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下水道普及率は82.2%へ――21年間の県別比較で見る伸びと残る地域差

住宅地の下水道管と郊外の浄化槽を描いた生活排水処理のイメージ。

下水道普及率は82.2%へ――21年間の県別比較で見る伸びと残る地域差

全国の下水道処理人口普及率は、2004年度末の68.1%から2025年度末の82.2%へ、21年間で14.1ポイント上昇しました。それでも、最新値は東京都の99.7%から徳島県の19.8%まで大きく開いています。

ただし、下水道の普及率が低いことと、生活排水を処理できないことは同じではありません。 合併処理浄化槽や農業集落排水施設などを含む全国の汚水処理人口普及率は94.0%です。県別の差を読むには、下水道の広がりと、ほかの処理施設が担う役割を合わせて見る必要があります。

この記事では、国土交通省が公表した2004年度末と2025年度末のデータを比較し、全国の推移、県別の伸び、人口減少による割合の変化を整理します。

  • 全国の下水道普及率は21年間で14.1ポイント上昇。
  • 三重県や佐賀県では、同期間に約27〜29ポイント上昇。
  • 最新値が50%未満なのは5県。ただし浄化槽などの普及状況は別に確認する必要がある。
  • 普及率が上がっても、下水道を利用できる人口が同じ勢いで増えているとは限らない。
目次

使用データと比較条件――「使える人口」の割合を比べる

下水道処理人口普及率は、総人口のうち下水道を利用できる人口が占める割合です。

実際に各住宅が接続している割合や、排水の水質、管路の老朽化を直接示す指標ではありません。道路の下まで下水道が整備されていることと、住宅側の接続状況は区別して読む必要があります。

今回の比較条件は次のとおりです。

  • 最新時点: 2025年度末、つまり2026年3月末。国土交通省など3省が2026年8月24日に公表した資料を使用。
  • 過去時点: 2004年度末、つまり2005年3月末。国土交通省が2005年8月22日に公表した資料を使用。
  • 対象地域: 全国と都道府県。県別値には政令指定都市分を含む。
  • 比較方法: 公表された普及率の差を「ポイント」で表示。処理人口の増加率とは区別する。
  • 確認時点: 2026年10月8日。

過去値は国土交通省の2004年度末資料、最新値は2025年度末の県別資料に基づきます。本文の増減幅は、小数第1位までの公表値から計算しています。

全国の推移――普及は進んだが、近年の伸びは小さくなった

全国の下水道普及率は上昇を続けていますが、近年の年間上昇幅は2000年代半ばより小さくなっています。

2004年度末は68.1%で、前年度の66.7%から1.4ポイント上昇しました。一方、2025年度末は82.2%で、前年度の81.8%から0.4ポイントの上昇です。

途中の推移を見ると、急に82%へ達したわけではありません。埼玉県が掲載する全国値の時系列では、次のように上昇しています。

年度末全国の下水道処理人口普及率
2004年度68.1%
2016年度78.3%
2020年度80.1%
2024年度81.8%
2025年度82.2%

2004年度末から2016年度末までは12年間で10.2ポイント、2016年度末から2025年度末までは9年間で3.9ポイント上昇しました。期間の長さが違うため、単純に差だけを比べることはできませんが、年間平均にするとそれぞれ約0.85ポイント、約0.43ポイントです。

この減速だけで整備事業の停滞とは判断できません。普及率には100%という上限があり、すでに高水準の地域では上昇余地が小さくなります。また、未整備地域で下水道と浄化槽のどちらを選ぶかによっても、下水道だけの伸びは変わります。

県別の長期比較――低い出発点から大きく伸びた県もある

21年間の比較では、最新の普及率の高さと、期間中の伸びの大きさは一致しません。

次の表は、高水準の県、上昇幅の大きい県、最新値が50%未満の県を取り上げたものです。全47都道府県の上昇幅ランキングではありません。

地域2004年度末2025年度末差
全国68.1%82.2%+14.1ポイント
神奈川県94.0%97.3%+3.3ポイント
大阪府88.2%97.1%+8.9ポイント
滋賀県78.2%93.9%+15.7ポイント
三重県35.7%62.9%+27.2ポイント
佐賀県36.3%65.5%+29.2ポイント
島根県33.1%54.4%+21.3ポイント
和歌山県13.4%30.9%+17.5ポイント
徳島県11.4%19.8%+8.4ポイント
香川県35.6%47.7%+12.1ポイント
高知県27.5%43.8%+16.3ポイント
鹿児島県36.1%44.3%+8.2ポイント

出典:国土交通省の2004年度末・2025年度末資料。差は筆者計算。

三重県と佐賀県は「半数未満」から6割超へ

三重県は35.7%から62.9%、佐賀県は36.3%から65.5%へ上昇しました。どちらも2004年度末には人口の半数に届いていませんでしたが、2025年度末には6割を超えています。

対して神奈川県は3.3ポイントの上昇です。しかし、出発点がすでに94.0%でした。伸びが小さいことを、そのまま整備実績が乏しいという評価に結びつけることはできません。

現在の到達水準と、過去からの上昇幅は別々に見る。 この区別が、長期比較の基本になります。

50%未満の県は18県から5県へ

2004年度末には、下水道普及率が50%未満の県が18県ありました。2025年度末には、徳島県、和歌山県、高知県、鹿児島県、香川県の5県です。

島根県のように、33.1%から54.4%へ上昇し、半数を超えた県もあります。最新年の順位だけでは見えにくい変化です。

ただし、50%は比較のための目安にすぎません。下水道だけで半数を超えたかどうかと、地域全体で生活排水を処理できるかどうかは、次の指標で分けて確認します。

下水道が低くても、浄化槽が生活排水処理を担う

生活排水処理の整備状況を判断するには、下水道に加えて合併処理浄化槽や集落排水施設を含む「汚水処理人口普及率」が必要です。

2025年度末の全国値は、下水道が82.2%、汚水処理全体が94.0%でした。その内訳には、浄化槽9.5%、農業集落排水施設等2.2%、コミュニティ・プラント0.1%が含まれます。国土交通省の最新公表資料は、施設ごとの役割を分けて示しています。

県別に見ると、違いはさらに大きくなります。

  • 徳島県: 下水道19.8%に対し、汚水処理全体は70.4%。
  • 和歌山県: 下水道30.9%に対し、汚水処理全体は72.9%。
  • 鹿児島県: 下水道44.3%に対し、汚水処理全体は87.1%。

これらの県では、下水道以外の施設が相当部分を担っています。徳島県では、合併処理浄化槽の処理人口が約32.6万人で、下水道の約13.6万人を上回ります。数値は施設別・都道府県別の公表資料によります。

ここがポイント: 下水道普及率は「下水道を使える範囲」、汚水処理人口普及率は「浄化槽なども含めて生活排水を処理できる範囲」を示します。県の整備状況を判断するときは、両方を確認します。

ほかの施設があっても、未普及の課題は残る

浄化槽の役割を確認することは、未整備の問題を小さく扱うことではありません。

徳島県の汚水処理人口普及率70.4%は、全国の94.0%を下回っています。下水道だけを見て「8割が未処理」と読むのは誤りですが、全体の指標でも利用できない人口が残っていることは確認できます。

全国でも、汚水処理施設を利用できない人口は約740万人です。普及が進んだ地域と、なお整備が必要な地域が併存しています。

人口減少による上昇――割合と人数が違う方向に動くこともある

普及率の上昇は、処理できる人口の増加だけでなく、分母となる総人口の減少によっても起こります。

計算式は「処理人口÷総人口×100」です。処理人口が横ばいでも、総人口が減れば普及率は上がります。

最新の全国集計では、この違いが実際に表れています。

  • 総人口:2024年度末の1億2,396.4万人から、2025年度末の1億2,343.6万人へ減少。
  • 下水道処理人口:1億139.7万人から1億140.7万人へ、約1万人増加。
  • 下水道普及率:81.8%から82.2%へ、0.4ポイント上昇。

これらは資料掲載値であり、千人単位に丸められています。普及率の上昇を「全国で大幅に新規利用人口が増えた」と読み替えることはできません。

さらに、汚水処理施設全体の処理人口は、1億1,612.6万人から1億1,602.1万人へ減っています。それでも普及率は93.7%から94.0%へ上昇しました。総人口が、処理人口より大きく減ったためです。

このため、県別の21年間の上昇幅も、すべてを新たな管路整備の成果として扱うことはできません。整備の進展を確かめるには、処理人口、総人口、供用区域の拡大を合わせて追う必要があります。

地域差の背景――住宅の分布と処理方式を切り離せない

県別の差を読むうえでは、人口規模だけでなく、住宅がどの範囲に分布し、どの処理方式を使っているかが重要です。

下水道は管路で排水を集めるため、住宅がまとまった地域と、離れて点在する地域では必要な施設の配置が変わります。これは処理方式を考えるうえでの理由ですが、今回の普及率だけから各県の費用差や整備の遅れの原因を特定することはできません。

最新資料では、人口100万人以上の都市の下水道普及率は99.5%、人口5万人未満の市町村では55.6%です。一方、5万人未満でも、ほかの施設を含む汚水処理人口普及率は85.1%になります。

つまり、小規模な自治体では、下水道以外の施設も大きな役割を担っています。ただし、自治体の人口規模は住宅密度そのものではありません。広い市域を持つ都市にも、住宅が集まった地区と点在する地区があります。

国土交通省も、人口減少時代に合わせて、自治体が「集合処理」と「個別処理」の最適化を図る方針を示しています。下水道普及率を高めることだけでなく、未普及地域をどの方式でカバーし、その施設を維持するかが判断の対象になります。

数字の限界――県平均から住宅の排水設備は判断できない

県別普及率は地域比較に役立ちますが、住宅単位の利用条件や設備の状態までは示しません。

読み違えやすい点は、次の4つです。

  • 全国値は47都道府県の単純平均ではない。 全国の処理人口を全国の総人口で割った値なので、人口の多い地域が強く反映される。
  • 県内にも地域差がある。 県全体の値には政令指定都市分も含まれ、中心部と周辺部の違いが平均の中に隠れる。
  • 公表値には丸めがある。 最新の県別値は小数第2位を四捨五入している。小さな差だけで順位や整備速度を強く評価しない。
  • 普及率は設備の健全性を示さない。 管路の年齢、点検状況、処理能力、維持管理費、使用料は別の資料で確認する。

また、都市規模別の長期比較には市町村合併の影響があります。2004年度末と2025年度末では市町村の数や区分が異なるため、「人口5万人未満」の集団を、そのまま同じ自治体群として追うことはできません。

今回の県別比較は、両時点の総人口に対する割合の比較です。同じ住民や同じ住宅を21年間追跡した結果ではありません。

暮らしで確認すること――順位より、住所の処理方式と整備予定を見る

住宅の購入や引っ越しで排水環境を確かめるなら、県の順位よりも、その住所の供用状況と処理方式が直接役立ちます。

自治体の公開情報では、次の順に確認すると、県平均と住宅の条件を混同せずに済みます。

  1. 下水道の供用区域図で、その住所が利用可能な区域に入っているかを見る。
  2. 区域内なら、住宅の接続状況や接続に伴う工事・費用の案内を確認する。
  3. 区域外なら、合併処理浄化槽などの設備と、自治体の整備計画を確認する。
  4. 地域の整備を評価するなら、下水道普及率と汚水処理人口普及率を並べ、処理人口の増減も見る。

今後の県別データで注目したいのは、普及率が何ポイント上がったかだけではありません。利用できない人口が何人減り、どの施設がその地域を担うようになったか。 人口が減るなかでも、この2点を追えば、割合の上昇と実際の整備の進展を分けて読むことができます。

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