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薬局はなぜ増えているのか 店舗数と高齢化データで見る本当の背景

薬局はなぜ増えているのか 店舗数と高齢化データで見る本当の背景

薬局は、人口が減る日本でも増え続けています。最新の厚生労働省データでは、2024年度末の薬局数は6万3203施設で、2000年度末より1万6440施設多くなりました。

この増加は、高齢化と無関係ではありません。65歳以上の割合は2000年の17.3%から2024年の29.3%へ上がっています。ただし、高齢化だけで薬局増を説明するのは不十分です。都道府県別に見ると、薬局が多い地域と高齢化が最も進んだ地域は一致していません。

  • 2024年度末の薬局数は6万3203施設、前年度比375施設増
  • 2000年度末から見ると35.2%増
  • 65歳以上人口の割合は17.3%から29.3%へ上昇
  • 一方で、人口10万人当たり薬局数の最多は佐賀県65.1、高齢化率トップは秋田県39.5%で、同じではない
目次

使用データと比較条件

今回見たのは、次の公的データです。

  • 薬局数: 厚生労働省「衛生行政報告例」
  • 最新値は令和6(2024)年度末
  • 長期比較には平成12(2000)年度末を使用
  • 高齢化データ: 総務省統計局「人口推計」「国勢調査」
  • 最新値は2024年10月1日現在
  • 長期比較には2000年国勢調査を使用
  • 補足データ: 厚生労働省「社会医療診療行為別統計」
  • 医科入院外の院外処方率を確認

対象地域は全国と都道府県です。薬局数は年度末時点、人口は10月1日現在で、基準日が完全には一致しない点には注意が必要です。

まず、薬局はどれくらい増えたのか

数字だけを見ると、増加ははっきりしています。

  • 2000年度末: 4万6763施設
  • 2024年度末: 6万3203施設
  • 増加数: 1万6440施設
  • 増加率: 35.2%

人口が減る国で施設数がここまで増えるなら、「高齢者が増えたから」だけではなく、薬を受け取る仕組みそのものが変わった可能性も考える必要があります。

高齢化は確かに大きな追い風

全国の65歳以上人口は、2000年の2200万人から、2024年には3624万人規模まで増えました。総人口に占める割合も17.3%から29.3%へ上がっています。

高齢者が増えると、薬局の需要が増えやすい理由は比較的はっきりしています。

  • 慢性疾患で継続的に薬を使う人が増える
  • 複数の医療機関にかかる人が増え、服薬管理の必要が高まる
  • 在宅医療や介護と連動した薬の受け渡しが必要になる

この意味で、高齢化は薬局増加の土台とみてよさそうです。

ここがポイント: 薬局数の増加は高齢化と重なっているが、都道府県差を見ると高齢化だけでは説明しきれない。

ただし、高齢化だけでは説明が足りない

都道府県別にみると、そのことがよく分かります。

2024年度の人口10万人当たり薬局数は、次の県で多くなっています。

  • 佐賀県: 65.1
  • 高知県: 61.0
  • 山口県: 60.8

一方、少ないのは次の県です。

  • 沖縄県: 39.4
  • 千葉県: 42.9
  • 埼玉県: 44.2

ここで重要なのは、2024年10月1日時点で65歳以上人口の割合が最も高いのは秋田県の39.5%だという点です。つまり、最も高齢化が進んだ県が、そのまま薬局密度トップではありません。

このずれが示すのは、薬局数を左右する要因が複数あるということです。高齢化は一因ですが、それだけで都道府県差は説明できません。

もう一つの大きな要因は「院外処方」の拡大

薬局が増えた背景を考えるとき、見落としにくいのが院外処方です。厚生労働省の社会医療診療行為別統計では、医科入院外の院外処方率は2004年の51.7%から、2024年には81.4%まで上がっています。

これは、診療所や病院の中で薬を受け取るのではなく、外の薬局で受け取る患者が増えたことを意味します。薬局が増えやすくなるのは当然です。

高齢化と合わせて考えると、流れはこう整理できます。

  • 高齢化で、薬を継続的に使う人が増える
  • 院外処方の拡大で、受け皿としての薬局需要が増える
  • 地域によっては、面分業や生活圏の商業集積が薬局立地を後押しする

この3つが重なると、人口減少下でも薬局数が増えうる、という見方ができます。

データから読めること、読めないこと

ここは分けておいた方が誤読しにくくなります。

データから言えること

  • 全国の薬局数は長期で増えている
  • 同じ期間に高齢化は大きく進んでいる
  • 院外処方率も大きく上がっている
  • 都道府県別では、薬局密度と高齢化率の順位は一致しない

このデータだけでは言い切れないこと

  • 高齢化が薬局増加の「唯一の原因」だとは断定できない
  • どの地域で何割が高齢化要因、何割が制度要因かまでは分からない
  • 個別の薬局開設が、在宅需要、ドラッグストア併設、門前立地のどれで増えたかは、この統計だけでは追えない

読むときの注意点

数字は便利ですが、単純比較には限界があります。

  • 薬局数は年度末時点、人口は10月1日現在で時点が異なる
  • 薬局の「数」は分かっても、営業時間や在宅対応力までは分からない
  • 2024年の院外処方率は8月審査分で、制度改定に伴う集計月変更があるため、前年以前との比較は注意が必要
  • 高齢化率が高い県でも、人口密度、都市構造、医療機関配置で薬局立地は変わる

では、今後どこを見るべきか

薬局が増えている理由をもっと正確に見るなら、次は「数」だけでは足りません。見るべきなのは次の点です。

  • 在宅対応をしている薬局がどこで増えているか
  • ドラッグストア併設型と調剤専門型の比率がどう変わっているか
  • 高齢化率ではなく、75歳以上人口や単身高齢者の増加とどう重なるか
  • 医療機関の減少地域で、薬局がアクセス維持にどこまで機能しているか

薬局が増えているのは、高齢化だけが理由ではありません。 高齢化で薬の需要が増え、その受け皿として院外処方と地域立地の変化が重なった結果とみるのが、いまのデータには最も合っています。次に確認したいのは、増えた薬局が本当に地域の服薬支援や在宅対応を担えているかどうかです。

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