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正社員の勤続年数は10年でほぼ横ばい 年齢・業種別データが示す本当の変化

年代や業種の異なる働く人々と勤続年数の推移を表すイメージ。

正社員の勤続年数は10年でほぼ横ばい 「短期化」より大きい年齢・業種の差

正社員・正職員の平均勤続年数は、2014年の13.5年から2025年の13.4年へ、11年間で0.1年短くなっただけです。少なくとも全体平均を見る限り、「正社員が急速に短期勤続化した」とは言えません。

一方、勤続年数は年齢とともに長くなり、業種によっても大きく違います。全体の平均値だけでは、転職の増減や働き方の変化を正しく捉えられません。

この記事で押さえるポイントは次の4つです。

  • 正社員・正職員の平均勤続年数は、2014年13.5年、2025年13.4年でほぼ横ばい
  • 年齢別では、若年層と50代で勤続年数の意味が大きく異なる
  • 2024年の一般労働者では、業種間に約9年の開きがある
  • 平均勤続年数は「転職した人の割合」ではなく、現在働いている人の在籍期間の平均
目次

使用データと比較条件

中心に使うのは、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」です。 賃金だけでなく、年齢、性別、雇用形態、企業規模、産業、勤続年数を組み合わせて確認できる基幹統計です。

今回の比較条件は次のとおりです。

  • 対象地域:全国(一部島しょ部を除く)
  • 中心となる対象年:2014年、2024年、2025年
  • 長期比較:企業規模10人以上で働く一般労働者のうち、正社員・正職員
  • 年齢比較:同じ企業規模条件による正社員・正職員の年齢階級別集計
  • 産業比較:2024年の一般労働者について、産業大分類別の平均勤続年数
  • 勤続年数の定義:現在の企業に雇い入れられてから調査時点までの年数

2025年調査は、全国から無作為抽出された79,321事業所を対象に実施され、有効回答は59,836事業所でした。公表されている概況は、そのうち常用労働者10人以上の民営事業所52,242事業所を集計しています。

なお、「一般労働者」は短時間労働者に該当しない労働者を指します。「正社員・正職員」と同じ意味ではありません。以下では、正社員の推移と一般労働者の産業差を混同しないよう分けて扱います。

正社員の平均勤続年数は短くなったのか

結論は「10年余りでほぼ変わっていない」です。

厚生労働省が整理した企業規模10人以上の推移では、正社員・正職員の平均勤続年数は次の水準です。

  • 2014年:13.5年
  • 2025年:13.4年
  • 増減:マイナス0.1年(約1.2か月)

11年間の差は、1年にも届きません。調査ごとの標本構成や労働者構成の変化もあるため、0.1年の差だけを根拠に「短期化した」と評価するのは適切ではありません。

ここから確認できる事実は、正社員として現在働いている人の平均在籍期間が13年台を維持していることです。

ただし、次のことまでは分かりません。

  • 同じ人が11年間勤め続けたか
  • 転職する人の割合が増えたか
  • 入社後何年で退職する人が多いか
  • 自発的な転職と会社都合の離職がどう変化したか

平均勤続年数は、ある時点で在籍する人を集計した「ストック」の指標です。転職者数や離職率のように、一定期間に起きた移動を直接数える指標ではありません。

ここがポイント: 正社員の平均勤続年数は急減していません。ただし、この数字だけで転職が増えたか、終身雇用が維持されているかを判断することもできません。

年齢別では「同じ13年」の意味が変わる

勤続年数は年齢に強く左右されるため、全年齢の平均だけでは働き方の変化を読み違えます。

2014年の正社員・正職員を年齢階級別に見ると、男女計の平均勤続年数は次のように伸びていました。

  • 20~24歳:2.4年
  • 25~29歳:4.6年
  • 30~34歳:7.3年
  • 35~39歳:10.7年
  • 40~44歳:14.2年
  • 45~49歳:17.8年
  • 50~54歳:21.2年
  • 55~59歳:22.9年

20代前半で勤続2年台なのは、就職から経過した時間そのものが短いためです。反対に50代では、学校卒業後から同じ会社に在籍してきた人が平均を押し上げます。

高齢化だけでも平均は上がりやすい

労働者の年齢構成が高くなれば、個々人の転職行動が変わらなくても全体の平均勤続年数は上がりやすくなります。若い正社員が増えれば、逆に平均は下がります。

つまり、全体平均が横ばいでも、その内側では次の動きが同時に起きている可能性があります。

  • 若年層の採用増加で平均を押し下げる
  • 中高年層の就業継続で平均を押し上げる
  • 女性の継続就業が増え、平均を押し上げる
  • 中途採用の増加で、同じ年齢でも勤続年数が短くなる

どの要因が強かったかを確かめるには、年齢と性別をそろえた時系列比較が必要です。

60歳以降は単純に長くならない

勤続年数は50代まで概ね長くなりますが、60歳以降は定年、再雇用、転職などの影響を受けます。同じ会社で再雇用された場合に勤続年数がどう記録されるか、別会社へ移ったかによって数字の意味も変わります。

「年齢が上がれば必ず勤続年数も長くなる」と考えるのではなく、定年制度と雇用契約の切り替わりを合わせて見る必要があります。

業種による差は約9年に達する

働く業種の違いは、全体の10年間の変化よりはるかに大きな差を生みます。

総務省統計局の「日本統計年鑑」に収録された2024年の賃金構造基本統計調査では、一般労働者の平均勤続年数は産業計で13.9年でした。主な業種は次のとおりです。

  • 電気・ガス・熱供給・水道業:18.9年
  • 複合サービス事業:17.8年
  • 製造業:15.9年
  • 金融業・保険業:15.7年
  • 学術研究、専門・技術サービス業:14.0年
  • 建設業:13.8年
  • 情報通信業:12.9年
  • 卸売業・小売業:11.4年
  • 医療・福祉:9.7年
  • 宿泊業・飲食サービス業:10.3年
  • サービス業(他に分類されないもの):10.4年

最も長い電気・ガス・熱供給・水道業と、短い医療・福祉の差は9.2年です。

ただし、この表は正社員だけではなく、短時間労働者を除く一般労働者の集計です。正社員の業種別比較としてそのまま読み替えることはできません。それでも、産業ごとに雇用構造が大きく異なることは確認できます。

勤続年数が長い業種

電気・ガス・水道、製造、金融・保険などでは、次の特徴が平均勤続年数の長さと関係している可能性があります。

  • 大企業の比率
  • 社内で蓄積する専門知識や技能
  • 新卒一括採用と社内育成
  • 配置転換を含む内部労働市場
  • 福利厚生や退職給付制度

ただし、統計表から因果関係までは確認できません。「勤続年数が長いから待遇が良い」と一方向に断定することもできません。

勤続年数が短い業種

医療・福祉、宿泊・飲食、各種サービスでは、中途採用や事業所間移動が多い職種を含みます。また、小規模事業所の比率、女性比率、年齢構成、資格を生かした転職のしやすさも数字に関係します。

ここでも、平均勤続年数の短さを直ちに「定着率が低い」「職場環境が悪い」と解釈することはできません。業種内には職種や企業規模の異なる事業所が混在しています。

「転職が一般化した」と平均勤続年数は両立する

転職者が一定数増えても、正社員全体の平均勤続年数が大きく下がらないことはあり得ます。

理由の一つは、平均が全労働者の在籍期間をまとめた値だからです。勤続20年以上の中高年が多い集団では、一部の若年・中堅社員が転職しても全体平均への影響は限られます。

もう一つは、転職後も正社員として長く働けば、時間の経過とともに転職先での勤続年数が積み上がることです。転職経験者が増えることと、現在の会社で一定期間働く人が多いことは矛盾しません。

働き方の変化を捉えるには、平均勤続年数と次の指標を組み合わせる必要があります。

  • 年齢階級別の転職者数・転職者比率
  • 入職率と離職率
  • 勤続0年、1~2年、20年以上などの構成比
  • 新卒採用と中途採用の比率
  • 性別・年齢別の就業継続
  • 企業規模別、産業別の勤続年数

平均値だけでなく、勤続年数の分布を見ることが重要です。勤続1~2年の人と20年以上の人が同時に増えれば、平均値が動かない場合もあります。

国際比較で気をつけたい定義の違い

日本の勤続年数を海外と比べるときは、同じ「勤続年数」という名称でも対象範囲をそろえる必要があります。

国際機関や各国統計では、雇用者全体、一定年齢以上の雇用者、フルタイム労働者など、集計対象が異なります。日本の「企業規模10人以上の正社員・正職員」と、海外の「全雇用者」の中央値や構成比を直接比較することはできません。

特に確認したい条件は次のとおりです。

  • 平均値か中央値か
  • 正社員だけか、非正規雇用を含むか
  • フルタイムだけか
  • 公務部門を含むか
  • 対象年齢の下限・上限
  • 現在の会社か、現在の仕事・職務か

国際差を論じるなら、「勤続10年以上の雇用者割合」など、各国で共通して取得できる指標にそろえる方法があります。それでも雇用制度や定年年齢の差は残るため、順位だけで評価するのは避けるべきです。

データを読む際の注意点

今回の数字は働き方の一面を示しますが、個人の転職行動を直接追跡したものではありません。

同じ人を追う調査ではない

賃金構造基本統計調査は毎年実施されますが、同一人物を長期間追跡するパネル調査ではありません。前年との差には、個人の勤続だけでなく、採用、退職、産業間移動、標本の入れ替わりが含まれます。

2020年には推計方法が変わった

賃金構造基本統計調査は2020年調査から復元方法などが変更され、2017~2019年については同じ方法による遡及集計値も公表されています。長期推移を見る際は、公表資料に掲載された接続可能な系列を使う必要があります。

年齢構成をそろえない比較には限界がある

平均勤続年数が長い集団は、平均年齢も高い場合があります。業種、男女、企業規模を比較するときは、年齢構成の違いを除かない限り、純粋な「定着のしやすさ」の差にはなりません。

業種平均は職場ごとの差を隠す

同じ医療・福祉でも、病院、診療所、介護事業所などでは職種や事業所規模が異なります。製造業でも、大企業の工場と小規模事業所を一つの平均で表すことには限界があります。

働き方の変化を見る次の焦点

次に見るべきなのは平均の上下ではなく、年齢をそろえた勤続年数の分布です。

正社員の平均勤続年数は、2014年から2025年まで13年台でほぼ横ばいでした。しかし、その事実だけで「日本型雇用が変わっていない」と結論づけることはできません。

今後の注目点は次の3つです。

  • 30~40代で勤続0~4年の正社員が増えているか
  • 女性の年齢別勤続年数が男性との差を縮めているか
  • 人手不足の業種で、中途採用の増加が勤続年数の分布をどう変えるか

転職を検討する人にとっても、全国平均の13.4年より、自分と同じ年代・業種・企業規模の数字のほうが実用的です。次に統計を見るときは、平均値の隣にある「年齢階級」と「勤続年数階級」を確認する。それが、働き方の変化を読み違えないための具体的な一歩になります。

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