がん検診の受診率は上昇、乳がんは51%に――2013~2025年の男女・部位別比較
がん検診を受けた人の割合は、長期的に上がっています。国民生活基礎調査によると、2013年から2025年に肺がん検診は男性で47.5%から55.2%、女性で37.4%から49.5%へ上昇し、乳がん検診も43.4%から51.0%へ増えました。
ただし、どの検診も同じペースで伸びたわけではありません。胃・肺・大腸では男女差が残り、胃がん検診は対象年齢と集計期間の変更を分けて読む必要があります。
この記事では、全国の受診率を部位・男女別に比較し、増加の大きさ、直近の変化、数字を読む際の注意点を整理します。
- 肺・大腸がん検診は、2013~2025年に男女とも上昇。
- 2025年の乳がん検診は51.0%。子宮頸がん検診は46.1%。
- 肺・大腸では女性の伸びが男性より大きく、男女差が縮小。
- 受診率は回答に基づく推計値。受診者数や死亡率の変化を直接示す数字ではありません。
使用データ――全国の受診率を、年齢と期間をそろえて比べる
比較の中心は、厚生労働省「国民生活基礎調査」の2013・2016・2019・2022・2025年です。
2026年10月8日時点で確認できる最新結果は2025年調査。厚生労働省は2026年7月15日に公表し、国立がん研究センターは同年10月7日に受診率の公開データへ2025年分を追加しています。厚生労働省の公表資料、国立がん研究センターのデータ公開ページで確認できます。
ここでいう受診には、市区町村の検診に加え、職場の健診や人間ドックなどで受けたものも含まれます。自治体が実施した検診だけの成績ではありません。
主な比較条件は次のとおりです。
- 肺・大腸がん:男女の40~69歳、過去1年間の受診。
- 乳がん:女性の40~69歳、過去2年間の受診。
- 子宮頸がん:女性の20~69歳、過去2年間の受診。
- 胃がん:長期比較には40~69歳・過去1年間の指標がありますが、現在の指針に対応した50~69歳・過去2年間の指標は2019年以降で比較します。
入院者は集計対象から除かれています。また、2016年の結果は熊本県を除くため、各年が完全に同じ地域範囲ではない点にも注意が必要です。
受診率の上昇は「対象年齢の人のうち、受けたと回答した割合が増えた」という意味です。対象人口が変わるため、受診した人の総数が同じ割合で増えたとは限りません。
12年間の変化――肺・大腸では女性の伸びが大きい
2013年と2025年を比べると、肺・大腸がん検診は男女とも上昇し、女性の上昇幅が男性を上回りました。
以下は全国の受診率です。単位は%で、肺・大腸は過去1年間、乳がん・子宮頸がんは過去2年間の受診を示します。
| 検診・性別 | 2013年 | 2016年 | 2019年 | 2022年 | 2025年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 肺がん・男性 | 47.5 | 51.0 | 53.4 | 53.2 | 55.2 |
| 肺がん・女性 | 37.4 | 41.7 | 45.6 | 46.4 | 49.5 |
| 大腸がん・男性 | 41.4 | 44.5 | 47.8 | 49.1 | 50.9 |
| 大腸がん・女性 | 34.5 | 38.5 | 40.9 | 42.8 | 46.2 |
| 乳がん・女性 | 43.4 | 44.9 | 47.4 | 47.4 | 51.0 |
| 子宮頸がん・女性 | 42.1 | 42.4 | 43.7 | 43.6 | 46.1 |
出典:厚生労働省のがん検診受診率の推移資料および2025年国民生活基礎調査・健康状況。増減幅は公表値から算出しています。
肺がん検診の男女差は10.1ポイントから5.7ポイントへ
肺がん検診は、12年間で男性が7.7ポイント、女性が12.1ポイント上昇しました。男女差は2013年の10.1ポイントから、2025年には5.7ポイントへ縮小しています。
大腸がん検診も同様です。男性は9.5ポイント、女性は11.7ポイント上昇し、男女差は6.9ポイントから4.7ポイントになりました。
つまり、男女とも受診が広がるなかで、女性が差を詰めています。ただし、2025年も男性のほうが高い状態は続いています。
ここでの「ポイント」は割合の差です。37.4%から49.5%への変化は12.1ポイントの上昇であり、「12.1%増」とは計算の意味が異なります。
乳がんと子宮頸がんは、伸び方が異なる
乳がん検診は2013~2025年に7.6ポイント上昇しました。一方、子宮頸がん検診の上昇は4.0ポイントです。
乳がんは2019年と2022年がともに47.4%、子宮頸がんは43.7%から43.6%でした。長期的には上昇していますが、毎回一様に増えたわけではありません。
また、子宮頸がんは20歳代・30歳代も分母に含むため、乳がんとの数値差をそのまま「同じ女性の受診行動の差」と読むことはできません。部位間を比較するときは、対象年齢もセットで見る必要があります。
直近の変化――2022~2025年は上昇、ただし目標には届かない
直近の調査間では、肺・大腸・乳がん・子宮頸がんの受診率はいずれも上がりました。
2022年から2025年の変化は次のとおりです。
- 肺がん:男性は2.0ポイント、女性は3.1ポイント上昇。
- 大腸がん:男性は1.8ポイント、女性は3.4ポイント上昇。
- 乳がん:3.6ポイント上昇。
- 子宮頸がん:2.5ポイント上昇。
乳がん検診の51.0%は、対象年齢の女性の約半数が過去2年間に受診したと回答したことを意味します。毎年受ける人が半数という意味ではありません。
第4期がん対策推進基本計画では、受診率60%以上が目標に掲げられています。2025年の肺がん検診でも男性55.2%、女性49.5%で、乳がんは51.0%、子宮頸がんは46.1%です。上昇していることと、目標に達していることは別です。国立がん研究センターの受診率解説も、受診率に加えて科学的根拠と精度管理の重要性を示しています。
なお、調査間の差は公表された推計値の差です。ここでは統計的に有意な増加かどうかまで検定していません。
胃がん検診――集計条件の変更をまたいで単純につなげない
胃がん検診は、年齢と受診期間をそろえたうえで増減を判断する必要があります。
厚生労働省の長期推移資料では、2016年までは40~69歳・過去1年間、2019年以降は50~69歳・過去2年間という条件で示した系列があります。集計期間が長くなれば受診経験を拾いやすくなり、対象年齢の変更でも分母の構成が変わります。
この系列の上昇をすべて受診行動の改善とみなすことはできません。
一方、2019年以降の「50~69歳・過去2年間」にそろえると、次のようになります。
- 男性:2019年54.2% → 2022年53.7% → 2025年55.9%。
- 女性:2019年45.1% → 2022年43.5% → 2025年46.5%。
男女とも2022年には下がり、2025年に上がっています。2019年から2025年の差は男性1.7ポイント、女性1.4ポイントで、肺・大腸のような12年間の比較とは区別する必要があります。
ここがポイント: 胃がん検診の受診率は、「何歳の人が、何年間に受けたか」を確認してから比べる。年齢や期間が違う数字をつなぐと、増加の大きさを誤って読むおそれがあります。
男女差をどう読むか――職場の受診機会も含まれている
受診率の男女差には、自治体のサービス以外の受診機会も関わり得ます。
厚生労働省の2022年調査に基づく資料では、受診者が「勤め先」で受けたと回答した割合は、肺がんで70.1%、大腸がんで65.3%です。受診機会は複数回答なので、自治体やその他の機会と完全に分かれた内訳ではありません。それでも、職場が大きな受診経路であることは分かります。
このため、全国の受診率を自治体の案内や助成だけで説明するのは無理があります。職場で検診を受ける機会がある人と、自治体などの窓口から自分で予約する人では、受診までの手順が異なります。
ただし、今回の男女別集計だけでは、雇用状況、職場の制度、年齢構成などが男女差の何割を説明するかは分かりません。確認できるのは受診率の差とその縮小であり、原因の特定ではありません。
同じ理由で、2022~2025年の上昇を特定の啓発活動やコロナ禍からの回復の成果と断定することもできません。原因を確かめるには、年代別・就業状況別・受診機会別のデータを重ねる必要があります。
数字の限界――回答に基づく受診率と、検診の効果は別の指標
受診率は検診の広がりを示しますが、適切な検査が行われたか、その後の診療につながったかまでは示しません。
自己申告には記憶違いや検査の取り違えがある
国民生活基礎調査の受診率は、検診機関が記録した受診者数の集計ではありません。本人の回答に基づく推計で、受診時期や検査内容の記憶違いによる誤差が含まれます。
調査票に示される検査例も、国の指針に沿った検診の実施状況をそのまま保証するものではありません。「受けた」という回答の増加と、検診の質の向上は分けて確認する必要があります。
2025年の子宮頸がん検診はHPV検査を含む
2025年調査では、子宮頸がん検診の受診率にHPV検査の受診が含まれます。制度に対応した調査内容の変更であり、過去年と検査内容の範囲が完全に同一ではありません。
したがって、43.6%から46.1%への上昇を読む際には、受診行動の変化だけでなく調査上の変更も念頭に置く必要があります。公表値だけでは、それぞれの寄与を分離できません。
受診率から死亡率の改善は計算できない
受診率が上がっても、この統計だけで死亡率が何%下がったかは判断できません。死亡率への効果を評価するには、検査方法、精度管理、必要な精密検査への接続など、別の情報が必要です。
また、全国平均には年齢構成の変化も含まれます。各年齢層の受診行動が変わったのか、対象人口の構成が変わったのかを詳しく見るには、年齢階級別の比較が欠かせません。
次に見るべきこと――受診の広がりと、受診後のつながり
今後は全国平均の上昇に加え、受診機会の差と精密検査への接続を確認することが重要です。
長期比較からは、肺・大腸で女性の受診率が伸び、男女差が縮まったことが分かります。一方、2025年も差は残り、子宮頸がんは乳がんより上昇幅が小さい状態です。
次の確認点は三つあります。
- 年代別の変化:平均が上がるなかで、伸びが小さい年齢層はどこか。
- 受診機会別の変化:職場の制度を使える人と、それ以外の経路を使う人で差は縮まっているか。
- 精密検査への接続:検診で要精密検査となった人が、必要な確認につながっているか。
生活の場面では、職場の健診案内や自治体の通知を見る際に、「どの部位の検査か」「対象年齢は何歳か」「前回からどの期間を数えるか」を確認すると、全国の受診率との関係を理解しやすくなります。全国平均は個人の受診内容を決める数字ではありません。まず比較条件をそろえ、そのうえで受診機会が誰に届いているかを見ることが、次の課題です。
