20年で公立校8,850校が廃校に 北海道が最多、地域差をどう読むか
文部科学省の調査によると、2004年度から2023年度までの20年間に、全国で8,850校の公立学校が廃校になりました。内訳は小学校5,799校、中学校1,835校、高等学校等1,216校です。
小中学校だけで7,634校に達し、全体の86.3%を占めます。都道府県別では北海道が小中学校768校、全学校種では859校と突出しています。ただし、廃校数の多さを人口減少だけで説明することはできません。自治体の面積、集落の分布、もともとの学校数、統合後の通学条件も結果を左右します。
この記事で分かること
- 2004〜2023年度に発生した公立学校の廃校数
- 小中学校の廃校が多かった都道府県
- 年間廃校数の推移とピーク
- 単純な都道府県ランキングで誤読しやすい点
- 統廃合後に残る通学と施設活用の課題
使用データと比較条件
中心に使うのは、文部科学省の「令和6年度廃校施設活用状況実態調査」です。
比較条件は次の通りです。
- 対象期間:2004年度(平成16年度)〜2023年度(令和5年度)
- 対象地域:全国47都道府県
- 対象:公立の小学校、中学校、高等学校等
- 調査時点:2024年5月1日
- 廃校の意味:統合または廃止により、学校として使われなくなったもの
ここで数えているのは「統廃合の件数」ではなく、廃校となった学校の数です。複数校を一つの新設校へ統合した場合、廃校数と新設校数は一致しません。
学校規模の長期変化を確認するため、学校基本調査も補助的に使います。2004年度の学校数は小学校23,420校、中学校11,102校でした。2025年度には小学校18,607校、中学校9,827校となっています。
ただし、この学校数には国立・公立・私立が含まれる一方、廃校調査は公立学校が対象です。また、義務教育学校の新設など学校種の組み替えもあるため、両者の差をそのまま「廃校数」とみなすことはできません。
小中学校の廃校は20年間で7,634校
廃校の中心は小学校で、20年間の全廃校数の約3分の2を占めました。
| 学校種 | 廃校数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 小学校 | 5,799校 | 65.5% |
| 中学校 | 1,835校 | 20.7% |
| 高等学校等 | 1,216校 | 13.7% |
| 合計 | 8,850校 | 100% |
小学校と中学校を合わせると7,634校です。単純平均では年約382校ですが、実際の廃校数は年度によって大きく動きます。
小学校の比重が大きい背景を見る際には、学校数の母数に注意が必要です。2004年度時点で小学校は中学校の2倍を超えており、もともと地域内に細かく配置されていました。そのため、小学校の廃校数が多いという事実だけで、小学校の統合判断が中学校より積極的だったとは断定できません。
年間の廃校数は2012年度の597校が最多
廃校は毎年同じ速度で進んだのではなく、2009〜2015年度に多い年が集中しています。
主な年度の全学校種合計は次の通りです。
- 2004年度:578校
- 2008年度:457校
- 2009年度:534校
- 2010年度:562校
- 2012年度:597校
- 2015年度:524校
- 2018年度:279校
- 2019年度:384校
- 2022年度:358校
- 2023年度:298校
最多は2012年度の597校です。2023年度の298校はピークのほぼ半分ですが、廃校が止まったわけではありません。直近5年度でも年間298〜384校の範囲で推移しています。
このグラフから言えるのは、廃校発生数が2010年代前半より少ない水準になったことです。一方、「統廃合の必要性が弱まった」とまでは言えません。児童生徒数の減少に対し、自治体が統合せず小規模校を維持する場合もあれば、義務教育学校への再編を選ぶ場合もあるためです。
都道府県別では北海道が突出
20年間の累計では北海道が最多で、2位以下との差も大きくなっています。
小中学校の廃校数が多い都道府県を、小学校と中学校に分けて整理しました。順位は小中学校の合計によります。
| 順位 | 都道府県 | 小学校 | 中学校 | 小中合計 | 全学校種合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 北海道 | 558校 | 210校 | 768校 | 859校 |
| 2 | 岩手県 | 227校 | 77校 | 304校 | 331校 |
| 3 | 熊本県 | 207校 | 54校 | 261校 | 282校 |
| 4 | 福島県 | 235校 | 59校 | 294校 | 330校 |
| 5 | 広島県 | 216校 | 44校 | 260校 | 278校 |
| 6 | 青森県 | 198校 | 49校 | 247校 | 278校 |
| 7 | 茨城県 | 199校 | 46校 | 245校 | 280校 |
| 8 | 新潟県 | 199校 | 31校 | 230校 | 268校 |
| 9 | 鹿児島県 | 148校 | 88校 | 236校 | 262校 |
| 10 | 東京都 | 150校 | 89校 | 239校 | 300校 |
小中合計では福島県が294校で3番目、熊本県が261校で4番目、広島県が260校で5番目となります。一方、高等学校等を含む全学校種の合計順位では、東京都300校が4番目に入ります。
この違いは重要です。「廃校が多い地域」を論じるとき、対象を小中学校に絞るか、高等学校等まで含めるかで順位が変わるからです。
北海道は全国の小中廃校のおよそ1割
北海道の小中学校768校は、全国7,634校の約10.1%です。2位の岩手県304校の2.5倍を超えます。
ただし、北海道は面積が広く、離れた集落ごとに学校が置かれてきた地域です。累計校数だけでは、人口規模に対して多いのか、従来の学校数に対して統合率が高いのかまでは分かりません。
大都市圏にも廃校はある
東京都では小学校150校、中学校89校が廃校となり、小中合計は239校です。大阪府も小学校117校、中学校31校、高等学校等98校で、全学校種の合計は246校でした。
廃校は過疎地域だけの現象ではありません。都市部では地域ごとの児童生徒数の偏り、住宅開発と人口移動、学校配置の見直しなどが同時に関係します。ただし、今回の集計だけでは各校の廃校理由を分離できないため、個別自治体の判断を読むには統廃合計画や教育委員会資料の確認が必要です。
ここがポイント: 廃校数の累計は「学校再編の規模」を示しますが、「統廃合の進みやすさ」を公平に比べる指標ではありません。もとの学校数、面積、児童生徒数、通学距離をそろえて見る必要があります。
廃校数が少ない県をそのまま高評価できない
累計が少ないことは、学校を維持しやすかったことや統廃合が不要だったことを意味しません。
全学校種の廃校数が少なかったのは、滋賀県36校、沖縄県63校、福井県66校、佐賀県76校、山梨県90校です。小中学校に限ると、滋賀県30校、沖縄県58校、福井県54校、佐賀県64校、山梨県80校となります。
しかし、累計値には少なくとも次の差が混ざっています。
- 2004年度時点の公立学校数
- 県土の広さと集落の分散度
- 児童生徒数の減少時期
- 市町村合併や学校再編の時期
- 分校や休校を廃校へ切り替える時期
- 小中一貫校・義務教育学校への移行方法
より公平に比べるなら、「2004年度の公立小中学校100校当たりの廃校数」や「学齢人口の減少率に対する学校数の減少率」を計算する必要があります。今回の文部科学省資料には、その分母が都道府県別に併記されていません。
児童生徒の減少と学校数の縮小は同じ速度ではない
学校統廃合は児童生徒数だけで機械的に決まらず、地域ごとの通学条件や教育方針が間に入ります。
学校基本調査では、2025年度の在学者数は小学校581万2,375人、中学校310万5,297人で、いずれも過去最少でした。2004年度は小学生約720万1千人、中学生約366万4千人です。
この間の変化を概算すると、児童生徒数は次のように減っています。
- 小学生:約19%減
- 中学生:約15%減
- 小学校数:約21%減
- 中学校数:約11%減
ただし、学校数は国公私立合計であり、義務教育学校への移行もあるため、厳密な統廃合率の比較ではありません。それでも、児童生徒数と学校数が同じ割合で減っていないことは確認できます。
統合には規模以外の判断軸がある
文部科学省の手引では、学校規模の適正化と同時に、通学距離・時間や地域事情への配慮が求められています。学校を統合すれば一定規模の集団を確保しやすくなる一方、通学時間が長くなり、スクールバスの運行や保護者の送迎負担が生じる場合があります。
自治体が見るべき条件は一つではありません。
- 1学年当たりの児童生徒数と学級数
- 複式学級の有無
- 統合先までの距離と所要時間
- スクールバスの車両、運転手、運行費
- 災害時の避難拠点としての役割
- 放課後児童クラブや地域活動への影響
したがって、「人数が減ったから廃校」という単純な因果では読めません。同程度に児童生徒が減った自治体でも、地理条件と政策判断によって結果は変わります。
廃校後も施設の問題は終わらない
学校としての役割を終えた後は、建物を活用するか、維持するか、解体するかという次の判断が始まります。
8,850校の廃校のうち、2024年5月時点で施設が現存していたのは7,612校です。そのうち5,661校、74.4%は学校、社会体育施設、社会教育施設、企業・法人の施設などに活用されていました。
一方、活用されていない施設は1,951校あります。
- 活用用途が決まっている:235校
- 活用用途が決まっていない:1,503校
- 取り壊し予定:213校
用途未定の主な理由は、校舎について「地域等からの要望がない」が41.5%、「建物が老朽化している」が41.4%でした。廃校を地域資源として使いたくても、需要と改修費の両方が壁になります。
施設活用率74.4%は一定の成果を示す数字です。ただし、用途別集計は複数回答であり、活用の収支、利用人数、継続年数までは示していません。「活用中」と「持続可能な運営」は分けて評価する必要があります。
統廃合を地域別に見るときのチェックポイント
次に確認すべきなのは廃校数の順位ではなく、統合前後で教育と生活の条件がどう変わったかです。
自治体の学校再編を調べる際は、次の順番で資料を見ると誤読を減らせます。
- 教育委員会の学校適正配置計画で、対象校と判断基準を確認する
- 学校基本調査で、児童生徒数と学級数の推移を見る
- 統合先、通学距離、スクールバスの運行条件を確認する
- 廃校施設の用途、改修費、維持費を確認する
- 数年後の児童生徒数推計と再編予定を確認する
全国では2023年度にも298校の公立学校が廃校になりました。今後の焦点は、廃校数がさらに増えるかだけではありません。統合によって通学時間や自治体負担がどう変わり、残った校舎を誰が何年間使えるのか。地域ごとの再編計画を読むときは、そこまで追う必要があります。
