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朝食を抜く人は本当に増えたのか 公的統計で見る食習慣と生活時間の現在地

朝食を抜く人は本当に増えたのか 公的統計で見る食習慣と生活時間の現在地

結論から言うと、朝食を抜く人が一方向に増え続けているとは言い切れません。 厚生労働省の公表資料で年次推移を追える朝食欠食率は2017年時点までですが、20代・30代で高い水準が続く一方、年ごとの振れも大きく、右肩上がりではありません。

ただし、安心できる話でもありません。最新の2023年の国民健康・栄養調査では、20代は「1日3回食べる」人の割合も、「主食・主菜・副菜を1日2回以上、毎日食べる」人の割合も低く、若い世代ほど食習慣が不安定な状態は続いています。

  • 朝食欠食率の公的な年次系列では、増え続けているとは断定できない
  • ただし20代・30代は、今も朝食を抜きやすい中心層
  • 生活時間データでは、食事時間の総量は2016年から2021年で全国平均1分減にとどまる
  • 問題は「日本全体が急に朝食をやめた」より、若年層に偏って食習慣が弱い点にある
目次

使用データと比較条件

今回見たのは、性質の違う3つの公的データです。まずここを分けておくと、数字の読み違いを避けやすくなります。

  • 厚生労働省「平成29年国民健康・栄養調査」
  • 朝食欠食率の年次推移を確認できる直近の公表系列
  • 調査日は2017年、朝食欠食は任意の1日に朝食を食べなかった人の割合
  • 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」
  • 最新の食習慣の公表値
  • 調査は2023年11月実施、結果公表は2024年11月25日、報告書公表は2025年3月
  • 朝食欠食率そのものではなく、1日の食事回数や食事の組み合わせ頻度を確認
  • 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」
  • 食事に使う時間の変化を見るデータ
  • 調査は2021年10月、5年ごとの調査

朝食欠食率は「高止まり」であって「一直線の悪化」ではない

朝食を抜く人が増えているかを正面から見るなら、本命は国民健康・栄養調査です。

直近で年次推移をまとまって確認できる2017年の値は次の通りでした。

  • 男性総数 15.0%
  • 女性総数 10.2%
  • 男性20代 30.6%
  • 男性30代 23.3%
  • 女性20代 23.6%
  • 女性30代 15.1%

最も高いのは男女とも20代です。ここは2000年代から大きく変わっていません。

一方で、「年々増えている」と言い切るには無理があります。例えば、2017年の男性20代は30.6%でしたが、2016年は37.4%、2014年は37.0%、2007年は28.6%でした。高い水準ではあるものの、年ごとの上下があり、一直線の悪化ではありません。

女性20代も同じです。2017年は23.6%で、2016年は23.1%、2014年は23.5%、2007年は24.9%でした。こちらも高止まりですが、連続的な上昇とは言えません。

ここがポイント: 朝食欠食は「増え続けている」より、20代と30代に長く残っている生活習慣の弱点として見る方が実態に近いです。

長い目で見ると、30代男性は改善が弱い

健康日本21の基準値では、男性20代の朝食欠食率は1997年時点で32.9%、男性30代は20.5%でした。2017年は20代男性30.6%、30代男性23.3%です。

この比較から読めることは2つあります。

  • 男性20代は、1997年と比べて大きく悪化したとは言いにくい
  • 男性30代は、目標の15%以下に届かないまま、なお高い

「若者の朝食離れが止まらない」とひとまとめにするより、20代は高止まり、30代男性は改善が鈍いと分けて見る方が正確です。

最新の2023年データでも、若年層の食習慣は弱い

朝食欠食率の最新年次系列は見当たりませんが、2023年の国民健康・栄養調査には、食習慣の現在地を示す別の数字があります。

まず、20歳以上で「1日3回食べる」人の割合です。

  • 全体 82.5%
  • 20〜29歳 64.4%
  • 30〜39歳 75.1%
  • 40〜49歳 75.7%
  • 50〜59歳 79.5%
  • 60〜69歳 85.7%
  • 70歳以上 92.6%

20代は3人に1人弱が3食ではありません。朝食欠食そのものを示す数字ではないものの、若い世代ほど食事回数が崩れやすいことははっきり出ています。

次に、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日に2回以上ある日」が毎日の人の割合です。

  • 全体 46.4%
  • 20〜29歳 28.2%
  • 30〜39歳 32.5%
  • 40〜49歳 38.0%
  • 50〜59歳 40.1%
  • 60〜69歳 50.6%
  • 70歳以上 61.0%

この数字が示すのは、単に朝食を食べるかどうかだけではありません。若年層では、食事の回数だけでなく内容の整い方も弱いということです。

2023年時点で言えること

  • 朝食欠食率の最新値は、この公表資料だけでは確認しにくい
  • それでも20代の食習慣が弱いことは、3食率と食事内容の頻度から確認できる
  • 問題は「朝食だけ」より、生活リズム全体の不安定さとして現れている可能性が高い

生活時間データでは、食事時間そのものは大きく減っていない

では、生活時間はどうか。総務省の社会生活基本調査で全国平均の「食事」時間を見ると、2016年は1日1時間40分、2021年は1時間39分でした。

男女別でも大きな崩れはありません。

  • 男性 2016年 1時間38分 → 2021年 1時間37分
  • 女性 2016年 1時間43分 → 2021年 1時間41分

この結果からは、日本全体で食事時間が急減したために朝食欠食が広がったとは読み取りにくいです。

むしろ見えてくるのは、総量より偏りです。1日の食事時間全体は大きく減っていないのに、若年層では3食が崩れやすい。つまり、食事の「時間がない国」になったというより、年齢や働き方によって食べ方が uneven になっていると考えた方が近いでしょう。

何が言えて、何が言えないか

ここは切り分けが必要です。数字は強いですが、比較できる範囲には限界があります。

言えること

  • 朝食欠食率は20代・30代で高い
  • 2017年までの年次推移を見る限り、増え続けているとは言えない
  • 2023年時点でも、20代の食習慣は3食率・食事内容の両面で弱い
  • 生活時間全体としての食事時間は、2016年から2021年でほぼ横ばい

言えないこと

  • 2023年の朝食欠食率が2017年より上がったか下がったかの断定
  • 食事時間が1分減ったことと、朝食欠食の因果関係
  • 若年層の食習慣の弱さが、すべて長時間労働やスマホ利用だけで説明できるという断定

注意したい定義の違い

  • 朝食欠食率は「任意の1日に朝食を欠食したか」で集計
  • 2023年の食事回数や食事内容の頻度は、ここ1か月の様子を尋ねた項目
  • 社会生活基本調査の「食事」は、朝食だけでなく1日の食事時間全体

同じ「食生活」の数字でも、見ている対象と単位が違うため、横に並べるときは慎重さが必要です。

生活者目線で見ると、注目点は20代と30代前半

このテーマで実用的なのは、「日本人全体が朝食を食べなくなったのか」という大きな話より、どこに弱い層が残っているかを見ることです。

特に注目したいのは次の点です。

  • 20代は、朝食欠食率でも3食率でも最も弱い層
  • 30代は、子育てや就業の負荷が重なりやすい時期なのに、改善が十分とは言えない
  • 高齢層は3食率も食事内容の頻度も高く、世代差がかなり大きい

食習慣の改善を考えるなら、「朝食を食べよう」という標語だけでは足りません。朝の時間をどう確保するか、3食をどう維持するかまで見ないと、数字は動きにくいはずです。

最後に、次に確認したい watchpoint を挙げておきます。

  • 厚生労働省が、2018年以降を含む朝食欠食率の更新系列をどう公表するか
  • 2026年実施予定の次回社会生活基本調査で、食事時間や朝食開始時刻がどう変わるか
  • 20代だけでなく、30代前半の有業者で食習慣がさらに弱っていないか

数字で見る限り、朝食欠食は「急増中」というより、若い世代に長く残る高止まりの課題です。次に見るべきなのは、全国平均の印象ではなく、その高止まりがどの層で続いているかです。

参照リンク

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