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海外の自炊時間は本当に減ったのか 米仏加英の生活時間調査で読む食卓の変化

海外の自炊時間は本当に減ったのか 米仏加英の生活時間調査で読む食卓の変化

海外の生活時間データを並べると、「どの国でも自炊時間が一方的に減っている」とは言えません。長期では女性の料理時間が短くなった国がある一方、男性の参加率は上がり、在宅時間が急増した局面では調理や片づけの時間が増えた国もあります。

今回の結論を先に言うと、変わったのは「料理そのものが消えた」ことではなく、誰がどれだけ担うか、どこで食べるか、家で過ごす時間がどれだけあるかです。時間の総量だけを見ると誤読しやすく、参加率や食事時間も一緒に見る必要があります。

  • 米国では2024年の「食事準備と後片づけ」は平均40分/日で、なお日常の活動として大きい
  • フランスでは1986年から2010年に料理時間が18分短縮した一方、食事時間はむしろ伸びた
  • カナダの長期比較では女性の自宅での食事準備時間が減り、男性は増えて分担が少し近づいた
  • 英国ではコロナ禍の行動制限期に、料理や洗い物の時間が一時的に増えた
目次

使用データと比較条件

まず前提です。国際比較では「自炊時間」という完全に同じ指標が各国でそろっているわけではありません。

今回見たのは主に次の公的データです。

  • OECDのTime Use Database
  • UNECEの生活時間統計
  • 米国BLSのAmerican Time Use Survey
  • フランスInseeの生活時間調査
  • カナダStatistics Canadaの時間利用統計
  • 英国ONSのTime Use統計

比較するときの注意点も早めに置いておきます。

  • 米国は「Food preparation and cleanup」で、調理だけでなく後片づけを含む
  • フランスは「料理時間」と「食事時間」を分けて公表している
  • カナダの長期比較で使う系列は「Food preparation/Meals at home」で、純粋な調理だけではない
  • 英国の2020年データはオンライン調査で、2014-2015年の通常調査と完全同一ではない
  • OECD自身も、日記日数や活動分類の違いで国際比較に限界があると明記している

ここがポイント: 国をまたいで見るときは、1つの数字だけで「自炊離れ」と決めつけないほうがいいです。減った国があっても、同時に男性の参加拡大や在宅化による押し上げが起きています。

まず結論を数字で見る

いちばん分かりやすいのは、料理時間の変化が1本線ではないことです。

米国

米国労働統計局の2024年データでは、15歳以上の平均で「食事準備と後片づけ」は0.67時間/日、つまり約40分でした。参加率は63.1%です。

男女差はまだあります。

  • 男性: 0.46時間/日、参加率54.2%
  • 女性: 0.86時間/日、参加率71.6%

ただし、変化を見ると動いているのは量だけではありません。BLSの別資料では、男性がこの活動をした割合は2003年の35%から2017年の46%へ上がっています。女性も66%から69%へ上がっており、米国では「家で料理する人が減った」というより、男性側の参加が広がったと読むほうが近い場面があります。

フランス

フランスのInseeは、1986年から2010年までの長期変化をかなりはっきり示しています。

  • 料理時間: 1時間11分 → 53分
  • 減少幅: 18分
  • 食事時間: 2時間09分 → 2時間22分
  • 増加幅: 13分

この組み合わせは重要です。調理の手間は減っても、食べる時間まで同じ方向に縮んだわけではないからです。

加工食品の普及、外食や持ち帰りの広がり、家電の進化で準備時間は短くなっても、食事そのものがすぐに「時短一辺倒」になったとは読めません。

カナダ

カナダの長期比較では、25〜64歳の「Food preparation/Meals at home」にかなり大きな変化があります。

  • 男性: 1986年 17.2分 → 2005年 27.1分
  • 女性: 1986年 83.8分 → 2005年 56.9分

ここで見えるのは、総量の減少だけではなく役割分担の変化です。女性の負担はなお重いものの、1980年代ほど片寄ってはいません。

一方で、Statistics Canadaの2022年Time Use Surveyでは、家事分類の中に「食事の準備・配膳・後片づけ」が含まれており、最新調査でも食関連の家事が独立した重要項目として扱われています。つまり、カナダでも「自炊が消えた」のではなく、測り方と担い手が変わってきたと見るほうが実態に近いです。

英国

英国では平時の長期比較に加え、コロナ禍が食卓の変化を強く映しました。ONSによると、最初のロックダウン期には、18歳以上の人びとは1日1時間弱を料理または洗い物に使っていました。

これは2014-2015年のTime Use Surveyとの比較で示された変化です。外食や通勤が急に減り、家で過ごす時間が増えると、食事準備の時間は押し上がります。

ここで大事なのは、料理時間が景気や物価だけで決まるわけではなく、在宅時間の増減にかなり左右されることです。英国の数字は、その点をはっきり示しています。

何が変わったと読めるのか

ここまでの数字から言えることを、事実と解釈に分けて整理します。

事実として言えること

  • 主要国の公的調査では、食事準備や後片づけの時間は今も毎日の一定時間を占める
  • 長期では、女性の料理関連時間が短くなった国がある
  • 同時に、男性の参加率や所要時間が伸びた国がある
  • 在宅化が進む局面では、料理時間が一時的に増える
  • 食事準備の短縮と、食事時間の短縮は同じ意味ではない

ここから先は解釈

考えやすいのは、次の3つです。

  • 冷凍食品、総菜、宅配、キッチン家電の普及で「ゼロから作る時間」は短くなりやすい
  • 共働き化や通勤、在宅勤務の変化で、家で料理する頻度そのものが上下する
  • 家庭内の分担が変わると、国全体の平均時間が同じでも中身はかなり違って見える

特にカナダと米国の数字は、女性の時間減少と男性の参加拡大を同時に見る必要があると教えてくれます。平均だけ追うと、「自炊離れ」でひとまとめにしてしまいがちですが、それでは担い手の変化を見落とします。

誤読しやすいポイント

生活時間データは身近ですが、読み方には落とし穴があります。

  • 「料理時間」が減っても、食材の下ごしらえ、片づけ、買い物が別分類なら実態より小さく見える
  • 外食や中食が増えると、家庭の調理時間は減っても食への支出や関心まで減ったとは限らない
  • パンデミック期の数値は平時の生活習慣として固定化したとは限らない
  • 国ごとに対象年齢や調査方式が違うため、1分単位の厳密比較には向かない

OECDも、日記の取り方や活動分類の違いが国際比較に影響すると明記しています。ランキングとして並べるより、同じ国の前後比較複数国で共通して見える方向を重ねるほうが安全です。

これから見るべきポイント

食卓の変化を追うなら、次は時間だけでは足りません。合わせて見たいのは次の3つです。

  • 家計調査や消費統計で、外食・中食・食材支出がどう動いたか
  • 在宅勤務や通勤時間の変化が、平日の調理時間をどう押し上げたか
  • 男女別だけでなく、単身世帯、子育て世帯、高齢世帯で差がどう開いているか

自炊時間は減ったのか。答えは単純ではありません。短くなった国はあるが、同時に担い手は広がり、家にいる時間が増えると再び伸びる。次に見るべきなのは、料理時間そのものより、どの世帯で、どの曜日に、何の支出と結びついて変わっているかです。

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