塾代は5年前より増えた?公立小の4割増と、世帯年収で開く学習費の差
公立小学校の子ども1人当たりの年間学習塾費は、2018年度の5万3,313円から2023年度の7万5,194円へ、約41%増えました。ただし、2021年度と比べると減っており、毎回増え続けているわけではありません。
さらに、塾や通信教育などを含む「補助学習費」は、同じ学校段階でも世帯年収によって大きく異なります。平均額の上昇と、家庭ごとの支出の違いを分けて読むことが、教育費の実態をつかむ入口です。
この記事で分かることは、次の3点です。
- 公立小学校の塾代は、2018・2021・2023年度でどう動いたか
- 子どもの学校段階と世帯年収によって、学習費がどう違うか
- 「全員の平均」と「お金を払った家庭の平均」をどう区別するか
使用データは、全国の子ども1人にかかった年間費用
比較するのは世帯全体の教育費ではなく、調査対象の子ども1人に保護者が支出した費用です。
中心となる資料は、文部科学省「子供の学習費調査」。全国の公立・私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校のうち、抽出された学校と保護者を対象にしています。高校は全日制が対象です。
- 対象年度: 最新の公表結果として確認できる2023年度。推移比較には2018年度と2021年度を使用
- 対象地域: 全国
- 比較単位: 子ども1人当たり、年間、円または万円
- 公表・更新: 2023年度結果は2024年12月25日公表、2026年1月16日訂正
- 比較条件: 公立・私立、学校段階、世帯の年間収入区分を分ける
2021年度と2023年度の結果には訂正が入っています。本記事は訂正後の資料を使います。古い解説記事や保存済みの表と数値が違う場合には、公表日だけでなく訂正日も確認する必要があります。文部科学省の結果掲載ページ
塾代と補助学習費は、同じ金額ではない
「補助学習費」は、学校の予習・復習・補習などのために支出した費用です。学習塾費のほか、家庭内学習費、通信教育・家庭教師費、その他の費用を含みます。
一方、スポーツや芸術文化の活動費まで含めたものが「学校外活動費」です。さらに授業料や通学用品、給食などを加えた「学習費総額」は、範囲がもっと広くなります。これらをすべて「塾代」と呼ぶと、比較する金額が変わってしまいます。文部科学省の調査に関する説明
なお、以下の年収区分は世帯の年間収入であり、保護者1人の給与や税法上の所得区分ではありません。年代についても、親の年齢ではなく、子どもの学校段階を軸に読みます。
公立小の塾代は5年間で約41%増、直近2年間では減少
公立小学校では、2018年度より高い支出水準になった一方、2021年度から2023年度には下がっています。
| 年度 | 学習塾費の平均 | 支出率 |
|---|---|---|
| 2018年度 | 53,313円 | 39.1% |
| 2021年度 | 81,158円 | 38.9% |
| 2023年度 | 75,194円 | 39.0% |
出典:文部科学省・支出項目ごとの標準誤差率等の参考資料。支出率は、その項目に支出した子どもの割合です。
2018年度から2023年度の増加額は2万1,881円、増加率は約41.0%。対して、2021年度からは5,964円、約7.3%減りました。比較の起点をどこに置くかで、見える動きが変わります。
増えたのは、塾にお金を払う子どもの割合なのか
この3時点の支出率は、ほぼ39%で変わりません。
平均額が上がった理由を「塾に通う子どもが大幅に増えたから」と説明するには、この数字は合いません。支出した子どもに限った平均額が高くなったことが、主な読み取りになります。
全員の平均額を支出率で割ると、支出者に限った年額は概算で次のようになります。
- 2018年度:約13.6万円
- 2023年度:約19.3万円
これは公表された丸め済みの数値からの計算で、中央値ではありません。また、同じ家庭を追跡した結果でもありません。授業料の値上げ、受講する教科数、講習の利用、支出者の構成などを、この表だけで分解することはできません。
学校段階で見ると、公立中学校の塾代が大きい
2023年度の学習塾費は、公立では小学校より中学校で高く、高校では中学校より低くなっています。
| 学校段階 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|
| 小学校 | 約7.5万円 | 約25.9万円 |
| 中学校 | 約23.0万円 | 約16.8万円 |
| 高校・全日制 | 約14.7万円 | 約16.7万円 |
学校段階別の数値は、訂正版の調査結果概要・表6によります。
「私立なら塾代も必ず高い」という関係ではありません。小学校と高校では私立が高い一方、中学校では公立が高くなっています。
ただし、これは授業料などを除いた塾代だけの比較です。中学校の塾代が低いことを、そのまま教育費全体が安いことに読み替えてはいけません。学校の学習内容、進学先、塾を利用する割合の違いもあるため、公私の差から学校教育の効果を判断することもできません。
世帯年収による差は、公立小で約4.4倍
補助学習費は高年収の区分ほど多い傾向がありますが、その差の大きさは学校段階によって異なります。
| 世帯年間収入 | 小学校 | 中学校 | 高校・全日制 |
|---|---|---|---|
| 400万円未満 | 5.9 | 14.9 | 14.7 |
| 400万~599万円 | 6.3 | 21.4 | 11.6 |
| 600万~799万円 | 8.4 | 23.3 | 20.6 |
| 800万~999万円 | 12.4 | 30.1 | 24.0 |
| 1,000万~1,199万円 | 18.4 | 38.2 | 29.7 |
| 1,200万円以上 | 26.1 | 41.4 | 31.7 |
出典:訂正版の調査結果概要・表10-2。塾代だけでなく、通信教育や家庭内学習などを含みます。
400万円未満と1,200万円以上を比べると、公立小学校は年20.2万円の差で約4.4倍、公立中学校は年26.5万円の差で約2.8倍です。倍率が大きいのは小学校、金額差が大きいのは中学校。どちらを見るかによって、負担の姿は違って見えます。
年収が上がれば、すべての区分で支出が増えるわけではない
公立高校では、400万円未満の14.7万円に対し、400万~599万円は11.6万円です。区分ごとに一直線には増えていません。
また、公立中学校の400万円未満、公立高校の400万円未満と1,200万円以上では、この平均の標準誤差率が10%を超えています。標準誤差率は、抽出調査による推計の不確かさを表す指標です。特に細かい区分間の差は、点の数値だけで断定せず、誤差も見る必要があります。
支出差は見えるが、学力差や「必要額」は分からない
この調査が直接示すのは保護者が支払った金額であり、学習成果や適切な教育費ではありません。
年収による支出差には、購入できる学習サービスの違いが含まれる可能性があります。しかし、金額が少ない理由を一つに決めることはできません。
- 費用を抑える必要があった
- 塾以外の方法で学習していた
- 近くに利用したい教室がなかった
- 子どもの学年や進路によって必要な支出が違った
こうした理由を区別するには、利用状況や希望、地域の供給、学習成果などの別のデータが必要です。支出が少ない家庭を「教育に関心が低い」と評価する根拠にはなりません。
同様に、高い支出が高い成果を生むと、この調査から結論づけることもできません。困っている教科の補習に費用をかける場合もあれば、受験に備えて追加の授業を選ぶ場合もあります。支出の目的が違えば、金額だけの比較には限界があります。
平均額を家計に当てはめる前に、三つの条件をそろえる
自分の家庭と比べるなら、支出者の範囲、子どもの学校段階、費用に含める項目をそろえる必要があります。
全員平均は、通塾家庭の予算ではない
公立小学校の年7万5,194円は、塾に支出しなかった子どもも含む平均です。これを12で割った月約6,300円を、通塾家庭の標準的な月謝と見ることはできません。
また、平均は高額の支出に引っ張られます。中央値や金額帯別の分布を確認しなければ、「多くの家庭がこの額を払っている」とは言えません。
名目額の増加は、授業量の増加とは限らない
ここで示した増減率は、各年度に実際に支払われた金額によるもので、物価調整をしていません。同じ教科数や授業回数でも、価格が上がれば支出は増えます。
逆に、価格が変わらなくても、講習や個別指導の利用が増えれば年額は上がります。「塾代が増えた」と「塾の価格が上がった」は、確認するデータが異なる問いです。
年額と月謝では、含まれる費用が違う
塾の予算を比べるときは、通常の授業料だけでなく、入会費や講習など、年度を通して払う費用を確認する必要があります。調査も子ども1人の年間費用を把握する仕組みです。保護者向け手引き
兄弟姉妹がいる家庭では、子ども1人の平均を世帯全体の教育費と混同しないことも大切です。
次に見るべきは、支出額と利用する割合の組み合わせ
今後の変化を読むには、平均額だけでなく、支出率がどう動くかを見る必要があります。
公立小学校では、2018年度から2023年度に塾への支出率がほぼ横ばいのまま、平均額が増えました。次の公表値では、次の組み合わせが注目点になります。
- 平均額が増え、支出率も増える: 利用する子どもの広がりが平均を押し上げている可能性
- 平均額が増え、支出率は横ばい: 支出者の年額や受講内容、価格の変化を確認する必要
- 平均額が減り、支出率も減る: 利用を控えたのか、別の学習方法に移ったのかを追加資料で確認
家庭の予算を考える場面では、全国平均を目標額にするより、同じ学校段階の支出者平均と、自分が検討している塾の年間総額を照らし合わせる方が、実際の支払いに近づけます。月謝だけでなく、講習などを加えた1年分を出すことが、比較の出発点です。
