ラジオ利用は本当に減ったのか 最新データで見る聴取率の低下と「ながら聴取」の残り方
ラジオは確かに広く薄く使われるメディアではなくなっています。総務省の最新調査では、2024年時点の平日1日あたり平均聴取時間は8.5分、平日に実際に聴いた人の割合は6.5%まで下がりました。
ただし、ここで「ラジオはもう聞かれていない」と言い切ると実態を外します。聞く人の数は減っても、聞く人は長く聞く。しかも、通勤中や車内、家事中、就寝前のように、画面を見にくい場面では今も使われています。
- 結論: ラジオは全体として縮小しているが、特定の年代と生活場面に集中して残っている
- 最新値: 2024年の平日平均聴取時間は8.5分、平日行為者率は6.5%
- 年代差: 平日の行為者率は10代0.0%、20代1.1%に対し、70代は14.1%
- 見落とし注意: 聴取率はリアルタイム聴取中心で、タイムフリーやポッドキャストは別に考える必要がある
まず、どのデータを見ているのか
今回の結論は、主に次の公開データをもとにしています。
- 総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
- 2025年6月公表
- 最新年として2024年のメディア利用時間と行為者率を掲載
- ビデオリサーチのラジオ個人聴取率の解説資料
- 聴取率が何を測り、何を含まないかを確認するために使用
- ビデオリサーチのradiko関連分析
- ラジオがどんな場面で聞かれているかを補足
- radikoの公開資料
- 配信の広がりと、放送外の聞き方が増えていることを確認
ここで重要なのは、「利用時間」と「聴取率」は同じ意味ではないことです。
総務省調査の「行為者率」は、その日に実際にそのメディアを使った人の割合です。一方で、ビデオリサーチが公表する「聴取率」は、放送と同時のリアルタイム聴取を対象にした指標で、radikoのタイムフリーやポッドキャストは含みません。
数字で見ると、ラジオは確かに減っている
まずは、縮小している部分をはっきり見ておきます。
平日の平均聴取時間は2020年の15.6分から2024年は8.5分へ
総務省の経年グラフでは、平日のラジオ聴取時間は次のように推移しています。
- 2020年: 15.6分
- 2021年: 14.3分
- 2022年: 10.0分
- 2023年: 9.4分
- 2024年: 8.5分
休日も同じ方向で、2024年は7.9分です。テレビやネットに比べると絶対値がかなり小さく、日常の平均接触時間としては、すでに少数派のメディアになっています。
聴く人の割合も下がっている
平日にラジオを聴いた人の割合も下がっています。
- 2020年: 9.2%
- 2021年: 7.2%
- 2022年: 6.9%
- 2023年: 6.6%
- 2024年: 6.5%
休日は2024年で4.1%です。平均時間が短いだけでなく、そもそもその日にラジオに触れる人自体が減っていることが分かります。
ここがポイント: ラジオは「みんなが少しずつ使うメディア」ではなくなり、利用者が絞られたメディアになっています。
ただし「聞かれなくなった」とまでは言えない
減少だけを見ると、ラジオは消えつつあるように見えます。ですが、残っている側の数字を見ると、別の姿が出てきます。
聞く人に限れば、平日の平均は181.9分
2024年の平日行為者率は6.5%ですが、行為者平均時間は181.9分です。つまり、その日にラジオを聴いた人は平均で3時間近く使っています。
この組み合わせが示すのは単純です。
- 接触者は少ない
- ただし接触した人の使い方は軽くない
- 習慣として残っている人には、まだ強いメディアである
平均値だけを見て「8.5分しか聞かれていない」と捉えると、この差を見落とします。
年代差はかなり大きい
2024年の平日行為者率を年代別にみると、分かれ方ははっきりしています。
- 10代: 0.0%
- 20代: 1.1%
- 30代: 3.0%
- 40代: 5.9%
- 50代: 7.0%
- 60代: 9.0%
- 70代: 14.1%
若年層で大きく落ち、高年層で残る構図です。ラジオ全体の平均値が下がるのは自然で、世代別に見ると「全員が一様に離れた」のではなく、「先に離れた層」と「まだ残っている層」が分かれています。
利用シーンはどこに残っているのか
ラジオが残っている場面を考えるとき、鍵になるのは「画面を見にくい時間」です。
ビデオリサーチのradiko分析では、radikoユーザーは自宅内で約80%、自宅外でも約55%が利用しており、場所をまたいで聞かれています。自宅内では「くつろいでいる時」が約40%、「就寝前」が約25%で、家事や炊事の最中も多いとされました。自宅外では、徒歩、公共交通機関、車内など移動中の利用が中心です。
この点は、ラジオが動画やSNSと違う位置にいることを示しています。
- 手が離せない家事中
- 目を使いにくい運転中
- 画面を見続けたくない就寝前
- 通勤や移動の途中
こうした時間は、映像メディアより音声メディアが入りやすい。ラジオが強いのは「一番人気の娯楽」だからではなく、生活のすき間に入り込めるからです。
「聴取率が下がった」と「音声利用が縮んだ」は同じではない
ここは誤読しやすいところです。
ビデオリサーチの説明では、ラジオ聴取率に含まれるのは、放送局の番組をリアルタイムで聴いた場合です。放送波だけでなくradikoやらじる★らじるの同時配信は含まれますが、次の利用は含まれません。
- 録音再生
- radikoのタイムフリー
- ポッドキャスト
このため、リアルタイムの放送聴取が減っていても、音声コンテンツ全体の利用まで同じ幅で減っているとは限りません。
実際、radikoは2024年2月にポッドキャスト配信を始め、同社の公開資料では民放ラジオ全99局の放送コンテンツをインターネットで楽しめる基盤として展開しています。放送の外側で番組に触れる経路は、以前より広がっています。
では、ラジオは今どんなメディアになったのか
ここまでの数字をまとめると、ラジオは「大衆メディア」から「場面特化型の習慣メディア」へ寄っています。
減ったのは何か
- 毎日なんとなく流しておく人の広がり
- 若年層のリアルタイム接触
- 1日平均で見た接触時間
残っているのは何か
- 高年層の習慣的な利用
- 車内や移動中の接触
- 家事中、くつろぎ時間、就寝前の音声需要
- 放送と同時ではない、配信経由の接触余地
つまり、ラジオは「みんなのメディア」ではなくなったが、「必要な場面では代わりが利きにくいメディア」として残っているという見方が近いでしょう。
読み解くときの注意点
最後に、数字を見るうえでの注意点も整理しておきます。
- 総務省調査の最新公表は2025年6月だが、グラフの最新年は2024年
- 聴取率はリアルタイム聴取中心で、タイムフリーやポッドキャストを含まない
- ビデオリサーチのラジオ聴取率調査は首都圏・関西圏・中京圏が対象で、全国一律の実態とは少しずれる
- radiko関連の利用シーン分析は、放送波ラジオ全体ではなくradikoユーザーの傾向を含む
この条件を分けて見ないと、「ラジオは激減した」と「音声はまだ強い」という一見矛盾する話を、同じ土俵で混ぜてしまいます。
これから見るべきポイント
ラジオ利用を今後も追うなら、次はこの3点です。
- リアルタイム聴取の減少が、70代にも広がるのか
- タイムフリーやポッドキャストの公開データがどこまで増えるのか
- 車内、家事中、就寝前といった「画面を見ない時間」を、ラジオ以外の音声サービスがどこまで奪うのか
平均8.5分という数字だけを見ると、ラジオはかなり小さく見えます。ですが、3時間近く聞く少数の利用者が残り、しかも生活の特定場面では今も居場所がある。この二重構造を押さえないと、ラジオの今は読み違えます。
