若い女性の「やせ」は増え続けている?47年のBMIデータが示す本当の変化
若い女性のやせは、1970年代後半から1990年代にかけて大きく増えましたが、直近まで一貫して増え続けているわけではありません。2024年の国民健康・栄養調査では、BMIが18.5未満だった20〜39歳女性は16.6%。2023年の20.2%から下がりました。
ただし、単年の上下だけで改善と判断するのも早計です。2024年でも若い女性のおよそ6人に1人が「やせ」に該当し、国の2032年度目標である15%を上回っています。
- 20代女性のやせは1970年代後半の14.2%から1997年の23.3%へ上昇
- 20〜39歳女性は2011〜2023年に16.3〜20.2%の範囲で推移
- 2024年は20代17.1%、30代16.1%、20〜39歳合計16.6%
- 長期的な増加は確認できる一方、最近10年ほどに明確な増加傾向は見えない
使用したデータと比較条件
長期変化と現在地を分けて見ることが、今回の比較の要点です。主に厚生労働省の国民健康・栄養調査と、健康日本21の公表資料を使いました。
比較条件は次の通りです。
- 対象地域:日本全国
- 主な対象:20〜29歳、30〜39歳の女性
- 指標:BMI 18.5kg/m²未満の人の割合
- 長期比較:1970年代後半、1997年、2011〜2024年
- 最新値:2024年調査の全国補正値
BMIは「体重kg÷身長m÷身長m」で計算します。国民健康・栄養調査では、BMI18.5未満を「やせ」、18.5以上25未満を普通体重、25以上を肥満としています。妊婦は集計から除外されています。
2024年は4年に1度の拡大調査で、割合には人口構成などを反映した全国補正値が使われています。そのため、表に掲載された人数を単純に割った結果とは一致しません。
結論は「昔に急増、近年は高止まり」
増え方が最もはっきりしていたのは、最近ではなく20世紀末までの期間です。
厚生労働省の健康日本21資料によると、20代女性のやせは1970年代後半の14.2%から、1997年には23.3%へ上昇しました。差は9.1ポイントで、割合は約1.6倍です。
一方、20〜39歳女性をまとめた2011年以降の推移は、次のようになっています。
- 2011年:16.6%
- 2012年:18.9%
- 2013年:19.0%
- 2014年:16.3%
- 2015年:18.2%
- 2016年:18.7%
- 2017年:16.5%
- 2018年:19.5%
- 2019年:18.1%
- 2022年:16.5%
- 2023年:20.2%
- 2024年:16.6%
2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響で調査が中止されました。
この系列には毎年かなりの振れがあります。2011年の16.6%と2024年の16.6%は同じであり、厚生労働省も2023年までの約10年間について「大きな増減はみられない」と整理しています。
したがって、データに忠実な答えはこうなります。
ここがポイント: 若い女性のやせは1970年代後半から1990年代に増えた。しかし、2010年代以降も増加が続いているとは確認できず、高い水準で上下している。
2024年は20代と30代の差が縮小
最新調査では、やせは20代だけに集中しているわけではありません。
2024年の年齢別結果は以下の通りです。
| 年齢 | BMI18.5未満 | 普通体重 | BMI25以上 |
|---|---|---|---|
| 20〜29歳女性 | 17.1% | 75.5% | 7.4% |
| 30〜39歳女性 | 16.1% | 72.0% | 11.9% |
| 20〜39歳女性 | 16.6% | 73.6% | 9.8% |
20代と30代の差は1.0ポイントです。2023年は20代24.4%、30代17.9%だったため、20代の低下が全体値を押し下げました。
ただし、2023年から2024年に20代が7.3ポイント低下したことを、そのまま社会全体の急変と読むことはできません。2023年の20代女性は測定対象119人、2024年は454人で、調査規模も補正方法も同一ではないからです。若い年代は高齢層より対象人数が少なく、年ごとの標本誤差が表れやすい点にも注意が必要です。
「増えた理由」はBMIの推移だけでは分からない
この統計が直接示すのは体格の分布であり、原因ではありません。
やせが多い背景として、ダイエット志向、食生活、所得、食品価格、就労環境など複数の要素が考えられます。しかし、BMIの年次データだけを見て、どれか一つが増減を引き起こしたとは断定できません。
たとえば食品価格が上がった時期にやせの割合が変わっても、それだけでは因果関係になりません。年齢構成、世帯所得、摂取エネルギー、運動量、健康状態をそろえて検証する必要があります。
また、BMI18.5未満という結果から、本人が意図的に減量したのか、もともとの体質なのか、病気や生活上の事情があるのかを区別することもできません。「やせの人は全員、無理なダイエットをしている」と読むのは誤りです。
なぜ6人に1人でも政策課題になるのか
人数の多さだけでなく、その後の健康との関係が重視されています。
厚生労働省は、若年女性のやせについて次のリスクとの関連を挙げています。
- 骨量の減少や、将来の骨粗しょう症
- 妊娠した場合の早産や低出生体重児出産
- 鉄欠乏など、栄養不足に伴う健康問題
ここでも「やせなら必ず問題が起きる」という意味ではありません。BMIは身長と体重だけで求める指標で、筋肉量、体脂肪率、栄養状態、月経の状況までは評価できないためです。
国は健康日本21(第三次)で、20〜39歳女性のやせを2032年度までに15%へ下げる目標を掲げています。2024年の16.6%との差は1.6ポイントです。近年の値が年ごとに大きく動くことを踏まえると、単年度で15%を下回るかではなく、複数年にわたり低下するかを見る必要があります。
国際比較では定義と推計方法に注意
日本の若年女性のやせは国際的にも注目されていますが、国内調査の値を海外統計とそのまま並べることはできません。
厚生労働省の食環境戦略サイトは、2016年の成人女性について、日本のやせの割合が主要先進国の中で最も高いと紹介しています。これは日本の課題が国内だけの相対評価ではないことを示します。
ただし、国際比較には次のずれがあります。
- 日本の政策指標は20〜39歳女性、国際比較は成人女性全体
- 実測調査とモデル推計が混在する場合がある
- 調査年や年齢構成が国ごとに異なる
- BMIの基準が同じでも、標本設計や補正方法は一致しない
このため、国際順位を細かく競うより、「日本では若い成人女性の低BMIが政策課題として残っている」と捉える方が適切です。
データを読むときの4つの注意点
単年値、対象年齢、標本規模、指標の限界を確認しないと、増減を誤読します。
1. 2023年から2024年の低下だけで改善とは言えない
20〜39歳女性は20.2%から16.6%へ下がりましたが、過去にも数ポイントの上下があります。少なくとも数年分を追う必要があります。
2. 20代と20〜30代を混ぜない
長期資料には「20代女性」、最近の政策指標には「20〜39歳女性」が使われています。対象年齢が違う数値は、同じ系列として単純には接続できません。
3. 都道府県ランキングには向かない
2024年は拡大調査ですが、BMIの若年女性データを都道府県別に安定して比較できるほど、各地域の対象者が十分とは限りません。全国調査から精密な県別順位を作るのは避けるべきです。
4. BMIだけで健康状態を決めない
BMIは集団の傾向を見るには便利ですが、個人の診断指標ではありません。体重への不安や体調上の問題がある場合は、数値だけで自己判断せず医療・栄養の専門家に相談することが重要です。
次に見るべきは「低下が続くか」
2024年の16.6%は、2023年より低く、国の目標15%にも近い値です。しかし、長期推移から読み取れる中心的な事実は、急増が止まったことと、課題が解消したことは同じではないという点です。
今後の確認点は明確です。
- 20〜39歳女性の値が複数年続けて15%へ近づくか
- 20代と30代の双方で低下するか
- 普通体重の増加を伴い、肥満への移動ではないか
- 食事内容、所得、健康状態などを組み合わせた分析が進むか
次回の結果で16.6%を上回っても、ただちに「再び悪化」とは言えません。数年分の同じ条件のデータがそろった時点で、初めて高止まりから持続的な低下へ移ったかを判断できます。
