築40年超マンションは20年で約483万戸へ 「3戸に1戸」では測れない老朽化の本当の課題
築40年以上の分譲マンションは、2024年末の約148万戸から2034年末に約293万戸、2044年末には約483万戸へ増える見込みです。20年間で約335万戸増え、現在の3.3倍になる計算です。
ただし、築40年を超えた瞬間に建物が危険になるわけではありません。数字が示す本当の課題は、大規模修繕や設備更新を必要とするマンションが短期間に増える一方、居住者の高齢化や修繕積立金の不足が重なっていることです。
この記事で押さえる要点は次の4つです。
- 築40年以上の分譲マンションは、2024年末時点で約148万戸
- 2034年末には約293.2万戸、2044年末には約482.9万戸へ増える見込み
- 2024年末の全ストック約713.1万戸に対し、すでに約20.8%を占める
- 築年数だけでなく、長期修繕計画、積立金、耐震基準、管理組合の運営状況を見る必要がある
使用データと比較条件
中心に使うのは、国土交通省が2025年8月に更新した分譲マンションのストック推計です。 全国の分譲マンションを対象とし、建築着工統計などから推計したストック戸数と、国土交通省が把握する除却戸数を基にしています。
比較条件は次のとおりです。
- 対象:全国の分譲マンション
- 基準時点:2024年末
- 将来時点:2034年末、2044年末
- 築40年以上の範囲:各時点から40年以上前に建てられたストック
- 戸数の単位:住戸数であり、マンションの棟数や管理組合数ではない
国土交通省資料では、2024年末の「築40年以上」は1985年以前、2034年末は1995年以前、2044年末は2005年以前に建てられたマンションに対応します。
ここでいう「マンション」は、住宅・土地統計調査が使う「共同住宅」と同じではありません。賃貸アパートや公営住宅などを広く含む共同住宅の統計と、分譲マンションのストック推計をそのまま足したり、比率を比較したりすることはできません。
2044年には約482.9万戸、20年間で約334.9万戸増える
増加の中心は、これから新築される住宅ではなく、すでに存在するマンションが築40年の線を越えることです。 1990年代から2000年代前半に供給された大量のストックが、今後20年で高経年マンションの層へ入ります。
| 時点 | 築40年以上の分譲マンション | 2024年末との差 | 2024年末比 |
|---|---|---|---|
| 2014年末 | 約48.5万戸 | 約99.5万戸少ない | 約0.33倍 |
| 2024年末 | 約148.0万戸 | 基準 | 1.0倍 |
| 2034年末 | 約293.2万戸 | 約145.2万戸増 | 約2.0倍 |
| 2044年末 | 約482.9万戸 | 約334.9万戸増 | 約3.3倍 |
2014年末から2024年末までの10年間だけでも、約48.5万戸から約148万戸へ増えました。増加量は約99.5万戸で、規模は約3.1倍です。
次の10年間はさらに約145.2万戸、その後の10年間には約189.7万戸増える計算になります。年平均に単純換算すると、それぞれ約14.5万戸、約19.0万戸です。後半ほど増加量が大きくなる点が重要です。
現在でも全ストックの約5戸に1戸
2024年末の分譲マンション総ストックは約713.1万戸です。同じ時点の築40年以上約148万戸を割ると、割合は約20.8%になります。
つまり、現在でも全国の分譲マンションのおよそ5戸に1戸が築40年以上です。国土交通省は全ストックに約1,600万人が住むと推計しており、高経年化は一部の所有者だけに限られた問題ではありません。
一方、2034年や2044年について「全マンションの何割になる」と断定するには注意が必要です。分母となる将来の総ストックは、新規供給、建替え、解体、用途転換などで変わるためです。約293.2万戸、約482.9万戸という数値は、高経年ストックの規模を示す推計として読むのが適切です。
ここがポイント: 築40年超が増えること自体は避けられません。差がつくのは、築40年を迎える前に、修繕計画と資金、合意形成の仕組みを整えられるかどうかです。
なぜ高経年マンションが急増するのか
理由は、過去の大量供給が時間差で築40年に到達するからです。 新築戸数の急増を示す予測ではなく、既存ストックの年齢構成を将来へ送った結果と考えると分かりやすくなります。
2005年以前のストックが対象に入る
2024年末時点では、おおむね1985年以前に建てられたマンションが築40年以上の範囲です。2044年末になると、対象は2005年以前まで広がります。
この20年分の差は大きいものです。バブル期から2000年代前半にかけて供給されたマンションが一斉に高経年化するため、管理会社、設計者、施工会社、自治体の相談窓口にも対応需要が集中する可能性があります。
ただし、将来戸数は確定値ではありません。建替えや解体などによる除却が想定以上に進めば、実際の残存戸数は変わります。反対に、再生が進まず既存棟が長く残れば、高経年ストックの規模は推計に近づきます。
新旧の耐震基準を混同しない
「築40年」と「旧耐震基準」は別の区切りです。新耐震基準は1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用されました。一方、築40年という分類は、単に建築後の経過年数で区切っています。
したがって、2024年末に築40年前後のマンションの中には、新耐震基準で建てられたものも含まれます。耐震性を確認するときは築年だけで判断せず、建築確認日、構造、耐震診断や改修の履歴を個別に確かめる必要があります。
国土交通省の2024年末推計では、旧耐震基準の分譲マンションストックは約103万戸です。築40年以上の約148万戸より少ないことからも、2つの指標が一致しないと分かります。
問題は建物だけではない――管理組合にも進む「高齢化」
高経年マンションでは、建物の劣化と居住者の高齢化が同時に進みます。 修繕の必要性が高まっても、費用負担や建替えを話し合う管理組合の担い手が不足すれば、意思決定は難しくなります。
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、1984年以前に完成したマンションで、世帯主が70歳以上の住戸の割合は55.9%でした。2015年以降に完成したマンションでは7.4%です。
これは全国の全住戸を数えた悉皆調査ではなく、回答を得た管理組合や区分所有者を集計した調査です。それでも、完成時期が古いマンションほど世帯主の年齢も高い傾向は明瞭です。
管理組合が将来に不安を感じる項目でも、次の回答が上位に並びました。
- 区分所有者の高齢化:57.6%
- 居住者の高齢化:46.1%
- 修繕積立金の不足:39.6%
高齢化そのものが管理不全を意味するわけではありません。問題になるのは、役員のなり手不足、総会への参加低下、相続後の所有者不明、値上げへの合意形成などが重なった場合です。
修繕積立金は36.6%のマンションで計画額に届いていない
老朽化への対応力を左右するのは、築年数よりも修繕計画と資金の整合性です。 外壁、防水、給排水管、エレベーターなどの更新は、先送りするほど選択肢が狭くなる場合があります。
令和5年度マンション総合調査では、計画上必要な修繕積立金に対し、現在の積立額が不足しているマンションは36.6%でした。このうち不足率が20%を超えるマンションは11.7%です。
積立方式にも違いがあります。
- 均等積立方式:40.5%
- 段階増額積立方式:47.1%
段階増額積立方式は、当初の負担を抑えやすい一方、予定どおり値上げできなければ後年に不足が生じます。物価や工事費が計画作成時の想定を上回った場合も、長期修繕計画と実際の必要額にずれが出ます。
生活者に表れる負担
積立金が足りないとき、区分所有者には具体的な選択が迫られます。
- 毎月の修繕積立金を引き上げる
- 工事前に一時金を徴収する
- 管理組合として借り入れる
- 工事項目や時期を見直す
- 長寿命化改修、建替え、敷地売却を比較する
どの方法にも負担があります。毎月の値上げは家計に響き、一時金はまとまった資金を用意できない世帯に重くなります。一方、必要な工事の単純な先送りは、漏水や設備停止などのリスクを高め、結果的に費用が膨らむ可能性があります。
購入を検討する人にとっても、販売価格だけでは判断できません。修繕積立金が安いことは、必ずしも将来負担が軽いことを意味しないからです。
建替えだけでは約483万戸を受け止められない
これまでの実績を見る限り、高経年マンションの多くは建替えではなく、修繕しながら使い続けることになります。
国土交通省によると、マンション建替えの実績は2025年3月31日時点で累計323件、約2万6,000戸です。マンション敷地売却などの実績は累計17件、約1,300戸でした。震災による被災マンションの建替え115件は、この集計に含まれていません。
現在の築40年以上約148万戸と建替え累計約2.6万戸は、対象期間も集計方法も異なるため、単純な処理率として比較することはできません。それでも、2044年に約482.9万戸へ達する高経年ストックを、建替えだけで更新する構図ではないことは分かります。
建替えが難しくなる条件
建替えの可否は、建物の古さだけでは決まりません。主に次の条件が絡みます。
- 区分所有者間で合意を形成できるか
- 建替え後に増える床面積を売却し、事業費に充てられるか
- 工事費上昇を含めても各所有者が追加負担できるか
- 仮住まいや転居への対応が可能か
- 現在の建築規制の下で、十分な規模に建て替えられるか
駅に近く需要が強いマンションと、人口減少が進む地域のマンションでは、同じ築年数でも再生の選択肢が異なります。全国戸数だけでは、この地域差までは読み取れません。
都道府県ランキングを作れない理由
今回の国土交通省推計は全国値であり、同じ定義による都道府県別の築40年以上戸数は示していません。 そのため、この資料だけから「老朽マンションが多い都道府県ランキング」を作ることはできません。
住宅・土地統計調査には、都道府県別、建築時期別、共同住宅などの集計があります。ただし、こちらは居住世帯の有無や住宅の建て方を調べる統計で、国土交通省の分譲マンションストック推計とは対象と定義が異なります。
地域差を検討する場合は、次の条件をそろえる必要があります。
- 分譲と賃貸を区別しているか
- 戸数、棟数、管理組合数のどれを比べているか
- 空き家を含むか
- 建築年と完成年のどちらを使うか
- 団地型マンションをどう数えるか
- 比較する年次が一致しているか
自治体が独自にマンション実態調査や届け出制度のデータを公開している場合もありますが、調査対象や回答率は自治体ごとに異なります。全国一律の順位に加工するより、各地域で「どの年代のマンションが何棟あり、管理状況をどこまで把握できているか」を確認する方が実務的です。
国際比較にも同じ問題があります。コンドミニアム、共同所有住宅、公営集合住宅などの法制度や統計単位は国によって違うため、日本の「分譲マンション・築40年以上」と条件をそろえた比較は容易ではありません。
築40年という数字を誤読しないための注意点
築年数は入口になる指標ですが、建物の安全性や資産価値を直接判定する点数ではありません。
「築40年=寿命」ではない
建物の状態は、設計や施工だけでなく、立地環境、日常管理、過去の修繕、給排水設備の更新状況などで変わります。同じ完成年でも状態は一様ではありません。
反対に、見た目がきれいでも、長期修繕計画が古い、積立金が不足している、総会が開かれていないといった管理上の課題を抱える場合があります。
将来値は残存戸数の推計
2034年と2044年の数値は、現在の年齢構成を基礎にした推計です。将来の建替えや除却の進み方、新たな政策、市場環境によって実績は変わり得ます。
また、約482.9万戸は「2044年に新たに老朽化する戸数」ではありません。その時点で築40年以上となっているストックの総数です。2024年末からの純増分は約334.9万戸です。
戸数は棟数ではない
大規模マンション1棟と小規模マンション1棟では、含まれる住戸数が大きく違います。約148万戸という数字から、管理組合や建物がいくつあるかは分かりません。
行政が支援策を考えるときは、住戸数だけでなく棟数、立地、管理組合の有無、空室率なども必要です。相談対応の件数や改修プロジェクトの数は、戸数と比例するとは限りません。
所有者・購入検討者・自治体が今見るべき数字
2044年の約483万戸という予測を、将来の話だけで終わらせないことが重要です。 修繕計画は数十年単位で組むため、1990年代から2000年代前半に完成したマンションも、すでに準備期間へ入っています。
所有者と管理組合
総会資料や管理会社からの報告で、少なくとも次を確認できます。
- 長期修繕計画をいつ見直したか
- 計画期間中の工事費と積立見込額が一致しているか
- 修繕積立金の滞納や借入金があるか
- 給排水管、エレベーター、防水などの更新時期
- 区分所有者名簿と居住者名簿が更新されているか
- 耐震基準、耐震診断、改修履歴
国の管理計画認定制度では、総会の定期開催、管理費と修繕積立金の区分経理、30年以上の長期修繕計画などが基準に含まれます。認定の有無だけで全てを判断はできませんが、管理状況を点検する共通の物差しになります。
中古マンションの購入検討者
重要事項調査報告書や総会議事録などを通じて、次の値を販売価格と一緒に見る必要があります。
- 修繕積立金の現在残高と計画上の必要額
- 将来の値上げや一時金徴収の予定
- 大規模修繕の実施時期と工事内容
- 管理費・修繕積立金の滞納状況
- 建替えや敷地売却に関する検討の有無
「築浅か築古か」だけでなく、必要な修繕を実施できる資金と意思決定の仕組みがあるかを見ることが、将来負担を判断する手掛かりになります。
自治体
自治体にとっては、管内のマンションを把握できているかが出発点です。全国推計が増えても、所在地、棟数、築年、管理組合との連絡手段が分からなければ、支援を届けにくいためです。
今後の注目点は次の3つです。
- 1990年代以降に完成したマンションが築40年を迎える前に、修繕計画の見直しが進むか
- 工事費や物価の変動を反映し、積立不足36.6%を縮小できるか
- 建替えが難しいマンションで、長寿命化改修や売却などの選択肢を早期に比較できるか
2044年の約482.9万戸は、突然現れる数字ではありません。毎年約15万〜19万戸規模で高経年ストックが積み上がる局面では、次の大規模修繕が迫ってから資金不足に気づくのでは遅い場合があります。まず確認すべきなのは築年数そのものではなく、自分のマンションの長期修繕計画が最新の工事費と積立残高に合っているかです。
