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病院は本当に減っているのか 公的データで見る地域医療の縮小と地域差

病院は本当に減っているのか 公的データで見る地域医療の縮小と地域差

病院の数は、結論から言うと減少が続いています。厚生労働省の「令和6(2024)年医療施設(動態)調査」では、2024年10月1日時点の病院数は8,060施設で、前年より62施設減りました。

ただし、地域医療の変化は「病院の数が減った」で終わりません。一般診療所の総数は増えている一方で、有床診療所や療養病床を持つ診療所は減少しており、入院機能を持つ医療機関は細っていることがデータから見えます。

  • 病院数は2024年10月1日時点で8,060施設、前年比62施設減
  • 一般診療所総数は105,207施設で313施設増だが、有床診療所は226施設減
  • 病院病床数は146万9,845床で、前年比1万1,338床減
  • 人口10万対病院病床数は全国1,187.3床だが、高知県2,364.2床、神奈川県789.6床と地域差が大きい
目次

使用データと比較条件

今回見たのは、厚生労働省の公表データです。

  • 年次の基準データ: 「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」
  • 基準日は2024年10月1日
  • 病院、一般診療所、歯科診療所の施設数と病床数を確認
  • 直近の動き: 「医療施設動態調査(令和7(2025)年12月末概数)」
  • 月末時点の概数
  • 2025年12月末の施設数と前月比を確認
  • 地域差の確認: e-Statの都道府県編
  • 都道府県別の病院数、診療所数、病床数を確認できる

ここで注意したいのは、年次の概況と月次概数では公表時点と集計の切り方が同じではないことです。この記事では、長期の見取り図は2024年の年次データで、足元の方向感は2025年12月末の月次概数で確認しています。

まず、病院数は減っている

2024年10月1日時点の病院数は8,060施設でした。2023年の8,122施設から62施設減り、減少率は0.8%です。

長期推移の図でも、病院数は2002年以降おおむね下り基調です。足元でも流れは変わっていません。2025年12月末概数では病院数は7,981施設で、前月から7施設減っています。

何が減っているのか

2024年の年次データでは、病院の内訳は次の通りです。

  • 病院総数: 8,060施設
  • 一般病院: 7,003施設
  • 精神科病院: 1,057施設

減少の中心は一般病院です。精神科病院は前年と同数でしたが、一般病院は62施設減っています。

また、開設者別では個人病院の減少が目立ちます。

  • 医療法人の病院: 5,626施設、前年比32施設減
  • 個人の病院: 92施設、前年比15施設減

母数の小さい個人病院は減少率で見ると特に大きく、担い手の高齢化や承継難を連想させる数字ですが、この統計だけで原因までは断定できません。ここで言えるのは、運営主体の構成が少しずつ変わっているという事実です。

ここがポイント: 病院の総数だけでなく、入院機能を持つ施設が減っているかを見ると、地域医療の変化はよりはっきり見えます。

診療所は増えているが、入院機能は弱くなっている

「病院が減っているなら、診療所が増えて補っているのでは」と考えたくなります。実際、一般診療所の総数は2024年に105,207施設で、前年より313施設増えました。

ただし、ここには重要な切れ目があります。

総数は増加、でも有床は減少

2024年の一般診療所は次の動きでした。

  • 一般診療所総数: 105,207施設、前年比313施設増
  • 無床診療所: 99,792施設、前年比539施設増
  • 有床診療所: 5,415施設、前年比226施設減
  • 療養病床を有する一般診療所: 431施設、前年比75施設減

つまり、増えているのは主に無床の外来中心施設です。逆に、19床以下でも入院を受け持てる有床診療所は減っています。

病床数でも同じ傾向が出ています。

  • 一般診療所の病床数: 72,451床、前年比3,329床減
  • うち療養病床: 4,088床、前年比818床減

このため、地域で「医療機関の数」は大きく減っていなくても、夜間や入院を支える器は小さくなっている可能性があります。

病床も減っている

病院病床数は2024年10月1日時点で1,469,845床でした。前年から11,338床減っています。

病床の種類別に見ると、どこが縮んでいるかが分かります。

  • 一般病床: 879,728床、前年比3,134床減
  • 精神病床: 316,147床、前年比2,774床減
  • 療養病床: 268,521床、前年比5,224床減
  • 結核病床: 3,508床、前年比236床減
  • 感染症病床: 1,941床、前年比30床増

減少幅が大きいのは療養病床です。高齢化が進む中でも、長期療養の受け皿は増えていません。むしろ縮小しています。

施設数の減少と病床の減少は、同じ意味ではない

ここは読み違えやすい点です。病院数が減ることと、病床が減ることは同じではありません。

  • 小規模病院の閉鎖で施設数が減る場合
  • 病院は残っていても病床数を絞る場合
  • 無床診療所への転換で施設は残る場合

こうしたケースがあるため、地域医療の実態を見るときは、施設数と病床数をセットで見る必要があります

地域差はかなり大きい

全国平均だけを見ると、変化の重さが見えにくくなります。2024年の人口10万対病院病床数は全国で1,187.3床でしたが、都道府県差はかなり大きく出ています。

全病床で見ると高知県は神奈川県の約3倍

人口10万対病院病床数の多い県と少ない県はこうなっています。

  • 高知県: 2,364.2床
  • 鹿児島県: 2,037.8床
  • 長崎県: 1,981.2床
  • 埼玉県: 856.3床
  • 神奈川県: 789.6床

最多の高知県と最少の神奈川県では約3倍の差があります。これは「病院があるかないか」だけではなく、どれだけ入院機能を持っているかに大きな開きがあることを示します。

病床の種類でも差が違う

病床の種類別でも、偏り方は同じではありません。

  • 精神病床が最も多い県: 鹿児島県 604.8床
  • 療養病床が最も多い県: 高知県 657.6床
  • 一般病床が最も多い県: 高知県 1,169.1床
  • 一般病床が少ない県: 神奈川県 504.2床

同じ「病床が多い県」でも、精神科が厚いのか、療養が厚いのか、一般病床が厚いのかで中身は違います。単純に病床総数だけで医療の使いやすさを比べると誤読しやすい部分です。

データから読み取れること

ここまでの数字から、少なくとも次の3点は言えます。

1. 病院の減少は一時的ではなく、基調として続いている

2024年の年次データでも、2025年12月末の月次概数でも、病院数は減る方向です。短期の振れではなく、長い流れとして見た方が自然です。

2. 地域医療は「外来化」が進みやすい

一般診療所の総数は増えても、増えているのは無床診療所です。外来の受け皿は残っても、入院や療養を担う機能は薄くなりやすい構図です。

3. 地域差は全国平均よりずっと大きい

全国平均では1,187.3床でも、都道府県では高知県2,364.2床から神奈川県789.6床まで開きがあります。地域医療を考えるときは、全国一本の話ではなく、都道府県ごとの供給構造で見る必要があります。

何が言えないのか

一方で、この統計だけでは分からないこともあります。

  • 病院が減った原因が人手不足なのか、再編なのか、経営難なのか
  • 病床が減っても、医療の質やアクセスが必ず悪化したのか
  • 病床の少ない県で実際に受診しにくさが増えたのか

これらを確かめるには、受療行動、救急搬送、在院日数、医師数、地域医療構想の再編状況など、別のデータが必要です。

読むときの注意点

最後に、数字をそのまま受け取らないための注意点を整理しておきます。

  • 「病院」は20床以上の医療機関で、一般診療所とは定義が違う
  • 年次データは2024年10月1日時点、月次概数は2025年12月末時点で、単純な横並び比較には注意が必要
  • 施設数が増えても、無床か有床かで役割が大きく異なる
  • 病床が多い県がそのまま使いやすいとは限らず、人口構成や入院機能の内訳も見る必要がある

これから見るべきポイント

病院の数は減っています。しかも、診療所の総数が増えていても、有床診療所や療養病床は減っているため、入院を支える土台まで縮んでいます。

次に見るべきなのは、単なる施設数ではありません。

  • 都道府県別の病床の減り方
  • 救急、産科、小児科など機能別の偏り
  • 再編で集約が進んだ地域と、受診距離が伸びた地域の違い

「病院が減ったか」だけなら答えはイエスです。ただ、本当に重要なのは、その減少がどの地域で、どの機能から先に起きているのかです。

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