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固定電話はどこまで使われなくなったのか 契約数データで見る日本の通信手段の転換

固定電話はどこまで使われなくなったのか 契約数データで見る日本の通信手段の転換

固定電話は、かなりはっきり縮んでいます。昔ながらの加入電話とISDNを合計したNTT東西の契約数は、2001年3月末の6,698万から2025年3月末には1,153.5万まで減りました。約24年で8割超の減少です。

ただし、「家の電話番号が全部消えた」という話ではありません。2025年9月末時点でも、IP電話などを含む固定電話(音声系)全体は4,771万契約あり、減っているのは主に昔の回線方式です。通信の中心が、世帯で1本持つ固定電話から、個人で複数持つモバイル回線へ移ったと見るのが実態に近いです。

  • 旧来型の固定電話(NTT東西の加入電話+INS)は、2001年3月末の6,698万から2025年3月末に1,153.5万へ減少
  • 2025年9月末の固定電話(音声系)全体は4,771万契約で、移動系通信は2億2,775万契約
  • 世帯の固定電話保有率は2024年時点で55.1%、20代世帯主では3.1%
  • 減少の中心はメタル回線ベースの旧来型で、番号付きの固定音声そのものはIP電話へ移って残っている
目次

まず押さえたい比較条件

このテーマは、同じ「固定電話」でも何を数えるかで見え方が変わります。今回は次の3種類を分けて見ます。

  • 旧来型の固定電話: NTT東西の加入電話とINSネット
  • 固定電話(音声系)全体: IP電話やCATV電話などを含む、番号付きの固定音声サービス全体
  • 世帯の保有状況: 家庭に固定電話があるかどうか

使った主なデータは、総務省の四半期データと通信利用動向調査、NTTの有価証券報告書です。対象時点は主に2025年3月末、2025年9月末、2024年8月末です。

ここがポイント: 「固定電話が減った」は事実ですが、正確には「旧来の加入電話・ISDNが急減し、家庭内の連絡手段はスマホへ、固定の番号付き音声はIP化しながら残っている」と読むべきです。

契約数で見ると、いちばん減ったのは旧来型の固定電話

最も落ち込みが大きいのは、NTT東西の加入電話とINSネットです。

2025年3月末時点のNTT有価証券報告書では、契約数は以下でした。

  • NTT東日本の加入電話: 538.2万
  • NTT東日本のINSネット: 54.7万
  • NTT西日本の加入電話: 506.2万
  • NTT西日本のINSネット: 54.4万
  • 合計: 1,153.5万

これを2001年3月末の6,698万と比べると、減少幅は5,544.5万です。率にすると約82.8%減で、ピーク時の2割も残っていません。

直近1年でも減少は続いています。

  • 2024年3月末: 1,243.6万
  • 2025年3月末: 1,153.5万
  • 1年での減少: 90.1万

この数字が示すのは、古い電話回線がゆっくり減っているのではなく、今も毎年かなりの規模で縮んでいるということです。

それでも「固定の電話番号」はまだ大きい

一方で、固定音声全体が同じ速さで消えているわけではありません。総務省の2025年9月末データでは、固定電話(音声系)全体は4,771万契約でした。

この中で大きいのがIP電話です。2025年9月末時点で、IP電話の利用番号数は4,373万とされています。

ここから読めることは単純です。

  • 固定音声サービス全体はまだ数千万件単位で残っている
  • その中身は、加入電話やISDNよりIP電話の比重がかなり大きい
  • 「固定電話が残っているか」という問いと、「昔の電話回線が残っているか」という問いは別物

家庭や事業所で市外局番付きの番号を使い続けながら、裏側の仕組みだけがIPに置き換わっているケースが多い、という構図です。

通信の主役は、もう固定ではなく移動系

総務省の2025年9月末データで、移動系通信の契約数は2億2,775万でした。固定電話(音声系)4,771万の約4.8倍です。

ここで重要なのは、モバイル回線が「固定電話の代替」だけで増えたわけではないことです。1人で複数回線を持つ契約や、通信モジュール、BWAなども含まれます。それでも、通信の中心が固定からモバイルへ移ったことは数字ではっきりしています。

家庭側のデータも同じ方向を示します。

  • 2024年8月末時点の固定電話世帯保有率: 55.1%
  • 2023年: 57.9%
  • 2008年: 90.9%

15年ほどで、家庭に固定電話があるのが「ほぼ当たり前」から「半数強」まで下がったわけです。

若い世帯では、固定電話はほぼ標準装備ではない

世帯保有率の中でも差が大きいのが年齢です。2024年の通信利用動向調査では、20代世帯主の固定電話保有率は3.1%でした。

この数字が意味するのは、若い世帯では「固定電話を置かない」が例外ではないということです。住まいを借りる、就職する、各種契約をする場面でも、連絡先の中心はすでに携帯電話番号です。

逆に、高齢層がいる世帯や既存の住宅・事業所では固定電話が残りやすいと考えられます。固定電話の縮小は全国一律というより、世代差を伴って進む置き換えです。

なぜこの差が大きいのか

数字だけで因果関係を断定はできませんが、少なくとも次の変化とは整合的です。

  • 連絡先が「世帯共通」から「個人ごと」に移った
  • 音声通話以外に、メッセージアプリやビデオ通話が定着した
  • 新しく回線を引く場面で、固定電話を必須としない契約が増えた

データから言えること、言い切れないこと

ここまでの数字から、言えることはかなり明確です。

  • 旧来型の固定電話は長期で大幅に減った
  • 固定音声サービス全体も減少傾向にある
  • 家庭内の連絡手段としての固定電話は、若年層ほど存在感が低い
  • 一方で、固定番号付きの音声サービス自体はIP化しながら残っている

ただし、言い切れないこともあります。

  • 契約数だけでは、実際の通話頻度までは分からない
  • 移動系通信の契約数は人口や利用者数と1対1では対応しない
  • 固定電話(音声系)とNTT加入電話・INSは定義が違うため、単純に横並び比較はできない

誤読しやすい点

固定電話の話は、定義の違いで誤解されやすいです。特に次の点は分けて見た方が安全です。

  • 「固定電話が減った」には、加入電話の減少と、固定音声全体の減少が混ざりやすい
  • IP電話の番号数は残っていても、昔のメタル回線が残っているとは限らない
  • 世帯保有率は家庭の有無を見る指標で、法人利用や複数チャネル契約は含み方が違う

数字を見るときは、何を1件として数えているのかを先に確認した方が誤読しにくくなります。

これから見るべきポイント

固定電話は、もう完全に消えたわけではありません。ですが、中心が旧来回線からIPへ、家庭共用から個人端末へ移ったことは、契約数ではほぼ結論が出ています。

今後の注目点は次の3つです。

  • 2026年に公表される次の年度末データで、旧来型固定電話が1,000万契約をどこで下回るか
  • 固定音声全体がどの水準で下げ止まるか
  • 高齢世帯や法人利用で残る需要を、どの方式で維持していくか

「固定電話が使われなくなったのか」という問いへの答えは、かなり明確です。家の主役としての固定電話は大きく後退した。けれど、固定番号の音声サービスそのものは、IP化しながらまだ相当数が残っている。 次に見るべきなのは、減少の有無より、何がどの方式に置き換わって残るのかです。

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