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EC比率は英国27.1%、中国26.5%、米国16.1%、日本9.78%――主要4カ国のネット通販を比較

英国、中国、米国、日本のEC比率を比較するデータ可視化イメージ。

EC比率は英国27.1%、中国26.5%、米国16.1%、日本9.78%――主要4カ国のネット通販を比較

小売・物販に占めるネット通販の比率を2024年の公表値で比べると、英国は27.1%、中国は26.5%、米国は16.1%、日本は9.78%でした。英国と中国では、おおむね4分の1を超える水準です。

ただし、この数字をそのまま「ネット通販の普及ランキング」と読むことはできません。各国で分母、対象商品、季節調整の扱いが異なるためです。確実に言えるのは、ECが一時的な代替手段ではなく、主要な購買経路として定着した一方、国ごとに到達水準と集計方法には大きな差があるということです。

  • 2024年の公表比率は英国27.1%、中国26.5%、米国16.1%、日本9.78%
  • 英国はコロナ禍で急上昇した後も、27%前後を維持
  • 日本は2014年の4.37%から2024年の9.78%へ、10年間で5.41ポイント上昇
  • 国際比較では、比率だけでなく「何を分母にしたか」の確認が欠かせない
目次

使用データと比較条件

この比較では、各国の政府統計機関が公表した2024年の年間値を中心に使います。対象は英国、中国、米国、日本です。

公表時期が異なるため、最新状況については2025年以降の値も別に確認します。ただし、国際比較の基準年は原則として2024年にそろえました。

国 2024年のEC比率 公表主体 主な対象・条件
英国 27.1% 英国国家統計局(ONS) グレートブリテンの小売売上に占めるインターネット販売
中国 26.5% 中国国家統計局 社会消費品小売総額に占める実物商品のオンライン小売
米国 16.1% 米国国勢調査局 小売売上全体に占めるEC。年間推計値
日本 9.78% 経済産業省 物販系BtoC市場に占めるEC。サービス・デジタル分野は比率算定外

ここでいう「EC比率」は、店舗とネットを合計した市場のうち、オンラインで受注・販売された金額がどれほどを占めるかを示す指標です。利用者の人数や注文回数ではなく、基本的には売上金額の割合を表します。

2024年は英国と中国が約27%、日本は約10%

4カ国の差を最も端的に示すのが、英国・中国と日本の開きです。英国と中国の比率は日本の約2.7倍、米国は約1.6倍でした。

英国は27.1%、コロナ後も高水準

英国国家統計局の時系列では、インターネット販売比率は2007年の3.4%から2019年には19.2%へ上昇しました。2020年に28.1%、2021年には30.7%まで跳ね上がっています。

行動制限が緩和された後は、2022年に26.6%へ低下しました。それでも2023年は26.7%、2024年は27.1%、2025年は27.4%です。店舗への回帰が起きても、比率はコロナ前の19.2%には戻りませんでした。

この推移から確認できるのは、コロナ禍が押し上げた需要のすべてが一過性ではなかったことです。2020~2021年のピークからは下がったものの、英国では小売売上のおよそ4分の1以上がネット経由という状態が定着しています。

中国は実物商品のオンライン販売が26.5%

中国国家統計局の2024年国民経済・社会発展統計公報によると、実物商品のオンライン小売額は12兆7,878億元で、前年から6.5%増加しました。社会消費品小売総額に占める割合は26.5%です。

2021年の比率は24.5%でした。2024年までの3年間で2.0ポイント上がった計算です。すでに高い水準に達しているため、比率の上昇は英国のコロナ期ほど急ではありませんが、拡大は続きました。

なお、中国国家統計局が2025年分として公表した実物商品のオンライン小売額は13兆923億元、比率は26.1%です。金額は前年比5.2%増えた一方、比率は2024年公報の26.5%を下回りました。

これは「EC市場が縮小した」という意味ではありません。オンライン販売が増えても、分母となる小売全体の動きや統計値の改定によって、比率が下がる場合があるためです。

米国は16.1%、2026年4~6月には17.1%

米国国勢調査局によると、2024年のEC売上は推計1兆1,926億ドルで、前年比8.1%増でした。同年の小売売上全体は2.8%増にとどまり、EC比率は2023年の15.3%から2024年には16.1%へ0.8ポイント上昇しました。

直近の四半期値では、2026年4~6月期の季節調整済みEC売上が3,402億ドル、小売売上全体が1兆9,865億ドルで、比率は17.1%です。前年同期比ではEC売上が12.2%増、小売全体が6.7%増となりました。

米国ではECが小売全体より速く伸び、比率を押し上げています。ただし、四半期の季節調整済み値と年間値は同じ条件ではないため、17.1%を2024年の各国年間値と直接並べるべきではありません。

日本は9.78%、10年間で2倍超に

経済産業省の調査では、2024年の物販系BtoC-EC市場は15兆2,194億円で、前年比3.70%増でした。EC化率は2023年の9.38%から9.78%へ0.40ポイント上昇しています。

長期では変化が鮮明です。

  • 2014年:4.37%
  • 2016年:5.43%
  • 2018年:6.22%
  • 2019年:6.76%
  • 2020年:8.08%
  • 2022年:9.13%
  • 2024年:9.78%

2014年から2024年までの上昇幅は5.41ポイント。比率は約2.24倍になりました。2020年には前年から1.32ポイント上昇し、その後も伸びていますが、2021年以降は年間0.25~0.70ポイントの上昇に収まっています。

日本の物販ECは拡大を続けているものの、足元では一気に置き換わる局面ではなく、店舗販売と併存しながら比率を上げる段階にあります。

ここがポイント: 2024年の公表値では英国と中国が約27%、米国が16.1%、日本が9.78%です。ただし、対象商品や分母が違うため、差のすべてを消費者のネット利用度で説明することはできません。

日本の数字は商品分野によって大きく違う

日本全体の9.78%だけを見ると、ネット通販がまだ限定的に見えるかもしれません。しかし、商品別に分けると様子は大きく変わります。

経済産業省が示した2024年のEC化率は次の通りです。

商品分野 EC化率 EC市場規模
書籍、映像・音楽ソフト 56.45% 1兆8,708億円
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 43.03% 2兆7,443億円
生活雑貨、家具、インテリア 32.58% 2兆5,616億円
衣類・服装雑貨等 23.38% 2兆7,980億円
化粧品、医薬品 8.82% 1兆150億円
食品、飲料、酒類 4.52% 3兆1,163億円
自動車、自動二輪車、パーツ等 4.16% 3,336億円

書籍や家電では、すでに英国や中国の小売全体の比率を上回ります。一方、食品は市場規模こそ3兆1,163億円と最大ですが、EC化率は4.52%です。

この差には、商品を実際に確認したいか、配送費を吸収しやすいか、購入頻度が高いか、温度管理が必要かといった条件が関係します。ただし、商品特性だけで各国差の原因を断定することはできません。都市構造、店舗網、物流費、所得、決済手段、統計上の商品構成も同時に影響するからです。

「英国が日本の2.8倍」と単純には言えない

国際比較で最大の注意点は、同じ「EC比率」という名称でも中身が完全には一致しないことです。

分母と対象範囲が違う

日本の経済産業省は、BtoCのEC化率を物販系分野に限って算出しています。旅行、飲食、金融などのサービス分野と、電子出版やオンラインゲームなどのデジタル分野は、比率の算定対象に含めません。

中国の指標は「実物商品のオンライン小売額」を、飲食収入を含む「社会消費品小売総額」と比べたものです。分子と分母の範囲が一致していない部分があります。

米国は小売業の売上を基礎にし、インターネット、モバイル端末、EDIなどを通じて買い手が注文した取引をECとして集計します。支払いや商品の受け渡しがオンラインである必要はありません。

英国のONSは、グレートブリテンの小売業者によるインターネット販売をRetail Sales Indexの中で把握しています。国の範囲も英国全体ではなく、イングランド、スコットランド、ウェールズからなるグレートブリテンです。

物価上昇でも売上比率は動く

ここで使った比率は、主に名目の売上金額をもとにしています。商品の販売数量が変わらなくても、ネットでよく売れる商品の価格が店舗中心の商品より上がれば、EC比率は押し上げられます。逆の動きも起こります。

そのため、EC比率の上昇をそのまま「荷物の個数が同じ割合で増えた」「店舗の利用回数が減った」と読み替えることはできません。注文数、購入者数、配送個数を知りたい場合は、それぞれ別の統計が必要です。

コロナ禍のピークを基準にしない

英国では2021年の30.7%から2022年に26.6%へ低下しました。しかし、2019年の19.2%と比べれば、2024年の27.1%は7.9ポイント高い水準です。

どの年を基準にするかで、「縮小」にも「長期的な拡大」にも見えます。短期評価では前年、構造変化を見るときはコロナ前と最新年の両方を確認する必要があります。

比率の差から何が読み取れるか

各国の統計は、ECが共通して伸びている一方、伸び方が一本調子ではないことを示しています。

事実として確認できること

  • 英国は2020年に比率が急上昇し、その後も27%前後を維持している
  • 中国では実物商品のオンライン小売額が2024年に6.5%、2025年に5.2%増えた
  • 米国では2024年にEC売上の伸びが小売全体を5.3ポイント上回った
  • 日本の物販EC化率は2014~2024年に毎年上昇した
  • 日本国内でも、書籍の56.45%と食品の4.52%では50ポイント以上の差がある

数字だけでは決められないこと

これらの数値だけで、次のような因果関係までは断定できません。

  • 店舗数の多さがEC比率を何ポイント下げたか
  • 所得や物価がオンライン購入をどの程度増減させたか
  • 高齢化や人口密度が国ごとの差をどれだけ説明するか
  • EC比率の上昇によって実店舗が何店減ったか
  • 配送網や返品制度の違いが購買行動をどこまで変えたか

検証するには、年齢別の利用率、都市・地方別の配送環境、商品別売上、店舗数、所得、送料、返品率などを同じ期間で組み合わせる必要があります。

生活者にとって重要なのは「何%か」だけではない

EC比率が上がると、買い物の利便性は高まります。営業時間や居住地に左右されにくくなり、店舗にない商品も比較しやすくなります。

同時に、生活者が負担するコストの形も変わります。

  • 送料や最低注文金額が購入判断に入りやすくなる
  • 受け取り時間、置き配、返品手続きが買い物の一部になる
  • 地域の店舗が減ると、ネットを使いにくい人の選択肢が狭まる
  • セール価格を比較しやすい一方、定期購入や動的な価格設定を見極める必要が生じる
  • 配送量が増えれば、物流人材や再配達への負荷も問題になる

したがって、EC比率の高さだけを消費者利益の大きさとみなすのは早計です。価格、送料、受け取りやすさ、返品条件、店舗へのアクセスを合わせて見なければ、実際の利便性は判断できません。

今後見るべき3つの分岐点

今後の焦点は、ECが増えるかどうかより、どの商品で、どの速さで、どの費用を伴って増えるかです。

1.コロナ後の水準から再び上昇するか

英国は27%前後で推移し、中国は2025年に26.1%となりました。高水準で横ばいになるのか、物流や決済の改善で再び上向くのかが一つ目の分岐点です。

2.日本の食品ECが全体を押し上げるか

日本では書籍や家電のEC化が進む一方、最大市場の食品は4.52%です。食品の比率が上がれば、物販全体の9.78%も動きやすくなります。ただし、冷蔵・冷凍配送、少額注文の採算、受け取り方法が制約になります。

3.統計の定義をどこまでそろえられるか

国際比較の精度を高めるには、物販だけにそろえる、飲食や自動車を分母から除く、年間値を使うといった調整が必要です。今後の公表値を見る際も、順位の変化より先に定義変更や改定の有無を確認すべきです。

主要国のECは、すでに小売の周辺的な存在ではありません。ただし、2024年の「英国27.1%、中国26.5%、米国16.1%、日本9.78%」という差は、消費者行動だけでなく統計設計の差も含んでいます。次に注目すべきなのは順位ではなく、各国で伸びしろの大きい商品分野と、配送・送料・店舗アクセスの負担がどう変わるかです。

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