回収は9割超、再生は85%台 PETボトル循環の現在地を数字で読む
日本のPETボトルは、回収率だけを見れば2024年度も91.9%と高水準です。ただし、実際に原料として再資源化された割合は85.1%。回収された量のすべてが再利用されるわけではありません。
一方、再利用先には明確な変化があります。2024年度の国内再資源化量は44.5万トンへ増え、海外分は11.0万トンへ減少。使用済みボトルを国内で新しいボトルに戻す「ボトルtoボトル」も37.7%まで上昇しました。
この記事の要点は次の4つです。
- 2024年度の回収率は91.9%、リサイクル率は85.1%
- 回収量は約60.0万トン、実際の再資源化量は約55.5万トン
- 国内再資源化が増える一方、海外再資源化は減少
- 今後の焦点は、回収率の高さより「何に戻したか」
使用データと比較条件
この記事で扱うのは、全国の「指定PETボトル」に関する年度実績です。 飲料、酒類、しょうゆ、一部の調味料などに使われるPETボトルが対象で、すべてのPET製品やプラスチック容器を含む数字ではありません。
主に参照したのは、PETボトルリサイクル推進協議会が公表する統計と、環境省の容器包装リサイクル制度に関する資料です。
比較条件は次の通りです。
- 対象地域:日本全国
- 最新対象年:2024年度
- 長期比較:回収率は1993年度以降、直近推移は2018~2024年度
- 回収率の分母:指定PETボトル販売量
- 回収率の分子:市町村系と事業系の正味回収量
- リサイクル率の分子:国内・海外で実際に再資源化された量
- 2024年度の市町村分別収集量:環境省の速報値を使用
ここで重要なのは、回収率とリサイクル率は別の指標だという点です。回収率は集められた段階、リサイクル率は選別や処理を経て再び原料になった段階を測ります。
2024年度は65.2万トン販売、60.0万トン回収
市場に出た量も回収量も増えましたが、回収率は前年度より低下しました。
2024年度の指定PETボトル販売量は65万2,294トン、販売本数では287億本でした。前年度より販売量は約1.6万トン、本数は6億本増えています。
これに対し、市町村系と事業系を合わせた回収量は59万9,611トンでした。内訳は次の通りです。
- 市町村系回収量:31万3,337トン
- 事業系回収量:28万6,274トン
- 合計回収量:59万9,611トン
- 回収率:91.9%
回収量は2023年度の58万9,361トンから約1万250トン増えました。しかし販売量の伸びのほうが大きかったため、回収率は92.6%から91.9%へ0.7ポイント下がっています。
量が増えたのに率が下がるのは、分母となる販売量も増えたからです。「回収量が過去より多い」という事実だけでは、回収の進み具合を判断できません。
回収率は長期的に上昇、直近は9割台で足踏み
30年前と比べれば回収は大きく進みましたが、近年は一直線の上昇ではありません。
回収率の長期推移を見ると、1993年度は0.4%でした。市町村の分別収集が広がり、2000年度には34.5%、2005年度には61.7%、2008年度には77.7%へ上昇しています。
2018年度以降は、正味のPETボトル回収量を使う現在の集計に近い条件で比較できます。
- 2018年度:91.4%(57万2,038トン)
- 2019年度:93.1%(55万2,350トン)
- 2020年度:97.0%(53万4,715トン)
- 2021年度:94.1%(54万6,359トン)
- 2022年度:94.4%(55万18トン)
- 2023年度:92.6%(58万9,361トン)
- 2024年度:91.9%(59万9,611トン)
2020年度の97.0%を頂点に、その後は90%台前半へ下がっています。ただし、2020年度は販売量が55万1,253トンまで減った年です。回収量も前年より少なかったため、97.0%という数字を「回収量が最大だった」と読むのは誤りです。
直近7年間では回収量そのものは増減を繰り返しながら、2024年度に約60万トンへ達しました。一方、販売量の増加によって率は低下しています。ここから言えるのは、回収の仕組みが崩れたというより、販売増に回収の伸びが追いついていないということです。
リサイクル率は85.1%、回収との差は6.8ポイント
2024年度に原料として再資源化されたのは55万5,195トンで、販売量の85.1%でした。
再資源化量の内訳は、国内44万5,416トン、海外10万9,779トンです。合計を指定PETボトル販売量65万2,294トンで割ると、リサイクル率は85.1%になります。
2024年度の二つの率を並べると違いが見えます。
- 回収率:91.9%
- リサイクル率:85.1%
- 差:6.8ポイント
この差は、回収後の選別や洗浄、異物除去などの工程で、全量を再生原料にできるわけではないことから生じます。
協議会の算定では、市町村回収分の再資源化率は84.7%、事業系回収分は69.9%です。回収場所や混入物の状態が異なるため、同じ「回収したPETボトル」でも原料として利用できる割合は一様ではありません。
ここがポイント: ごみ箱や回収ボックスに入った時点は循環の入口です。リサイクルの成果を見るには、集めた量ではなく、選別後に原料へ戻った量まで確認する必要があります。
国内再資源化は増加、海外分は縮小
最新年度で最も大きな変化は、再資源化の国内シフトです。
2024年度の国内再資源化量は前年度比7.2%増の44.5万トンでした。逆に海外再資源化量は12.8%減の11.0万トンです。
概算すると、2023年度は国内約41.6万トン、海外約12.6万トンでした。合計は約54.2万トンで、2024年度には約55.5万トンへ増えたことになります。
この動きの背景として、協議会は二つを挙げています。
- 2018年1月に始まった中国の固形廃棄物輸入禁止により、使用済みPETボトルの海外輸出が減少した
- 国内で使用済みボトルを新しいPETボトルに戻す需要が増えた
海外で再資源化される量が減っただけなら、リサイクル全体の縮小につながりかねません。しかし2024年度は国内分の増加が海外分の減少を上回り、合計の再資源化量も2.5%増えました。
これは、国内で回収から再生、再利用までつなぐ能力が拡大していることを示します。ただし、国内処理なら無条件に環境負荷が小さいとは限りません。輸送距離、選別設備の効率、再生工程で使うエネルギーなども含めて評価する必要があります。
「ボトルに戻す」割合は37.7%まで上昇
リサイクルの質を見るうえで、次の重要指標はボトルtoボトル比率です。
回収したPET樹脂は、ボトルのほか、食品用シート、繊維、成形品などにも再利用されます。ただし、繊維やシートは使用後に同じ経路で再回収しにくい場合があります。
これに対し、ボトルtoボトルは使用済みボトルを新しいPETボトルの原料にする水平リサイクルです。2023年度は33.7%、2024年度は37.7%へ4.0ポイント上昇しました。
清涼飲料業界は2030年のボトルtoボトル比率50%を目標にしています。2024年度実績との差は12.3ポイントです。目標達成には、回収量を確保するだけでなく、食品容器向けの品質を保てる回収と処理が必要になります。
生活者の分別が再生先を左右する
家庭や外出先でできることは単純ですが、再生原料の品質に直結します。
- 飲み残しをなくす
- キャップとラベルを自治体のルールに従って分ける
- ボトルを軽くすすぐ
- PETボトル専用の回収口へ入れる
- たばこの吸い殻など異物を入れない
汚れや異物が多ければ、選別や洗浄の負担が増え、ボトル向け原料にできない量も増えます。回収率がすでに9割を超える段階では、一本でも多く集めることに加えて、集めたボトルの品質を落とさないことが重要です。
都道府県ランキングにできない理由
今回の85.1%は全国値であり、都道府県別のリサイクル率ではありません。
市町村の分別収集量は公表されていますが、地域別の販売量や事業系回収量、地域内外へ移動した後の再資源化量まで、全国値と同じ条件でそろうわけではありません。
そのため、市町村の収集量を人口で割ったランキングは作れても、それをそのまま「リサイクルが進んでいる地域の順位」と呼ぶことはできません。
地域比較では、少なくとも次の違いを考慮する必要があります。
- 観光客や通勤者が地域内で消費した量
- スーパー、自動販売機、駅など事業系回収の規模
- 自治体回収と民間回収の役割分担
- 回収後に別の都道府県へ運ばれる量
- 独自処理と指定法人ルートの違い
自治体別の数字から分かるのは、主に行政が回収した量です。地域内で販売されたボトルのうち何%が再び原料になったかを示すには、別のデータが必要です。
海外との単純比較にも定義の壁がある
国際比較は可能ですが、同じ「リサイクル率」という名称だけで順位を付けるのは危険です。
国によって、回収した段階を数えるのか、選別施設へ投入した量を数えるのか、工程後の再生原料を数えるのかが異なります。対象容器や輸出分の扱いも同じではありません。
日本の85.1%は、指定PETボトル販売量に対して、国内外で実際に再資源化されたと推計される量の割合です。海外の回収率と比較する場合は、少なくとも分子と分母の定義を確認しなければなりません。
数値が高い国ほど循環の質も高い、とも限りません。ボトルへ戻る割合、国内処理の割合、再生工程の歩留まりまで見る必要があります。
数字を読むときの3つの注意点
最新値は有力な手掛かりですが、統計上の境界と推計方法を外すと誤読します。
1. 1990年代からの回収率は完全な同条件ではない
1997~2004年度は樹脂生産量、2005年度以降は指定PETボトル販売量が主な分母です。さらに2018年度からは、分子に正味のPETボトル回収量を使っています。
このため、1993年度の0.4%と2024年度の91.9%は長期的な制度整備の大きさを示しますが、小数点単位の厳密な連続比較には向きません。
2. 2024年度の市町村データは速報値
2024年度の市町村分別収集量は、環境省の速報値を用いて算出されています。確定値への更新によって数字が修正される可能性があります。
3. リサイクル率は複数資料を組み合わせた推計
国内分には環境省、日本容器包装リサイクル協会、事業者アンケートのデータを使います。海外分には財務省の貿易統計と事業者調査を用い、処理工程の歩留まりも反映します。
つまり、販売量と工場の完成品を一つの台帳で直接照合した数字ではありません。公開された算定方法に基づく全国推計として読むのが適切です。
次に見るべきは「回収後」の数字
PETボトルのリサイクル率は、急上昇期を終えて85%台で推移し、再利用先の転換が進む段階に入っています。
2024年度は販売量65.2万トンに対し、回収量60.0万トン、再資源化量55.5万トンでした。回収率は91.9%へ下がった一方、リサイクル率は85.1%を維持しています。
今後の注目点は明確です。
- 販売量が増えるなかで回収率の低下を止められるか
- 国内再資源化量の増加が続くか
- ボトルtoボトル比率を37.7%から2030年目標の50%へ引き上げられるか
- 市町村系と事業系の再資源化率の差を縮められるか
- 速報値が確定した際に2024年度実績がどう修正されるか
回収箱に入った本数だけでは、循環の成否は測れません。次の年次報告で見るべき数字は、回収率の1ポイントの上下よりも、国内でボトルへ戻った量と、その工程で利用できなかった量です。
