若者の酒離れは世界共通ではない 15歳の飲酒率と成人消費量で見えた国ごとの差
海外でも若者の飲酒は弱まっているのか。結論を先に言うと、平均では下がってきたが、国ごとの差が大きく、「世界で一様に酒離れ」とは言いにくいです。
OECDの最新公表資料では、15歳の直近30日飲酒率は2022年に平均38%でした。2018年の39%からはわずかな低下にとどまり、反復的な酩酊経験は女子でむしろ持ち直しています。大人の酒類消費量が高い国でも若者は抑えられている国があり、逆に成人平均が中位でも10代の飲酒が強い国もあります。
- 平均では減少傾向でも、直近は鈍化。15歳の直近30日飲酒率は2018年39%から2022年38%。
- 国差はかなり大きい。15歳の反復酩酊はデンマーク、ハンガリーで35%以上、アイスランド、ポルトガル、イスラエルでは10%未満。
- 成人消費量と若者の飲み方は一致しない。ポルトガルは成人1人当たり11.9リットルと高い一方、15歳の反復酩酊は10%未満です。
- 見るべき指標は1つでは足りない。若者の「飲酒経験」「直近30日」「酩酊経験」と、大人の「販売量ベース消費量」は別物です。
使用データと比較条件
今回使うのは、執筆時点で確認できる最新の公表資料です。
- 若者のデータは、WHO欧州地域事務局とHBSCがまとめた2021/2022年調査、およびOECD「Health at a Glance 2025」
- 成人のデータは、OECD「Health at a Glance 2025」に掲載された2023年の1人当たり純アルコール消費量
- 比較対象は、HBSCとOECDの両方で重ねやすい国を中心に見ます
ここでいう成人消費量は、15歳以上1人当たりの年間純アルコール販売量です。若者データは11歳・13歳・15歳の学校調査で、この記事では主に15歳を見ます。対象年齢も集計方法も違うので、同じ列でそのまま因果関係を読むことはできません。
まず押さえたい数字
WHO欧州地域事務局の2021/2022年HBSCまとめでは、欧州・中央アジア・カナダの15歳のうち、57%が飲酒経験あり、37%が直近30日で飲酒でした。OECD加盟国中心の集計でも、2022年の15歳は生涯飲酒経験60%、直近30日飲酒38%です。
つまり、「若者はもうほとんど飲まない」という段階ではありません。少なくとも15歳時点では、国際比較で見ると飲酒経験者はまだ多数派です。
さらにOECDでは、15歳の反復酩酊経験は平均22%。2018年から2022年にかけて、15歳の直近30日飲酒率は39%から38%へ小幅に下がりましたが、反復酩酊は男子で横ばい、女子では19%から22%へ上がりました。下がり続けているというより、減少が止まりつつあると見るほうが実態に近いです。
ここがポイント: 「若者の酒離れ」は平均値だけを見ると一部は当たっています。ただし足元では勢いが弱く、しかも国ごとの差が大きいため、世界共通の流れとして単純化するのは危険です。
国別に見ると、同じ“酒の国”ではない
10代の飲酒が目立つ国
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デンマーク 15歳の直近30日飲酒率は55%以上、反復酩酊も35%以上です。一方、成人の年間消費量は9.3リットルで、OECD平均8.5リットルをやや上回る程度でした。成人平均が突出して高いわけではないのに、10代の飲み方はかなり重い部類に入ります。
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ドイツ 15歳の直近30日飲酒率は55%以上のグループに入り、成人消費量は10.6リットルです。若者も大人も相対的に高めで、販売量ベースでも学校調査でも飲酒が弱い国とは言えません。
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イタリア 15歳の直近30日飲酒率は55%以上ですが、成人消費量は8.0リットルでOECD平均を少し下回ります。ここが重要です。大人の平均消費量が中位でも、10代の直近飲酒率は高いという例だからです。
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ハンガリー 15歳の反復酩酊は35%以上で高水準です。さらに11歳の直近30日飲酒率も10%以上の国に含まれます。成人消費量は10.3リットルでした。早い年齢から飲酒が入り込みやすい構図が数字に出ています。
成人の消費量は高いが、10代の酩酊は低い国
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ポルトガル 成人消費量は11.9リットルで、今回見る国の中でもかなり高い水準です。それでも15歳の反復酩酊は10%未満でした。大人がよく飲む国でも、10代の飲み方まで同じとは限りません。
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アイスランド 成人消費量は7.7リットルでOECD平均を少し下回り、15歳の反復酩酊も10%未満です。若者の深酒が抑えられているグループに入ります。
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イスラエル 成人消費量は2.7リットルとかなり低く、15歳の反復酩酊も10%未満です。大人も若者も低い側にそろう国です。
何が読み取れるのか
ここまでの比較から言えるのは3点です。
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若者の酒離れは、世界で均一には進んでいない デンマーク、ドイツ、イタリアのように、15歳の直近30日飲酒率が55%以上の国が残っています。
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成人の消費量だけでは若者の実態は読めない ポルトガルは成人消費量が高いのに、15歳の反復酩酊は低い側です。逆にイタリアは成人消費量が平均並みでも、15歳の直近飲酒率は高い側にあります。
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“飲むかどうか”と“どれだけ危険な飲み方か”は分けて見る必要がある 直近30日で飲んだ人の割合と、酔うまで飲んだ経験は別です。若年層の変化を追うなら、単純な販売量ランキングだけでは不十分です。
どこに注意が必要か
同じ「飲酒率」でも定義が違う
HBSCは自己申告の学校調査です。この記事で使った若者指標は、主に次の2つです。
- 直近30日で飲酒した15歳の割合
- これまでに2回以上酔ったことがある15歳の割合
一方、成人消費量は販売量ベースの純アルコール換算です。家飲み、自家製、違法流通、観光客消費の扱いなどで国ごとの差が出ます。OECD自身も、公式統計は観光客消費や未記録消費を十分に調整していないと明記しています。
若者調査は学校在籍者が中心
HBSCは学校ベースのため、不就学の若者や調査日に不在だった層が十分に入らない可能性があります。若者全体を完全に写すデータではありません。
「世界」と言ってもカバー範囲に限りがある
今回の若者データは欧州、中央アジア、カナダが中心です。米国や日本を同じ枠で直接比較していません。したがって、この記事の結論は“主要先進国の一部で見た比較”として受け取るのが適切です。
生活や市場を見るうえでの注目点
このテーマは、酒類市場や規制だけの話ではありません。家庭、学校、地域の予防政策をどう見るかにも関わります。
- 「若者は世界的に酒をやめている」と一括りにすると、国ごとのリスクを見落としやすい
- 成人の販売量が高い国でも、10代の深酒が必ず高いとは限らない
- 逆に、成人平均が極端に高くなくても、若者の直近飲酒率が高い国はある
- 次に見るべきなのは、国別の年齢規制、広告規制、販売チャネル制限と、若者指標の組み合わせです
数字で見る限り、海外でも若者の飲酒は長期では弱まってきました。ただ、直近は減少が鈍り、国ごとの差はむしろはっきり残っている。今後の見どころは、「平均がさらに下がるか」ではなく、どの国で10代の危険な飲み方がなお残るのかです。
参照リンク
- OECD – Alcohol consumption among adolescents: Health at a Glance 2025
- OECD – Alcohol consumption: Health at a Glance 2025
- WHO/Europe – Alcohol, e-cigarettes, cannabis: concerning trends in adolescent substance use
- OECD – Health at a Glance 2025: Denmark
- OECD – Health at a Glance 2025: Germany
- OECD – Health at a Glance 2025: Italy
- OECD – Health at a Glance 2025: Hungary
- OECD – Health at a Glance 2025: Portugal
- OECD – Health at a Glance 2025: Iceland
- OECD – Health at a Glance 2025: Israel
