自然減は年91.8万人、47都道府県で死亡数が出生数を上回る――2025年確定数を読む
2025年の日本人の自然減は91万8,263人でした。前年より942人だけ縮小したものの、2020年の約1.73倍で、47都道府県すべてで死亡数が出生数を上回っています。
人数で見ると自然減が最も大きいのは大阪府です。ただし、地域の違いを理解するには、減った人数に加えて、出生数と死亡数の釣り合い、人口規模、年齢構成を確認する必要があります。
この記事では、厚生労働省が2026年9月30日に公表した2025年の人口動態統計確定数を使い、全国の推移と都道府県別の差を読み解きます。
- 全国の自然減は前年からほぼ横ばい。出生数の回復による縮小ではありません。
- 自然減の人数は大阪府、東京都、北海道の順に大きくなっています。
- 死亡数に対する出生数の割合は、秋田県と沖縄県で大きく違います。
- 2025年の都道府県別自然増減率は、2026年11月の公表予定です。
使用データ:2025年の国内の日本人を同じ条件で比べる
比較対象は、2025年1月から12月までに日本国内で発生した日本人の出生と死亡です。
使うのは厚生労働省「人口動態統計(確定数)」の第2表と第4表です。全国の過去との比較も、最新資料に掲載された年次推移でそろえました。調査の概要では、集計範囲や住所の扱いが説明されています。
自然増減の計算は単純です。
自然増減数=出生数-死亡数
マイナスなら自然減になります。以下の表では読みやすさを優先し、「自然減の人数」を正の数で示します。
都道府県は、出生については子の住所、死亡については死亡者の住所で分類されています。出産した病院や死亡した病院の所在地を比べているわけではありません。
また、外国人の出生・死亡は本記事の主集計に含めません。外国人を含む人口推計や住民基本台帳の人口増減とは、対象や期間が違います。
全国の推移:最新年は微減でも、5年前から約38.6万人拡大
2025年の自然減はほぼ横ばいですが、2020年からの拡大幅は38万6,343人に達します。
最新の統計表の年次推移を抜き出すと、出生数と死亡数の差がどのように広がったかが分かります。
| 年 | 出生数(人) | 死亡数(人) | 自然減(人) |
|---|---|---|---|
| 2010年 | 1,071,305 | 1,197,014 | 125,709 |
| 2015年 | 1,005,721 | 1,290,510 | 284,789 |
| 2020年 | 840,835 | 1,372,755 | 531,920 |
| 2023年 | 727,288 | 1,576,016 | 848,728 |
| 2024年 | 686,173 | 1,605,378 | 919,205 |
| 2025年 | 671,270 | 1,589,533 | 918,263 |
対象は各年に国内で発生した日本人の事象。自然減は死亡数から出生数を引いた人数です。
5年間の拡大には、出生減と死亡増の両方がある
2020年から2025年にかけて、出生数は16万9,565人減り、死亡数は21万6,778人増えました。この二つを足すと、自然減の拡大幅38万6,343人になります。
これは増減の計算上の内訳です。出生減や死亡増が起きた原因を、それぞれ一つに特定するものではありません。
出生数は、子どもを産む年代の人口と、その年代の出生の頻度の両方で変わります。死亡数も、高齢者の人数と年齢別の死亡率の両方に左右されます。自然減の拡大を説明するには、出生数と死亡数の背後にある人口構成まで見る必要があります。
前年から942人縮小した理由
2025年には、出生数が前年より1万4,903人減る一方、死亡数は1万5,845人減りました。死亡数の減少が出生数の減少を942人上回ったため、自然減の幅がわずかに縮まっています。
したがって、自然減の縮小と出生数の回復は別の動きです。厚生労働省の結果の概要によると、2025年の出生数は調査開始以来最少で、自然増減は19年連続のマイナスでした。
都道府県別:自然減の人数は大阪、東京、北海道で大きい
2025年の自然減の人数は、大阪府が5万5,573人で最多でした。
47都道府県を自然減の人数が大きい順に並べた上位5地域と、比較のための秋田県・沖縄県を示します。原数値は厚生労働省の確定数の概況・第4表に掲載されています。
| 都道府県 | 出生数(人) | 死亡数(人) | 自然減(人) |
|---|---|---|---|
| 大阪府 | 52,598 | 108,171 | 55,573 |
| 東京都 | 85,090 | 138,419 | 53,329 |
| 北海道 | 21,802 | 74,885 | 53,083 |
| 神奈川県 | 50,209 | 101,853 | 51,644 |
| 埼玉県 | 38,812 | 85,774 | 46,962 |
| 秋田県 | 3,148 | 16,717 | 13,569 |
| 沖縄県 | 11,511 | 15,001 | 3,490 |
対象は2025年の国内の日本人。上位5地域は自然減の人数の順位であり、人口に対する減少率の順位ではありません。
大都市も出生だけでは死亡を補えていない
東京都では8万5,090人が生まれましたが、死亡数は13万8,419人でした。出生数が多い地域でも、死亡数がそれ以上なら自然減になります。
大阪府、東京都、北海道の自然減は、いずれも年間5万人を超えています。自然減は人口の少ない県だけの問題ではありません。
一方、この順位から「大阪府が最も急速に人口を失っている」とは判断できません。人口が大きい地域では、出生数も死亡数も多くなりやすいためです。転入・転出もこの表には入っていません。
自然減の人数が小さい地域も、理由は同じとは限らない
自然減の人数が小さい順では、沖縄県3,490人、鳥取県5,119人、福井県6,134人、佐賀県6,644人、滋賀県6,797人でした。
人数が少ない理由には、人口規模が小さいことと、出生数と死亡数の差が比較的小さいことの両方があります。この二つを分けずに「自然減が小さいから人口維持に成功している」と評価すると、地域の実態を取り違えます。
出生と死亡の釣り合い:秋田と沖縄では大きな差
死亡数に対してどれだけの出生があったかを見ると、人数の順位では見えない違いが表れます。
ここでは「出生数÷死亡数×100」を計算します。死亡100人に対して出生が何人あったかを表す補助指標です。公表された自然増減率とは異なります。
前の表から計算すると、次のようになります。小数第1位に丸めています。
- 全国:死亡100人に対して出生42.2人
- 東京都:61.5人
- 大阪府:48.6人
- 北海道:29.1人
- 秋田県:18.8人
- 沖縄県:76.7人
秋田県では死亡数が出生数の約5.3倍、沖縄県では約1.3倍です。全国では約2.4倍になります。
この比率で分かるのは、出生と死亡の釣り合いです。人口の何%が自然減したかは分かりません。死亡数が比較的少ない地域では比率が高くなりますし、年齢構成の影響も受けます。
出生の多さだけで地域の将来は決まらない
出生数が同じでも、死亡数が違えば自然減は違います。また、出生数が増えても、それ以上に死亡数が増えれば自然減は拡大します。
逆に、死亡数が減れば、出生数が減っている年でも自然減は縮小します。2025年の全国値がその例です。
自治体の少子化対策を評価する際には、この違いが重要です。自然減だけを成果指標にすると、出生の変化と死亡の変化が混ざります。出生数、子どもを産む年代の人口、年齢別出生率を分けて追う必要があります。
人口当たりの比較:2025年の公式な都道府県別率は11月を待つ
地域の人口規模をそろえた2025年の比較には、未公表の指標が残っています。
2026年10月8日時点で、厚生労働省は2025年の全国の自然増減率を人口1,000人当たりマイナス7.7と公表しています。一方、都道府県別など、分母に人口を使う詳細な率は2026年11月の公表予定です。公表ページにも、その予定が明記されています。
このため、2025年の人数を別年の人口で割り、公式の最新ランキングとして扱うことは避ける必要があります。
公表済みの人口推計では、秋田の自然減少率が大きい
別の統計である総務省統計局の2024年人口推計では、すべての都道府県が自然減少でした。自然増減率は秋田県マイナス1.56%、青森県マイナス1.30%、岩手県マイナス1.27%。沖縄県はマイナス0.23%でした。2024年人口推計の結果の概要に掲載されています。
この比較では、人口に対する自然減の大きさが秋田県と沖縄県で約6.8倍違います。
ただし、これは本記事の2025年人口動態統計とは別枠の参考比較です。人口推計の自然増減は2023年10月から2024年9月までの期間で、外国人を含む総人口を扱います。2025年の日本人の出生・死亡の人数と直接つなげて、増減率の変化を計算することはできません。
自然減と人口減少:転入超過があれば結果は変わる
自然減があっても、地域の人口全体が同じ人数だけ減るとは限りません。
人口の変化を読む際は、出生・死亡による自然増減と、転入・転出による社会増減を分けます。国内の地域間移動に加え、国外との移動も総人口に関わります。
考え方は、次の三つに整理できます。
- 自然減を転入超過が上回る場合:人口全体は増える可能性があります。
- 転入超過が自然減より小さい場合:転入があっても人口全体は減ります。
- 自然減と転出超過が重なる場合:両方が人口減少を押し進めます。
移住施策で転入者が増えても、自然減が拡大すれば、総人口の減少が止まらないことがあります。反対に、総人口が増えたからといって出生と死亡の差が改善したとは限りません。
さらに、誰が転入したかも重要です。子育て世帯が増えた地域と、高齢者の転入が多い地域では、保育や学校、医療、移動支援への需要が違います。人口の総数だけでは、必要な公共サービスの量と場所を決められません。
暮らしへの読み替え:人数の減少とサービス需要を分けて見る
自然減の拡大は、子ども向けの施設と高齢者向けの支援を同じ方向に縮小してよいことを意味しません。
出生数の減少が続けば、将来の入学者数を見直す材料になります。ただし、学校単位で判断するには、学区内の子どもの人口、住宅開発、転入などを加えて確認する必要があります。都道府県全体が自然減でも、一部の住宅地で児童が増えることはあり得ます。
高齢者向けのサービスも、死亡数だけでは需要を測れません。高齢者の人数、年齢、単身世帯の割合、居住地を確認しなければ、訪問支援や通院交通がどこで必要かは見えてきません。
こうした用途では、県全体のランキングを出発点に、市区町村、さらに地区へと範囲を絞ることが役立ちます。出生・死亡に加えて転入・転出と年齢別人口を並べると、施設配置を考える材料になります。
次に見る数字:減少幅の縮小が続くか、その中身を確かめる
今後の確認点は、自然減が縮むかどうかに加えて、出生と死亡のどちらが変わったかです。
2025年には、出生数と死亡数がともに減り、差はほぼ変わりませんでした。この1年だけから自然減が継続的に縮小するとは判断できません。
次の公表では、以下を確認したいところです。
- 2026年11月公表予定の都道府県別率で、人口当たりの自然減にどれだけ差があるか。
- 出生数の変化が、出産年齢の人口の変化と出生率の変化のどちらに結びついているか。
- 自然減が大きい地域で、転入超過がそれをどの程度補っているか。
- 市区町村別に見ると、子どもや高齢者の増減が県平均からどれだけ離れているか。
地域の人口ニュースを読むときは、「何人減ったか」の次に、対象が日本人か総人口か、期間はいつか、自然減と転出超過のどちらかを確認する。この三点をそろえるだけで、同じ「人口減少」という言葉の中身をかなり具体的に捉えられます。
