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パソコンのある家庭は10年で12.4ポイント減――スマホへの移行と、タブレットが伸びない理由

家庭の机に並ぶパソコン、スマートフォン、タブレット。

パソコンのある家庭は10年で12.4ポイント減――スマホへの移行と、タブレットが伸びない理由

家庭のパソコン保有率は、長い目で見ると下がっています。総務省の通信利用動向調査では、2015年の76.8%から2025年の64.4%へ、10年間で12.4ポイント低下しました。

同じ期間にスマートフォンは72.0%から91.8%へ上昇しました。ただし、タブレットまで一様にパソコンを置き換えているわけではありません。タブレットの世帯保有率は2020年の38.7%に対し、2025年は36.9%。数字が示すのは、スマホの普及とパソコン保有率の低下が並行して進んだことです。

この記事では、全国の世帯保有率の推移を軸に、端末の「置き換え」をどこまで判断できるかを整理します。

  • パソコンは10年間で12.4ポイント低下。ただし、毎年減っているわけではない。
  • スマホは9割を超える世帯に普及したが、これは個人の所有率ではない。
  • タブレットは直近5年間では減少し、パソコン減少分の受け皿とは言い切れない。
  • 複数の端末を持つ家庭があるため、保有率の差から買い替えの経路は分からない。
目次

使用データ――全国の「世帯保有率」を同じ調査で比べる

比較の中心は、総務省「通信利用動向調査」の世帯全体編です。

2026年10月8日時点で確認できる最新の年次結果は2025年調査で、e-Statでの公開日は2026年5月29日です。対象年と公表年は一年ずれています。「2026年公表の数字」を「2026年の保有状況」と読み替えないことが大切です。最新の統計表はe-Statで公開されています。

比較条件は次のとおりです。

  • 対象地域: 全国。
  • 対象: 調査年4月1日時点で満20歳以上の世帯主がいる世帯。
  • 指標: パソコン、スマートフォン、タブレット型端末を保有する世帯の割合。
  • 比較期間: 2015~2025年。途中の年も確認し、始点と終点だけで判断しない。
  • 回答の扱い: 複数回答。パソコンとスマホの両方を持つ世帯は、それぞれに含まれる。

通信利用動向調査の保有状況は8月末時点の指標として公的統計に掲載されています。2020~2023年の値と調査対象の注記は、総務省統計局の「日本の統計2025」第12章でも確認できます。

ここでいう64.4%は、「全国の人の64.4%が自分専用のパソコンを持っている」という意味ではありません。家族で一台を共有する世帯も、複数台を持つ世帯も、保有する世帯として数えます。台数や、一人ひとりが自由に使える時間は別の問題です。

主要数値――パソコンは長期低下、スマホは上昇

10年の変化は明確ですが、パソコン保有率の下がり方は一直線ではありません。

以下は全国の世帯保有率です。単位は%で、同じ行の数字を足して100%にする表ではありません。

調査年パソコンスマートフォンタブレット
2015年76.872.033.3
2020年70.186.838.7
2021年69.888.639.4
2022年69.090.140.0
2023年65.390.636.4
2024年66.490.5—
2025年64.491.836.9

※2024年のタブレットは、この表では掲載を省略しています。ゼロや未保有を意味しません。

2015年と2024年の値は、総務省の調査結果を転載した消費者庁の説明資料(PDFの9ページ目)、2020~2023年は「日本の統計2025」を参照しました。2025年のパソコンとタブレットは、同調査を掲載する滋賀県の公開資料、スマホは令和8年版情報通信白書で確認できます。

「12.4%減」と「12.4ポイント低下」は違う

2015年から2025年のパソコン保有率の差は、76.8−64.4=12.4ポイントです。元の76.8%に対する相対的な低下率を計算すると、約16.1%になります。

この記事では、端末間や年次間の割合の差がつかみやすいように「ポイント」で統一します。

  • パソコン:76.8% → 64.4%、12.4ポイント低下。
  • スマホ:72.0% → 91.8%、19.8ポイント上昇。
  • タブレット:33.3% → 36.9%、3.6ポイント上昇。

パソコンとスマホの大小関係も逆転しました。2015年はパソコンが4.8ポイント上回っていましたが、2025年にはスマホが27.4ポイント上回っています。家庭に普及している端末として、スマホが大きく先行するようになりました。

前年比だけでは長期の変化を見失う

パソコンは2023年の65.3%から2024年の66.4%へ、いったん1.1ポイント上昇しました。その後、2025年には2.0ポイント低下しています。

したがって、「毎年パソコン離れが進んでいる」は正確ではありません。確認できるのは、年ごとの上下を伴いながら、10年前より保有する世帯の割合が低くなったという事実です。

また、標本調査の一年の変動には調査誤差も含まれます。2024年の上昇だけで「パソコン回帰」、2025年の低下だけで「急速な買い替え」と結論づけるには、購入や廃棄の理由を示す別のデータが必要です。

タブレットへの置き換え――比較期間を変えると見え方が変わる

タブレットは10年前より普及していますが、直近5年間では保有率が下がっています。

2015~2025年では33.3%から36.9%へ3.6ポイント上昇。一方、2020~2025年では38.7%から36.9%へ1.8ポイント低下しました。2022年の40.0%と比べても、2025年は3.1ポイント低い水準です。

この違いは重要です。長い期間の始点と終点だけを見れば、「パソコンが減り、タブレットが増えた」と書けます。しかし途中の推移を加えると、タブレットが継続的に家庭へ広がり、パソコンを引き受けているという説明は成り立ちません。

スマホとタブレットを一括りにしない

2020~2025年に、スマホは5.0ポイント上昇し、パソコンは5.7ポイント低下しました。同じ期間のタブレットは1.8ポイント低下しています。

持ち運べる端末という共通点があっても、普及の方向は同じではありません。統計から最も強く確認できるのは、スマホの上昇とパソコンの低下です。

タブレットが動画視聴や読書、学習などを引き受ける可能性はあります。ただし、それは使い方に関する仮説です。この保有率の表には、購入理由も、パソコンを処分した理由も記録されていません。

タブレット保有率が伸び悩む理由についても、価格、買い替え周期、スマホとの用途の重複などが考えられますが、この統計だけでいずれかに絞ることはできません。

「スマホがパソコンを置き換えた」と、どこまで言えるか

保有率の逆方向の動きは置き換えと整合しますが、同じ家庭で買い替えが起きた証拠にはなりません。

毎年の全国集計から分かるのは、それぞれの端末を持つ世帯の割合です。「昨年パソコンを持っていた家庭が、今年はスマホだけになった」という世帯単位の移行を、そのまま追跡した数字ではありません。

三つの異なる変化を区別する

「置き換え」という言葉には、少なくとも三つの意味が含まれます。

  • 保有の置き換え: パソコンを手放し、スマホやタブレットだけを持つ。
  • 利用の置き換え: パソコンを残したまま、調べ物や買い物をスマホで行う。
  • 購入の見送り: 初めからパソコンを買わず、スマホで必要な用事を済ませる。

二つ目は、パソコンの世帯保有率を下げないまま起きます。逆に三つ目は、パソコンを処分した家庭がなくても保有率を下げる方向に働きます。

だからこそ、保有率と利用率を分ける必要があります。家にある端末と、実際に日々使う端末は一致するとは限りません。

スマホの多さは、パソコンとの併用も含む

2025年はスマホ91.8%、パソコン64.4%です。同じ全国の世帯を母数とする割合として考えると、両方を保有する世帯は計算上、少なくとも56.2%になります。91.8+64.4−100という、割合の重なりの下限です。

これは両方を持つ世帯を直接集計した公表値ではなく、二つの保有率から求めた下限です。それでも、スマホの普及を「パソコンが家庭から消えた」と読むのが行き過ぎであることは分かります。

多数の家庭では、スマホとパソコンが同時に存在し得ます。日常の短い操作はスマホ、長い文書の作成や複数資料の比較はパソコン、という使い分けは考えられますが、具体的な役割分担を確かめるには用途別の利用データが必要です。

地域差――パソコンもタブレットも高い県がある

地域の数字は、端末同士が単純に奪い合っているという説明を見直す材料になります。

滋賀県が掲載する2025年の通信利用動向調査では、パソコンの世帯保有率は神奈川県76.9%、滋賀県73.1%、石川県73.0%が上位です。全国の64.4%に対し、神奈川県は12.5ポイント上回っています。

タブレットも神奈川県47.6%、京都府43.3%、滋賀県43.2%が上位です。全国は36.9%。神奈川県は10.7ポイント、滋賀県は6.3ポイント高くなっています。

神奈川県と滋賀県は、両方の端末で全国を上回ります。これは県単位での併存であり、同じ世帯が両方を持っていることまで示すものではありません。それでも、「タブレットが広がる地域ほどパソコンが少ない」と決めつけることはできません。出典:滋賀県「滋賀県なんでも一番について」F3

地域差の理由を調べるときは、次の条件をそろえる必要があります。

  • 世帯主の年齢構成。
  • 一人暮らしか、複数人の世帯か。
  • 世帯年収。
  • 子どものいる世帯など、世帯類型。

たとえば複数人の世帯では、誰か一人がパソコンを持っていれば世帯保有に含まれます。一人暮らしと同じ条件ではありません。

最新の統計表にはこれらの属性別集計があります。県の順位だけで住民の関心やデジタル技能を評価するより、年齢や世帯人数をそろえて差が残るかを調べる方が、理由に近づけます。

数字の限界――保有率の低下は、台数減や能力低下と同じではない

この調査が直接示すのは、端末を持つ世帯の割合であり、販売台数や操作技能ではありません。

誤読しやすい点は四つあります。

保有率と総台数は別の指標

パソコンを持つ世帯の割合が下がっても、持っている家庭の台数が増えれば、総台数は同じ方向に動くとは限りません。世帯総数の変化も関係します。

したがって、64.4%という値だけで国内のパソコン台数や販売市場の縮小率は計算できません。

世帯主の年齢は、全員の年齢ではない

世帯主が高齢でも、若い家族が同居している場合があります。「世帯主年齢別のパソコン保有率」を「その年齢の個人のパソコン所有率」と読むと、対象を取り違えます。

年代別に読み解く場合は、世帯全体編の保有率なのか、世帯構成員編の個人の利用率なのかを先に確認する必要があります。

他の調査の数字を途中に混ぜない

内閣府の消費動向調査にも耐久消費財の普及率がありますが、基準時点や集計対象を確認せずに通信利用動向調査とつなぐと、調査の違いを実際の増減と誤認します。

長期推移は、まず同じ調査の同じ指標で比べる。そのうえで別の調査を補助材料として使う順序が適切です。

世帯構成の変化と買い替えを分ける

全国の平均は、各世帯の行動だけでなく、単身世帯や高齢世帯などの構成比が変わることでも動きます。

また、保有率には端末価格や維持費が直接含まれていません。「値上がりで買えなくなった」「スマホが便利だから不要になった」と理由を断定するには、家計支出や購入理由の調査を追加する必要があります。

暮らしへの含意――スマホで用事を完了できる設計が必要になる

パソコンを持たない世帯が35.6%あることは、オンラインの手続きを提供する側に具体的な課題を突きつけます。

2025年のパソコン保有率64.4%を100%から引くと、未保有は35.6%です。ただし、その全世帯がスマホだけで暮らしているという意味ではありません。タブレットの有無や、家庭外で使えるパソコンの有無は別途確認が必要です。

それでも、申込書の入力、添付書類の提出、内容の保存までパソコンを前提にすると、家庭にパソコンがない利用者への配慮が欠けます。スマホ向けの表示があるだけでは十分ではありません。

提供側が確認すべきなのは、実際の操作です。

  • スマホで申込内容を入力し、誤りを見つけて修正できるか。
  • 必要書類を撮影・添付し、送信前に確認できるか。
  • 受付結果や提出内容を保存し、後から見返せるか。
  • 端末を持たない人や操作が難しい人に、別の手段があるか。

今後、パソコン保有率がさらに下がり、スマホ保有率が高止まりするなら、スマホ中心の利用環境への対応が一層重要になります。一方、タブレット保有率が再び上がっても、それだけでパソコン代替が進んだとは判断できません。両方を持つ家庭が増えた可能性も残ります。

次の年次結果で見るべきなのは、全国の保有率に加えて、どの世帯でパソコンが減り、どの用途が別の端末へ移ったのかです。家庭の端末が変わったとき、用事を最後まで済ませられるか。保有率の低下を生活の問題として捉えるには、そこまで確かめる必要があります。

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