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固定電話離れは日本より海外の方が先か 主要国の契約数を2023年データで比較

固定電話離れは日本より海外の方が先か 主要国の契約数を2023年データで比較

結論から言うと、「海外の方が一様に固定電話離れが進んでいる」とは言えません。 2023年の固定電話契約数を人口100人あたりで比べると、日本は48.0件で、米国や英国より高く、ドイツや韓国に近い水準でした。一方で、フランスは日本より高く、中国はかなり低く、主要国の差ははっきり分かれています。

固定電話は世界全体では減少傾向です。ただし、国ごとの差を見ると、古い電話回線が早く縮んだ国と、VoIPや固定ブロードバンドと結びついた契約が残っている国では、見え方がかなり違います。日本は「まだ多い国」に入りますが、最も残っている側でも、最も減った側でもありません。

  • 2023年の人口100人あたり固定電話契約数は、日本48.0、米国25.6、英国38.8、ドイツ45.9、フランス56.0、韓国42.8、中国12.2
  • 日本は米英より固定電話契約が残っているが、フランスよりは低い
  • 世界全体の固定電話契約総数は、ITU集計ベースで2005年の12.43億件から2023年は8.61億件へ減少
  • 比較するときは「契約数」と「人口100人あたり」を分けて見る必要がある
目次

使用データと比較条件

今回使ったのは、世界銀行の World Development Indicators に載る固定電話指標です。元データの出所は ITU で、執筆時点で確認できる最新値は主に2023年でした。

比較に使った指標は次の2つです。

  • IT.MLT.MAIN.P2:固定電話契約数(人口100人あたり)
  • IT.MLT.MAIN:固定電話契約総数

ここでいう固定電話は、昔ながらのアナログ回線だけではありません。世界銀行の定義では、VoIP契約、固定無線、ISDN音声チャネル、公衆電話なども含まれます。つまり、この数字は「銅線の黒電話がどれだけ残ったか」ではなく、各国で固定系の音声契約がどれだけ残っているかを見る指標です。

2023年の主要国比較

まずは、主要国の最新値を並べると位置関係が見えます。

固定電話契約数(人口100人あたり) 固定電話契約総数
フランス 56.0 3,728.1万件
日本 48.0 5,932.7万件
ドイツ 45.9 3,870.0万件
韓国 42.8 2,215.5万件
英国 38.8 2,665.2万件
米国 25.6 8,483.0万件
中国 12.2 1億7,941.4万件

この並びから分かるのは、固定電話離れの進み方が「海外」でひとくくりにできないことです。

  • 米国と英国は、日本よりかなり低い
  • ドイツと韓国は、日本と近い
  • フランスは、日本より高い
  • 中国は総数こそ大きいが、人口比ではかなり低い

総数だけを見ると、中国や米国が大きく見えます。ですが、人口規模が違うので、そのままでは比較しにくいです。国どうしを比べるなら、まず見るべきなのは人口100人あたりの値です。

「海外の方が先に固定電話をやめた」はどこまで正しいか

短く言えば、米英や中国を見るならその見方はかなり当たっています。フランスやドイツまで含めると、そう単純ではありません。

ここがポイント: 日本は主要国の中で固定電話が特に遅れて残っているわけではなく、国によっては日本より先に減り、別の国では日本以上に残っている。

米英では日本より離脱が進んでいる

米国は25.6、英国は38.8で、日本の48.0を下回ります。少なくとも2023年時点の契約密度で見ると、固定電話離れは日本より進んでいます。

とくに米国は、人口規模の大きさで総契約数は8,483万件ありますが、人口比では日本の半分強です。ここは「数が多いから固定電話が残っている」とは読めません。

大陸欧州はまだ残っている国がある

フランスは56.0、ドイツは45.9でした。フランスは日本を上回り、ドイツはほぼ近い水準です。

この差は、固定電話という名前から受ける印象より重要です。固定電話指標にはVoIPなども入るため、固定ブロードバンド契約と一体で音声契約が残る国では、契約数が下がり切らないことがあります。実際、2023年の固定ブロードバンド契約は、フランス48.67、日本38.63と高水準でした。

東アジアでも答えは割れる

韓国は42.8で、日本よりやや低い程度です。中国は12.2でかなり低く、同じアジアでも差が大きいことが分かります。

このため、「アジアより欧米の方が先」「日本より海外の方が先」といった大きすぎるまとめ方では、実態を取りこぼします。

世界全体ではどこまで減ったのか

国ごとの違いはありますが、世界全体の減少ははっきりしています。インド通信省の統計書が引用する ITU 集計では、世界の固定電話契約総数は2005年の12.43億件から2023年の8.61億件へ減少しました。

高所得国でも減少は続いています。これは「固定電話が完全に消えた」という話ではなく、固定系音声サービスの土台が長期的に縮んでいることを示します。

ここで重要なのは、減少の理由を一つに決めつけないことです。

  • 携帯電話の普及
  • 光回線や固定ブロードバンドへの移行
  • VoIPへの置き換え
  • 集計定義の違い
  • 企業回線や業務用回線の残存

同じ「減少」でも、家庭での解約が進んだ国と、技術の置き換えで統計上の中身が変わった国では意味が違います。

読み取れること

ここまでの数字から言えることは、次の3点です。

  • 日本は固定電話が極端に残っている国ではない
  • ただし米英よりは残っており、離脱が最も早い側でもない
  • フランスのように日本より高い国があるので、「海外の方が先にやめた」と一般化するのは不正確

言い換えると、日本の固定電話離れは「遅すぎる」と言い切るほどではなく、主要国の中間からやや高めの位置にあります。比較の仕方を間違えると、米国だけ見て「海外はもっと進んでいる」となり、フランスまで入れると逆の印象も出ます。

注意したい限界

このテーマは、数字の読み間違いが起きやすいです。確認しておきたい点をまとめます。

  • 使った最新値は主に2023年で、2024年や2025年の値がそろっている比較ではない
  • 指標は「契約数」であり、「利用者数」や「世帯の保有率」ではない
  • 固定電話には VoIP、固定無線、ISDN 音声チャネル、公衆電話などが含まれる
  • ITU と World Bank の注記では、国ごとの定義差や会計年度のずれで厳密比較に限界がある
  • 欠測値は ITU が推計で補う場合がある

つまり、このデータは「固定系の音声契約がどれだけ残っているか」を見るには有効ですが、各家庭で昔ながらの据え置き電話がどれだけ使われているかをそのまま示すものではありません。

次に見るべきポイント

今後の注目点はかなり具体的です。

  • 日本、ドイツ、フランスの2024年以降の値がどこまで下がるか
  • 固定ブロードバンド契約が高い国で、音声契約の同時縮小が進むか
  • 銅線網の縮小やIP網移行が、統計上の固定電話契約数にどう表れるか

固定電話離れは世界共通の流れです。ただ、日本より海外の方が進んでいるかという問いへの答えは、「国による」です。次の年次更新で見るべきなのは、米英型の急減が大陸欧州や日本にも広がるのか、それとも固定ブロードバンドに支えられて高めの水準がしばらく残るのか、その一点です。

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