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通勤で鉄道・バスを使う割合は?欧米・豪州5か国の公的統計を比較

都市と郊外を背景に、通勤用の鉄道車両とバスを並べたイラスト。

通勤で鉄道・バスを使う割合は?欧米・豪州5か国の公的統計を比較

通勤の公共交通利用率は、英国のグレートブリテンで鉄道11%・バス7%、フランスで公共交通全体が15.5%、カナダで11.9%、米国で3.7%です。ただし、対象年も、在宅勤務者を分母に含めるかも異なるため、この数字をそのまま世界ランキングにはできません。

それでも、公共交通が通勤を担う大きさには違いが見えます。大切なのは、国の平均と、実際に住む都市の交通事情を分けて読むことです。

この記事では、次の3点を確認します。

  • 各国の通勤統計で、鉄道・バスがどの程度使われているか
  • 分母や複数手段の扱いで、割合がどう変わるか
  • 全国平均、都市の違い、コロナ禍前後の推移から何を読み取れるか
目次

使用データ:通勤者の割合を比べるが、完全に同じ条件ではない

比較するのは通勤の交通手段であり、観光や買い物を含む総乗車回数ではありません。

2026年10月8日時点で確認できた各機関の公表資料を使います。フランスは2023年、グレートブリテンと米国は2024年、カナダは2025年5月、オーストラリアは2021年が対象です。今回確認した掲載値を比較するもので、すべての国について同じ年の最新値をそろえた表ではありません。

国・地域対象時点公共交通の割合比較上の条件
グレートブリテン2024年鉄道11%、バス・コーチ7%。合計約18%通常の通勤手段。北アイルランドを含まない
フランス2023年15.5%15歳以上の就業者。マヨットを除く。移動なしも分母に含む
カナダ2025年5月11.9%通勤者の主な交通手段。在宅勤務者を含む就業者全体の割合ではない
米国2024年3.7%16歳以上の就業者。在宅勤務者も分母に含む。公共交通はタクシーを除く
オーストラリア2021年8月10日4.6%15歳以上の就業者。調査日に公共交通を一つ以上利用。在宅勤務・出勤なしも分母に含む

出典は英国運輸省、フランス国立統計経済研究所(Insee)、カナダ統計局、米国国勢調査局、オーストラリア統計局(ABS)です。フランスの15.5%は、公表人数から筆者が計算し、小数第1位に丸めました。その他は各資料の掲載値で、グレートブリテンの約18%だけは丸め済みの2区分を合計しています。

公表時期にも差があります。英国資料は2025年12月17日、フランスの表は2026年9月3日、カナダ資料は2025年8月26日の公表です。オーストラリアの2021年国勢調査QuickStatsは2022年公表、米国はACSの2024年1年推計を使います。

主要数値:英国では鉄道とバスで約18%、フランスでは約6人に1人

掲載値では、グレートブリテンとフランスの公共交通利用が、カナダや米国より大きく表れています。

英国は鉄道11%、バス7%を分けて読める

グレートブリテンの2024年の通常の通勤手段は、鉄道11%、バス・コーチ7%でした。鉄道には地下鉄、ライトレール、路面電車も含まれます。自動車は67%で、公共交通が一定の役割を持つ一方、全国では自動車通勤が多数です。英国運輸省の通勤手段統計で確認できます。

鉄道とバスを足すと約18%。ただし、元の割合が整数に丸められているため、精密な合計ではありません。

フランスは447万人が公共交通を利用

フランスの2023年統計では、就業者2,884万8,304人のうち、公共交通利用者は447万2,386人でした。

計算は「447万2,386人 ÷ 2,884万8,304人 × 100」。結果は約15.5%です。一方、自動車・トラック・バン・動力付き二輪車の合計は約70.4%でした。Inseeの交通手段別・職業別データに基づきます。

公共交通は少数派ですが、数百万人の通勤を支えています。全国の多数派が自動車であることと、公共交通が大きな生活基盤であることは両立します。

カナダと米国の差は、分母にも注意

カナダでは2025年5月、通勤者の11.9%が主に公共交通を使いました。自動車・トラック・バンは80.9%です。カナダ統計局の公表資料は、通勤する人を対象に手段の構成を示しています。

米国では2024年、公共交通で通勤する人は就業者全体の3.7%でした。前年の3.5%から0.2ポイント上昇しています。米国国勢調査局のACS通勤統計による数字です。

11.9%と3.7%を割って「カナダは米国の約3倍」と評価するのは避けたいところです。 米国側には在宅勤務者も含まれるため、同じ分母での比較になっていません。

鉄道とバスの割合:単独利用と乗り継ぎを混ぜると誤る

鉄道利用率とバス利用率は、足せば公共交通全体になるとは限りません。

英国のように通常の通勤手段を分類した表なら、鉄道とバスの構成を比較できます。一方、オーストラリアは調査日の交通手段を最大3つ回答でき、鉄道とバスを乗り継ぐ人もいます。

ABSの2021年QuickStatsでは、次のように掲載されています。

  • バスだけで通勤:1.5%
  • 鉄道だけで通勤:1.4%
  • 鉄道・バス・路面電車・フェリーのいずれかを利用:4.6%

最初の2項目を合計した2.9%は、公共交通全体の割合ではありません。乗り継ぎや、路面電車などの利用を取りこぼすからです。ABSの全国QuickStatsは、この集計条件を明記しています。

鉄道・バス別の国際比較をさらに進める場合も、次の条件をそろえる必要があります。

  • 最も長い区間で使う「主な手段」か、使ったすべての手段か
  • 地下鉄・路面電車を鉄道に含めるか
  • フェリーを公共交通の合計に含めるか
  • 就業者全員を分母にするか、外へ通勤した人だけか

フランスとカナダの今回の要約値は公共交通の合計です。鉄道とバスの内訳が示されていない数字から、どちらへの依存が強いかまでは判断できません。

地域差:国の平均だけでは都市の通勤を説明できない

同じ国でも、全国平均と大都市の交通手段は大きく違います。

英国運輸省の2024年資料では、ロンドンの自動車通勤は25%。グレートブリテンの67%より42ポイント低く、ロンドンは同資料の地域比較で唯一、公共交通通勤が過半数を占めます。

この差が示すのは、英国の全国値をそのままロンドンでの暮らしに当てはめられないということです。全国で自動車が多数でも、特定の都市では鉄道・バスが中心になります。

米国でも公共交通利用は大都市圏に集中しています。国勢調査局の2019年データを使った分析では、公共交通通勤者の内訳はバス46.3%、地下鉄・高架鉄道37.7%、通勤鉄道など11.8%でした。これは公共交通利用者の中での割合であり、就業者全体の割合ではありません。米国国勢調査局の分析は、都市への集中と交通手段の構成を示しています。

なお、この米国の内訳は2019年です。2024年の3.7%に掛けて現在の鉄道・バス別割合を推計すると、異なる年の構成を混ぜることになるため、ここでは行いません。

通勤環境を知りたい読者にとって、次に必要なのは国の順位ではなく、居住地と職場を結ぶ路線です。都市中心部へ向かう通勤と、郊外どうしを移動する通勤では、利用できる交通手段が異なります。

推移:公共交通の減少と在宅勤務の増加を分けて読む

コロナ禍をまたぐ比較では、交通手段の選択だけでなく、出勤する人数そのものが変わっています。

カナダは回復しているが、2016年水準には届かない

カナダの公共交通通勤の割合は、2016年5月の12.6%に対し、2025年5月は11.9%。差は0.7ポイントです。

2024年からは0.5ポイント上昇し、公共交通の割合は4年連続で増えました。ただし、2016年は国勢調査、近年は労働力調査の通勤に関する補足調査であり、同じ調査を毎年繰り返した系列として扱うには注意が必要です。

豪州の2021年は通常の通勤風景を代表しにくい

オーストラリアでは、公共交通を一つ以上利用した就業者の割合が、2016年の11.5%から2021年の4.6%へ下がりました。同時に、在宅勤務は4.7%から21.0%へ増えています。

ABSは、2021年の調査時に東部の多くの州で感染対策の制限があったと説明しています。この4.6%を、平常時の公共交通の弱さだけで説明することはできません。ABSの2021年通勤分析の発表も、その影響を明示しています。

この例では、公共交通の利用率が低下していても、乗客が全員自動車へ移ったわけではありません。家で働く人や、調査日に出勤しなかった人が増えると、就業者全体に占める交通手段の割合は下がります。

読み取れることと限界:利用率は交通サービスの成績表ではない

公共交通の割合だけでは、便利さ、移動時間、運賃負担まで評価できません。

高い割合は、多くの人が公共交通で職場に到達していることを示します。しかし、それが安い運賃や短い通勤時間によるのか、自動車を使いにくいためなのかは、この表だけでは分かりません。

逆に、割合が低くても、公共交通が不要とは限りません。全国の少数派であっても、自動車を使わない人にとっては職場へ行くための重要な手段です。

比較には、ほかにも限界があります。

  • 対象年の違い: 2021年の感染対策下の値と、2024〜2025年の値が並んでいる。
  • 調査日の違い: 通常の手段を聞く調査と、特定日に実際に使った手段を聞く調査がある。
  • 地理的範囲の違い: 英国の値は北アイルランドを除き、フランスの値はマヨットを除く。
  • 標本調査の誤差: 米国のACSや英国の労働力調査には標本誤差がある。英国資料は回答率や重み付けの課題にも注意を促している。

国ごとの割合の違いを、運賃政策や鉄道整備の効果と直結させることもできません。人口や職場の立地、通勤距離、在宅勤務の普及を併せて検証する必要があります。

暮らしに引きつけるなら、路線と出勤頻度を見る

住む場所や働く場所を比較するときは、全国平均より、自分の通勤区間を具体的に確認するほうが役立ちます。

今回の掲載値では、グレートブリテンの鉄道・バス合計は約18%、フランスの公共交通は15.5%でした。ただし、これだけで英国のどの町でも車なしで暮らせる、フランスのどの職場にも公共交通で通える、と判断することはできません。

実際の比較では、次の3点が判断材料になります。

  • 路線と時間帯: 自宅から職場まで、始業・終業時刻に接続する便があるか。
  • 乗り継ぎ: 鉄道駅までのバスや徒歩を含めて移動できるか。
  • 出勤頻度: 毎日通うのか、週に数日なのか。利用者数と乗車回数を分けて考える。

今後の統計で見たいのも、単なる公共交通の増減ではありません。外へ通勤する人数が戻ったうえで公共交通の割合が上がるのか、それとも出勤頻度が減って乗車回数だけが伸び悩むのか。この二つを分けると、鉄道・バスが日常の移動をどこまで支えているかが見えてきます。

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