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耕作放棄地は40年で約3.2倍に――農地減少と「再生できる土地」の地域差

耕作されている田畑と草木が繁茂した区画が並ぶ農村風景。

耕作放棄地は40年で約3.2倍に――農地減少と「再生できる土地」の地域差

耕作放棄地は、全国で1975年の13.1万haから2015年の42.3万haへ、40年間で約3.2倍に増えました。ただし、この調査は2015年で終了しており、現在の「荒廃農地」の面積とつないで増減を判断することはできません。

その後の土地利用を別の統計で見ると、耕地面積は2025年に423.9万haまで減少しています。一方、2024年度の荒廃農地は25.7万haで前年度と同じ水準ですが、再生利用が可能な土地は9.4万haから9.8万haへ増えました。農地が減ることと、荒廃農地の総面積が増えることは、同じ動きではありません。

この記事で押さえるのは、次の3点です。

  • 耕作放棄地の長期推移と、現在の荒廃農地を区別する。
  • 耕地面積の減少を、荒廃と宅地・道路などへの転用に分けて読む。
  • 地域を比べるときは、荒廃農地の総面積に加えて、再生可能な土地の割合を見る。
目次

使用データ――過去の増加と現在の状態は、別の統計で読む

比較の軸は、農林業センサスの耕作放棄地、耕地面積調査、現地調査による荒廃農地の3つです。

本記事は、2026年10月8日時点で農林水産省などが公表している資料を確認し、全国の長期推移と都道府県・農業地域類型別の違いを整理しています。主要データの対象時点は次のとおりです。

  • 耕作放棄地:1975~2015年。 農林業センサスなどの公的資料に掲載された全国値を比較。
  • 耕地面積:2025年7月15日現在。 田と畑の合計。2025年10月28日公表の結果を使用。
  • 荒廃農地:2024年度、2025年3月31日現在。 2025年12月26日公表の全国・都道府県別結果を使用。
  • 農業地域類型別の内訳:2024年度。 農林水産省が2026年2月にまとめた資料を使用。

耕地面積は土地の面積です。同じ畑に年2回作付けすれば2回分を数える「作付延べ面積」とは異なります。また、田の面積は、その年に米を作った面積そのものではありません。農林水産省「面積調査」

「耕作放棄地」と「荒廃農地」は何が違うか

耕作放棄地は、以前は耕作していたものの、過去1年以上作付けせず、今後数年も作付けする意思がない土地を、農家などの申告で把握した指標です。

荒廃農地は、耕作されずに荒れ、通常の農作業では作物を栽培できなくなった土地を、市町村・農業委員会が現地で確認する指標です。所有者の意思と、土地の現況という違いがあります。農林水産省「農地・荒廃農地等の分類と面積」

耕作放棄地の調査は2015年で終了しました。したがって、2015年の42.3万haと2024年度の荒廃農地25.7万haを引き算して、「放棄された土地が16.6万ha減った」とは言えません。環境省「耕作放棄地面積」関連資料

長期推移――耕作放棄地は増え、耕地そのものは縮小した

耕作放棄地の増加は2015年まで確認できますが、近年の変化を追うには耕地面積と荒廃農地の統計が必要です。

耕作放棄地は1975年から31.2万ha増加

全国の耕作放棄地面積は、次のように推移しました。単位は万haで、農家と土地持ち非農家の所有する耕作放棄地を含む公表値です。

年耕作放棄地面積
1975年13.1万ha
1985年13.5万ha
1995年24.4万ha
2005年38.6万ha
2010年39.6万ha
2015年42.3万ha

1975年から2015年までの増加は31.2万ha、約238%です。1985年から1995年には10.9万ha増えており、全期間を通して同じ速さで増えたわけではありません。内閣府「遊休資産の増大」掲載資料

ここで分かるのは、作付けを再開する意思のない土地が、長い期間にわたって増えたことです。すべてが森林のような状態になったことや、同じ面積が現在まで残っていることまでは、この数字から確認できません。

耕地は2016年から2025年に23.2万ha減少

耕地面積の全国値は、2016年の447.1万haから2025年の423.9万haへ減りました。9年間で23.2万ha、約5.2%の減少です。

  • 2016年:447.1万ha
  • 2020年:437.2万ha
  • 2023年:429.7万ha
  • 2024年:427.2万ha
  • 2025年:423.9万ha

田は2016年の243.2万haから2025年の230.0万haへ、畑は203.9万haから193.9万haへ減っています。減少は田だけに限られません。農林水産省「農地に関する統計」

2025年の前年比は3.3万ha減、0.8%減です。農林水産省は、荒廃農地からの再生などによる増加を、耕地の荒廃や転用などによる減少が上回ったと説明しています。つまり、減った耕地をすべて「耕作放棄された土地」と数えることはできません。農林水産省「令和7年耕地面積」

宅地や道路になった土地と、草木が繁茂して耕せなくなった土地では、次に取れる対応が違います。土地利用の変化を読むには、減少量だけでなく、その理由を確かめる必要があります。

最新の荒廃農地――総量が横ばいでも、新たな荒廃は続く

2024年度の荒廃農地は前年度と同じ25.7万haですが、その内訳は変わっています。

農林水産省の公表値を、万ha単位で整理すると次のようになります。

区分2023年度2024年度
再生利用が可能9.49.8
再生利用が困難と見込まれる16.315.9
合計25.725.7

再生可能な荒廃農地は、丸めた値で0.4万ha増えました。ここでいう再生可能とは、抜根や整地などを行えば通常の耕作ができると見込まれることです。「すぐ作付けできる」「採算が合う」という意味ではありません。

2024年度に新たに発生した荒廃農地は23,680ha、再生利用された面積は8,445haでした。再生面積は新規発生面積の約36%にとどまります。農林水産省「令和6年度の荒廃農地面積」

ただし、この2つの差を、そのまま年度末の荒廃農地面積の増加量にはできません。年度末に残る面積を理解するには、再生以外に集計対象から外れた土地や、分類・把握の変化も確認する必要があります。

ここがポイント: 荒廃農地の合計が横ばいでも、新たに荒れる土地は発生しています。総面積に加え、「新規発生」「再生利用」「再生可能な土地の残量」を見ると、対策が追いついているかを判断しやすくなります。

地域差――荒廃農地が多い県と、再生可能な土地が多い県は異なる

同じ「荒廃農地が多い地域」でも、耕作を再開できる土地の割合には大きな差があります。

長崎・愛媛・千葉では、面積の中身が違う

2024年度の都道府県別結果から、総面積と再生可能な面積の違いが分かる3県を比較します。対象時点は2025年3月31日で、全国順位表ではありません。

県荒廃農地計うち再生可能再生可能の割合
長崎県14,439ha2,822ha約19.5%
愛媛県13,905ha1,725ha約12.4%
千葉県11,908ha8,132ha約68.3%

割合は、再生可能な面積を各県の荒廃農地計で割った本記事の計算値です。長崎・愛媛では再生困難と見込まれる土地が大半を占める一方、千葉では再生可能な土地が約7割あります。農林水産省「令和6年度の都道府県別の荒廃農地の発生状況」

この差は、面積の大小だけでは対策を決められないことを示します。再生可能な土地が多い地域では、整備後に耕す人や借り手を確保できるかが焦点になります。再生困難な土地が多い地域では、復元の条件を確かめながら、その土地を今後どう管理するかも検討課題になります。

なお、この割合は「県内農地の何%が荒れているか」を表す荒廃率ではありません。分母は各県の荒廃農地面積です。土地条件や農地規模も違うため、県の対策の優劣をこの表だけで評価することはできません。

中山間地域だけの問題でもない

2024年度の再生可能な荒廃農地9.8万haを農業地域類型別に見ると、中間農業地域が4.3万ha、山間農業地域が1.2万haです。両者を合わせた中山間地域は5.5万haで、全国の56%を占めます。

一方、都市的地域は3.0万ha、平地農業地域は1.3万haあります。農業地域類型は地形や土地利用などによる分類であり、都市的地域も都市の中心部だけを指すわけではありません。農林水産省「荒廃農地の現状と対策」2026年2月

中山間地域に多いことは確認できます。しかし、この56%は再生可能な荒廃農地の分布であって、中山間地域の農地の56%が荒廃しているという意味ではありません。地域ごとの荒廃しやすさを比べるには、それぞれの農地面積を分母にした別の計算が必要です。

なぜ再生が進みにくいのか――借り手と土地条件を一緒に見る

農地の利用再開には、耕す人を見つけるだけでなく、その人が作業を続けられる土地条件が必要です。

農林水産省の白書が紹介する2021年1月の調査では、荒廃の原因として土地条件に着目した回答のうち、「山あいや谷地田など、自然条件が悪い」が25%で最も高く、「基盤整備がされていない」「区画が不整形」「接道がない、道幅が狭い」がそれぞれ16%でした。農林水産省「中山間地域の農業の振興と都市農業の推進」

これは全国の荒廃面積を原因別に割り振った数字ではありません。それでも、担い手への貸し付けだけで解決しない問題があることを示す材料になります。農機が入りにくい土地や、形が不規則な小区画では、借り受けた後にも作業の負担が残るからです。

農地をまとめれば、すべて解決するか

担い手への集積は有力な対応ですが、受け手の作業能力には限りがあります。

農林水産省が紹介する北海道雄武町の事例では、担い手への集積によって荒廃農地を2013年度の176haから2020年度の31haへ減らしました。その後は担い手不足や作業効率の限界から、さらに集積することが難しくなり、条件の悪い土地で韃靼そばなどによる粗放的な利用を検証しています。農林水産省「荒廃農地の現状と対策」2026年2月

この事例は、農地を集める効果と、その限界の両方を示しています。全国で同じ結果が得られるという証拠ではありませんが、「借り手がいるか」に加えて「借り手が無理なく管理できるか」を確認する必要があります。

地域で対応を考える際には、次のように条件を分けると論点が明確になります。

  • 土地条件がよく、受け手もいる: 貸借や隣接区画の集約を検討する。
  • 受け手はいるが、土地条件が悪い: 道路・区画・排水など、利用の妨げになる条件を確かめる。
  • 通常の作付けを担う人が足りない: 放牧や省力的な利用、保全管理を含めて検討する。

これらは全国統計から算出した将来予測ではなく、現地で確認すべき条件の整理です。再生工事が終わった面積と、その後も利用が続く面積は分けて追う必要があります。

数字の注意点――対象外の地域と調査変更を見落とさない

荒廃農地の全国値は、全国すべての市町村で同じ時点の現地調査を完了した数字ではありません。

2024年度結果は1,713市町村の集計です。福島第一原発事故による避難指示のあった福島県の5町村と、東京都小笠原村を除きます。また、能登半島地震の影響で調査できなかった石川県の8市町は、荒廃農地面積について2022年度または2023年度の数値を使用しています。農林水産省「令和6年度の荒廃農地面積」注記

したがって、石川県の面積を2024年度に新しく確認された状態として読むことや、全国値の小さな変化をすべて実際の土地利用の変化とみなすことには注意が必要です。

調査の仕組みにも変更があります。2021年度から、農地法に基づく遊休農地の利用状況調査と、それまでの荒廃農地調査が統合されました。長期グラフを作る際は、この境目を明示して比較する必要があります。農林水産省「遊休農地対策について」

ほかにも、次の読み違いを避けたいところです。

  • 耕地面積の減少=荒廃農地の増加ではない。 宅地・道路などへの転用も含む。
  • 再生可能=利用再開が決まっている、ではない。 整備費、受け手、継続利用の条件は別に確認する。
  • 総面積が大きい=荒廃率が高い、ではない。 地域の農地規模によって意味が変わる。
  • 総面積が横ばい=問題が止まった、ではない。 新規発生と再生利用は並行して起きる。

地域で次に見る数字――再生後に誰が使い続けるか

地域の土地利用を見極めるには、再生した面積に加えて、利用が続いているかを確かめることが重要です。

農地所有者には、草木を除いて耕せる状態に戻す課題があります。借り手には、その土地を既存の作業に組み込めるかという課題があります。市町村や農業委員会には、土地の状態と所有者・利用者の意向を結び付ける役割があります。

身近な自治体の公開資料を見るなら、年度末の荒廃農地面積だけでなく、次の項目を探すと実態をつかみやすくなります。

  • 再生可能な荒廃農地は増えたか、減ったか。
  • 新たに発生した面積に対し、再生利用された面積はどれだけあるか。
  • 再生後の借り手や管理主体は決まっているか。
  • 翌年度以降も作付けや保全管理が続いているか。

耕作放棄地の長期的な増加と、現在も続く耕地の減少は確認できます。次に問うべきなのは、再生可能と判定された9.8万haのうち、どの土地で受け手と作業条件が整い、利用を続けられるかです。

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