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熱中症搬送は増えているのか 2025年の猛暑を気温データと救急搬送で読む

熱中症搬送は増えているのか 2025年の猛暑を気温データと救急搬送で読む

答えを先に書くと、直近では増えています。消防庁によると、全国の熱中症による救急搬送人員は2025年5月から9月で100,510人となり、2008年の調査開始以降で最多でした。前年2024年の97,578人も当時の最多だったので、記録更新が2年続いた形です。

その背景を気温データと並べると、2025年は「真夏だけが極端だった年」ではありません。気象庁では、2025年夏の日本の平均気温は平年差プラス2.36℃で、1898年以降の夏として最高。さらに6月も過去最高の高温で、暑さが早く始まり、9月まで長く残ったことが、搬送増の大きな要因として見えてきます。

  • 2025年5月から9月の熱中症搬送は100,510人で過去最多
  • 2024年は97,578人、2023年は91,467人で、直近3年は高水準が続く
  • 2025年夏の日本の平均気温は平年差+2.36℃で観測史上最高
  • 2025年の特徴は、7月や8月だけでなく、6月の急上昇と9月の高止まりにもある
目次

使用データと比較条件

今回見たのは、次の全国データです。

  • 消防庁の「熱中症による救急搬送状況」
  • 対象: 全国
  • 期間: 主に各年5月から9月
  • 指標: 熱中症による救急搬送人員
  • 気象庁の月別・季節別の天候まとめ
  • 対象: 全国および地域平均
  • 指標: 平年差つきの平均気温

比較の軸はシンプルです。

  • 年ごとの総搬送人員は増えているか
  • 気温が高かった月に搬送も増えているか
  • 2025年の増え方は、どの月が押し上げたのか

なお、消防庁の熱中症搬送データは年によって調査期間が異なります。2015年以降は5月から9月、2020年は6月から9月です。長期比較では、この違いをそのまま無視できません。

まず結論 「増加傾向だが、毎年まっすぐ増えるわけではない」

年ごとの合計を見ると、直近ははっきり増えています。

  • 2023年: 91,467人
  • 2024年: 97,578人
  • 2025年: 100,510人
  • 2018年: 95,137人

2025年は2024年より2,932人多く、増加率は約3.0%です。2024年はそれ以前の最多だった2018年を上回っており、2025年はその記録をさらに更新しました。

一方で、長い目で見ると一直線ではありません。たとえば2022年は71,029人、2021年は47,877人でした。つまり、熱中症搬送は長期的には高止まりしつつ、各年の暑さの出方で大きく振れるという見方が合います。

2025年はどの月が押し上げたのか

年間合計だけだと、何が起きたのかが見えにくくなります。月別に分けると、2025年の特徴はかなりはっきりしています。

6月がいきなり過去最多

2025年6月の搬送人員は17,229人でした。消防庁によると、6月分の調査を始めた2010年以降で最多です。

同じ6月について、気象庁は日本の月平均気温が平年差+2.34℃となり、1898年以降で最も高い6月だったとしています。6月として歴代1位の高温を観測した地点は153地点中122地点にのぼりました。

この組み合わせは重要です。真夏前の6月から搬送が急増したことで、夏全体の出足がすでに高くなっていました。

7月と8月だけではない

2025年7月の搬送人員は39,375人で、7月として3番目に多い水準でした。8月は31,526人で、8月として5番目でした。

ここだけを見ると、2024年7月の43,195人や、過去の突出年を必ずしも上回っていません。つまり、2025年の年間最多は「7月か8月に1か月だけ異常値が出たから」ではありません。

ここがポイント: 2025年の最多更新は、真夏の1か月勝負ではなく、6月の前倒しと9月の高止まりを含めて、暑い期間そのものが長かったことの影響が大きいです。

9月も高止まりした

2025年9月の搬送人員は9,766人で、9月として2番目に多い水準でした。気象庁も2025年9月は全国的にかなり高温だったとまとめています。

2024年9月は11,503人で9月として過去最多でしたが、2025年もそれに次ぐ高水準でした。夏の終わりに搬送が大きく減らず、秋口まで暑さの影響が残ったことが、年間合計を押し上げています。

気温データと並べると見えること

気象庁によると、2025年夏の日本の平均気温は平年差+2.36℃で、1898年以降の夏として1位でした。これまで最高だった2023年と2024年の+1.76℃を大きく上回っています。

搬送人員の推移と重ねると、直近3年はこう読めます。

  • 2023年: 夏の平均気温が記録的高温で、搬送は91,467人
  • 2024年: 夏の平均気温は2023年と並ぶ最高水準で、搬送は97,578人
  • 2025年: 夏の平均気温がさらに上がり、搬送は100,510人

この並びだけを見ると、高温の強まりと搬送増はかなり整合的です。

ただし、気温が上がれば搬送が同じ比率で増える、とは言い切れません。搬送は、暑さの強さだけでなく、暑い日が何週間続いたか、6月や9月に暑さがずれ込んだか、高齢者が多い時間帯や場所で発生したかでも変わります。

誰がどこで影響を受けたのか

2025年5月から9月の搬送内訳も、読み方の手がかりになります。

  • 高齢者は57,433人で全体の57.1%
  • 住居での発生は38,292人で38.1%
  • 道路は19,773人で19.7%
  • 公衆屋外は12,175人で12.1%

ここで目立つのは、高齢者の比率の高さと、住居が最も多い発生場所だという点です。猛暑というと屋外作業や部活動を思い浮かべがちですが、全国データでは、自宅を含む日常の生活空間での発生が大きいことがわかります。

これは、気温データを読むときにも大事です。最高気温のニュースだけで判断するより、暑さが何日続くか、夜間も気温が下がりにくいか、9月まで長引くかを見たほうが、搬送の増減を追いやすいからです。

データを読むときの注意点

熱中症搬送データと気温データを比べるときは、いくつか注意が必要です。

  • 消防庁データは「救急搬送された人」であり、軽症で受診しなかった人は含みません
  • 調査期間は主に5月から9月で、通年集計ではありません
  • 2020年は6月から9月調査なので、単純な年比較に向きません
  • 気象庁の全国平均気温は長期監視用の15地点を使う統計があり、地域平均の集計とは定義が異なります
  • 全国合計だけでは、都道府県ごとの暑さや人口規模の差は見えません

そのため、「気温が高かったから搬送が増えた」と大きな方向は読めても、地域差まで詳しく見るなら都道府県別データを別に追う必要があります。

今後見るべきポイント

2025年の全国データから言えるのは、熱中症搬送はもう「真夏の一時的な山」だけでは捉えにくい、ということです。

今後は次の点を追うと、変化が見えやすくなります。

  • 6月の早い暑さが定着するのか
  • 9月の高止まりが続くのか
  • 高齢者と住居内の比率がさらに上がるのか
  • 都道府県別で、搬送増がどの地域に広がっているのか

搬送が増えているかという問いへの答えは、2025年時点では明確です。全国では増えている。しかも増え方の中心は、真夏のピークだけでなく、夏の前倒しと長期化に移っている。 ここを見落とすと、次の暑さ対策も読み違えやすくなります。

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