待機児童は減ったが、保育の余裕は地域で違う 2025年データで見る保育環境の変化
保育所の待機児童は、全国合計では減っています。こども家庭庁が2026年5月7日時点で公表している最新の年次集計では、令和7年4月1日時点の待機児童数は2,254人で、前年の2,567人から313人減りました。
ただし、これで「保育環境が広く改善した」とまでは言い切れません。待機児童が出ている市区町村は211あり、前年より増えた自治体も109あります。数字が減っていても、困りごとは一部の地域と年齢に強く残っています。
- 全国の待機児童数は2,254人。2017年のピーク26,081人から8年連続で減少
- ただし待機児童のいる市区町村は211自治体あり、前年より増えた自治体は109自治体
- 待機児童の90.6%が0〜2歳で、特に1・2歳児が83.3%を占める
- 都道府県別では東京都339人、滋賀県335人、埼玉県208人など、偏りが大きい
まず確認したい使用データ
今回見たのは、こども家庭庁の「保育所等関連状況取りまとめ」です。中心に使ったのは令和7年4月1日時点の集計で、比較には令和6年4月1日時点の前年度データも使っています。
- 出典: こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」
- 比較年: 令和6年4月1日、令和7年4月1日
- 対象: 全国、都道府県、市区町村
- 集計対象: 保育所だけでなく、幼保連携型認定こども園や地域型保育事業などを含む
ここでいう待機児童は、単純に「入れなかった子どもの総数」ではありません。デジタル庁の定義では、利用申込者から実際の利用児童数などを差し引いた数で、育児休業中、求職活動を休止している、特定の園のみ希望しているなどの「除外4類型」は待機児童数に含めません。
ここがポイント: 待機児童数の減少は事実です。ただし、それは「すべての希望者が希望どおり入れた」こととは同じではありません。地域差と集計定義を合わせて見る必要があります。
全国ではどこまで減ったのか
全国値だけを見ると、待機児童はかなり減っています。
長期推移ではピークの10分の1以下
令和7年4月1日時点の待機児童数は2,254人です。2017年の26,081人をピークに減少が続き、現在は10分の1以下になりました。
一方で、保育ニーズそのものが完全に消えたわけでもありません。
- 保育所等利用定員: 303万人で前年比1.5万人減
- 利用児童数: 268万人で前年比2.7万人減
- 申込者数: 276.5万人
- 定員充足率: 88.4%で前年より0.4ポイント低下
つまり、全国では子どもの数の減少も進み、定員にも空きが出やすくなっています。けれども、余裕がある場所と足りない場所が同時に存在しています。
待機児童は低年齢に集中している
年齢別では偏りがはっきりしています。
- 0〜2歳児: 2,041人で全体の90.6%
- うち1・2歳児: 1,877人で全体の83.3%
- 3歳以上児: 213人
保育所の入りにくさは、今も主に1歳児、2歳児の受け皿の問題として残っています。全体の数字だけでは見えにくい部分です。
地域差はどこに出ているのか
都道府県別に見ると、待機児童は全国に均等に散らばっていません。数が大きい地域はかなり限られています。
都道府県別では東京と近畿の一部が目立つ
令和7年4月1日時点で待機児童数が多かった都道府県は次の通りです。
- 東京都: 339人
- 滋賀県: 335人
- 埼玉県: 208人
- 兵庫県: 199人
- 大阪府: 194人
- 奈良県: 186人
- 沖縄県: 171人
首都圏だけの問題ではなく、滋賀、兵庫、奈良、沖縄でも待機児童が目立ちます。人口規模だけで説明しにくい地域が入っている点が重要です。
前年より減った地域もあれば、増えた地域もある
前年との比較でも、動きは一様ではありません。
- 東京都: 361人から339人へ減少
- 埼玉県: 241人から208人へ減少
- 神奈川県: 188人から138人へ減少
- 千葉県: 83人から91人へ増加
- 北海道: 28人から34人へ増加
全国合計は減っていても、個別の地域では逆に増えることがあります。読者が住む地域の実感と全国ニュースがずれるのは、このためです。
市区町村で見ると何が起きているか
待機児童は、都道府県よりも市区町村で見た方が実態がつかみやすくなります。
待機児童が多かった自治体
令和7年4月時点で待機児童が多かった自治体の上位には、次の名前が並びました。
- 滋賀県大津市: 132人
- 兵庫県西宮市: 76人
- 奈良県橿原市: 68人
- 三重県四日市市: 56人
- 兵庫県明石市: 56人
最も多かった大津市でも、前年184人からは減っています。逆に橿原市は前年0人から68人へ増えました。
「ゼロになった後の再発」も起きている
令和7年4月時点で待機児童がある211自治体のうち、前年より増えた自治体は109ありました。そのうち54自治体は前年に待機児童ゼロでした。
これは、待機児童対策が一度効いた地域でも、次の年に同じ状態を保てるとは限らないことを示しています。宅地開発、転入増、申込の偏り、保育士不足が重なると、再び待機児童が出ます。
数字から読み取れること
ここまでの数字を並べると、待機児童問題は「全国的な量不足」から、もう少し違う段階に入っています。
1. 全国課題から地域偏在の課題へ移っている
全国の待機児童数は大きく減りました。けれども、待機児童が残る地域は都市部や転入超過のある自治体に偏りやすく、自治体ごとの差が大きいままです。
こども家庭庁の資料でも、待機児童を解消できなかった要因として多かったのは次の3つです。
- 保育人材の確保が困難
- 申込者数が想定以上に増えた、または定員不足
- 地域によって保育需要に偏りがあった
単に施設数を増やせば一律に解決する局面ではなくなっています。
2. 足りない地域と空きが出る地域が同時にある
同じ資料では、都市部と過疎地域の差も示されています。令和7年4月1日時点の定員充足率は、都市部が91.3%なのに対し、過疎地域は74.6%でした。
つまり、ある地域では入れず、別の地域では定員が埋まらない。保育政策の難しさは、全国合計よりもこのミスマッチにあります。
何に注意して読むべきか
待機児童データは有用ですが、読み違えやすい点もあります。
待機児童ゼロは「希望どおり入れた」ことを意味しない
待機児童の定義には除外があります。特定の園だけを希望している場合や、育児休業中などは待機児童に数えません。
そのため、待機児童ゼロの自治体でも、入園希望の調整が不要だったとは限りません。人気エリアや特定年齢の入りにくさは、別の数字や自治体資料も合わせて見た方が実態に近づきます。
4月1日時点の数字だけでは年度途中を拾えない
今回の年次集計は4月1日時点です。新年度の一斉入所に合わせた数字なので、年度途中の入所難や転入増はその後に変わることがあります。過去には10月1日時点調査もありましたが、令和2年度調査をもって中止されています。
保育所だけでなく集計対象が広がっている
この集計には、保育所に加えて認定こども園や地域型保育事業も含まれます。昔の報道や古い記事と比較するときは、どの施設類型まで含めているかをそろえて読む必要があります。
これから見るべきポイント
待機児童は確かに減りました。ただ、数字の見方を一段細かくすると、課題は消えたのではなく場所と年齢が絞られて残っていると分かります。
今後の注目点は次の3つです。
- 1・2歳児の受け皿が、増加地域でどこまで追いつくか
- 保育士確保の難しさが、定員を実際に使える数にどう影響するか
- 空き定員が増える地域で、統廃合や多機能化がどう進むか
全国合計の減少だけで安心するより、自分の住む自治体で待機児童が再発していないか、低年齢児の枠が足りているかを見る方が、生活に近い判断材料になります。
