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スマホ保有は「若者の9割」から「60代の9割」へ 年代別データで読む15年の普及

スマートフォンを手にする複数世代と普及率の上昇を表したイメージ。

スマホ保有は「若者の9割」から「60代の9割」へ 年代別データで読む15年の普及

日本のスマートフォン普及は、若者への浸透よりも、いまや高齢層への拡大が主役になっています。2025年の個人保有率は全体で78.9%。20〜50代は9割を超え、60代も88.6%、70代は68.1%まで上昇しました。

一方、80歳以上は33.0%です。スマホが生活インフラになったことは確かですが、「ほぼ全員が持っている」と扱えるのは現役世代までで、年齢によるアクセス格差はまだ大きく残っています。

この記事で押さえるポイントは次の4つです。

  • 世帯保有率は2010年の9.7%から2025年の91.8%へ上昇
  • 個人保有率は2025年に78.9%、20〜50代では9割超
  • 2016年以降の伸びが特に大きいのは60代と70代
  • 保有率が高くても、操作能力や利用目的まで同じとは限らない
目次

使用データと比較条件

長期推移では「世帯」と「個人」を分けることが最も重要です。 同じスマホ保有率でも、分母が異なれば数字の意味は変わります。

主に使用するのは、総務省の「通信利用動向調査」です。最新値は2025年8月時点を対象とした令和7年調査で、2026年5月29日に公表されました。

  • 世帯保有率:世帯員の誰かが対象機器を持つ世帯の割合
  • 個人保有率:本人がスマートフォンを持つ人の割合
  • 対象地域:全国
  • 年代区分:13〜19歳、20代、30代、40代、50代、60代、70代、80歳以上
  • 比較年:主に2010年、2016年、2021年、2025年

たとえば、夫婦のどちらか一人だけがスマホを持つ世帯は「スマホ保有世帯」に数えられます。しかし、個人保有率では一人だけが保有者です。そのため、2025年は世帯保有率91.8%に対し、個人保有率は78.9%となります。

調査は全国の世帯を抽出して行う標本調査です。全数調査ではないため、前年差が小さい場合は、実際の変化だけでなく標本誤差や回答状況の影響も考える必要があります。

世帯普及率は9.7%から91.8%へ

15年間で起きた最大の変化は、スマホが一部の人の新製品から、ほとんどの世帯にある基盤へ変わったことです。

総務省の系列では、スマートフォンの世帯保有率は2010年の9.7%から2025年の91.8%へ上昇しました。増加幅は82.1ポイント、率にすると約9.5倍です。

年スマホ世帯保有率読み取れる段階
2010年9.7%保有世帯は約10世帯に1世帯
2012年49.5%ほぼ半数まで急拡大
2015年72.0%多数派の端末になる
2020年86.8%9割に近づく
2023年90.6%9割台に到達
2024年90.5%高水準で横ばい
2025年91.8%テレビの90.1%を上回る

初期の伸びは非常に速く、2010年から2012年までの2年間だけで39.8ポイント上昇しました。これに対し、2020年から2025年までの上昇は5.0ポイントです。

これは普及が止まったというより、分母の大部分に行き渡り、伸びる余地が小さくなった状態です。今後の世帯保有率は、初期のような急上昇ではなく、非保有世帯が少しずつ縮小する動きとして表れやすくなります。

パソコンを大きく上回った意味

2025年の世帯保有率は、スマートフォンが91.8%、パソコンが64.4%でした。差は27.4ポイントあります。

この差が重要なのは、行政、金融、交通、買い物などのオンラインサービスで、パソコンを前提にすると届かない世帯が増えるためです。入力欄が多い申請や複雑な表を、スマホの縦長画面でも完結できるようにする必要があります。

ただし、スマホが普及したからパソコンが不要になったとは限りません。長文作成、表計算、複数画面を使う作業では、端末ごとの役割が違います。保有率の逆転は、能力の優劣ではなく、日常の入口がスマホへ移ったことを示します。

年代別では20〜50代が9割超、差は70代以降に集中

2025年の年代差は、若年層と現役世代の間ではなく、60代以降の傾斜として表れています。

総務省調査による個人のスマートフォン保有率は、次のようになっています。

  • 13〜19歳:89.7%
  • 20代:92.7%
  • 30〜50代:各年代とも9割超
  • 60代:88.6%
  • 70代:68.1%
  • 80歳以上:33.0%
  • 全体:78.9%

13〜19歳と60代はいずれも約9割です。年齢だけを見て「若者はデジタル、高齢者は非デジタル」と二分する見方は、少なくとも60代までの保有状況には合わなくなりました。

しかし、70代から80歳以上にかけては35.1ポイント低下します。80歳以上では約3人に2人がスマホを持っていない計算です。病院の予約、災害情報、交通案内、行政手続きなどをスマホだけに寄せると、必要性が高い人ほど利用できない場面が生じます。

ここがポイント: スマホ普及の焦点は「若者が持つか」から、「70代以上が使える入口と、持たない人の代替手段をどう残すか」へ移っています。

2016年との比較で見える「普及の後半戦」

2016年から2025年までの主な伸びは、60代と70代が担いました。 若い年代ではすでに高水準だったためです。

2016年の個人保有率は、20代94.2%、30代90.4%でした。一方、60代は33.4%、70代は13.1%、80歳以上は3.3%にとどまっていました。

2025年と比べると、変化は鮮明です。

年代2016年2025年増減
13〜19歳81.4%89.7%+8.3ポイント
20代94.2%92.7%-1.5ポイント
60代33.4%88.6%+55.2ポイント
70代13.1%68.1%+55.0ポイント
80歳以上3.3%33.0%+29.7ポイント

60代と70代はいずれも55ポイント前後上昇しました。若年層で始まった普及が、約10年かけて上の年代へ広がった形です。

20代の2025年値は2016年を1.5ポイント下回りますが、この差だけで若者のスマホ離れとは判断できません。すでに9割を超える指標では年ごとの振れが出やすく、調査対象や回答状況の影響も無視できないためです。

直近4年でも70代の伸びが大きい

2021年から2025年に限っても、60代は79.3%から88.6%へ9.3ポイント、70代は53.1%から68.1%へ15.0ポイント上昇しました。

この時期には、通信事業者による3Gサービス終了の告知や移行が進みました。従来型携帯電話からスマートフォンへの買い替えを後押しした可能性はあります。

ただし、統計が示すのは同じ時期に保有率が上がったという事実です。3G終了だけが増加を生んだと断定はできません。端末価格、家族からの勧め、メッセージアプリの普及、オンライン手続きの増加なども同時に関係し得ます。

国際比較では年齢と質問文をそろえる必要がある

国際差を見るときは、国別順位より「何歳の、どの状態を保有と呼んだか」を先に確認すべきです。

OECDがPIRLS 2021とPISA 2022を整理した資料では、約10歳の子どものうち自分のスマートフォンを持つ割合は、対象国平均で約70%でした。ただし、トルコは29%、フランスは40%である一方、ラトビア、ポーランド、北欧諸国では90%を超えます。

15歳になると、インターネット接続機能のある自分のスマートフォンを持つ割合はOECD平均で98%に達します。国際差は「持つかどうか」だけでなく、持ち始める年齢に強く表れているわけです。

日本の通信利用動向調査は13〜19歳をまとめた89.7%であり、PISAは15歳だけを対象にしています。この2つを横に置いて、日本がOECD平均より低いと結論づけることはできません。

比較条件の違いは次の通りです。

  • 日本の数値は13〜19歳という幅のある年齢階級
  • OECDの数値は約10歳または15歳の在学者
  • 「スマートフォン」と「インターネット接続機能のある自分の携帯電話」で質問文が異なる
  • 調査年も2021年、2022年、2025年で一致しない

国際比較から確実に言えるのは、15歳では対象国の多くがほぼ飽和している一方、10歳前後では国ごとの家庭環境や教育・社会慣行の違いが大きく出ていることです。

地域ランキングを簡単に作れない理由

都道府県値は確認できても、年代別の地域ランキングには標本数という壁があります。

通信利用動向調査の統計表には地方別・都道府県別の集計があります。しかし、「東京都の70代」と「鳥取県の70代」のように地域と年代を細かく分けるほど、各区分の回答者数は少なくなります。

その状態で小数点以下の差まで順位にすると、実態以上に精密なランキングに見えてしまいます。地域差を読むなら、少なくとも次を確認する必要があります。

  • 各地域・年代の集計人数
  • 比重調整前後の値
  • 無回答の扱い
  • 単年の差が翌年も続いているか
  • 都市部と地方で年齢構成が違う影響

全国調査から年代差は比較的明瞭に読めますが、都道府県別の細かな順位は同じ確度では読めません。地域のデジタル格差を検討する場合は、複数年平均や自治体独自調査、通信環境、所得、人口構成などを組み合わせる方が安全です。

保有率だけでは分からない三つの格差

端末を持っていることと、必要なサービスを自力で使えることは別です。 普及が8割を超えたいま、次に見るべき指標は利用の中身です。

1. 操作と安全性の格差

アプリの導入、本人確認、パスワード管理、詐欺メッセージの判別までできるかは、保有率には表れません。家族に設定してもらった端末を通話だけに使う人も、複数の行政・金融サービスを使う人も、同じ「保有者」です。

2. 費用負担の格差

スマホには端末代、通信料、修理費がかかります。世帯所得と保有率を同時に見る必要はありますが、単純な相関だけで「所得が低いから持てない」とは断定できません。低価格端末、家族契約、中古端末など、負担を下げる選択肢もあるためです。

3. 代替手段の格差

予約や申請がアプリ限定になると、非保有者だけでなく、OSの更新ができない古い端末の利用者も不利になります。電話、窓口、紙、代理手続きのどれを残すかは、保有率とは別に判断しなければなりません。

特に80歳以上では、2025年でも非保有者が約3分の2を占めます。行政や医療機関が「世帯保有率9割」を根拠にスマホへ一本化すると、個人単位の実態を見誤ります。

これから見るべき数字

今後は全体保有率の1ポイントより、70代以降の利用可能性を追う方が生活への影響を捉えやすくなります。

注目点は次の通りです。

  • 70代の保有率が今後も年数ポイントずつ上がるか
  • 80歳以上の33.0%がどの速度で上昇するか
  • スマホ経由で行政、医療、金融サービスを実際に利用できる割合
  • 端末非保有者向けの電話・窓口・紙の手続きが維持されるか
  • 都道府県差が複数年でも確認できるか

日本のスマホ普及は、世帯単位ではほぼ完了に近づきました。しかし、個人単位では80歳以上に大きな空白があります。次の焦点は端末の販売台数ではありません。持たない人も含めて、必要な情報や手続きに到達できるかが問われます。

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