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住宅リフォームは増えている?受注額18.7%増と「修理件数」の伸びを読む

住宅のキッチンで配管と修繕箇所を確認する作業員。

住宅リフォームは増えている?受注額18.7%増と「修理件数」の伸びを読む

住宅リフォームは、2025年度の全国集計では金額も工事件数も増えました。国土交通省の調査では、住宅の受注高は4兆9,033億円で前年度比18.7%増、受注件数は約747万件で31.4%増です。とくに維持・修理工事の件数が伸びており、既存の住まいを直して使う動きが数字に表れています。

ただし、拡大が続いているとは言い切れません。最新の2026年4〜6月は住宅の受注高が前年同期比7.6%減。「2025年度は拡大したが、直近は減少した」という二つの事実を分けて読む必要があります。国土交通省の2025年度資料、2026年度第1四半期資料による結果です。

この記事で押さえるのは、次の3点です。

  • 市場の金額と工事件数は、同じ速さでは増えていない。
  • 家計側から推計した市場規模と、事業者の受注高は対象範囲が違う。
  • 修繕の増加は確認できるが、住宅の寿命が何年延びたかまでは分からない。
目次

使用データ――受注と家計支出を分けて見る

住宅リフォームの規模は、誰の側から数えるかによって変わります。

主に使うのは、国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査」です。全国の建設業許可業者5,000業者を調査し、元請けとして受注した工事の件数・金額などを推計します。ここでいう元請けは、施主から直接請け負う工事を基本とする考え方です。

対象には増築、一部改築、改装・改修、維持・修理が含まれます。一方、別棟の増築や全面的な建て替えは対象から外れます。住宅だけでなく非住宅も調査するため、住まいの動向を見る際は「住宅」の数字を取り出します。調査概要で範囲を確認できます。

もう一つは、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの市場規模推計です。建築着工統計、家計調査、世帯数などを使い、増築・改築工事費と設備等の修繕維持費を積み上げています。

比較条件は次のとおりです。

  • 地域:いずれも全国。
  • 期間:国交省は2025年度と2026年4〜6月、センターは2025年までの暦年。
  • 金額:物価の変化を取り除いた実質額ではなく、各時点の金額。
  • 公表時期:国交省の年度結果は2026年6月12日、最新四半期は同年9月10日。資料の確認日は2026年10月8日。

年度と暦年は3か月ずれます。受注した時点と家計が支払う時点にも違いがあるため、両者の金額を一致させる読み方はできません。

2025年度は、金額より工事件数が大きく増えた

市場拡大の中身を見ると、比較的小さな修理を含む件数の伸びが目立ちます。

国交省の住宅受注高は、2023年度の4兆2,710億円から2024年度に4兆1,318億円へ減り、2025年度に4兆9,033億円へ増えました。右肩上がりの連続成長ではなく、減少を挟んだ拡大です。

2025年度の住宅工事を種類別に整理すると、次のようになります。件数は読みやすく丸めています。

工事種類受注件数件数の前年度比受注高
住宅全体約747万件31.4%増4兆9,033億円
改装・改修約211万件12.0%増3兆8,164億円
維持・修理約533万件41.5%増9,215億円

出典:国土交通省・2025年度結果、表1-1・表1-2。工事種類別の数字は独立して推定されており、合計が完全には一致しない場合があります。

多い工事と、お金が動く工事は違う

維持・修理は件数の大きな部分を占めます。一方、受注高では改装・改修が中心です。

この違いは、給排水設備などの部分的な修理と、複数の部位に及ぶ改修を同じ「リフォーム」として数える際に重要です。小さな修理が何件も増える場合と、大きな改修が数件増える場合では、暮らしへの影響も費用の動きも異なります。

住宅全体の受注高を受注件数で割ると、2025年度は1件当たり約65.6万円です。また、公表された増加率から計算すると、1件当たり受注額は前年度より約9.7%低下します。金額の伸び18.7%を、件数の伸び31.4%が上回ったためです。

これは筆者による集計値からの計算で、個々の工事価格を追跡した結果ではありません。平均額の低下を、そのまま「同じ工事が安くなった」と読むことはできません。小規模な修理の比重が高まるだけでも平均は下がります。

家計側の市場規模は2025年に7.42兆円

支出から見た市場も増えていますが、事業者の受注高とは別の物差しです。

住宅リフォーム・紛争処理支援センターの最新掲載資料では、2025年の市場規模は7兆4,200億円。2023年は7兆円、2024年は7兆100億円で、2025年は前年から4,100億円、約5.8%増えました。市場規模推計資料に示されています。

同資料の長期推移では、2000年が5.30兆円、2010年が5.02兆円です。2025年の金額はそれぞれ約40%、約48%上回ります。ただし、25年、15年という長い期間には物価や世帯数の変化も含まれます。金額差だけで、施工量が同じ割合で増えたとは判断できません。

7.42兆円と4.90兆円を足してはいけない

センターの推計には、分譲マンションの共用部分のリフォームや、賃貸住宅所有者による賃貸住宅のリフォームが含まれていません。一方、国交省の受注調査は管理組合などの発注も捉えます。

さらに、センターは関連する耐久消費財やインテリア商品の購入費などを加えた「広義」の市場も推計しており、2025年は8兆6,700億円です。

つまり、市場規模の数字には少なくとも次の違いがあります。

  • 建設業者が受注した工事を数える。
  • 家計支出などを基にリフォーム費用を推計する。
  • 関連する家具やエアコンなどの購入費まで含める。

数字が違うこと自体は矛盾ではありません。重なる支出があるため、これらを足して「市場全体」を作ることもできません。

最新四半期では、住宅と非住宅の方向が分かれた

直近の結果は、リフォーム全体の増加率だけでは住宅の動きを読めないことを示します。

2026年4〜6月の受注高は次のとおりです。

  • 建築物全体:5兆427億円、前年同期比22.8%増。
  • 住宅:1兆807億円、同7.6%減。
  • 非住宅:3兆9,619億円、同34.9%増。

全体の増加は非住宅の伸びによるもので、住宅は減っています。住まいのリフォームを判断する際に「建築物全体」の増加率を使うと、逆方向の結論になってしまいます。

住宅の中でも差があります。個人発注の受注高は0.7%減にとどまる一方、管理組合発注は36.2%減。構造・用途別では、木造の一戸建住宅が1.5%増、コンクリート系構造の共同住宅が19.8%減でした。2026年度第1四半期資料で確認できます。

この四半期は、戸建てを含む個人の発注より、共同住宅・管理組合の減少が目立ちます。ただし、大規模修繕の発注時期による変動もあり得るため、3か月だけで需要の恒久的な縮小を判断するのは早計です。

修繕の増加は長寿命化の「取り組み」を示す

住宅を直す工事が増えたことと、住宅の寿命が延びたことは、別々に検証する必要があります。

2025年度に維持・修理の件数が大きく増えた事実は、既存の建物や設備を使い続けるための工事が広がったことを示します。しかし、受注統計は工事後の住宅を追跡して、取り壊しまでの年数を測る調査ではありません。

たとえば、設備の交換、内装の更新、構造や外壁の補修では、解決する問題が違います。工事金額が大きいほど寿命が長く延びる、という関係もこの統計からは確認できません。

金額・件数・成果を分ける

長寿命化を読む際には、三つの段階を区別すると誤解が減ります。

  • 金額:住まいにどれだけのお金が向かったか。
  • 件数・内容:どのような修理や改修が、どれだけ発注されたか。
  • 成果:工事後に不具合が減ったか、性能が改善したか、使用年数が延びたか。

今回のデータが詳しく捉えるのは、主に最初の二つです。成果を確かめるには、工事前後の性能や、その後の使用状況を調べる別の情報が必要になります。

また、1件は1戸や1世帯を意味しません。一つの住宅で別々の工事を発注する場合も、共同住宅の共用部分を一つの工事として発注する場合もあります。「約747万件だから、約747万世帯がリフォームした」という換算はできません。

次に見るべきは、修理件数と共同住宅の回復

拡大が定着するかは、総額だけでなく工事内容と発注者別の動きで判断したいところです。

次回以降の公表では、次の組み合わせが手掛かりになります。

  • 維持・修理の件数が増え、金額も増えるなら、修理工事の広がりを引き続き確認する。
  • 金額だけが増えるなら、大規模工事の比重や費用上昇の影響を確認する。
  • 共同住宅・管理組合の受注が戻るなら、直近の減少が発注時期の変動だった可能性を検討する。
  • 住宅受注の減少が複数四半期続くなら、2025年度の拡大と切り分けて需要の弱まりを調べる。

自宅の修繕費を考える際にも、全国平均の65.6万円を予算の目安としてそのまま使うのは適切ではありません。必要なのは、工事部位、施工範囲、建物の状態をそろえた比較です。市場の拡大率よりも、「今回の見積もりで何を直し、どの問題を解決するのか」を具体的に確認することが、住まいを長く使うための判断につながります。

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