ネット通販利用はどれくらい増えたのか?EC市場の成長をデータで解説
結論から言うと、日本のネット通販利用はこの5年でかなり増えました。経済産業省の調査では、国内のBtoC-EC市場規模は2019年の19兆3,609億円から2024年は26.1兆円へ拡大しています。伸び率にすると約34.8%増です。
家計側の動きも同じ方向です。総務省統計局の家計消費状況調査では、二人以上の世帯のネットショッピング支出は2019年の月平均1万4,332円から2024年は2万4,928円となり、約73.9%増でした。市場の拡大だけでなく、実際に家庭の買い方そのものが変わってきたことが分かります。
- 市場規模: BtoC-ECは2019年の19兆3,609億円から2024年は26.1兆円へ拡大
- 家計支出: 二人以上世帯のネットショッピング支出は2019年の月平均1万4,332円から2024年は2万4,928円へ増加
- 利用世帯: ネットショッピング利用世帯の割合は2019年42.8%から2024年55.3%へ上昇
- 直近動向: 2026年2月分でも利用世帯割合は55.5%で、前年同月を上回っている
まず見るべきデータと比較条件
今回使うデータは、性格の違う2つです。数字の意味が違うので、ここを分けて読むと誤解しにくくなります。
- 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」
- 対象: 日本国内のBtoC-EC市場
- 対象年: 主に2019年と2024年
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範囲: 物販系、サービス系、デジタル系を含む消費者向け電子商取引
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総務省統計局「家計消費状況調査」
- 対象: 二人以上の世帯
- 対象年: 主に2019年、2024年、補足として2026年2月分
- 範囲: 世帯のネットショッピング利用割合と支出額
つまり、前者は「国全体でEC市場がどれだけ大きいか」、後者は「家庭がどれだけネットで買っているか」を見るデータです。同じECでも、見ている対象は一致しません。
ここがポイント: 市場規模は約35%増、家計の月間支出は約74%増です。ECは企業の売上データでも、家庭の支出データでも拡大が確認できます。
EC市場はどれくらい大きくなったのか
経済産業省の公表値では、国内BtoC-EC市場規模は次のように増えています。
- 2019年: 19兆3,609億円
- 2023年: 24.8兆円
- 2024年: 26.1兆円
2019年から2024年までの増加額は約6.7兆円です。単年で見ても、2024年は前年より5.1%増でした。
さらに、物販分野のEC化率も上がっています。2019年は6.76%でしたが、2024年は9.8%です。これは、小売全体の中でネット経由の取引が占める比率が高まったことを意味します。単に市場全体が膨らんだだけでなく、買い物の場が店舗からネットへ少しずつ移っていると読めます。
2024年に大きかった分野
2024年のBtoC-ECで規模が大きかった分野は次の通りです。
- 食品、飲料、酒類: 3兆1,163億円
- 衣類・服装雑貨等: 2兆7,980億円
- 生活家電・AV機器・PC・周辺機器等: 2兆7,443億円
- 生活雑貨、家具、インテリア: 2兆5,616億円
ここで目立つのは、日常性の高い品目が上位に並んでいることです。以前からECと相性が良かった家電や書籍だけでなく、食料や生活雑貨の存在感が大きい。ネット通販が特別な買い方ではなく、普段の生活費の受け皿になっていることが見えてきます。
家庭の買い方はどう変わったか
家計消費状況調査でみると、二人以上の世帯のネットショッピング利用は着実に広がっています。
利用世帯の割合は42.8%から55.3%へ
- 2019年: 42.8%
- 2023年: 53.5%
- 2024年: 55.3%
2019年から2024年で12.5ポイント上昇しました。2024年は2002年の調査開始以来で過去最高です。
全世帯が毎月使うわけではありませんが、二人以上世帯の半分を超える水準まで来ています。ネット通販は一部の人の選択肢ではなく、家計全体でみても標準的な購入手段に近づいています。
支出額は月平均1万4,332円から2万4,928円へ
支出額の伸びは、利用率よりさらに大きいです。
- 2019年: 1世帯当たり月平均14,332円
- 2023年: 23,021円
- 2024年: 24,928円
2019年比では約73.9%増です。2024年の利用世帯当たり支出額も4万5,047円で、こちらも過去最多でした。
この数字が示すのは、使う世帯が増えただけではないという点です。使っている世帯の中でも、ネットで買う金額が膨らんでいます。頻度、単価、購入対象の広がりが重なっていると見るのが自然です。
何がよく買われているのか
2024年のネットショッピング支出の内訳をみると、上位は次の通りです。
- 食料: 5,225円、構成比21.0%
- 旅行関係費: 5,195円、構成比20.8%
- 衣類・履物: 2,536円、構成比10.2%
- 家電・家具: 1,752円、構成比7.0%
この並びは、ECが「モノを安く探す場」だけではなくなったことを示しています。食料は日常消費、旅行関係費は予約を含むサービス消費です。商品とサービスの両方でネット経由が定着しているわけです。
2019年比で特に伸びた項目
総務省統計局の2024年結果では、2019年と比べて次の項目の伸びが大きくなっています。
- 食料: 163.1%増
- 保険: 89.2%増
- チケット: 57.9%増
- 旅行関係費: 52.5%増
特に食料の伸びは大きく、ネット通販の中身が変わったことをよく表しています。以前は家電や衣類の比重が目立ちましたが、今は食品のような反復購入までネットに乗ってきました。
一方で、旅行関係費やチケットは感染拡大期に落ち込んだあとで戻している面があります。増え方が大きいからといって、すべて同じ理由で伸びたとは限りません。
直近の数字では勢いは続いているのか
足元の動きも確認しておきます。総務省統計局の家計消費状況調査では、2026年2月分の二人以上世帯のネットショッピング利用世帯割合は55.5%でした。前年同月より0.6ポイント上昇しています。
同じ月のネットショッピング支出額も、前年同月比で名目4.8%増でした。寄与が大きかった項目は食料と旅行関係費です。年平均の市場規模とは別のデータですが、少なくとも家計側では急減しているとは読めません。
このデータから言えること、言えないこと
ここは分けて整理した方がよい部分です。
言えること
- 日本のBtoC-EC市場は2019年より明確に大きくなった
- 家庭のネットショッピング利用率も支出額も増えた
- 伸びを支えた中心には、食料のような日常品目がある
- 旅行やチケットなどサービス系の回復も市場を押し上げた
言い切れないこと
- すべての増加が純粋な「利用量増」だとは限らない
- 物価上昇で金額が押し上げられた部分はある
- 市場規模の拡大が、そのまま実店舗の縮小を意味するわけではない
- 地域差は今回のデータだけでは十分に追えない
EC市場の数字は売上ベース、家計消費状況調査は世帯支出ベースです。両方が伸びているので方向感ははっきりしていますが、厳密には別の統計です。そこを混同すると、「ネットだけが伸び、店頭は全部減った」といった読みすぎになります。
読むときの注意点
最後に、数字を見るうえでの注意点を絞っておきます。
- 家計消費状況調査の本文で使った支出額と利用率は、主に二人以上の世帯が対象
- 経済産業省のBtoC-EC市場規模は、物販だけでなくサービス系・デジタル系も含む
- 家計消費状況調査は2021年1月調査分から調査票の一部変更があるため、細かな時系列比較では定義差に注意が必要
- 旅行関係費やチケットは、感染拡大期の落ち込みからの反動を含んでいる
そのうえで見ても、2019年と比べた増加幅は小さくありません。次に注目すべきなのは、食品や日用品のような反復購入がさらに伸びるのか、それとも伸びの中心がサービス予約に移るのかです。ECの成長は続いていますが、これからは「何が伸びるか」の中身を見る段階に入っています。
