ見ると、上昇はかなりはっきりしています。
- 2020年調査(2019年の状況): 52.4%
- 2021年調査(2020年の状況): 56.3%
- 2022年調査(2021年の状況): 56.6%
- 2023年調査(2022年の状況): 58.3%
- 2024年調査(2023年の状況): 65.3%
- 2025年調査(2024年の状況): 66.9%
2025年調査では、労働者1人あたりの平均付与日数は18.1日、平均取得日数は12.1日でした。前年調査は付与16.9日、取得11.0日なので、取得率だけでなく実際の取得日数も増えています。
この点は重要です。取得率は「取得日数 ÷ 付与日数」で計算されるため、率だけを見れば見かけ上の改善が起きることがあります。しかし今回は、実際に休めた日数も11.0日から12.1日に増えていました。
上昇の節目は2019年以降に集中している
2019年4月から、10日以上の年休が付与される労働者には、使用者が年5日の取得を確実に取らせる義務が課されました。
この制度変更と、その後の取得率上昇は時期が重なります。もちろん、法改正だけで全てを説明はできません。人手不足への対応、採用競争、休暇制度の見直し、職場慣行の変化も関わっているはずです。ただ、少なくとも2019年以降に上向きが強まったこと自体は、統計では確認できます。
どの業種で差が大きいのか
全体平均が上がっても、業種差はまだ残っています。
2024年12月公表の令和6年就労条件総合調査で確認できる2023年の産業別取得率を見ると、主な水準は次の通りです。
- 複合サービス事業: 74.8%
- 電気・ガス・熱供給・水道業: 73.7%
- 製造業: 65.8%
- 医療・福祉: 65.3%
- 卸売業・小売業: 55.5%
- 教育・学習支援業: 54.4%
- 宿泊業・飲食サービス業: 49.1%
最も高い複合サービス事業と、最も低い宿泊業・飲食サービス業の差は25.7ポイントでした。平均が6割を超えても、現場ごとの取りやすさはかなり違います。
2024年の最新結果でも低い業種は変わっていない
JILPTが2026年3月に紹介した2025年調査ベースの整理でも、2024年の産業別取得率はばらつきが残っています。本文で示された性別別データでは、宿泊業・飲食サービス業が男女ともに最も低い水準でした。
- 男性で最も高い: 電気・ガス・熱供給・水道業 74.8%
- 男性で最も低い: 宿泊業・飲食サービス業 44.8%
- 女性で最も高い: 鉱業・採石業・砂利採取業 80.9%
- 女性で最も低い: 宿泊業・飲食サービス業 58.2%
この並びから読み取れるのは、2024年の最新時点でも、低い業種がそのまま残っていることです。全体平均の改善だけでは、現場差までは消えていません。
なぜ「取りやすくなった」と言い切りすぎてはいけないのか
統計から言えることと、言えないことを分けておきます。
言えること
- 全国平均の取得率は長期的に上がっている
- 実際の平均取得日数も増えている
- 2019年以降、上昇の流れが続いている
- 業種間の差はなお大きい
まだ断定しにくいこと
- どの職場でも体感として取りやすくなったか
- 法改正だけで上昇を説明できるか
- 低取得率業種の改善が今後も同じペースで進むか
厚生労働省の審議会資料では、年休取得に「ためらいを感じる」「ややためらいを感じる」とした人が、令和5年度の意識調査で39.4%でした。減ってはいるものの、まだ約4割です。
つまり、数字は改善しているが、心理的な取りにくさが消えたとは言えないということです。取得率の上昇と、職場での遠慮や人手不足は同時に残りえます。
誤読しやすいポイント
ここは短く整理しておきます。
- 調査対象は30人以上の民営法人で、中小零細や個人事業所の状況をそのまま表す統計ではない
- 調査年と実績年が1年ずれるため、「最新年」の読み違いが起きやすい
- 取得率は分母の付与日数にも左右されるので、取得日数とセットで見る必要がある
- 産業別比較では、人手配置、繁閑差、交代制勤務の有無など、仕事の組み立てそのものが違う
特に宿泊業・飲食サービス業のように、現場を止めにくい業種では、制度が同じでも運用の難しさは別に残ります。逆に、製造業やインフラ系のように計画的な休暇取得を組みやすい職場では、取得率が上がりやすい面があります。
生活者として何を見るべきか
有休が取りやすくなったかを知りたいなら、平均値だけで終わらせない方が実態に近づけます。
見るべき点は3つです。
- 自分の業種は全国平均より上か下か
- 取得率だけでなく、平均取得日数が増えているか
- 会社規模や勤務形態の違いで差が開いていないか
就職や転職の場面でも、求人票の「年間休日」だけでは足りません。年休取得実績、計画年休の有無、繁忙期の偏り、時間単位年休の導入状況まで見た方が、実際の休みやすさに近づきます。
今後の注目点
最後に、次に見るべき論点を絞ります。
- 政府目標の70%に、2028年までに届くか
- 宿泊業・飲食サービス業、教育など低水準業種の底上げが進むか
- 取得率だけでなく、取得日数がさらに増えるか
- 「休みたいが休みにくい」というためらいがどこまで減るか
全体の数字だけなら、有休は確かに取りやすくなっています。ただし、現場差まで埋まったとはまだ言えません。次に見るべきなのは、平均の上昇よりも、低い業種がどこまで持ち上がるかです。
