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空き家はなぜ増えるのか 住宅数と世帯数の30年推移で見る住まいの余剰

空き家はなぜ増えるのか 住宅数と世帯数の30年推移で見る住まいの余剰

空き家が増えている一番大きな背景は、世帯数が増えていても、それ以上のペースで住宅数が増えてきたことです。2023年の総務省「住宅・土地統計調査」では、総住宅数は6504万7千戸、総世帯数は5621万5千世帯。差は883万2千で、空き家数900万2千戸とほぼ並ぶ規模になっています。

つまり、全国合計で見る限り、空き家の増加は単純に「世帯が急減したから」ではありません。住宅ストックが積み上がる一方で、その受け皿になる世帯の増え方が追いつかず、余剰が広がってきたと読むのがまず基本です。

  • 2023年の空き家数は900万2千戸、空き家率は13.8%で過去最高
  • 住宅数は30年で約1926万戸増、世帯数は約1506万世帯増で、住宅の増え方が上回った
  • 直近5年でも、住宅数は263万9千戸増、世帯数は221万4千世帯増
  • 増えた空き家の中でも、賃貸・売却用や別荘を除く空き家の増加が目立つ
目次

使用したデータ

今回使う中心データは、総務省統計局の公的統計です。執筆時点の2026年4月29日時点で、全国の最新確報として確認できるのは2023年10月1日現在の「令和5年住宅・土地統計調査」です。

  • 出典: 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」
  • 公表日: 2024年9月25日
  • 補足資料: 「共同住宅の空き家についての分析」
  • 公表日: 2025年5月30日
  • 比較年: 1993年、2018年、2023年
  • 対象地域: 全国

この調査は5年ごとの標本調査で、住宅約340万住戸・世帯を対象に推計されています。なお、空き家には賃貸募集用、売却用、別荘などの二次的住宅も含まれるため、900万戸すべてがそのまま「放置空き家」ではありません。

まず見るべき数字は「住宅数と世帯数の差」

空き家の背景をつかむには、空き家数だけでなく、住宅数と世帯数の差を追うのが近道です。

総住宅数 総世帯数 空き家数
1993年 4587万9千戸 4115万9千世帯 472万戸 447万6千戸
2018年 6240万7千戸 5400万1千世帯 840万6千 848万9千戸
2023年 6504万7千戸 5621万5千世帯 883万2千 900万2千戸

30年で見ると、総住宅数は1925万8千戸増えました。対して総世帯数の増加は1505万6千世帯です。差は約420万広がっています。

この広がり方は、空き家数の増加幅とかなり近い動きです。1993年から2023年にかけて空き家は451万5千戸増えており、住宅ストックの積み上がりが空き家増加の土台になってきたことが分かります。

ここがポイント: 全国では世帯数も増えているのに、住宅数の方がさらに多く増えた。その積み残しが、空き家の増加として表れています。

直近5年でも流れは変わっていない

2018年から2023年の5年間でも、同じ傾向が続いています。

  • 総住宅数: 263万9千戸増
  • 総世帯数: 221万4千世帯増
  • 住宅数と世帯数の差: 42万6千拡大
  • 空き家数: 51万3千戸増

「1世帯当たり住宅数」は2023年も1.16戸で、2013年以降は同水準です。比率だけ見ると大きく跳ねていないように見えますが、母数が大きいため、同じ1.16でも余剰戸数は増え続けます。

空き家の中身を見ると、何が増えているのか

空き家900万2千戸の内訳を分けて見ると、読み方が変わります。

  • 空き家全体: 900万2千戸
  • 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家: 385万6千戸
  • 上の「除く空き家」の5年間増加: 36万9千戸
  • 総空き家の5年間増加: 51万3千戸

直近5年の増加分のうち、約7割はこの「賃貸・売却用や別荘を除く空き家」の増加です。ここには、長期不在、使い道未定、取り壊し予定などの住宅が含まれます。市場に出ていない、あるいはすぐには流通しにくい住宅が増えていることを示します。

共同住宅の空き家も大きい

2025年公表の参考分析では、2023年の共同住宅の空き家は502万9千戸で、空き家全体の55.9%を占めました。そのうち賃貸用の空き家が394万7千戸です。

ここから分かるのは、空き家問題が古い戸建てだけでできているわけではないという点です。

  • 地方の戸建ての使われない空き家
  • 都市部も含めた賃貸住宅の空室

この2つが、同じ「空き家」の中に同居しています。数字を読むときに、ここを混ぜると話がずれます。

データから読めること

結論を整理すると、事実として強く言えるのは次の点です。

  • 空き家増加の土台は、住宅数の増加が世帯数の増加を上回ってきたこと
  • 直近5年でもその差は縮まず、むしろ拡大していること
  • とくに市場に流通しにくい空き家の増加が目立っていること

一方で、これだけでは言い切れないこともあります。

「新築が悪い」だけでは説明しきれない

住宅数が増えた事実は確認できますが、統計だけで「どの政策が主因か」「誰の判断が最大要因か」までは断定できません。地域ごとの人口移動、相続、建て替え、賃貸経営、老朽化した住宅の流通不全など、複数の要因が重なっています。

「全国の世帯減少」が直接原因とも言い切れない

全国では2023年時点でも総世帯数は増えています。したがって、足元の全国データからまず見えるのは、世帯減少そのものよりも、住宅供給と住宅ストックの積み上がりが先行した構図です。

ただし、地域別に見ると話は別です。市区町村単位では世帯数が減る地域も多く、全国平均より早く余剰が表面化している場所があるはずです。

注意したい点

このテーマは、数字の意味を取り違えやすいところがあります。

  • 空き家率13.8%は、賃貸募集中の部屋や別荘も含む比率
  • 「問題の大きい空き家」を見たいなら、賃貸・売却用や二次的住宅を除いた385万6千戸も分けて見る必要がある
  • 住宅・土地統計調査は5年ごとの調査で、毎年の短期変動は追えない
  • 調査は標本調査であり、細かな地域比較では誤差や表章制約に注意が要る
  • 住宅数は総数、建て方別の住宅数は「居住世帯のある住宅」が中心で、定義が完全には同じではない

これから見るべきポイント

空き家が増える理由を全国データで要約するなら、まずは「家が多すぎる」ことです。しかも、その余剰は新旧の住宅市場にまたがって広がっています。

今後の注目点は次の3つです。

  • 世帯数が頭打ちになった後、住宅数との差がさらに広がるのか
  • 賃貸・売却用を除く空き家が、次の5年でも増え続けるのか
  • 全国平均ではなく、市区町村単位でどこから余剰が深刻化しているのか

空き家問題は、古い家だけの話ではありません。住宅数と世帯数の差が広がる限り、空き家は自然には減りにくい。 次に見るべきなのは、その余剰がどの地域で、どの種類の住宅に、どれだけ偏っているかです。

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