平均給与は増えているのか?業種別・年代別の推移をデータで検証
平均給与は、名目額では増えています。国税庁の「民間給与実態統計調査」でみると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は2014年分の415万円から、2019年分は436万円、最新の2024年分は478万円まで上がりました。
ただし、上がり方は一様ではありません。業種では電気・ガス・熱供給・水道業や金融業、情報通信業が高水準を維持し、宿泊業・飲食サービス業はなお低いままです。年代でも20代後半から50代前半にかけて伸びが大きい一方、70歳以上ではむしろ低下が見られます。
- 最新の公表値では、2024年分の平均給与は478万円
- 業種差は大きく、2024年分は最高の電気・ガス・熱供給・水道業が832万円、最低の宿泊業・飲食サービス業が279万円
- 年代別では10人以上事業所で50代前半が526万円と高く、70歳以上は342万円まで下がる
使用データと比較条件
今回使ったのは、主に国税庁の一次資料です。対象や定義が少し違うので、本文では分けて扱います。
- 全体の平均給与: 国税庁「民間給与実態統計調査」のうち、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与
- 業種別比較: 同調査の報道発表資料にある業種別の平均給与
- 年代別比較: 同調査の第10表にある事業所規模別・年齢階層別の平均給与。ここでは比較しやすいよう、10人以上事業所の数値を使う
- 最新年: 2024年分
- 過去比較: 全体は2014年分と2019年分、年代は2009年分、業種は2014年分との比較を中心に見る
なお、国税庁は2014年分から2021年分について新たな復元推計手法に基づく参考値も案内しています。長期比較では、数万円単位の差を厳密に読みすぎないほうが安全です。
まず結論:平均給与は上がっている
全体の平均給与の流れを先に押さえると、増加傾向ははっきりしています。
- 2014年分: 415万円
- 2019年分: 436万円
- 2024年分: 478万円
2014年分から2024年分までの増加幅は63万円です。2019年分との比較でも42万円増えており、コロナ前の水準を上回っています。
ここがポイント: 「平均給与は増えたか」という問いへの答えは「はい」。ただし、どの業種でも同じように増えたわけではなく、年代ごとの伸び方もそろっていません。
業種別では差が大きいまま残っている
業種別に見ると、上がっている業種は多いものの、差はかなり大きいままです。2024年分の主な業種は次のとおりでした。
- 電気・ガス・熱供給・水道業: 832万円
- 金融業・保険業: 702万円
- 情報通信業: 660万円
- 製造業: 568万円
- 建設業: 565万円
- 医療・福祉: 429万円
- 宿泊業・飲食サービス業: 279万円
最高の電気・ガス・熱供給・水道業と、最低の宿泊業・飲食サービス業の差は553万円です。単純な額の差でも大きく、倍率で見ても約3倍あります。
2014年分と比べた伸び
2014年分と2024年分を比べると、主要業種の増減はこうなります。
- 建設業: 460万円 → 565万円
- 製造業: 488万円 → 568万円
- 情報通信業: 593万円 → 660万円
- 金融業・保険業: 610万円 → 702万円
- 電気・ガス・熱供給・水道業: 655万円 → 832万円
- 医療・福祉: 379万円 → 429万円
- 宿泊業・飲食サービス業: 237万円 → 279万円
全体としては上昇ですが、伸び幅はかなり違います。電気・ガス・熱供給・水道業は177万円増えた一方、宿泊業・飲食サービス業は43万円増にとどまります。
ここで重要なのは、平均給与が上がっても、低い業種の水準が高い業種に近づいたとは言いにくいことです。むしろ、上位業種と下位業種の距離は今も大きいままです。
年代別では20代後半から50代前半の伸びが目立つ
次に、10人以上事業所の年代別平均給与を2009年分と2024年分で比べます。年齢ごとの賃金カーブがどう変わったかを見るためです。
- 20〜24歳: 222万円 → 247万円
- 25〜29歳: 290万円 → 348万円
- 30〜34歳: 347万円 → 380万円
- 40〜44歳: 422万円 → 457万円
- 50〜54歳: 442万円 → 526万円
- 55〜59歳: 440万円 → 501万円
- 60〜64歳: 431万円 → 504万円
- 70歳以上: 381万円 → 342万円
どこが大きく変わったか
数字を並べるだけでなく、意味も押さえておきたいところです。
-
20代後半は伸びが比較的大きい 25〜29歳は58万円増えています。若年層でも、特に20代後半は2009年より水準が上がっています。
-
50代前半がなおピーク帯 2024年分でも50〜54歳が526万円で、年代別では最も高い水準です。年功だけでなく役職登用や賞与の厚みが乗りやすい年齢帯であることが、平均値にも表れています。
-
60代前半も下がりきっていない 60〜64歳は504万円で、2009年分より73万円高くなっています。継続雇用の広がりや、高年齢層の就業構成の変化が数字に反映されている可能性があります。
-
70歳以上は逆に低下 70歳以上は381万円から342万円へ下がっています。高齢層では、短時間勤務や再雇用後の低い給与水準の人が平均を押し下げやすく、若年から中高年とは違う動きになっています。
このデータから言えること、言えないこと
平均給与の上昇は事実です。ただし、そこからすぐに「みんな豊かになった」とまでは言えません。
言えること
- 名目の平均給与は、最新の2024年分まで見ても上昇している
- 業種差は依然として大きい
- 年代別では、20代後半から60代前半までの水準上昇が確認できる
言えないこと
- 平均給与が上がったから、実質的な生活余力も同じだけ増えたとは限らない
- 平均値だけでは、中央値や低所得層の動きは分からない
- 業種や年代ごとの上昇が、そのまま個人の昇給率を示すわけではない
物価上昇を考えると、名目賃金の増加だけでは家計の余裕を判断しにくい場面があります。平均給与の記事でも、生活実感とずれるのはこのためです。
読むときの注意点
数字を見誤りやすい点も整理しておきます。
- 国税庁の平均給与は、主に民間の給与所得者を対象にした統計で、公務員や自営業者は含みません
- 「1年を通じて勤務した給与所得者」と、給与所得者全体では水準が異なります
- 年代別比較では事業所規模の条件をそろえないと、単純比較でずれます
- 2014年分から2021年分は復元推計手法に関する注意があるため、長期比較では厳密な差の読み方に注意が必要です
- 業種分類は広い括りなので、同じ「サービス業」でも中身はかなり違います
今後の見どころ
平均給与が増えていること自体は確認できました。次に見るべきなのは、増加の中身です。
- 物価上昇を差し引いた実質的な改善が続くか
- 宿泊業・飲食サービス業など低水準業種の底上げが進むか
- 50代前半に集中している高い給与帯が、30代後半から40代にも広がるか
平均給与の数字だけを見ると上向きです。ただ、家計や働き方の変化まで読み解くには、業種差と年代差を分けて見ることが欠かせません。次に確認すべきなのは、「どの層に増加が届いているか」です。
