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急須のお茶は減ったのか 家計調査と業界統計で見る緑茶からペットボトル茶への移動

急須のお茶は減ったのか 家計調査と業界統計で見る緑茶からペットボトル茶への移動

日本のお茶習慣は、なくなったというより飲み方の中心が移ったと見るのが実態に近いです。総務省の家計調査では、二人以上の世帯が買う緑茶(リーフ茶等)の数量は長く減少し、2024年は1世帯当たり671gでした。一方で、茶飲料への年間支出は2024年に8,648円となり、緑茶への支出3,194円を大きく上回っています。

つまり、家で茶葉をいれて飲む比重は下がったが、お茶そのものが生活から消えたわけではありません。ペットボトルを中心とする ready-to-drink 型のお茶が、家計の中でより大きな位置を占めるようになった、というのが今回の結論です。

  • 結論: 「お茶離れ」より「茶葉から飲料への移行」がはっきり見える
  • 使用データ: 総務省「家計調査」、全国清涼飲料連合会「清涼飲料水統計2025」、農林水産省「茶をめぐる情勢」
  • 対象年: 主に2008年から2024年までの推移、地域比較は2022年から2024年平均
  • 比較条件: 家計調査の緑茶はリーフ茶等、茶飲料は液体飲料。業界統計の茶系飲料はウーロン茶、緑茶、むぎ茶、ブレンド茶などを含む
目次

まず確認したい使用データと見方

同じ「お茶」でも、統計によって見ているものが違います。ここを混ぜると読み違えやすいので、先に整理します。

  • 家計調査の「緑茶」: 茶葉など家庭でいれる前提の購入
  • 家計調査の「茶飲料」: ペットボトルや缶など、液体として買うお茶
  • 全清飲の「茶系飲料」: 業界全体の生産量。緑茶飲料だけでなく、むぎ茶飲料、ウーロン茶飲料、ブレンド茶飲料などを含む

今回の記事では、

  • 家計調査で家庭内の買い方の変化を見る
  • 業界統計で、茶飲料がどの容器で増えているかを見る
  • 地域比較で、どの都市が茶葉型か飲料型かを確かめる

という順で読んでいきます。

主要な数値 家計では茶葉が縮み、茶飲料が伸びた

家計調査ベースで見ると、変化はかなり明確です。

指標 2008年 2024年 変化
緑茶の年間購入数量(2人以上世帯) 982g 671g 約31.7%減
緑茶の年間支出額 5,031円 3,194円 約36.5%減
茶飲料の年間支出額 5,664円 8,648円 約52.7%増

数字だけでも、家庭での中心が茶葉から茶飲料へ移ったことが分かります。とくに支出額では、2024年時点で茶飲料が緑茶の2.7倍近くです。

何が変わったのか

変わったのは「お茶を飲むかどうか」だけではなく、どの形で買うかです。

  • 茶葉は、急須やポット、抽出の手間が前提になる
  • 茶飲料は、その場で飲めて持ち運びもしやすい
  • 無糖飲料として選びやすく、食事中にも合わせやすい

農林水産省の資料でも、緑茶のリーフ茶消費量は減少傾向、茶飲料は簡便化志向を背景に増加傾向と整理されています。家計調査の数字もその流れと一致します。

ここがポイント: 茶の需要が消えたというより、家庭内での「いれる茶」から、外でも家でもそのまま飲める「液体の茶」へ重心が移った。

ペットボトル茶はどこまで主流なのか

「茶飲料が増えた」と言っても、缶や紙容器が多いなら話は別です。そこで業界統計を見ると、2024年の茶系飲料はほぼPETボトル中心でした。

全国清涼飲料連合会の2024年統計では、茶系飲料の総生産量は564万5,400kl。そのうち容器別内訳を合計すると、PETボトルは約545万2,000klで、茶系飲料全体の約98%を占めます。

さらに中身を見ると、2024年の茶系飲料の内訳は次の通りです。

  • 緑茶飲料: 307万6,900kl
  • むぎ茶飲料: 143万5,500kl
  • ブレンド茶飲料: 49万3,300kl
  • ウーロン茶飲料: 39万2,400kl
  • その他茶系飲料: 24万7,300kl

緑茶飲料だけで茶系飲料全体の半分超を占めています。家庭の支出で茶飲料が伸びていることと、業界側でPET中心の大量供給が続いていることは、同じ方向を指しています。

直近の推移

2020年から2024年で見ると、茶系飲料の生産量は524万2,800klから564万5,400klへ増えました。大きな急増ではありませんが、縮小ではなく増加です。

一方、全清飲資料にある2024年の1人当たり消費量では、

  • ミネラルウォーター 40.6L
  • 炭酸飲料 31.5L
  • コーヒー飲料 25.0L
  • 緑茶飲料 24.9L
  • 紅茶飲料 11.6L
  • ウーロン茶飲料 3.2L

という並びでした。緑茶飲料は水や炭酸に次ぐ規模ではありませんが、コーヒー飲料にかなり近い水準まで来ています。

地域差を見ると「茶葉型」と「飲料型」が分かれる

全国平均だけだと、どこでも同じ変化が起きたように見えます。実際には、地域によって買い方の色がかなり違います。

緑茶の支出が強い都市

2022年から2024年平均の家計調査では、緑茶の年間支出額と購入数量の上位は次の通りです。

  • 静岡市: 8,749円、1,344g
  • 浜松市: 5,586円、1,161g
  • 長崎市: 4,807円
  • 宮崎市: 4,604円
  • 佐賀市: 4,481円
  • 全国平均: 3,224円、683g

静岡市は支出でも数量でも突出しています。茶どころに近く、家庭で茶葉を買う習慣がまだ太いことを示す数字です。

茶飲料の支出が強い都市

同じ2022年から2024年平均で、茶飲料の年間支出額上位はこうです。

  • 宇都宮市: 11,564円
  • 富山市: 10,450円
  • 水戸市: 10,337円
  • 福島市: 10,046円
  • 千葉市: 9,973円
  • 全国平均: 8,313円

ここで目立つのは、茶産地の代表格とは限らない都市が上位に並ぶことです。茶葉の産地性とは別に、日常の買い方として液体のお茶が強い地域がある、と読めます。

データから読み取れること

ここまでの数字から、言えることを整理します。

1. 家庭内の主役は茶葉から液体へ移った

緑茶の購入数量と支出額は長期で下がり、茶飲料支出は上がっています。これは最も強い事実です。

2. 「お茶を飲まなくなった」とまでは言えない

茶飲料の支出増と生産量の大きさを見ると、お茶自体の接点は残っています。むしろ、接点の形が変わったと見る方が自然です。

3. 地域によって残る習慣が違う

静岡市のように茶葉文化が濃く残る都市もあれば、宇都宮市や富山市のように茶飲料支出が高い都市もあります。同じ全国トレンドの中でも、飲み方の地域差はまだ大きいです。

逆に、このデータだけでは言えないこと

ここは切り分けが必要です。

  • 茶葉の減少分が、そのまま茶飲料に完全に置き換わったとは断定できない
  • 家計調査の緑茶はg、茶飲料は円、業界統計はklなので、厳密な代替率は出せない
  • 家計調査の購入数量は主に二人以上世帯ベースで、単身世帯の行動は別に見る必要がある
  • 茶飲料にはPET以外の容器も含まれる。ただし2024年の業界統計では茶系飲料の約98%がPETだった
  • 外食、職場、自販機、コンビニでの場面差までは、この数字だけでは細かく追えない

つまり、習慣の方向は見えるが、飲んだ杯数そのものの総量までは別データが要るということです。

生活者目線で見ると何が変わったのか

数字を生活に引きつけると、変化はかなり具体的です。

  • 家で急須を出す頻度が下がっても、お茶を買う頻度は維持されうる
  • 無糖で持ち運べる飲料として、茶飲料は水と炭酸の中間の選択肢になっている
  • 茶産地では茶葉文化が残りやすいが、都市部や通勤型の生活では飲料型が強くなりやすい

特に、コンビニやスーパーで1本単位で買える無糖茶は、「家庭の台所でいれる飲み物」から「移動中や仕事中にも選ぶ飲み物」へ、お茶の役割を広げました。家計調査の支出項目の移動は、その変化をかなり素直に映しています。

今後見るべきポイント

今後このテーマを追うなら、注目点は3つです。

  • 単身世帯を含めると茶葉離れはさらに強いのか
  • 物価上昇の中で、茶飲料の本数ではなく支出だけが増えていないか
  • 緑茶飲料、むぎ茶飲料、ブレンド茶飲料の内訳がさらにどう動くか

少なくとも足元の数字では、日本人がお茶をやめたとは言えません。変わったのは、湯を沸かしていれる時間より、そのまま持って出られる形を選ぶ比重の方です。次に見るべきなのは、この移動が価格要因なのか、世帯構成の変化なのか、それとも働き方や買い物動線の変化なのかという点です。

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