古紙回収率81.3%の中身――新聞が減り、段ボールが再生利用の中心に
日本の古紙回収率は、1990年の49.7%から2025年には81.3%へ上がった。ただし、近年はおおむね8割前後で推移し、回収量そのものは減っている。
変化が大きいのは古紙の内訳だ。新聞古紙の利用が縮小する一方、段ボール古紙は2025年の国内製紙向け古紙消費量の63.0%を占める。「リサイクル率が高い」と「回収する紙が増えている」は、別の話である。[出典:古紙再生促進センター「2025年 古紙需給統計〈補正版〉」]
この記事で分かることは、次の3点だ。
- 回収率と利用率は、何を分母にするかが違う。
- 新聞と段ボールでは、古紙利用量の減り方に大きな差がある。
- 今後は回収量だけでなく、製紙工場が使える品質と用途を見る必要がある。
使用データと比較条件――全国の暦年統計で読む
比較の中心は、全国の2025年実績と、同じ資料に収録された過去の年次データである。
使用するのは、公益財団法人古紙再生促進センターが2026年3月に公表した「2025年 古紙需給統計」の補正版だ。経済産業省生産動態統計と財務省貿易統計などを基に、回収、国内利用、輸出入を整理している。
- 対象地域:日本全国。家庭由来だけでなく、事業所などから発生する古紙も含む。
- 対象期間:各年1~12月。長期比較は1990年以降、品種別の比較は2019年と2025年を中心にする。
- 数量の単位:重量。本文の万トン表示は元資料のトン数を丸めたもの。
- 最新値の扱い:2026年10月8日時点で確認した通年資料は2025年分。2026年の月次実績を混ぜて年間比較しない。
全国の資源循環を見る統計なので、この結果から個々の自治体の分別成績や、家庭の排出量を直接評価することはできない。
回収率と利用率――81.3%と66.7%は別の指標
回収率は使用後の紙を集める側、利用率は製紙原料として使う側の数字である。
回収率の分母は、国内で消費された紙・板紙
古紙回収率は、古紙回収量を紙・板紙の国内消費量で割って求める。
ここでいう回収量は、ごみ収集車が運んだ紙を全国で単純に足した数字ではない。国内製紙メーカーへの入荷に古紙輸出を加え、輸入を差し引き、古紙パルプ分を換算して算出する。国内消費量も、製紙メーカーの払出量に紙・板紙の輸入を加え、輸出を差し引いた値だ。
つまり、回収率には貿易も関わる。国内で集められた古紙が海外の製紙工場へ送られる経路も含まれる。
利用率の分母は、製紙用の繊維原料
古紙利用率は、製紙用繊維原料の消費量に占める古紙の割合で、2025年は66.7%だった。
「回収した古紙のうち66.7%だけが再生された」という意味ではない。また、81.3%から66.7%を引いた14.6ポイントを、そのまま廃棄された割合と読むこともできない。二つの率は分母が異なるからだ。
自治体向け紙リサイクルハンドブック2025年版も、回収と利用を分けて整理している。家庭で分別した紙の行方を考える際には、「集められたか」と「どの製品の原料に使われたか」を順に確認したい。
回収率は長期で上昇、近年は8割前後
長期の伸びは明確だが、直近の動きは右肩上がりではない。
古紙回収率の主な節目を並べると、次のようになる。
- 1990年:49.7%
- 2000年:57.7%
- 2010年:78.2%
- 2020年:84.9%
- 2025年:81.3%
1990年から2025年の上昇幅は31.6ポイント。一方、2025年は2020年より3.6ポイント低く、過去最高を更新した年ではない。
高い率でも、回収量は減る
2020年から2025年にかけて、古紙回収量は約1,888万トンから約1,628万トンへ減少した。同じ期間に、分母となる紙・板紙国内消費量も約2,222万トンから約2,004万トンへ減っている。
この組み合わせが重要だ。回収率が8割台を保っていても、回収・選別・輸送の対象となる重量は縮小する。
逆に、分母の紙消費量が急に減れば、回収量が増えなくても率が上がる場合がある。率の上昇だけを根拠に、分別が改善したと判断することはできない。回収量と国内消費量をセットで見る必要がある。[数値・定義:2025年 古紙需給統計〈補正版〉]
新聞と段ボール――利用量の差が広がった
国内製紙工場で使われる古紙は、新聞より段ボールへの比重を強めている。
以下は、回収量ではなく、国内製紙向けの古紙消費量の比較だ。数量は万トンに丸め、増減率は元のトン数から計算した。
| 古紙の品種 | 2019年 | 2025年 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 新聞 | 297.9万トン | 162.2万トン | 約45.6%減 |
| 段ボール | 887.1万トン | 902.1万トン | 約1.7%増 |
出典:2025年 古紙需給統計〈補正版〉、表4。増減率は筆者計算。
新聞古紙は、6年間で半分近く減少
新聞古紙の消費量は、2019年から2025年までに約136万トン減った。国内製紙向け古紙全体に占める比率も、18.0%から11.3%へ低下している。
2025年の新聞用紙生産は前年比7.9%減で、新聞古紙の消費も9.3%減だった。新聞用紙を作る量と、その原料として使う古紙の量がともに縮小している。
ただし、この統計だけで電子媒体への移行などの要因をそれぞれ数量化することはできない。確認できるのは、新聞用紙と新聞古紙の需要が同時に減っていることだ。
段ボールは中心になったが、毎年増えているわけではない
段ボール古紙は、2019年より2025年の消費量が多い。しかし2025年単年では前年比0.6%減だった。
「通販が広がったから、段ボール古紙は増え続けている」とは読めない。長い期間での比較と、直近1年間の変化は分けたい。
段ボール古紙の構成比が53.7%から63.0%へ上がったのは、自身の数量が比較的維持されたことに加え、新聞など他の古紙が減ったためでもある。これは絶対量の急増というより、古紙利用の中心が移った変化だ。
工場への入荷と全国の回収量を混同しない
新聞・段ボールの回収を読むときは、製紙工場に届いた量と、全国で回収された量を区別する必要がある。
2025年の国内製紙向け入荷量は、新聞古紙が約164.9万トン、段ボール古紙が約906.2万トンだった。前年比ではそれぞれ6.1%減、0.4%減で、入口でも新聞の縮小が大きい。
ただし、入荷には輸入分が含まれ、輸出された古紙は国内工場に入らない。在庫の増減もあるため、同じ年の入荷量と消費量は一致しない。入荷量をそのまま「日本で回収した新聞・段ボールの量」と表示すると、流通の一部を取り違える。
家庭の分別成績を直接示す数字でもない
古紙には、家庭で使い終えた紙だけでなく、加工工程で発生する裁断くずなども含まれる。
そのため、全国の重量統計から「住民の何割が分別したか」「新聞購読世帯がどれだけ協力したか」は分からない。自治体の施策を評価するなら、自治体回収、集団回収、民間回収の対象範囲を確認したうえで比較する必要がある。
回収量が少ない地域でも、そもそもの紙の使用量が少ない可能性がある。人口だけで割ったランキングでも、この違いは残る。
利用率をさらに上げるには、紙の用途と品質が壁になる
次の課題は、集めた紙を製紙工場で使える原料にし、使う用途を広げることだ。
日本製紙連合会は、2030年度までに古紙利用率67%の達成に努める目標を掲げている。2025年の66.7%との差は0.3ポイントだが、全国暦年の実績と年度目標なので、単純に達成判定はできない。
同連合会は、利用技術が既に高度な水準にあり、大幅な向上は難しいと説明する。取り組む課題には、印刷・情報用紙での利用拡大、オフィス古紙などの原料確保、省エネや燃料転換が挙がっている。
回収する側と使う側では、重視する点が違う
家庭や事業所にとっては、分別しやすさや持ち出しやすさが回収への参加を左右する。一方、製紙工場は原料の品質と、作る製品に適した性質を必要とする。
自治体向けハンドブックは、再生に適さない異物が多い雑がみについて、製品トラブルにつながり、使用しづらくなる問題を指摘している。量を増やすだけでは、利用量の増加に結びつかない場合がある。
これは分別をやめる理由ではない。家庭から出す際には、自治体や回収先が示す品目区分を確認することが、使える古紙を届けるための具体的な行動になる。全国共通の率より、身近な回収先の受入条件が直接役立つ場面だ。
次に見るべき数字――率、重量、品種をセットにする
今後の古紙リサイクルは、率の小さな変化より、その内訳を見ると理解しやすい。
新聞古紙がさらに減る一方で段ボール古紙が維持されれば、段ボールの構成比は一段と上がり得る。ただし、それだけで回収網が改善したことにはならない。
印刷・情報用紙などで古紙利用が広がれば、別の用途で原料需要を支える道が開ける。その際には、必要な品質の古紙を安定して確保できるかが問われる。
次の年次資料では、少なくとも次の3組を確認したい。
- 回収率と回収量:率を保ちながら、扱う重量がどれだけ減っているか。
- 新聞と段ボールの消費量:構成比の変化が、どちらの数量変化から生じたか。
- 古紙利用率と用途:全体の率だけでなく、利用先が広がっているか。
家庭の資源回収でも、回収袋の量が減ったことだけで協力が弱まったとは決められない。紙の使用量が減ったのか、回収先が変わったのか、それとも分別されずに捨てられたのか。全国の81.3%を身近な地域の評価に使う前に、この違いを確かめる必要がある。
